ショートショート作家 R・ヒラサワの〜Novelist's brain〜

小説の書き方ブログ。ショートショート作家 R・ヒラサワが自身の作品を用いて詳しく解説。新作随時公開中!

小説・ショートショートの書き方に関するブログを始めて

ブログ R・ヒラサワの〜Novelist's brain〜について

 


【CONTENTS】

 

お陰様で三十記事

 

こんにちは、R・ヒラサワです。

いつも、当ブログを読んでいただきありがとうございます。

主に小説の書き方に関するブログとしてスタートしました、『R・ヒラサワの〜Novelist's brain〜』ですが、開始から三カ月が過ぎ、今回がちょうど『三十記事目』となりました。


そのような理由で、本来は今回から三回に渡って『ストレスシートからの物語』での作品公開の予定だったのですが、普段のブログではお伝え出来ない事を書かせていただきたいと思い、予定を変更させていただきました。

  


読者の皆様へ

 

このブログを読んで頂いた方、読者になっていただいた方、はてなスターをつけてくださった方、ブックマークしてくださった方、お気に入りにしてくださった方、本当にありがとうございます。

 
ブログ開始からしばらくは読者の方もおらず、記事を書く事にも不安を感じる時もあったのですが、今は記事を書いている先に読者の方々を感じる事が出来、とても嬉しく思います。

また、コメント等頂いた時も、とても励みになっています。本当にありがとうございます。

 

ブログ開始前

随分と前のお話ですが、たまたま小説を書き始めた私は数年後に、電子書籍を出版するに至ったのですが、その後本格的に活動を始めようとした矢先スランプに陥り、何年間も小説が書けなくなってしまいました。


しかし、それから更に数年後、作家を目指していた知人にアドバイスを求められた事で眠っていた想いが覚醒し、少しずつ執筆活動を再開し、更にジャンルは違いますが文筆業の方から励みになるお言葉を頂いた事により、今では頂いたテーマに合わせた作品が書ける状態にまでなりました。

 

 

ブログ開始の理由


小説に限らず文章を書き続ける事は、とても体力のいる作業だと思います。何より『ネタ』を探す事に苦労されている方も多いと思います。

 
私が自身のスランプから復活出来た理由をじっくりと考えた時、ある事に気付きました。そして、その事を多くの方へ伝えたいと考えました。

スランプからの脱出方法についての記事はこちら ↓↓↓

rhirasawanb.hatenablog.com

rhirasawanb.hatenablog.com

 

 

それは小説に限らず、『書くための根本的な方法』としての『作家脳』つまりは、『 〜Novelist's brain〜と言う考え方です。

これによって私は現在の様に、テーマに沿った作品作りや、アイデアの断片からでも創作出来るようになったのです。

 Novelist's brainについての記事はこちら ↓↓↓

rhirasawanb.hatenablog.com

 

 

また、自分なりに実行して良かった事や、少しでも『ネタ』に繋がるであろう『アイデア発想法』など、何か参考にして頂けそうな事があれば、どんどん公開したいと思っています。

イデア発想法についての記事はこちら ↓↓↓

rhirasawanb.hatenablog.com

rhirasawanb.hatenablog.com

 

 

更に別の方法として、日常生活でストレスを感じた事などを書き留め、そのような本来はマイナス要素と思われる事柄も、アイデアに変えようと思いました。

 ストレスシートについての記事はこちら ↓↓↓

rhirasawanb.hatenablog.com

rhirasawanb.hatenablog.com

  

今後について

 
現在、私は色んな方々のブログを読ませていただいています。自分の知らなかった分野の記事も沢山読ませていただく事で、広範囲にわたって色々と学ばせて頂いています。

当ブログは開始当初、主に小説を書き始めた方に向けての記事だったのですが、今後は広く『書く事』について参考にして頂ける様な記事に出来ればと考えています。

 

当ブログ、R・ヒラサワの〜Novelist's brain〜

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

これからもよろしくお願い致します。

 


次回は、ストレスシートからの物語シリーズ公開です。

Follow @tthirasawa

 

にほんブログ村 小説ブログ ショートショートへ
にほんブログ村

↑↑↑ブログランキングに参加しています。面白かった方は応援お願いします。

 


ショートショートランキング

↑↑↑最新のランキングチェックはこちら!

コラム/ストレスシート(後編)

ストレスシート(後編)

 

小説やブログのネタ、皆さんはどうされているでしょうか?

私は『ネタ帳』以外に『ストレスシート』と言うファイルを作っていて、今回はそれの詳しい活用方法のご紹介です。


【CONTENTS】

 

ストレスシートって何だ?

今回は『ストレスシート』の後編です。前回『ストレスシート』は、小説などの執筆ネタにすると言うお話をしてのですが、後編ではもっと具体的な使い方についてご説明します。

『ストレスシート』ですが、これは単純に日常生活においてストレスを感じた事を書き留めるだけです。私はメモアプリなのを使っていますが、それは手帳でも何でも書き留めやすい物を使っていただくといいでしょう。

 

問題は、ただ書き留めるのではなく先々『ネタ』に発展させる事です。

本来であれば、書き留めた内容はマイナス要素の多い話だと思いますが、これをプラスに転じる事に意味があります。

そして『ネタ』→『物語』へと発展させられた時、ストレスだった筈の出来事が、何故か笑い(プラス要素)に変わってゆくのですから不思議ですね。

 

以下、タイトルになっているのがシートに書き込んだ言葉で、以降それを使ってアイデアに繋げています。

 

 

リアクションの大きい女性

人と話す時、必ず大きな声で相槌をうつのだ。

「そう、そう、そう!」と、必ず三回。

引き続き、手を叩く。

「パン、パン、パン!」と、こちらも三回だ。

 
【ここからのアイデア

一見、周囲から迷惑がられる女性。例えばそれが逆だったらどうでしょう?

女性が見ている相手こそが、実は迷惑な人だった場合ですね。

 
ここはスーパーマーケットの中。男が買い物をしていると、いつも知人と大きな声で話す女性が居る。

そして『そう、そう、そう!」と、相槌をうち。

続いて『パン、パン、パン!」と、手を叩く。

この女性、実は万引きGメンで、マークされているのが男。リアクションが何かの合図だとしたら……。

(何か話が出来そうですね)

 

 

仕事をしない人

今日も誰々がどうので、定時で仕事が終わらなかった。

別の日も、会社の段取りがこうので定時で終わらなかった。
その人が外回りに出た日は、随分と他の人よりも長い時間会社に戻って来ないんですけど、さて、何か重要な用でもあるのでしょうか?

周囲の人曰く「何処かで休んでいる」そうです。


そして、社内にいる日は随分と余裕ある仕事ぶりです。いつも通り、仲のいい社員と「あーだ、こーだ」。きっと小さな会議のつもりなのでしょう。
また別の人曰く「文句言ってるヒマがあったら手を動かせばいいのに」との事。


【ここからのアイデア

例えば『仕事をしない人』みたいなタイトルで、その人が仕事をしない様子や、周囲の社員からの悪評など、しばらくそんな話が続いて、その挙句

「あんな人が居るのは迷惑だ!」、「早く辞めればいいのに!」なんて声も出始める。

でも、実はこの人が『社長』だったなんてオチも面白いかもしれませんね。

 

 

☟☟☟ショートショートを『書く』ならこの本!!

 

ミスを他人のせいにする人

「あなたの置き方が悪かったせいで、私が台車を動かした時に荷物が落ちたんですよ」

「ああ、それはスミマセン」

「納品書通りの数量を用意してくれないと困りますよ。チェックはこっちの仕事ですけど、貴方が間違ってたから私もミスしちゃったんですよ!」

「ええ、気をつけます」

 
【ここからのアイデア

一見、言いたい放題のワガママ社員と、それを大人しく聞く社員の関係ですね。

でも、これがフルオートメーションの工場内での、人工知能を搭載したロボット同士の会話だとしたら、どうでしょう?

 
ロボットも知能が発達すると、ワガママな個体も出て来るかもしれませんね。

 

 
試食を爆喰いする男

「こんにちは!」

男はいつも大きな声で店員に挨拶をする。食品の『試食販売コーナー』での出来事だ。

用意された数種類の試食品を全種類、しかも複数個爆喰いして何も買わず、そして何も言わずに去って行く。毎週の話だ。

過去に一度の購入歴も無く、この先もきっと同じ事が続くだろう。店員はその対応に頭を悩ませる。

 
【ここからのアイデア

一見すると、ただの迷惑なお客さん。

オーソドックスですが、実はこの人は『覆面調査員』とか、ガイドブックで『★』を付けるか決める人とか。

すいません、あんまりいいのが出なかったみたいです。

 

 
妙な金額で支払う女

レジでの支払いの際お札と端数の小銭を渡して、出来るだけ受取る硬貨を減らそうとするお客はよく居る。

例えば六百円の買物に対し千円出せばお釣りは百円が四枚だが、千百円出せばお釣りは五百円が一枚だ。この行動は理解しやすい。

 

しかし、もっと細かい金額に対し複数の小銭を札と共に渡し、どう計算してもあまり小銭が減らない様な渡し方をするお客が居る。

「これはきっと勘違いだ」

お客が勘違いか、あるいは計算間違いをしているのだろうと、ありとあらゆるパターンを頭の中で想定するが、その答えは何処にも見当たらない。

 
【ここからのアイデア

こちらもオーソドックスですが、例えば『ニセ硬貨』に関するお話。

『ニセ硬貨』と言っても、本物との『交換』もあれば、本物として『使う』パターンがあります。

 
一つのアイデアでも、バリエーションを増やすと、展開の範囲も拡げる事が可能です。

それにしても、最近何処かでこんなネタを聞いた様な気がしますが……。

 

 

何度も挨拶してるが、誰だかわからない人

週に三回以上会う人が居る。向こうが挨拶してくる時もあるし、逆にこちら側からの時もある。問題は相手が誰だかわからない事だ。

今さら聞くわけにもいかない。既にもう何十回も挨拶を交わしているし、顔だってハッキリと覚えている。

 
最初にどちらかが挨拶をした。それは間違いない。

次の時には顔を覚えてしまったから、また挨拶をする。当然の流れだ。
まさかとは思うが、実のところ互いに相手の事を全く知らないのではないかと、最近少し不安を覚えるのだ。

 
【ここからのアイデア

シンプルに、主人公には相手が誰だか思い出さなければいけない事態が発生し、可能な限り自分の持っている名刺や資料、ありとあらゆる物を探り思い出そうとします。

 
ところが何も出て来ない。困り果てて周囲の人に協力を求めると

「え? 知らなかったの!」

と、驚かれたり呆れられたり。しかし、それでも分からない。

 
どうにもこうにも方法が無く、最後の手段として勇気を出して本人に確認すると

『私は◯◯と申しますが。すみません、どちら様でしたっけ……」

 

 

 

★今回はアイデアの段階までのお話でした。次回以降はこのアイデアを元に、二作品ずつ短い物語を書いてみたいと思います。


次回は、『ストレスシートからの物語(1)』の公開です。

 

 

 

kindle unlimited1日に1000頁以上読まれた人気の指南書です。

 

 

にほんブログ村 小説ブログ ショートショートへ
にほんブログ村

↑↑↑ブログランキングに参加しています。面白かった方は応援お願いします。

 

R・ヒラサワの?Novelist's brain? - にほんブログ村

↑↑↑読者登録はこちらからお願いします。

 


ショートショートランキング

↑↑↑最新のランキングチェックはこちら!

( 『落し物』がテーマの作品例)小説投稿サイト時空モノガタリ未発表作品(8)/落し物の使い方

(番外編)未発表作品(8)/落し物の使い方

パチンコに負けた日曜日の午後、男は路地で封筒を拾った。中には、なんと現金が入っていた。給料日前の寂しい財布の中。男はそれを自分の物にしてしまうが……。

 

 

落し物の使い方

 

 

 男はその日、自分が路地に入った事をとても幸運だと思った。それは給料日を数日先に控えた日曜日、パチンコに負けた午後の事だった。

 路地には何気なく入った。繁華街を少しだけ離れた場所だったが、そこは驚くほど人通りが少なかった。

 路地に入ってすぐさま目に入ったのは、見覚えのある薄い緑色の封筒だった。それが銀行の物であるとすぐに分かったが、中身が入っている筈など無かった。

男は最初、そのまま通り過ぎるつもりだったが、何となく中に紙の存在が感じられた。幸いな事に辺りに人影は無く、男はその封筒を難なく手にする事が出来た。

 男は地面から拾い上げた封筒を、すぐさまコートのポケットにしまい込んだ。封筒と共に差し入れた手で、その中を慌ただしく探り始めた。

 男の予感は当たっていた。中には紙の感触があった。それはもちろん紙幣に違いない。男は紙の先端を指で弾くと、それが三枚である事が分かった。

 早く中身を自分の目で確かめたかった。男は今日負けたパチンコ店に再び足を運んだ。

 慣れた足取りでトイレへ駆け込むと、素早く個室の中へと入った。ポケットから封筒を取り出し中身を確認すると、新札の一万円が三枚出てきた。思わず笑みが浮かんだ。

 給料日まであと三日。財布の中身は随分と寂しくなっていた。月の前半での無駄遣いが後々まで響き、ちょうど今日あたりに妻に前借りを打診してみるつもりだった。

『思わぬ臨時収入だな』と、男は思った。

 男はすっかり気が大きくなり、そのままパチンコ台の前に座った。自分の金では無いと言う意識が強かった為か、いつもより早いペースで金が吸い込まれていった。

 懐が温かくなったと思ったのも束の間、あっと言う間に三万円が二万円になった。すぐにトイレに駆け込める場所と考えて、パチンコ屋に入ったのが間違いだった。

 少しでも金に余裕があれば、すぐにつぎ込んでしまう事ぐらい想像が出来た筈だった。しかし、封筒を拾った段階で心にやましい気持ちが芽生え、それが余裕を持てない原因となった。何事も焦りは禁物だと男は思った。

 それでも男の心の中では、何かを失った気はしなかった。元々この金は自分の物ではない。だから失ったと言うよりも、まだ二万円もあるという気持ちの方が大きかった。

 今度は少し冷静に考えて、何か価値のある使い方をしようと思った。

 そう、それは美味しい物でも食べる事だ。少し遅めの昼食は豪華にしようと考えた。普段は絶対に入らないような店で、腹一杯食べればいいのだ。その行為はきっと男を満足させるに違いなかった。

 男にとって贅沢な食べ物として、最初に思い浮かんだのは肉だった。肉と言えば焼肉もいいが、それよりはステーキだ。

 しかし、入る店は選ばなければならない。身なりにうるさい店は駄目だ。男の事を受け入れてくれない。いかに好意的に見積もったところで、男は決して金持ちには見えないのだ。どれだけ同じ料金を払うと言っても入店しづらいのは間違いない。

  そんな店に入るためには、もっと稼いでちゃんとした身なりで登場し、むしろ店から歓迎される身分にならなければいけないと思った。

 男はしばらく歩いた末に、なんとか自分でも入れそうな店を見つけた。そこでは、もちろんステーキを注文した。しかし、値段はあまり高くない物を頼んだ。やはり、体に染みついた貧乏性はどうにも抜けなかった。

それでも普段の食事とは比較にならない旨い代物だった。男は充分満足する事ができた。

ここでの食事を済ませた段階で、男の所持金は一万円程度になった。そこで初めて男は減って行く金が惜しいと思い始めた。何か手元に残る物でも買おうかと一度は考えたものの、それもやめて現金を残す事にした。

 最寄りのATMはすぐに見つかった。普段から持ち歩いているキャッシュカードを使い、入金をした。男はこれを機に無駄遣いをやめて、今度は妻と一緒にご馳走を食べようと思った。軽やかな足取りでATMを後にした。

 男から少し離れた場所にスーツ姿の二人組の男達が居た。二人は金を拾った男を見ていた。それは男が道で金を拾う前から、ずっと続いている事だった。一人の男が口を開いた。「パチンコ屋に飲食店、ATMもクリアだな」

「ああ。これなら心配ないだろう。まさかATMにまで立ち寄るとは、ちょっと予想外だったな。でも、嬉しい誤算だよ」

「そうだな。これで今回の偽造紙幣は、完璧な事が確認出来たな」

 

 

 

 

 

にほんブログ村 小説ブログ ショートショートへ
にほんブログ村

↑↑↑ブログランキングに参加しています。面白かった方は応援お願いします。

 

R・ヒラサワの〜Novelist's brain〜 - にほんブログ村

↑↑↑読者登録はこちらからお願いします。

 


ショートショートランキング

↑↑↑最新のランキングチェックはこちら!

(解説から学ぶ小説書き方ブログ)今回の作品/五点着地、コラム/ストレスシート

五点着地

 

戦隊ヒーローの一員だった主人公は、メンバーの中で一番人気が無かった。現状では先々自分が俳優としてやってゆく自信が持てず、先輩に相談を持ちかけるが……。

 

rhirasawanb.hatenablog.com


【CONTENTS】

 

テーマからの発想

 

今回のテーマは『着地』です。

『着地』と言えば、単純に高い所から地面に降り立つイメージでした。他の書き手の方は色々捻ったアイデアを出されていた様ですけどね。

 

スポーツなんかのネタも浮かびましたけど、どうも話が進みそうになかったので、シンプルに降り立つ『着地』で考えました。

 

発想からのキーワード選出


着地、アクション、ヒーロー、戦隊

結局のところ、戦隊ヒーローの話にしかならないワードばかり出ました。

その分、ストーリーが出来てゆくのは早かったですけどね。

 

 

POINT1:タイトル


五点着地


正確には『五点接地転回法』と言う様です。

要するに、高い場所から落下した時などに、体の五ヶ所を順番に地面に着くよう回転しながら、衝撃を和らげて着地する方法です。


元々、私はこの着地方法について知識は無かったのですが、色々調べた結果、これは『戦隊ヒーロー』のネタに使えると思い、とにかく書き進めました。

 

 

POINT2:書き出し


「先輩、それをマスターすれば本当に大丈夫なんですか?」

「ああ。絶対とは言えないけど、今のままじゃダメなのは間違いないね」

「そうですか......」

 戦隊ヒーローのメンバーであるトモヒロは、五人中の五番人気、四番目は紅一点のチカちゃんだった。

 

『五点着地』と言うタイトルをつけておきながら、書き出しではそのことにほとんど触れていません。

これは後々のオチに深く関係があるのですが、なかなか本題に入らない事で、読者の方の頭の中には、この言葉の意味に対する疑問が湧いて来た筈です。


私自身この物語を書くまでは、名前すら聞いた事が無かったので、おそらく知っている方が少ないであろう前提で、あえて説明的な要素は後回しにする構成にした訳です。


こうする事によって、この物語は先輩の台詞がペースメーカーとなって推し進められ、オチについても先輩のペースで落ちてゆく。そんな話にしたかったのです。

 

 

POINT3:ユーモア


「アクションがイマイチな女子より人気がないの?」

 トモヒロの彼女が放った一言は、彼に大きなダメージを与えた。まるで怪人達のボスキャラ並だ。

「ヒロインって結構人気が出るものなんだ。小学生ぐらいの男子って、強さに憧れる一方で既に『男』の部分を持ってるんだよ」

「へえ、そうなの? 私は貴方に『男』を全然感じないけど……」


今の男子が弱いのか、それとも女子が強いのか? 

とにかく、その傾向がよく見られるのは間違いないですね。一般的に、世間の夫婦はこちらの方が円満になりやすいとか。

 

小説の世界でも、やはりこちらの方が面白くなりやすいですし、とにかく平和なんですよね。

強い彼女に対し、トモヒロは何とかその攻撃を逃れようとするのですが、結局は諦めてしまいます。もちろん戦いは挑みません。

 

弱くなってしまった男子は、危険を回避する能力だけが、発達してきたのかもしれません。

生きてゆく以上、何かの『武器』は、必要ですもんね。

 

POINT4:前半のストーリー

 

戦隊ヒーローのメンバーである主人公は、この番組の出演をきっかけに、先々人気俳優への道を夢見るが、既に周囲より遅れをとっている為、不安になり先輩に相談を持ちかける。

 

同系統の番組に出演したことのある先輩は、今以上にアクションを鍛えることを勧めるが、主人公はそれに納得できない。


POINT5:展開〜オチ

先輩との話を進めるうちに、やはりこの人を相談相手に選んだのは間違いだったと、つくづく思う。


二人で話す中で、先輩のこれまでの経歴や現在の生活を考えると、自分が目指す場所は此処ではないと改めて思い、戦隊ヒーロー卒業を決意する。


総合的なポイント


優柔不断な主人公と、あてに出来ない先輩。そして強い彼女。自分の事ばかり話したがる先輩が重要なキーマンです。

今回のお話しは、ストンと落ちるタイプではありません。それには意図があります。

 

この先輩みたいなタイプの人、知り合いに居ませんか? 私は居ますけど……。

こういう人って、別に悪い人じゃないと思うんですよね。ちゃんと相談にも乗ってくれるから、適任じゃないとは思うけど、ついつい相談とかしてしまう。

 

でも、やっぱり駄目なんですよね。相談とかは。それに気付いた時、期待していなかった分、ショックは少ない。だから、徐々にフェイドアウトしてゆく様な、そんな主人公の心の動きを、今回の作品の展開で表現した訳です。

 

 

コラム/ストレスシート


小説のネタ作りの方法として、私は『ストレスシート』と言う物を作っています。

これはメモアプリなどを使い、単にストレスを感じた事を書き留めるだけです。

 

私の『ストレスシート』を一つ見てみます。

異常に声が通る乗客

普段、私が通勤電車の中で小説やブログの記事を書く割合は、だいたい三割ぐらいです。

 

日によりますが、自分で決めた締切間近は少し焦りがあります。

ある日、高齢女性三人グループと同じ車両になったのですが、この人達の声が通る事!

特に声が大きい訳ではありません。

 

無理でした。気にしない様努力したのですが、一文字も書けませんでした。そして書きました。

『異常に声が通る乗客』

 

いつか小説のネタに出来ればと、ストレスシートに書きました。そして今回、ブログのネタになりました。

ありがとうございます。


 更に詳しい活用法については、次回、コラム/ストレスシート(後編)でお話したいと思います。

 

 

 

kindle unlimited1日に1000頁以上読まれた人気の指南書です。

 

 

にほんブログ村 小説ブログ ショートショートへ
にほんブログ村

↑↑↑ブログランキングに参加しています。面白かった方は応援お願いします。

 

R・ヒラサワの?Novelist's brain? - にほんブログ村

↑↑↑読者登録はこちらからお願いします。

 


ショートショートランキング

↑↑↑最新のランキングチェックはこちら!

 

 

 

にほんブログ村 小説ブログ ショートショートへ
にほんブログ村

↑↑↑ブログランキングに参加しています。面白かった方は応援お願いします。

 


ショートショートランキング

↑↑↑最新のランキングチェックはこちら!

(小説の原稿枚数の合わせ方)コラム/文字数の合わせ方(後編)

文字数の合わせ方(後編)
文字数の合わせ方(後編)では、既にブログで公開済みの作品を使って、実際に調整をやってみたいと思います。
 
基本的には二千文字、又は原稿用紙換算五枚以内の規定に合わせて書いた作品なので、特に調整の必要がなかったものです。
 
執筆から多少の期間が空いているので、自分自身の作品を客観視すると言う意味でも、面白いかもしれません。
 
 
 
【CONTENTS】

時空モノガタリ未発表作品(2)『消去ボタン』より

作品全編は、こちらでご覧いただけます。↓

 
【調整前の原文(361文字)】  
 ファミリーレストランの一番奥にある喫煙席で、今日この場所に最もふさわしくないと思われる二人組の男が座っていた。
 初夏だと言うのに、外は既に真夏の日差しで、毎年最高気温を記録する地域では、去年の記録を塗り替えるほどの暑さだった。
 その為、世間の人々は半袖姿で過ごす中、上下黒ずくめのスーツ姿の二人は、明らかに周囲から浮いている存在だった。
 奥側のゆったりした席で反り返っているのがボスで、突き出た腹をさすりながら、目を細め、煙草をふかしている。浅黒い顔にヒゲを蓄え、いかにもそれらしい風貌だった。
 一方の子分は、それとは対照的な青白い肌に細身のスタイルで、気が弱そうなルックスは、子分以外の何者でもなかった。
 二人に挟まれたテーブルの上には、電子工作でよく見かける様な、アルミケースを加工した装置が置かれていた。
 
 
【アレンジ文(304文字▲57)】 

 ファミリーレストランの一番奥の喫煙席に座っている二人組の男は、今日この場所に最もふさわしくないだろう。

 初夏だと言うのに外は真夏の日差しで、日本一暑い地域は、最高気温の記録を更新する程の暑さだった。

 皆が半袖姿で過ごす中、上下黒ずくめのスーツ姿の二人は、明らかに周囲から浮いた存在だった。

 奥側の席では浅黒い顔にヒゲのボスが、反り返って太い腹をさすりながら、目を細め煙草をふかしており、いかにもそれらしい風貌だった。

 一方、子分の細く青白い細身のルックスは、対照的に気が弱そうで、子分以外の何者でもなかった。

 二人に挟まれたテーブル上には、電子工作にありがちな、アルミケースを加工した装置があった。

 

 

 

時空モノガタリ未発表作品(3)『視点』より

作品全編は、こちらでご覧いただけます。↓

 
【調整前の原文(191文字)】 
「とにかく、今日のところはこれでお引取り願えませんか。私も色々と忙しい身なんでね」
 そう言って編集長は私に帰るよう促した。私が用意した原稿が、あまり良くなかったかもしれない。編集長に会う事ばかり考えていた為、肝心な原稿が中途半端な物になってしまったようだ。
 しかし、このまま帰る訳にはいかない。この編集長に、どうしても私の頭の中にある事を伝えたかったので、尚も私は食い下がった。
 
 
【アレンジ文(151文字)▲40】 
「とにかく今日はこれでお引取り願えませんか。私も色々と忙しい身なんでね」
 編集長は私に帰るよう促した。私の原稿があまり良くなかったかもしれない。編集長に会う事ばかり考えて、肝心な原稿が中途半端だったようだ。
 しかし、このまま帰れない。編集長にどうしても伝えたい事があったので、尚も私は食い下がった。
 
 

 

 
 

時空モノガタリ未発表作品(5)『鍋奉行』より

作品全編は、こちらでご覧いただけます。↓

 
【調整前の原文(553文字)】 
「あなたって典型的な鍋奉行よね」
 鍋の向こう側から、溜め息混じりに妻の声が聞こえた。俺が顔を上げると、こちらをじっと見たまま妙な角度で箸を止めている。
「肉が先だの野菜がどうだのって、会社の中でもそんな風にちゃんと段取り考えて、誰かに指示とか出したりしてるわけ?」
「いいや……。転職したての新人社員だよ。そんな事まだまだ出来る訳ないじゃないか」
 俺は再び鍋の中に目をやった。すでに肉が焼けてしまっている。鍋型のホットプレートを使っているから『鍋』と呼んでいるが、正確に言えば今日の料理は『すき焼き』である。だから肉がこうなる前に、醤油を入れなければならない。
「新人社員って、あなた一体自分が何歳だかわかってんの!」
 今度は、ポットプレートの電気が止まった。向かい側に居た妻が、コンセントを根元から抜いたに違いない。
 俺は仕方なく、お肉専用のトングを置き、妻の方を真っ直ぐ見た。ちなみにこのトングは、アウトドア用品専門の店で三十分以上悩んだ挙句、少ない自分の小遣いで買ったものだ。もちろん俺専用の道具で、出番は半年に一回程度。言うまでもなく、そのチャンスはボーナスの後しか巡ってこない。今回は転職後初めての『ボーナス』ではなく『寸志』が出たので、俺が強引にその出番を作ったのだ。
「四十五歳だよ」
 
 
【アレンジ文(463文字)▲90】
「あなたって典型的な鍋奉行よね」
鍋の向こうから聞こえた溜息混じりの声に俺が顔を上げると、妙な角度で箸を止めた妻がこちらをじっと見ている。
「肉が先だの野菜がどうだのって、会社でもちゃんと段取りして指示出してるわけ?」
「いいや……。転職したての新人だから、まだまだ出来る訳ないじゃないか」
 俺が再び鍋に目をやると、すでに肉が焼けてしまっている。鍋型のホットプレートを使っているから『鍋』と呼んでいるが、正確には『すき焼き』である。だから肉がこうなる前に、醤油を入れなければならない。
「新人って、あなた自分が何歳だかわかってんの!」
 今度はポットプレートの電気が止まった。向かい側の妻がコンセントを抜いたに違いない。
 俺は仕方なくお肉専用トングを置き、妻を真っ直ぐ見た。ちなみにこのトングは、アウトドア専門店で三十分以上悩み、少ない小遣いで買ったものだ。もちろん俺専用で、出番はボーナス後の半年に一回程度だったが、今回は初めての『ボーナス』ではなく『寸志』が出たので、俺が強引にその出番を作ったのだ。
「四十五歳だよ」
 

次回は、ショートショート『五点着地』のプロセス公開です。

 

 

こちらは私の著書である『作家脳シリーズ』です。既にご好評いただいている
Vol.1は、常にAmazonランキング(文学理論カテゴリー)に登場する人気の書籍です。
シリーズ第二弾と第三弾であるVol.2、Vol.3は、Vol.1で作り上げた『作家脳』を更に『鍛え』、その作家脳を『持続させる』為の方法です。
様々なテクニックと、サンプルショートショートによる実践的な解説です。是非Vol.1と合わせてお読みいただければ、きっと貴方の『創作』の良き『パートナー』となるでしょう。
 
シリーズ第二弾

シリーズ第三弾

 

にほんブログ村 小説ブログ ショートショートへ
にほんブログ村

↑↑↑ブログランキングに参加しています。面白かった方は応援お願いします。

 

R・ヒラサワの?Novelist's brain? - にほんブログ村

↑↑↑読者登録はこちらからお願いします。

 


ショートショートランキング

↑↑↑最新のランキングチェックはこちら!

(解説から学ぶ小説書き方ブログ)今回の作品/超予測変換、コラム/文字数の合わせ方(前編)

超予測変換

最近普及し始めたスマートフォン用アプリの『超予測変換』。そのアプリを使って小説を書き始めた主人公は、次々と作品を仕上げてコンテストに応募し、入賞作品も徐々に出始めるが……。

 

rhirasawanb.hatenablog.com


【CONTENTS】


テーマからの発想

 テーマは五〇四号室』です。

今回は、かなり限定されたテーマでした。数値だけでなく、普通で考えたら部屋番号以外の何者でもありません。


マンションかアパートか、あるいはホテルか。それがどの建物かで多少話に変化は出るでしょうけど、ベースの話は多分同じ雰囲気になってしまうでしょうね。ある意味で難しいテーマです。

 

発想からのキーワード選出

マンション、アパート、ホテル、部屋番号

 

POINT1:タイトル

超予測変換

タイトルは『超予測変換』です。これは、スマートフォンアプリの名前なんですが、勿論オチにも関係があります。

私が書く作品は、多くの場合タイトルが伏線になっています。

 

POINT2:書き出し

最近はスマートフォンの性能も随分と良くなった。普及率もどんどん上がり、持たない人が少数派に追いやられるばかりだ。使えるアプリも増え続け、便利な世の中になったものだと思う。
 ワープロの様な文字編集専用のテキストエディタなどは、小説を書く人によく利用されるようだ。それらと連動する文字の変換機能も重要な性能で、特に『予測変換』などは入力がスムーズに行えるようになって便利である。
『超予測変換』は最近普及し始めた無料のアプリで、画面の一部に常時広告が表示されているが、基本的な機能は普通に使う事が出来る。スマートフォンの基本的な変換機能を更にアシストするらしい。

 

今回の書き出しは、あえて長めにしています。

既に作品を読まれた方はお分かりでしょうが、オチにたどり着く『転』まではゆっくり、そして『転』からは一気に『オチ』に持ってゆく様にしています。

これは、主人公がある事実に気付いた時、大きな展開が用意されているからなんです。

 

POINT3:ユーモア

毎月決まって応募するようになったネット上のコンテストがある。ここでは毎月課題が一つ出され、それに合った作品を募集している。出される課題は様々で、それを難しいと思うかどうかは書く人によって違ってくる。
 今回の課題は『五〇四号室』だった。なかなかアイデアが出ない。

 

前半の『コンテスト』は、まさに私(書き手)が普段現実世界で実際に行っている事で、物語の世界から、一旦現実世界に引き戻しています。

これは、後々出てくる展開に関係があり、伏線でもある訳です。

小説にはよくある手法ですが、物語の内容に応じて効果的に使うと良いと思います。

 

POINT4:前半のストーリー

『超予測変換』と言うスマートフォンアプリを使い始めた主人公は、そのアプリを使って小説を書いていた。


毎月小説を応募しているコンテストの課題に対し、アイデアが浮かばなかったので、とりあえず課題の『五〇四号室』をそのままタイトルにして、小説を書く事にした。


POINT5:展開〜オチ

アプリに頼りきりになって小説を書いていた主人公だったが、タイトルにした『五〇四号室』は、偶然にも主人公の住む部屋を同じ番号で、まるで自分の部屋の話の様に思えてくる。

 

小説に書かれた内容はリアルに現実とリンクして、主人公は逃走中の犯人に襲われてしまう。

 

総合的なポイント

今回の作品は、ある『オチ』に向かって突き進むタイプの物語ですが、これには『リズム』が大事だと思います。

ベースのお話がシンプルな分、他の要素である変化をつける必要が出てきます。

今回、私は『リズム』に注目して、前述の『物語の途中で現実世界に引き戻す』行為は、最大限、いい意味でリズムを狂わせる流れです。

小説には様々なテクニックがありますので、その時々に合わせた物を効果的に取り入れると良いと思います。

 

コラム/文字数の合わせ方(前編)

私が月に一回のペースで作品を投稿している『時空モノガタリ』サイトは、作品の文字数に制限があり、それは二千文字以内となっています。

 

作品を書き上げた時点で制限文字数以内なら問題ないのですが、私が作品を書く場合、推敲前は大抵制限を超えています。

 

その場合、当然文字数を削る必要が出てくる訳ですが、それはどのように進めれば良いのでしょうか?

今回は、私が普段文字数を削っている方法をご紹介します。

 

【小説に必要な情報】

●教師A男は、かつての教え子であったB子と結婚した。

●B子は在学中、A男とは付き合っていなかった

●A男がB子と付き合うきっかけになったのは、A男の同僚である教師C美とB子が卒業後も交流があり、偶然三人で出会う事があった為である。

 

【シンプルな原文とアレンジ文】

(1)シンプルな原文【62文字】

A男はかつての教え子B子と結婚した。B子が卒業後も交流があった、A男の同僚教師C美を通じて二人が再会したのがきっかけだった。

 

(2)アレンジA【54文字】▲8文字

B子は学校を卒業後も教師C美と交流があり、偶然かつての担任A男と再会したのをきっかけに交際、そして結婚した。

 

(3)アレンジB【44文字】▲18文字

B子は学校を卒業後も教師のC美と交流があり、偶然現れたかつての担任A男と交際、結婚した。

 

(1)の文章を基準に、(2)、(3)で文字数を削ってみました。

 

今回、例文があまり良くなかったかもしれませんが、基準となる人物や物を入れ替えて文章を組み立てる事も、文字数調整に役立つ場合があります。

 

また、もっと長い文章では、ある程度要約出来る部分も存在すると思います。

常に制限文字数ギリギリまで使う必要はありませんが、原文が制限を超えた場合は、その必要性が生じてきます。

 

 更に詳しい方法については、次回、コラム/文字数の合わせ方(後編)でお話ししたいと思います。

 

☟☟☟ショートショートを『書く』ならこの本!!

 

にほんブログ村 小説ブログ ショートショートへ
にほんブログ村

↑↑↑ブログランキングに参加しています。面白かった方は応援お願いします。

 

R・ヒラサワの?Novelist's brain? - にほんブログ村

↑↑↑読者登録はこちらからお願いします。

 


ショートショートランキング

↑↑↑最新のランキングチェックはこちら!

(初心者必見! 小説の書き方のルール)番外編/創作プロセス公開済み作品集(2)

創作プロセス公開済み作品集(2)

この作品集は既に創作プロセスを公開したものですが、当ブログでも作品を読んでいただける様に編集したものです。

【CONTENTS】

 

 『片想い』のプロセス公開はこちら↓↓↓

rhirasawanb.hatenablog.com

同じクラスの女子に、なかなか告白出来ない男子高校生。しかし、バレンタインデーに嬉しい展開が待っていた。

 

片想い

 

 僕が通う高校で、同じクラスにいるミヅキは、教室の中でほぼ真ん中あたりに座っている。でも、その存在感で言うと、ずいぶん端っこの方にいるって感じの、ミヅキはそんなおとなしい女子だった。

 ちょっと地味で目立たない、何となく控えめな、そんなところがとてもいい。だから僕の中でミヅキは間違いなく、ど真ん中に居る存在だった。

 一方の僕はと言うと、存在感はミヅキとほぼ同じで、やっぱり端っこの方だと思う。あまり目立つ方でもないし、女子と話すのも苦手だから……。

 僕はミヅキと、もっと話したいと思うけど、授業やイベントで必要に迫られた時が精一杯。そんな時、ミヅキはよく笑ってくれる。多分そんな気がする。僕はこういう時、物事を良い方に考えるようにしている。もちろんミヅキについての事だけなんだけど。だって、片想いはきっと、そんな風に考えた方が楽しいに決まっているから。

 ミヅキの事は、同じクラスになってからすぐ気になり出して、それからずっとミヅキの事を考えて、もう半年以上経つけれど、僕とミヅキの間には何も起こっていない。多分それは、僕が何もしていないからだと思う。

 何もしなければ何も変わらない。そんな事は分かってるけど、僕がミヅキに告白して、もしダメだった時の事を考えると、やっぱりそれは出来なかった。僕はこう言う時には、物事を悪い方に考えてしまうようだ。

 ある日、僕とミヅキの間に大きな事件が起きた。なんと、バレンタインにミヅキが僕にチョコをくれたんだ。夢かと思った。

「ミヅキがあなたに用があるんだって」

声をかけてきたのは、きっとミヅキの親友。隣のクラスの女子で、いつもミヅキと一緒に居るから。だけど、僕はその女子の名前をよく知らない。向こうも多分、僕の名前を知らないから『ねえちょっと』って声をかけてきたんだと思う。

 ミヅキはうつむき加減で僕の前に立っていて、その親友は僕の事をじっと見ていて、その目は僕の事をあまり良く思ってない様に見えた。

『あの……。これ……」

 ミヅキがチョコを、そっと僕に手渡した時、話した言葉は、たったそれだけだった。そして僕も『あ、ありがとう』とだけ言って受け取った。

 正直、驚いたのと嬉しかったのと、照れ臭かったのがいっぺんにやって来て、他に何も言う事が出来なかっただけなんだ。

 その日の授業が終わって、部活も何もない僕は真っ直ぐ家に帰って、誰も居ない間にチョコの包みを大急ぎで開けた。中にはとっても大きなチョコと、名刺よりも小さいメッセージカードが入っていた。

 二つ折りのそれを開いてみると、左右に一文字ずつ『好』と『き』が書かれていた。ミヅキにしては大きめの字だと思った。

 僕が女子からチョコをもらったのは、これが初めてだった。しかも、それがずっと好きだったミヅキからだったものだから、この嬉しさをどう表現したらいいかわからない。多分、お正月とクリスマスと、誕生日がいっぺんに来たみたいな、とにかくそのぐらい嬉しい事だった。

 僕はその気持ちを伝えたくて、ひと月後のその日が待ち遠しくて仕方がなかった。今すぐにでも伝えたい。ミヅキに、僕だって好きなんだよって、その気持ちを。

 でもそれはホワイトデーの日にする事にした。ミヅキにだって心の準備があるだろうし、僕は何でも決まりをちゃんと守るほうだし。

 バレンタインから半月が過ぎた月曜日、再び事件が起きた。事件というより、それは事故だった。

 朝、担任の先生がいつもより早めに教室にやって来た。その顔色は随分悪そうに見えた。きっと良くない話だろうと僕は思ったけど、その予感は当たっていた。先生は声の震えを抑えるように、ゆっくりと話し出した。

 ミヅキが登校中、交通事故に遭って意識がない状態だと皆に伝えた。誰かがお見舞いに行きたいと言ったけど、今は家族の人しか会えないと答えた。

―翌日、ミヅキが天国に行った事を知った―

 僕は悲しかった。とても悲しかった。そして後悔した。ミヅキに自分の気持ちを伝えられなかった。ミヅキは僕に自分の気持ちを伝えてくれたのに……。

このままじゃ僕もミヅキも、ずっと片想いのままじゃないか……。

 通学路の途中には大きな家があって、そこには小さな梅の木がある。それは既に満開だった。

 僕は花の中では梅が一番好きだ。どこか控えめで可愛くて、それはきっとミヅキのようだから……。

 僕が居る世界と天国の間に、隔たりなんて無いんだ、きっと。少なくとも僕の心の中で、ミヅキとは『片想い』ではなく『両想い』に決まっているんだから。

 

 

創作が上手く進まない……。そんな時、『もしも……』と、あてはめるだけ!

先ずは『試し読み』をどうぞ↓↓↓

☟☟☟ショートショートを『読む』ならこの本!!

 

 

『ANSWER』のプロセス公開はこちら↓↓↓

rhirasawanb.hatenablog.com

月に一回ペースのショッピングセンター通いは、夫との離婚がきっかけだった。近所では買えない雑貨の購入や、気分転換が目的だったのだが……。

 

ANSWER

 

 アキコが二十歳ぐらいから知るショッピングセンターは、オープンから既に三十年は経つだろう。ここにはしばらく来なかったが、最近また利用するようになったのは、十年以上連れ添った夫と別れた事がきっかけだった。

 夫の浮気が原因で離婚してから半年。今年で五十歳になるアキコにとって、熟年離婚は簡単な事ではなかった。

 夫が提示した慰謝料によって、経済面の不安がある程度解消された事と、何より、自分を裏切った相手と暮らす気になれなかった。

 家事は随分と楽になった。洗濯は三分の一になり、夕食のメニューで悩む事も無い。しかし、日々の生活に張りは無くなってしまった。

 普段の買い物は最寄りのスーパーで済ませている。半月に一回程度、少し足を伸ばしてここに来ているのは、スーパーには置いていない雑貨や洋服を見て、気分転換をするのが目的だった。

 今日は洋服を見た後に食材を買い、一度店を出たのだが、少しコーヒーでも飲もうと、店内にあるベンチに腰掛けた時、隣に男の子が座って来た。

「ねえ、おばさん。これ何だか分かる?」

 子供が居ないアキコは『おばさん』に抵抗があったが、子供嫌いではないのですぐに答えた。

「さあ、何かしら?」

 男の子が手にしているハガキサイズの厚紙には、何か文字が書いてあった。

「ここの●●のところに入る言葉、何だかわかる?」

 なぞなぞの類だとアキコは思った。男の子は小学二年生ぐらいだろう。

「ねえ、何て書いてあるの?」

文字は読み取れたが、あえて聞いてみた。

「『ナ・ン・ト・カ』は、やめましょう」と、男の子はハキハキした声で読み上げた。実際紙に書いてあったのは『●●●●』だったが、伏字の部分を『ナントカ』と読み替えたのだ。

「だからさ、ここのマルのところに何て言葉が入ると思う?」

「そうねえ、『よ・ふ・か・し』はどう?」

「『よふかし』? 『よふかし』ってなあに?」

 この子は夜更かしと言う言葉を知らなかった。

「あのね、『よふかし』って言うのは、夜に寝ないで遅くまで起きてる事よ」

「なーんだ。それなら大丈夫。ぼく、いつも八時に寝てるもん。だけど答えは不正解」

「じゃあ、後に『やめましょう』って続いてるけど、この答えって何か……」

 その言葉を遮って男の子は言った。

「ママが僕に絶対しちゃダメだって!」

「へえ……。そうなんだ……」

 アキコは少し考えた。たまにはこうやって子供と話すのもいいものだ。しかし、ここに入る四文字とは一体何だろう? 大人が相手なら難しい言葉も考えられるが、子供となるとまるで見当がつかない。

 アキコはそっと、男の子の顔を覗き込んだ。その横顔に何かヒントとなる物を探すかの様に。すると視線に気付いたのか、男の子は急にアキコの方を見て言った。

「おばさんもさっきやってたよ。僕、見てたんだもん」

「私も? ねえ、見てたって何処で」

「隅っこの方でこっそり」

 アキコの思考回路が一気に働き出した。

「この答えって、ひょっとして何か悪い事なの?」

「そう。だってこの前、高校生のお兄ちゃん達がこれをやってて、おまわりさんに叱られてたもん」

 それを聞いて、アキコは自分の顔から血の気が引いていくのを感じた。

「まさか……」

 このショッピングセンターは、自宅から私鉄で二駅ほどの距離にある。ここなら近所の人達は、ほとんどやって来ない。わざわざここを選んでいるのは、他に理由があった。

―答えはきっと『まんびき』―

 買い物の時には必ずマイバッグを持っていった。色んな食材をレジカゴに入れる中、一つか二つをそこに忍ばせる為……。

 今日が初めてではなかった。これでもう三度目だ。『万引き』が犯罪だとは、もちろん分かっている。だが、どうしても自分の衝動を抑える事が出来なかった。

 そのうち誰かに呼び止められる。そんな思いはあった。しかし、その相手が小学生だとは夢にも思わなかった。

「ねえ! ねえったら、おばさん!」

 男の子の声にハッとした。しばらく想いにふけっていたようだ。

「もう時間切れだよ」

「ちょっと待って! 答えを言うのは……」

 アキコは遮ろうとしたが、男の子が答える方が早かった。

「答えはね、『き・つ・え・ん』」

「え? 『きつえん』?」

「そう、知らないの? きつえんってタバコを吸うことだよ」

「そ、それは知ってるけど……」

 タバコは離婚後に吸い始めた。これもきっとストレスだ。先の見えない毎日から、早く抜け出したいという思いは募っていた。

 男の子が用意した答えとアキコが思っていたものは違っていたが、そこに何か答えが見えた気がした。ふと隣を見ると、そこにはもう男の子の姿は無かった。

 アキコは店の外に出て、隅にある喫煙コーナーでタバコに火をつけた。

 初めて吸ったその時よりも、深く煙が目に沁みた。

 

 

 

『あなろぐ』のプロセス公開はこちら↓↓↓

rhirasawanb.hatenablog.com

食品関係の零細企業に勤める主人公の女性社員。製造部での材料不足のため、顧客からの注文の商品が作れない!!

営業担当である彼女は、この危機をどう乗り切るのか?

 

あなろぐ

 

ヤマキ商店です。いつものパック、昨日の二倍で」

 エースフード最大の取引先である『ヤマキ商店』は、こだわりの商品作りで抜群の集客力を持ち、自社製や仕入れ商品全てを完売させる事で有名だった。その為、いつも製造開始の直前に注文が入る。今日はシンプルな注文だったが、駅近の店舗は販売数が倍になる事も珍しくはなかった。

 カナコが勤めるエースフードは、食用の素材をすり潰した『調理用ペースト』を製造・販売している。ヤマキ商店へはペーストをさらに加工した商品をパック詰めで卸していた。

 注文は電話が主で、時間外は留守番電話に録音される。数件はファックスだが、メール注文は受けていなかった。

「『あなろぐ』なんだよねえ、この会社は。どうしてちゃんと担当者を決めて、もっと確実で効率のいい方法をとらないんだろう」

 多い時は二十件近くなる伝言を全て書き起こす。カナコは出来上がった予定表を工場長に手渡し自分の持ち場についた。

 この会社は従業員が十名ほどで、一人が複数作業をこなす。ルールはあるが担当者や基準が曖昧で、それがカナコにとっての大きなストレスだった。

「担当ですか? まあ、やれる人がやってお互い助け合うって形で……」

 先代の息子である二代目社長の対応は、まさに『のれんに腕押し』だった。社長の交代と共に、工場長を除く従業員は全て入れ替わった。

 カナコは他にも色々な不満があった。不愛想で職人気質の工場長に、自己中心的な営業の先輩スズキ、怠慢な後輩のカジワラと、名前を挙げればきりが無い。

 作業開始からしばらくして、カナコは工場長に呼ばれた。

「ベース粉が今日の分、もう切れるぜ」

 ベース粉とは調理用ペーストの主材で、全体量に対し三割必要だった。

「ウソ? それならあと一ケースあるはずよ」

 ベース粉は二ケースあり、右側に使用中、左側に新品を置くルールだが、一つは空で後は二割程度しか残っていなかった。

「どうしてこうなっちゃうのよ!」

「どうする? 粉さえありゃいくらでも作るけどよ」

「私が取りに行くわ! 二時間後に戻れば間に合うわよね!」

「二時間後って十時じゃねえか。それはちょっと……」

「さっき、粉さえあればって言ったじゃない!」

「わかったよ。絶対時間厳守だぞ! でも間に合うのか? 往復だけで二時間ぐらいかかるぜ。粉だって向こうが用意してなきゃ……」

「とにかく出発するわ!」

 社長は助け合いと言うが、他の者などあてに出来ない。結局こんな風にカナコが動く事が多かった。ハンズフリーで製造元のダイワ製粉に電話しながら営業車を発車させた。

「もしもし。エースフードです。あら、主任さん? いつものベース粉、急いで用意して欲しいの」

「急いでって言われても、今日の配達便は終わったんでお届けは明日になりますが」

「取りに行くわ、今すぐ」

「でも、調合の時間があるんで……」

「三十分でお願い。もうそっちに向かってるの」

「わ、わかりました。もう、強引だなあ」

 ダイワ製粉に着くと、主任が荷物を積んだ台車を押してやって来た。

「カナコさん、これですよ」

「え? こんな小さな袋じゃないわよ」

「いいんですよ。今日は小分けして袋を軽くしてくれって、工場長から」

 荷物を積み終えると直ぐに車を発車させた。時間が無い。時計は既に九時を過ぎている。

 そんな時、営業のスズキからメールが来た。よく見ると地図の画像が添付されていて、彼が使っている抜け道だと書いてある。カナコはその地図に従い車を走らせた。

 普段より五分程度早く会社に着いた。ベース粉を台車に乗せ厨房に入ると、工場長がすぐに声をかけてきた。

ヤマキ社長から電話があってな。今朝の注文は電話をかけ間違えたそうだ」

「えっ、ウソでしょ!」

 いつも完璧なヤマキ社長がそんなミスをするなんて……。

 工場の奥には後輩のカジワラが居た。怠慢で雑用は平気で先輩にやらせようとするヤツだ。

「ああ、カナコさん。一応、洗い物全部やっておきました。他のカナコさんの仕事もみんなで手分けして。だって急ぎの用だったんでしょう?」

「へえ、やってくれたんだあ……」

 工場長がカナコに近づき、口を開く。

「なあカナコ。何でもきっちり予定通りってのもいいけど、何かあった時には何て言うの、お前が嫌いな『あなろぐ』だっけ? それもいいんじゃない? あのヤマキ社長も伝言を入れ間違う事だってあるんだし」

「ま、まあそうね」

 結局カナコが抜けた穴は誰かがちゃんと埋めてくれていた。会社には最短時間で戻れるよう手配もされていた。きっちり何かを決めてしまっては、こうはいかなかったかもしれない。

 ヤマキ社長の伝言をもう一度再生してみる。

カナコは思った。『あなろぐ』も、ちょっといいのかもしれないと。

 

 

 

にほんブログ村 小説ブログ ショートショートへ
にほんブログ村

↑↑↑ブログランキングに参加しています。面白かった方は応援お願いします。

 

R・ヒラサワの?Novelist's brain? - にほんブログ村

↑↑↑読者登録はこちらからお願いします。

 


ショートショートランキング

↑↑↑最新のランキングチェックはこちら!