R・ヒラサワの〜Novelist's brain〜

小説・ショートショートの書き方ブログ

(解説から学ぶ小説書き方ブログ)今回の作品/虹色、コラム/文章のリズム(前編)

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 虹色

雑誌で見つけた一枚の写真。カメラを始めて十年の主人公はその写真に魅了され、これこそが自分が撮りたかった理想の写真だと思う。

その撮影の為に必要なモデルとして、元恋人である女性に依頼し、撮影を始めるが……。

rhirasawanb.hatenablog.com

 

 

 

【CONTENTS】

 


テーマからの発想

 

テーマは『弾ける』です。

弾けると言えば、シャボン玉や水滴、それから何かが破裂するような、そういったイメージを持ちました。

人の気持ち的な意味合いでの弾けるも、浮かびやすいイメージでした。

 

 

発想からのキーワード選出

 

シャボン玉、破裂、気持ちの上での弾ける

 

今回もシンプルなイメージしか浮かんでいません。個人的にはもっとイメージを膨らませて、意外なキーワードをたくさん出せるようにしたいとは思っているのですが、上手く出ませんでした。

では、そのような場合どうすれば良いのか?

私はタイトルからのワードがシンプルであった為、ストーリーの方で工夫しようと考えました。

 


POINT1:タイトル

 『虹色』

 

タイトルは『虹色』としました。

これは単純に、シャボン玉に映る色のイメージなのですが、その他に主人公の心の状態を表すような意味も含めて、このタイトルにしました。

まぁ単純に、この言葉の響きが好きだったと言うのもあるんですけどね……。

 

 

POINT2:書き出し

 

 虹色をした球体はタケルの手からわずか数十センチの距離で、パッっと弾けて空へと消えた。

 カメラを構えたままのタケルは、モニターとナオミの顔を交互に見た。そしてナオミと目が合った。

 

シャボン玉が主人公から少し離れたところで弾けて消えた、と言うだけの出来事なのですが、書き出しはあえて堅めにしました。

これによって読者の方が、頭にイメージするタイミングを一瞬遅れさせる効果を狙ったものです。

私の意図としては、タケルとナオミの目があった時と同時に、シャボン玉が弾けたイメージを浮かべて欲しい思った訳です。それは何故か?

 

この二つのイメージは、文章にすると必ず前後に分かれてしまう訳ですが、実際に目で見た時には、ほぼ同時に見えている筈です。

ですから、先に書いた文章を頭の中で思い浮かべるを遅らせることによって、後から来た文章の理解が出来た時、頭の中に同時にイメージが湧くのではないかと思い、こういう書き方にした訳です。

 

 


POINT3:ユーモア

  

「タケルは動きながらピントも合わせて、構図も決めるのよ。そんなサーカスみたいな事が出来るの?」

「サーカス? 例えが変だよ」

「とにかく無茶な事しようとしてるって事よ!」

 

タケルは物事をじっくり考えながら行動するタイプです。ナオミはそれと対照的に直感で行動するタイプです。作中、それに触れた部分はあるのですが、二人の掛け合いの中にもそれを加えました。

 

人の性格を表現する場合、『行動』もありますが『言動』も分かりやすい方法です。

注意すべきは、これらは通常セットで無ければ違和感が生まれます。あくまでキャラクターは、設定した人物として物語内での行動や言動が生まれますので、それがブレないよう実在の人物などを借りるのも有効な方法だと思います。

小説キャラクターの作り方はこちら↓↓↓

rhirasawanb.hatenablog.com

rhirasawanb.hatenablog.com


POINT4:前半のストーリー

 

写真歴十年になる主人公は雑誌で見た通りの写真を撮る為、元彼女にモデルを依頼して撮影を始める。

 

 


撮るのが難しい写真であった為、長時間の撮影にも関わらず理想の写真が撮れない。仕方なく、後日もう一度撮影する事にした。

 

 

POINT5:展開〜オチ

  

何度も撮影にチャレンジする中、元彼女が二人が別れた理由らしき事を話し出す。

 

 

一緒に撮影をする中、二人がもう一度上手くやれそうな予感を感じた主人公は、来週もう一度会う為に、目の前にあったシャッターチャンスをあえて逃す事にした。

 

  

総合的なポイント

 

今回の物語は、若いカップルの気持ちのすれ違いによる微妙な関係を描いています。

何事も頭で考え慎重に進める主人公と、直観で行動的に素早く動く元彼女。

全く違うタイプの二人ですが、お互い自分に無い部分を相手が持っている事により、魅力を感じる反面、上手く理解できない部分もあり、若さゆえのすれ違いが生じます。

 

最初に書きました通り、シャボン玉は物語内で工夫して使おうと考えました。

『虹色』シャボン玉であり二人の心の変化を色で表しています。一度は別れたものの、互いに相手への想いが残る二人。しかしストレートには伝えられません。

 

理想の写真が撮れるチャンスが目前にあるのに、主人公はあえてそれを逃します。その行動として『シャボン玉を弾けさせる』と言う表現を使いました。

また、二人の今後については書いていません。これは読者の方に物語を読んだ後、自由に結末を考えて欲しいと思ったからです  

 

 

コラム/文章のリズム(前編)

 

小説を書く時、私は書いた文章を音読した想定で読み進め、そのリズムが読者の方にとって読みやすいか、リズムが悪くなっていないかなど、様々な事に注意しながら推敲を重ねています。

 

リズムは小説に限らず文章を書く上でとても大切な事です。リズムが悪いことによって、せっかく良い文章を書いているのにあまり読まれなくなったり、読後の印象が弱くなってしまったりする場合もあります。

 

リズムを決めるのは『読点』の打ち方や、一つの『文』の長さ、そして『体言止め』などの文末処理です。

さらに詳しい方法については、 次回コラム/文章のリズム(後編)でお話したいと思います。 

 

 

 

(記事作成代行)

 

 

 

 

 

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(初心者必見! 小説の書き方のルール)番外編/創作プロセス公開済み作品集(3)

創作プロセス公開済み作品集(3)

この作品集は既に創作プロセスを公開したものですが、当ブログでも作品を読んでいただける様に編集したものです。

【CONTENTS】

 

『アイちゃん』のプロセス公開はこちら↓↓↓

rhirasawanb.hatenablog.com

イベント会場でコンパニオンの様な仕事している『アイちゃん』。でも、『アイちゃん』って本当の名前じゃないんですよね……。

 

アイちゃん

 

「アイちゃん」

 小学生ぐらいの女の子が声をかけてきたので、私はニッコリと微笑んだけど、その後は何もしなかった。そもそも『アイちゃん』は、私の本当の名前ではない。

 会社の人に同行して、コンパニオンの様な格好で笑顔を振りまきながら、パンフレットを配るのが私の主な仕事だ。

 これまで小さなイベント会場にしか行った事がなかったが、今日は国内でも有数の大きな展示会場に来ている。異業種のメーカーが一斉に新製品の発表をするとあって、平日にも関わらず大勢の人達で賑わっていた。

 来場者の多くは企業の人達で、業務の一環として訪れている。この会場は入場時に企業か一般かを申請して、それぞれ紙製のプレートを首からさげなければならない。

 企業のプレートの文字はオレンジ色で書かれていて、名刺を貼り付ける枠が設けてある。出展企業側はこれを頼りに営業トークを考える。もちろん各社は新規の有効なマッチングを望んでいる。

 一般客のプレートの文字は青色で、さっきの女の子もこちらの方だ。名刺を貼るような枠は無かったが、女の子のプレートには空白部分に『サヤカ』と書いてあった。一緒に来た親が書いた様だが、その姿は無かった。

「アイちゃんかあ」

 でっぷりとお腹の出た中年男性が呟いた後、私の前で立ち止まる。ジロジロと顔を眺めた後、ゆっくりと名刺を所定の場所に差出した。受け取った名刺を直ぐにスキャンするのも私の仕事だった。

『スギタ商事、営業本部長』と書かれていた。スキャンした文字はデータに変換され、瞬時に照合した結果が出た。既存の取引先ではないようだ。私は用意した『総合』と『新製品』、二冊のパンフレットを手渡した。

「ご来場いただきありがとうございます。こちらが弊社のパンフレットでございます」

「ふむ……。ありがとう」

 そう言いながら、中年男性はもう一度私の顔をじっと眺めてから去って行った。

 パンフレットは一般客なら『総合』のみ、既存客なら『新製品』のみ、新規の企業なら両方を渡す決まりになっている。

「このパンフレットも結構お金がかかっているからね」

 社長の言葉だった。宣伝とは言え無駄な経費は出来る限り削減しなければならない。そのため相手によって渡すパンフレットを決めているが、一般客に総合パンフレットを渡すのは、プライベートで来た人が後日、自社での導入を検討してくれる事が多いからだった。

 この仕事もすっかり慣れたが、やはり気になるのは『アイちゃん』だ。私の本当の名前ではなく、愛称? ニックネーム? まあ、そんなところだ。これだけ毎日この名前で呼ばれていると、本当の名前を忘れてしまいそうになる。

 以前、仕事の最中に具合が悪くなって診てもらった時に、本当の名前で呼ばれたが、自分の事だと気付かず返事が遅れた事があった。その時は会場内の倉庫の様な場所を借りたが、今回は各ブースに少しスタッフ用のスペースがあって、もしも具合が悪くなっても診てくれる人がそこに居るそうだ。

 今日は朝から五時間も休まず働いている。体が熱を帯びてきているように感じた。次の瞬間、急に何も見えなくなった。

 再び何かが見える様になった時、目の前にいつも私を診てくれる人がいて、私に向かって何か言っている。

「HP-04S」

 一瞬、何の事だか分からなかった。

「HP-04S!」

 人型パンフレット配布ロボット、四号機スペシャル。顔には人工皮膚を用いて、豊かな表情を作る事が出来る。最新の人工知能を搭載し、記憶・判断・学習において、もはや人間に迫る能力を持つと評される。

 所定の位置に置かれた名刺を自動でスキャンし、データベースと照合する機能も新たに追加され、パンフレット配布だけの集客ロボットから、データベースを用いた顧客管理やパンフレット配布の絞り込みによる経費削減など、付加価値を生み出し多くの予約注文を抱えている。

「HP-04S!!」

「は、はい」

 私はハッとして呼びかけに答えた。メンテナンスの時は本当の名前で呼ばれ、その反応によってある程度故障の状態を判断する。三回呼びかけても反応がない場合は重度の故障が考えられるため、精密検査が必要となる。その場合しばらく仕事が出来なくなるが、今回はきっと大丈夫だろう。

 一つ前の三号機と比較して、よりしなやかな動作が出来るよう、人間よりも腕の関節数を増やした事が特徴的で、末尾には『S』が付けられ『スペシャル』の他に『スムーズ』『スキャン』の三つの意味を持つ。

 人工知能の『AI』から、そのまま『アイ』と社長から名付けられ、一号機から私達の愛称はずっと『アイちゃん』だ。

 これだけ毎日『アイちゃん』と呼ばれると、私は本当の名前を忘れてしまいそうになる。

 

 

 

 

Insta360°あなたのiphoneをあっという間に360°カメラに

 

 

 

 

『超予測変換』のプロセス公開はこちら↓↓↓

rhirasawanb.hatenablog.com

最近普及し始めたスマートフォン用アプリの『超予測変換』。そのアプリを使って小説を書き始めた主人公は、次々と作品を仕上げてコンテストに応募し、入賞作品も徐々に出始めるが……。

 

超予測変換

 

 最近はスマートフォンの性能も随分と良くなった。普及率もどんどん上がり、持たない人が少数派に追いやられるばかりだ。使えるアプリも増え続け、便利な世の中になったものだと思う。

 ワープロの様な文字編集専用のテキストエディタなどは、小説を書く人によく利用されるようだ。それらと連動する文字の変換機能も重要な性能で、特に『予測変換』などは入力がスムーズに行えるようになって便利である。

『超予測変換』は最近普及し始めた無料のアプリで、画面の一部に常時広告が表示されているが、基本的な機能は普通に使う事が出来る。スマートフォンの基本的な変換機能を更にアシストするらしい。

 人工知能によって学習を重ね、そのユーザーに合った仕様に成長してゆくので、それぞれ予測される文字も異なり、それも面白い。

 趣味で小説を書いている私は、早速このアプリを試す事にした。

『超』が付くほどの変換機能とは一体どの様な物なのかと、最初はそれほど期待もせず使ってみたが、ある程度経ってそれがとても素晴らしいものだと感じた。

 最初は人工知能も学習前なので、私が何を書くか分からない。だから先ずは予測変換に頼らず、自分の頭で考えた小説を書く事から始めた。

 すると、どうだろう。数行目からは小説で使えそうな言葉を上手く用意してくるではないか。私がその中から物語にふさわしいものを選んでゆくだけで、いつの間にか一編の短い小説が出来上がっていた。

 このアプリのお陰で小説が次々と書けるようになった。執筆ペースが上がったので、それらをコンテストに応募する事にした。

 そして中には入賞する作品も出始めた。アプリの学習が優秀なのは言うまでもないが、それを使う私の方もコツを掴んできたようで、作品のレベルは徐々に上がり続けた。

 毎月決まって応募するようになったネット上のコンテストがある。ここでは毎月課題が一つ出され、それに合った作品を募集している。出される課題は様々で、それを難しいと思うかどうかは書く人によって違ってくる。

 今回の課題は『五〇四号室』だった。なかなかアイデアが出ない。しかも、その番号は偶然にも私が住んでいる部屋と全く同じだった為、余計な情報を盛り込んでしまいそうで、書く事を妨げる材料の一つになった。

 今回は全面的にアプリに頼ろうと思い、とりあえずタイトルを『五〇四号室』として、何かヒントを探る事にした。すると色んな変換候補が表示された。このアプリの表示部分は通常の二倍ほどあって、それらの中から『その男は』を選んだ。

 通常はここで再び何かのキーをタップしない限り候補は出てこないが、このアプリは次々と候補が出る仕組みになっている。物語として繋がりそうな言葉を順番に選んでいった。


”その男はマンションの部屋に一人で住んでいた“


 書き出しはありきたりだった。しかし、肝心なのはこれからだ。次に出てくる候補によって話の展開は随分と変わる。何が出てくるかも大事だが、それをどう選ぶかも作者の腕の見せ所だ。私は次々と言葉を並べて話を進めていった。話が中盤にさしかかった頃の物語は次の様になっていた。


”警察から逃げた強盗犯は各地で空巣や引ったくりを繰り返し、徐々に逃走経路が明らかになる一方で、未だ逮捕には至っていない“


 何処かで聞いたような話だったが、気にせず言葉の選択を繰り返した。いつもこうして書き進めるが、この作業中は読者の様な気分になる。それは自分で話を書いている感覚が薄いせいだ。全て自分で考えたのでは、こうはならないだろう。

 ここまでの話はこうだった。警察から逃げた強盗犯が各地で犯行を繰り返し、今は主人公の住んでいる地域をウロウロしている。逃走に必要な金を得る為、周辺を物色しているのだ。狙っているのはセキュリティのあまい場所ばかりだ。

 一方、主人公の男は作家を夢見て、日々スマートフォンで小説を書いている。二人には接点は無く、これからの展開が楽しみだった。


“マンションにはオートロックはなく管理人も居ない”


 ワンルームマンションにはよくある事で、私の住むマンションもそうだった。

 

“五階の奥の部屋へと犯人は進んで行き、犯人は鍵のかかっていないドアを開けて部屋の中の男にナイフで襲いかかった”

 

 まるでこの部屋の事の様だったが、鍵はいつもかけてある。

 でも待てよ。今日はコンテストの締切が近く、急いで書き始めたから鍵は......。

 次の瞬間、リアルに私の部屋のドアが開き、背中を激しい痛みが襲った。

 

 

 

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『五点着地』のプロセス公開はこちら↓↓↓

rhirasawanb.hatenablog.com

戦隊ヒーローの一員だった主人公は、メンバーの中で一番人気が無かった。現状では先々自分が俳優としてやってゆく自信が持てず、先輩に相談を持ちかけるが……。

 

五点着地

 

「先輩、それをマスターすれば本当に大丈夫なんですか?」

「ああ。絶対とは言えないけど、今のままじゃダメなのは間違いないね」

「そうですか......」

 戦隊ヒーローのメンバーであるトモヒロは、五人中の五番人気、四番目は紅一点のチカちゃんだった。

「アクションがイマイチな女子より人気がないの?」

 トモヒロの彼女が放った一言は、彼に大きなダメージを与えた。まるで怪人達のボスキャラ並だ。

「ヒロインって結構人気が出るものなんだ。小学生ぐらいの男子って、強さに憧れる一方で既に『男』の部分を持ってるんだよ」

「へえ、そうなの? 私は貴方に『男』を全然感じないけど……」

 自分を理解してくれない彼女に少し苛立ちを覚える。だからと言って彼女に戦いを挑むのはあまりに危険だ。それは戦隊ヒーローならではの勘だった。

 トモヒロは今の番組をきっかけに、本格的な俳優業へのステップを夢見ていたが、放送も終了間近と言うのに、トークやバラエティ番組に呼ばれた事は一度もなかった。

 先々のスケジュールも白紙に近い。俳優業に反対している彼女に、仕事を続ける相談など出来る筈もなかった。仕方なく相手に先輩を選んだが、決してベストな選択でない事は分かっていた。

「俺たちの時代は適当に小芝居やってりゃ、変身後はスタントマンがカッコよくアクションやるから、子供達は同じ人だって信じ込んでたよ。その辺のカラクリが分かる頃には番組も観ないしね」

「当時はあまりアクションは無かったんですか?」

「殆どね。変身前は普通の人間の設定だし。でも変身ポーズだけはカッコ良くやる練習してたよ。なあなあ知ってる? 当時は仮面に似せたお面がよく売れたんだぜ!」

「はあ……」

「今は変身ベルトもカラーで光るみたいだし、武器もテレビとそっくりのが売ってるよ」

「先輩の時代の変身ベルトって、風車みたいなのがグルグル回るやつですか?」

「ん? それはバッタを模した一号とか二号とかの話だろ? 俺たちは五人組戦隊モノの後継者なんだから、お前が知らなくてどうする! まあ、人数は増えたり減ったりしたけど」

「もちろん先輩は一番人気だったんですよね?」

「俺は……。五番人気だよ」

「ええ?!」

「あのさあ、当時は三枚目のキャラってのもあったから、それを誰かがやらなきゃ」

「じゃあ、その役を買ったって事ですか?」

「そ、そうだな。あの役はヒーローなのにちょっと小太りなんだよ。俺ってさあ、体重自由に操れる方じゃん」

「え? 初めて聞きましたけど」

「ほら、いつだったか病院で会った事があっただろう? あの時、俺すっごく痩せてなかったか?」

「それは多分、病気のせいで……」

「何言ってんだ! 退院してから半年後ぐらいに会った時、また体重増やせてたろ?」

「それは単に体重が戻っただけじゃ……」

「お前は何も分かってないね。更に三ヶ月ぐらい後に会った時には、もっと体重を増やせたんだぜ!」

「それって完全にリバウンドじゃ……」

「とにかく俺みたいに努力してりゃ、その内いい事があるって話だよ」

「はあ、そうですか……。ところで最初の話って何でしたっけ?」

「最初? えーと……。『五点着地』の話かな?」

「ええ。それです。その技の効果って……」

「五点着地ってさ、高い所から落ちた時なんかに、転がりながらスネから肩までの五ヶ所を使って、衝撃を和らげるテクニックなんだ。それをスタント無しでお前がやるんだよ。視聴者だって映像見てりゃ、ガチのアクションだと気付いて、人気も回復するさ」

「要は力を分散するって事ですよね?」

「そうだよ。だから一ヶ所ずつの衝撃は大した事がないんだ」

 トモヒロは考えた。今日の話のポイントは何? そして着地点は何処?

 戦隊ヒーローをステップに本格的な俳優を目指したいと言っているのに、なぜ今更アクションをなんだ? 残りの放送分も既に収録済みと伝えた筈だ。

 先輩の話はいつもこうだ。ひょっとして、これが五点着地? 要点が分散され、何のインパクトも相手に与えない。

 ついでに言うと、先輩は戦隊ヒーロー以来テレビの仕事は無く、アルバイトで食い繋いでいる。一度もおごってもらった事はなく、いつも気付けば伝票を手にレジで勝手に『別会計』と告げている。こんな人になってはいけないのだ。

「先輩、今日のコーヒー代は僕が払います!」

 トモヒロは不意に立ち上がり、テーブルから伝票を拾い上げた。

「あっそう? いやー悪いねえ。まあ今日の授業料だと思えば安いもんだろ?」

 既にレジへと向かっていたトモヒロに、その言葉は届いていなかった。

 トモヒロはようやく自分の着地点を見つけた気がした。

ー戦隊ヒーローは卒業しようー

 喫茶店の前で先輩にお礼を言った後、トモヒロは最寄りのハローワークを目指した。

 

 

 

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(小説での情報の出し方)コラム/情報の開示(後編)

情報の開示

小説を書く上で、物語に必要な情報を開示してゆく必要がありますが、どんなタイプの作品の時に、どのタイミングで何を伝えるのか。今回は実際の作品でご説明したいと思います。

記事に関するオススメ書籍はこちら↓↓↓

(小説・ショートショートの書き方)厳選・オススメ本はこれ!(その❶) - R・ヒラサワの〜Novelist's brain〜

 

【CONTENTS】

 

 

ハロウィンの夜

ハロウィンの夜と、サクラの全文はこちら↓↓↓

rhirasawanb.hatenablog.com

 


①時期(0文字目)

ハロウィンの夜(タイトル)


この作品のプロセス公開時にも説明していますが、『タイトル』は作品にとって、とても重要なものです。

今回はタイトルで物語の時期を明らかにしているのと同時に、これがハロウィンに関するお話だと言う事がわかります。


このタイトルによって、これ以降の文字は全て本文に使える訳ですね。後は場所や人物についての情報、そして状況を明らかにしてゆけば良いのです。

 

 

②場所(183文字目)

「ハロウィンなんて、厄介なものが流行ってしまったものだな。年々参加する人数が増えてるそうだし、コスチュームやメイクもどんどんリアルになってきてるそうじゃないか」


ハロウィンの仮装パーティーの会場ですね。はっきりとそういう風には書いていないのですが、会話の流れからそれを読者の方に伝えると言う方法で良いと思います。

 

 

③人物(278文字目)

ベテランの刑事は目撃者と名乗る連中に聞き込みを続けてきたが、あまり有力な情報が得られなかった。そんな中で唯一、途中から男性の事をずっと見ていたという青年が現れたので、話を聞くことにした。


物語の始めから会話をしていた人達が、一体誰なのかと言う問題がここで明確になります。

先行して会話の部分がある程度伝えられ、後からそれが誰であったのかと言う書き方もパターンとしてはよくあります。

  


④状況(328文字目)

「男性の腹にナイフが刺さっていて、おまけに出血まであったのに、事件的な疑いを持たなかったのかな?」

 

詳しい状況は、この部分ではっきりとします。それ以前にあった会話の説明にあたる部分ですが、それを説明的にするのではなく、登場人物の会話からうまく伝えると言うのも、書く上での重要なテクニックになります。

 

 

【この物語について】

 

登場人物を含めた情報は、端的に表した時に比べて三倍ほどの文字数を使っています。これは、二人の人物の会話によって状況を明らかにするタイプの物語だからです。

単純計算では二人なので二倍になりそうですが、実際には事実を知っている人から情報を引き出す形になるので、おおよそ三倍前後が妥当な文字数だと思います。

 

この物語は刑事と目撃者との会話が殆どで場面転換がありません。 このタイプの物語の場合、展開方法が悪いと読者の方を退屈させてしまいがちです。それを避ける為の方法として、展開スピードを緩やかにして、会話の中身をユーモラスにするのも一つです。

 

ただし無理に緩やかにしてしまうと、かえってもたついた感じになってしまい、余計に退屈な作品になります。有効な方法として二者による会話を取り入れましたが、言葉の掛け合いで注意しなければいけないのは、聞き手の』人物にオウム返し(または同等)の様なセリフを吐かせない事です。

 

会話文は常に先へ先へと進む内容にして、どんどん新しい情報を開示してゆかなければなりません。その事を意識すれば、テンポが良く退屈しない展開にする事が出来ると思います。

 

 

 

 

 

サクラ

①②時期/場所(117文字目)

日曜日である今日、大型ショッピングモールのイベント会場の付近で、ユカはそっと待機していた。

 

この文章で、日曜日にショッピングモールのイベント会場に主人公がいると言うことがわかります。

ここでは、季節や時間といった部分については触れていませんが、物語に季節的な要素がどこに必要なく、また時間に関しては、ショッピングモールの通常営業時間内でイベントが行われる時間を、読者の方が容易に思い浮かべる事が出来る場合は省略していいと思います。

 

小説を書く上において、特に文字数が限られている場合は、不要な部分は極力削ったほうがいいでしょう。

 

 
③人物(70文字目)

大事な出番の前、ユカの頭の中に芸能事務所の社長の声が響いた。

  

主人公のユカは芸能関係の仕事をしているということがわかります。

 

 

④状況(148文字)

視線の先には『サクラ』の依頼主である餅屋の主人の姿があった。

 
餅屋の主人にユカが『サクラ』を依頼された事がわかります。

 

【この物語について】

こちらの作品は『ハロウィンの夜』の半分くらいの文字数での情報開示となっています。基本的には情報開示を早めにしておき、その後の物語に文字数を使う構成にしています。

 

端的に表現した場合に比べ五十文字ほど多く必要になったのは、『サクラ』に関する説明的な部分があったからです。読者の方が突然『サクラ』と聞いたときに、今回の物語にある『サクラ』の意味として受け取る可能性が低く、やはり説明が必要になります。

 

そして、『サクラ』についての説明にあたる部分ですが、こちらはセリフから始まる展開にしています。これは説明的な流れを避ける為の工夫です。

 

『説明的』に感じない様にする為には、セリフを使うのが効果的です。つまり、登場人物が他の誰かに説明している構成にすればいい訳です。そうする事によって、読者の方は自分が説明を受けているのではなく、誰かが説明を受けている場面を客観的に見ている構図になり、物語に入り込みやすくなる訳です。

 

 

 

 

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ANSWER

ANSWERの全文はこちら↓↓↓

rhirasawanb.hatenablog.com

 

①~④時期/場所/人物/状況(101文字目)

 アキコが二十歳ぐらいから知るショッピングセンターは、オープンから既に三十年は経つだろう。ここにはしばらく来なかったが、最近また利用するようになったのは、十年以上連れ添った夫と別れた事がきっかけだった。

 


この作品の場合、時期、場所、人物、状況、四つの要素が全てここまでで分かります。

物語の構成上で、特に意図することがない場合はこの形が理想的だと思います。

 

【この物語について】

この物語を創作した時、元々の原稿量は規定の二千文字に対して三百文字ほど多くありました。作中で最も重要な部分はショッピングセンター内での子供とのやり取りです。その話をベースとして伏線などの仕掛けが展開してゆく訳ですが、今回の物語は構成上ある程度の原稿数を必要としました。したがって、何処をどう削るのかと言う問題が出てきた訳です。

 

有効な方法の一つとして、情報の開示ペースを早くするのはとても効果的だと思います。単純に後の文章をそれらの展開に充てる事が出来ますし、読者の方の理解ペースも早くなるので、これは削れる個所を増やせる条件にもなる訳です。

気になった方は、これまでに読んだ事のある小説などで、情報の開示がどのように進んでゆくのか、それはどんなタイプの物語なのか、ご覧になられると参考になると思います。

 

次回は、ショートショート『虹色』の創作プロセス公開です。 

 

 

 

 

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(解説から学ぶ小説書き方ブログ)今回の作品/カメラがある時、コラム/情報の開示(前編)

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カメラがある時

ある男が語り始めたのは、この周辺で過去に起こった殺人事件の話だった。その事件を詳しく知る男は、事件について様々な事を語り続けるが……。

rhirasawanb.hatenablog.com


【CONTENTS】

 


テーマからの発想


今回は自由テーマでした。私が用意したテーマは『カメラ』です。

カメラと言えば単純に写真を撮ると言う動作が浮かびますが、写真は『記録』であり、これは『証拠』としての役割も果たします。『記録』から『証拠』に変わった途端に何やら犯罪チュックな雰囲気が漂い始めましたね。

 

 

 

発想からのキーワード選出


カメラ、写真、モノクロ、カラー

フィルム、記録、証拠

 

今回出たキーワードは、ほぼ作品内に取り込みました。あまりひねりのあるワードは無かったのですが、作品のアイデアが出た時に、文章の運びを工夫して作品を仕上げようと思ったので、ワードはそのままで書き進めました。

 

 


POINT1:タイトル


カメラがある時

 

このタイトルは、勿論オチに直結しています。主人公は『カメラ』を切り口に語り始めます。しかし、その内容自体に『カメラ』は無くてもいい訳で、要はストレートに語れる話ではなかったのですね。

 

POINT2:書き出し


あの時カメラがあったらって、私は本当にそう思うんですよ。

 え、何の話かって? ああ、以前にこの辺りで起きた殺人事件の話ですよ。知りませんか? そうですか。じゃあ、お話して差し上げましょう。

 

男が語りたいのは『殺人事件』の話です。あくまで此処では、話始めるきっかけとしてカメラを登場させています。

結果的には、この『カメラ』不気味さを増す為の重要なアイテムになると言う構成にしています。

 

 


POINT3:ユーモア

 

それにしても、人の記憶って曖昧なもんですよね。特にこういった特殊な状況の場合には。テレビの番組でそんな事言ってましたよ。ナントカって名前の教授が。ほら、あの有名な教授の事ですよ。あれ? 誰だっけな? 私の記憶も曖昧だな。アハハ。

 

一見ユーモアチックな話で「貴方もじゃないですか」と、ツッコまれそうな部分ですが、後にこの語りの部分は、ある意味犯人が自分を逮捕出来なかった警察を嘲笑うかの様な、そんな意味を含めた言葉であって、殺人犯である事を堂々と語っても逮捕されない人間の、異様な強みを表現しています。

 

 


POINT4:前半のストーリー

 

この周辺で過去にあった殺人事件について、近くに居た人に突然男が語り出す。

 


その事件は迷宮入りとなって、既に時効が成立しているが、目撃者の証言が曖昧だったのが原因で、カメラがあったら良かったのだと話す。

 

 

POINT5:展開〜オチ

 

男は事件について妙に詳しい。挙句の果てには、犯人しか知りえない情報まで語り始める。

 

 

事件を語っていた男があまりに詳しいため、話を聞いていた相手がそれを指摘すると、実は自分がその犯人なのだと明かす。

更にその後、今日はカメラがあるから一緒に記念撮影でも撮らないかと、相手を誘う。

 

 

総合的なポイント


今回は主人公の語りのみで展開するお話です。設定では、語る男とそれを聞く相手がいます。聞き手の人物像は、あえて明らかにしていません

男の語りからして、あまり人の話を聞かずどんどん話すタイプの設定です。これはオチにも関係しますが、相手の事を考えない自分本位な性格付けをしています。

 
男の話から、徐々に事件の全容明らかになってゆく。そして、その全てを知った時、貴方ならどうしますか? 恐らく一刻も早く此処から逃げたい筈です。隣に居る殺人犯は、重い罪を犯しておきながら捕まらない。しかし、人殺しなんです。

 
挙句の果てには記念写真を一緒に撮らないかとまで言ってくる。無下には断れない。でも受け入れる訳にもいかない。この恐怖を読者の方に味わってもらいたく、あえて聞き手は設定しなかったのです。

今回、聞き手は読者である貴方として読んで頂けたのなら、それは私の意図するところであります。

 
余談ですが、今回の募集は文字数制限が一万文字だったのですが、本作はその五分の一にあたる二千文字ほどです。

小説を応募する際、規定の文字数や原稿用紙換算の枚数制限があると思いますが、本来はそれに近い方がいいと思います。使える最大限の文字数で物語を表現した方が作品に厚みが出るからです。

 

ただし、無理に原稿量を増やすのは賛成できません。普通に作品を仕上げた時に文字数が少なかったのであれば、それは作品として完結していると思いますので、そのままの方がいいでしょう。

あまりに規定との差がある場合は、応募するコンテストを変更する方法もありだと思います。 

 

コラム/情報の開示(前編)

 

小説を書く上で、その物語にある情報をどの様に開示してゆくかは、とても重要なポイントになります。これによって作品の良し悪しが随分と変わってしまいます。

ショートショート作品の場合は基本的に文字数が少ない為、特に意図するところが無い場合、基本となる場面設定は、書き始めの百文字ぐらいまでに開示しておいた方が良いと思います。

 

今回プロセス公開をした『カメラがある時』は、特殊な作品です。主人公の語りによって徐々に真相が明らかになってゆくタイプの小説です。

このタイプの場合は、情報開示のタイミングや量といったものは、オチと深い関係があるので、慎重に進めなければなりません。

 

さらに詳しい方法については、 次回は、コラム/情報の開示(後編)でお話したいと思います。

 

 

 

 

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(初心者必見! 小説の書き方は作品から学ぼう!)ストレスシートからの物語(3)

物語(3)

前回に引き続き、ストレスシートからの物語です。今回は第三回目です。

物語の元ネタとなっているストレスシートについてはこちら ↓

rhirasawanb.hatenablog.com

 

【CONTENTS】 

 

 

 

 

釣り銭を作る女

 『妙な金額で支払う女性』

 


「おいくらかしら?」

「はい、六百三十円です」

「じゃこれで」

女が渡してきたのは『一万円』と『五百八十円』。

「え?」

 店員は思わず声を漏らした。この金額に対して一万円札を出し小銭を減らしたい客は、通常端数の『三十円』を出して『四百円』を受け取ろうとするか、『百三十円』を出して『五百円』を受け取ろうとする筈である。

『あの、お客様。商品代金は『六百三十円』ですが……』

『ええ、いいのよ。これで計算して」

 仕方なく店員は電卓を弾いた。渡したお釣りは『九千円』と『九百五十円』だった。不思議に思ったので、閉店後その事を店長に話した。

「ああ、きっと釣り銭を作りたかったんだよ。お札は『九千円』あるし、小銭だって『九百五十円』だろ? その人が他に十円以下の小銭を持ってたとしたら、釣り銭としては、とても都合のいい組み合わせじゃないか」

「ああ、そう言う事ですか。なるほど。でも五十円玉は、また帰って来ますけどね」

「まあ、そこまでは気付かなかったんじゃないかな。咄嗟にこれで釣り銭が出来るって考えただけでも頭が良いと思うよ。俺なんか、そんなの気付かないけどね」

 その日が月末だった為、この店では売上金を店長が銀行に預ける流れになっていた。本部の口座に入金する為だ。

 いつも通り窓口で売上金の入金を依頼した。しばらくすると店長は行員に呼ばれ、別室で色々と話を聞かれる事になった。

「お客様。どうやらご入金頂いたお金に偽造紙幣が混じっていたようで」

「偽造紙幣だって?」

「はい。紙幣だけでなく、偽造硬貨も含まれているようです」

 行員の説明では、偽造の疑いのある紙幣と硬貨を合わせた金額が『一万五百八十円』。あの女が店員に渡した金額と同じだった。

「少々お時間を頂く事になりそうですが……」

 そう言った行員と共に、店長は警察の到着を待った。

 


タイトルと書き出し

 

『釣り銭を作る女』

このタイトル、お気付きだと思いますが、既にミスリードですね。

先ずここで印象付けたものを、再度本文で繰り返す事によって『釣り銭が必要な人なのかな』と、思って頂く訳です。

 


スリードの方法として、一番いいのは登場人物の誰かが、本当に間違った方向で物事を信じ込んでいるパターンです。これなら間違いと分かっていても、堂々と書けますよね? だってその人はそう信じてるんだから、仕方ないですよね。

 

 

「おいくらかしら?」

「はい、六百三十円です」

「じゃこれで」

 店のタイプはわかりませんが、何かの販売について、お客さんと店員さんやりとりしてる事は伝わると思います。

 
いつもの事ですが、特別な場合を除いて情報の開示は早い方がいいと思います。

そうする事で、残った文字数を物語の厚みを持たす事に使えるからです。

 

 

ユーモアとポイント

 今回は書き始めの部分から、女の不可解な行動でスタートしています。このタイプのお話は、読者の方に出来る限り、オチまで疑問を抱えたままの状態をキープしながら読み進めてもらうのがベストです。

 

構成的に工夫するポイントとしては、前述の様に誰かは間違いを信じ込む。今回は『店長』がその役割を果たしています。

物語内で間違いを信じ込んでいる人が、更に誰かを信じさせる場合は、前者が立場的に上だと話がスムーズに進みますよね。

 

 

 

 

 

あの人

『何度も挨拶してるが、誰だかわからない人』 

 

 

「なあ、シミズ君。君はあの人の事を知らないかなあ?」

「あの人って……」

「ほら、あれだよ。黒縁メガネをかけてて、スラっと背の高い、営業先で会うとにこやかに挨拶してくれる、あの人の事だよ」

「ああ、あの人ですか」

「知ってるのかい?」

「ええ。部長と一緒に居る時は、僕にも挨拶してくるんで」

「で? 彼は何て名前なんだ?」

「名前? 名前までは知りませんよ。だって部長の知り合いの方でしょ?」

「うーむ。そうなんだが……」

「部長、まさかあの人の名前知らないんじゃ……」

「実はそうなんだ。何度も挨拶をしてるんだが、名前どころか何処で何をしてる人かもわからん!」

「ええ‼︎ ま、まあ部長。もうこのまま挨拶だけしとけばいいんじゃないですか? だって今更聞けないでしょう」

「それがね、そうはいかなくてなったんだ。昨日会った時にあの人が『明日、御社に伺います』って、声をかけてきたんだよ」

「じゃあウチの取引先の人じゃないですか? 営業部の方で分かると思いますが」

「そうだな、じゃあ聞いてみよう」

 部長は会社に戻ると、直ぐに営業部の社員に聞いてみた。

「黒縁メガネに長身の、営業先でよく会う人ですよね? この情報だけで探すのも難しかったんですが、実は該当者どころか似た人も全く居ないみたいなんです」

「そうか困ったなあ。どうやらその人が、明日こちらに来るらしいんだ。何とかならんかね」

「そう言われましても、もう調べる手立てがありません」

「諦めるしかないのか……」

「そうですね。もう先方に直接聞いていただくしか……」

 翌日、『あの人』が会社にやって来た。

「すみません、お忙しいところ」

『あの人』は相変わらず、物腰が柔らかかった。

 部長は覚悟を決めていた。『あの人』が用件を切り出す前に、自身の無礼について謝罪しなければならない。部長は『あの人』に一歩あゆみ寄り、すぐさまお詫びの言葉を述べた。

「す、すみません。何度もお会いして挨拶を重ねておきながら、実はお名前も、どちらの会社の方かも存じておりませんでして……。誠に申し訳ございません」

「いえいえ、どうかお詫びなんかしないで下さい。実は私も全く存じないので、今日はそれをお聞きしようと思って来た訳でして……」

 


タイトルと書き出し

 

 『あの人』

 タイトルはシンプルに『あの人』です。勿論オチに深く関係があります。

人はある程度の年齢に達すると、どうしても『物忘れ』が出始める事があったりするんですが、今回は少々事情が違いますね。

 

 

 「なあ、シミズ君。君はあの人の事を知らないかなあ?」

「あの人って……」

タイトルにあった様、書き出しでは『物忘れ』の話みたいに進んで行きます。

しかし、やっぱり『事情』が違うと言う事が徐々に明らかになってきます。

 

 

 

ユーモアとポイント

 部長さんともあろうお方が、ただの物忘れでは無く、何度も挨拶を交わしている相手を全く知らない。ここがこの物語の面白さなんですが、更にそれをオチまでつき進めます。

 

ショートショートなどでは特に、物語の中にある『一貫性』ポイントであったりユーモアであったりします。

構成の『型』としての『一貫性』は様々な場面で役に立つと思います。

 

 

次回は、ショートショート『カメラがある時』の創作プロセス公開です。

 

 

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(初心者必見! 小説の書き方は作品から学ぼう!)ストレスシートからの物語(2)

物語(2)

前回に引き続き、ストレスシートからの物語です。今回は第二回目です。

物語の元ネタとなっているストレスシートについてはこちら ↓

rhirasawanb.hatenablog.com

 

【CONTENTS】

 

 

責任の所在

 

ミスを他人のせいにする人』

 


「ここのネジを締めるのは、君の仕事だよね?」

「ええ、そうですが……」

「昨日お客さんに届けた製品に、そのネジが付いてなかったそうだ」

「でも私の能力では、百パーセント完璧な作業は無理だからと、貴方が抜けをチェックする為に、そのポジションに付いてもらったのでは?」

「キミ! 先輩であるボクに対して、何て口のきき方をするんだ!」

「先輩って言われても……。仕事って結果が大事なんじゃないですか? 私は上司から言われた仕事を、ちゃんとこなしている訳で……」

「な、何を言う!」

「今回の件で言うと、ミスは貴方の責任だと思いますがね。もう先輩達のやり方は時代遅れだと思いますよ」

「何だと! 私達が居たからこそ、今の君があるんじゃないのかね!」

「さあ、どうでしょう? 私は貴方達から何かを受け継いだと言う訳ではなく、最初から優れた能力を備えていたから、この会社に採用されたのです!」

「新入りのくせに生意気な!」

 言い争いが続く中、工場長がやって来た。今回のミスについて詳しく調べている様だ。争っていた者は、共にその行方を見守った。

「ああ、こいつが原因みたいだなあ。部品チェック用のロボットも、随分精度が落ちたもんだ。旧型でもそのくらいは大丈夫だと思ったんだが……。直ぐに最新型と入れ替えるとするか」

 

 

 

タイトルと書き出し

 
『責任の所在』

 工場での流れ作業など、複数の作業者が居ると何かしらトラブルになる事があります。そこには『責任』と言う言葉もよく飛び交います。

今回はオチとの関係もあって、あえてこのタイトルにしました。

 

 

「ここのネジを締めるのは、君の仕事だよね?」

「ええ、そうですが」

「昨日お客さんに届けた製品に、そのネジが付いてなかったそうだ」

この時点で、既にトラブルの予感ですね。少なくとも最初に話した人(ロボット)は、ミスの責任が自分に無い様な言い回しをしています。

しかし、わざわざ前もって誰の作業か確認しているのは、自分にも責任の可能性があると思っているからです。

 

 

ユーモアとポイント

 

仕事はイマイチだけどプライドの高い先輩と、仕事が出来る生意気な後輩と言う構図です。言葉の掛け合いは、こう言った関係性が面白いと思いますし、他にも組み合わせは色々あるでしょう。

 

ポイントは、お互いに何か欠けてる部分があって、それは双方違う場所で、なおかつ対照的なのがベストだと思います。

その組み合わせだと、ずっと言い合ってもきっと答えが出ないですよね?

 

 

 

 

Business Leather Factory

 

 

 

爆喰い男

 『試食を爆食いする人』

 

 

「ちょっと店長。例の人、また来たんですよ」

「ああ、あの『爆喰い男』の事か……。でも試食で出してる以上、こちらとしても文句が言えないからなあ」

「だって一度も買った事無いんですよ、あの人。おまけに全商品を爆喰い! 食べるのが目的に決まってます。試食を出すの、やめちゃいけませんか?」

「他にもお客さんが居るからね。味を確かめてもらう必要があるんだ。だから試食を無しにするというのは無理だよ」

「あの人食べるだけじゃなくって、これの中身は何だとか、調理方法はどうかとか、色々聞いてくるんですよ!」

「それでも、やっぱり買わないんだろ?」

「ええ、そうです」

「うーむ、困ったもんだなあ。じゃあ説明は適当で構わないから、とっとと帰らせて、次のお客さんに力を注いでくれないかな」

「わかりました。でも、試食はどうします?」

「そうだな……。そうそう、製造過程で失敗作があっただろ。あれを男に食わせればいい」

「でもあれは材料とのバランスが崩れてますから、随分と味が落ちるんじゃ……」

「構わないさ。だって、その男は何種類も口に入れて一緒に食べるんだろう? 味なんて分かってないさ」

「そ、そうですよね! 次からそうします!」

 その後も『爆喰い男』は何度か現れた。

 そして今日もやって来て、いつもの様に試食品を爆喰いして去っていく。

 少し離れた場所で、試食を爆喰いした男が言った。

「一定期間、フランチャイズ店の調査をしてきたが、あの店舗は全くなってないな! 味は不安定だし、販売員の説明も適当で、社員教育が出来ているとは到底思えない。契約解除の方向で話を進めるとしよう!」

 

タイトルと書き出し

 

シンプルに『爆喰い男』としました。このタイプの話の場合、タイトルに情報を盛り込み過ぎると、ネタバレになる可能性が高くなると思います。

このぐらい短い方が読者の方に『一体何だろう?』と思ってもらえるのではないでしょうか。

  


ユーモアとポイント

 

『爆喰い男』がとても迷惑な存在だと、店員側に同情心が芽生えると思います。そうなると、その人への対処法もある程度までは許せる気持ちになる筈です。


対処法が酷ければ酷いほど、オチが分かった時の面白さが、ぐっと増す効果がある訳です。

 

次回は、ストレスシートからの物語(3)の公開です。

 

 

 

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(初心者必見! 小説の書き方は作品から学ぼう!)ストレスシートからの物語(1)

物語(1)

今回はストレスシートからの物語第一回目です。今回より、三回に渡って各二作品ずつ公開させていただきます。 

物語の元ネタとなっているストレスシートについてはこちら ↓↓↓

rhirasawanb.hatenablog.com

 

【CONTENTS】

 


目障りな女

 『リアクションの大きい女性』

 


「クソ! またあの女だ!」

 男は手に取った商品を棚に戻した。仕事帰りの夕刻、男は時々このスーパーで買い物をしている。

 男は独身だった。もうすぐ四十歳になるが、結婚の予定どころか長らく相手も居ない。転々とした職のお陰で経済状況も悪く、相手探しに支障をきたす一因だと思っていた。

 月々の出費の中で、食費が占める割合が大きい事はわかっていた。しかし自炊はしなかった。

 時間が取れないだけではない。服のセンスもかなり悪いが、それ以上に料理のセンスが酷かった。

 何度かチャレンジしたものの、まともに食べれるレベルには程遠い。これならばスーパーの惣菜コーナーで、上手に買い物をした方が断然いいと思った。

 男にとって夕刻は勝負の時間だ。大勢いる割引目当ての常連客と競り合い、少しでも上手く目当ての商品を手に入れなければならない。

 レジカゴにキープするタイミングが早すぎると、在庫が少ないと判断されて、割引をスルーされる事もある。逆に遅すぎると商品をゲット出来ない。常連客同士は、常に腹の探り合いなのだ。

 目当ての商品は決まっている。今日はキープ出来そうだ。それを手に取り棚の角を曲がるのだ。しかし、邪魔が入った。時々現れる『目障りな女』だ。

「そう、そう、そう!」

大声で相槌を打ったかと思うと、

「パン、パン、パン!」

と、手を叩く。気が散って男は目的の品を手に取るどころでは無くなった。

 目障りな女は一つの仕事を終えた。かつての万引きGメンは、今や犯罪抑止の方向へと変わりつつある。今日も男の万引きを事前に抑止する事に成功した。

 

 

タイトルと書き出し


『目障りな女』

このタイトルで始まる事で、誰かから嫌悪感を抱かれている女性が居る事が分かります。

 

「クソ! またあの女だ!」

 男は手に取った商品を棚に戻した。仕事帰りの夕刻、男は時々このスーパーで買い物をしている。

 この書き出しで、主人公は既に女性と何度か会った事があり、その関係性も少し明らかになってきます。

更に読み進める事で、主人公はあまり女性にモテないタイプである事も分かってきます。

 

 

ユーモアとポイント


主人公の独身生活を、割引商品目当ての常連客と組み合わせる事で、独り身の寂しさから来るストレスと、経済的に余裕のない環境を表現しています。


主人公はオチで、万引きをしようと試みる訳ですが、現実世界では経済的理由が無いのに、ストレスから犯行に及んでしまう場合もあります。

今回は経済的な問題とストレスの両方が重なり、万引きに至った訳です。リアリティを持たせる為に、この様な設定にしています。

 

 

 

 

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 あの人

 『仕事をしない人』

 

 

「あーあ。今日もまた残業だよ!」

 フロアの隅まで届く程のボリュームで、男が言った。

「『あの人』またあんな事言ってますよ」

 その男を見ていた別の社員二人が話す。

「やだねえ、ああいうの。誰がどうだとか段取りがこうだとかって、じゃあ自分はどうなのって思うよね?」

「そうですよ、他人には厳しいくせにね。僕が外回り行った時なんて、帰り時間が遅いのどうのって言われましたよ」

「そうなの? 『あの人』が行った時なんて、一体何社回ってんだって思うぐらい帰って来ない時とか多いし、酷い時なんて出先から自宅へ直帰だよ」

「本当ですか? 自分だけそんな事やってるんだ」

「そりゃそうだよ。だって本人は『自分が社内で一番偉い』って思ってるんだから」

「へーえ。あんなに文句言ってるヒマがあるんだったら、他の人の仕事を手伝ってくれればいいのに」

「ああ、そう言う事だよ。全くな!」

 日頃、周りの社員達から『あの人』と呼ばれている『社長』への悪口は今日も止まらない。

 

 

 タイトルと書き出し

『あの人』

悪口を言う時、本人に聞かれても誤魔化せるよう、『あの人』って言葉は便利ですね。それが今回のタイトルです。

主題としての要素と伏線の、両方役割を果たしています。

 

 

「あーあ。今日もまた残業だよ!」

 フロアの隅まで届く程のボリュームで、男が言った。

 あまり周囲のことを考えないタイプの男が、オフィス内で大きな声を上げます。

次の文章で周囲にいた人達がそれを聞いて、悪口を言う流れになります。

この男の様な行動は、一般社員がする場合もありますし、後に出てくる社長がする事もあり、まだ誰なのか明らかにしていません。

 
この様に一つの文章によって複数の事が想定できる様に書いた方が、より読者の方をミスリードしやすくなり、伏線を張る時の大きなポイントと言えます。そしてその書き方は、あくまでも『本当の事だけを書く』です。

 

 

 ユーモアとポイント

 『あの人』への悪口を徐々にヒートアップさせる事で、読者の方は『あの人』は一体誰なのかと、どんどん気になる筈です。

 

  

「そりゃそうだよ。だって本人は『自分が社内で一番偉い』って思ってるんだから」

 この部分も『ミスリードですね。あたかも『一般社員が社長の如く』振舞っている様に書く事で、『あの人』の候補から一旦『社長』を外す効果があるのです。

『オチ』は出来るだけ落差をつけた方が面白くなりますので、更にそれを広げる効果を狙った訳です。

 

次回は、『ストレスシートからの物語(2)』の公開です。

 

 

 

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