ショートショート作家 R・ヒラサワの〜Novelist's brain〜

小説の書き方ブログ。ショートショート作家 R・ヒラサワが自身の作品を用いて詳しく解説。新作随時公開中!

(小説の書き方の基本を公開)コラム/小説はどのように完成するのか❹【執筆編】(後編)

コラム/小説はどのように完成するのか❹(後編)


【執筆編】(ショートショート/異音) 

 

前回のコラムで、ショートショートの中でも特に重要な『伏線とオチ』までが決まりました。それまでに作り上げた『構成』を元に『伏線』を張り、『オチ』へと導く訳ですが、今回の『執筆』によって、最終的な『構成』が完成するのです。実際の完成品を見ながら、その手法についてご説明します。 

 

 

ショートショート『異音』の全文はこちら↓↓↓

rhirasawanb.hatenablog.com

 

【CONTENTS】

 

 

 

 

❶夫婦は以前から仲が悪い

 

「なんだか変だわ」

 運転席のミホは、そう言って路肩に車を停めた。

「何が変なんだい?」

 マコトは声をかけたが、あまり心配していなかった。ミホは機嫌が悪い時も同じ台詞を吐く事があるからだ。

 二人で外に出ると些細な事から喧嘩になる事が多かった。何事も無く一日が終わる事の方が珍しい。

 今日もそうだ。ミホが珍しくドライブに行きたいと言い出し、とりあえず家を出た。行き先は未定で、これもいつもの事だった。

 ミホのその日、その瞬間の気分で行き先が決まる。事前に予定した通りに何かをやった記憶は殆ど無かった。

●日頃から夫婦仲が悪く、夫が妻に無関心であり、尚且つ妻の気まぐれな性格を表しています。

【現在のやり取り→過去の出来事の順で書く】

→先ずは疑問から入り、その理由を徐々に明らかにすると共に、人物間の関係も描く事で、先への文章に対する興味が湧きます。

 

 

❷妻は夫の浮気を疑っていた。

❸夫の携帯電話から聞き慣れない着信音。届いたメールで浮気を確信した。

 

「ミホ、助けてくれ!」

 ミホはマコトの危機に全く反応する事なく、ゆっくりとしゃがみ込み、マコトにむかって囁いた。

「変な音がしたのよねえ。車じゃなくって……貴方のスマホから。メールの着信音かしら? 聞き慣れない音がねえ」

 ミホは気付いていたのだ。メールの事も、浮気の事も……。

 ミホは一応、救急車を呼ぶ準備をした。慌てず、ゆっくりと。これはきっと事故なのだから……。

 

●妻が夫の浮気を疑っていた事、それを知り得た理由と、その結果どうなったかを描いています。

 【被害者=緊迫、加害者=余裕】

→身動きが取れず、死の恐怖が迫っている相手に対して、危害がゆっくりと加えられる様子は、恐怖のレベルとしては大きいと思います。被害者に死ぬ以外の選択肢が無くなった時、多くの人は一瞬でそれが通り過ぎる事を望むでしょう。しかし、それを加害者がコントロール出来るとするならば、その長さは、被害者への憎しみの深さに比例するのかもしれません。ここでは恐怖感を高める手法をとりました。

 

 

 

 

 

❹いつもの外出のフリで夫を誘い出す

 
「あなたの運転じゃ車酔いしちゃうわ」

 ブレーキのタイミングがどうだとか、ハンドル操作がこうだとか、こちらに言わせれば、スマホの画面に釘付けになって、呆けているから酔ったりするのだと言いたいところだ。しかし言葉を飲み込む。

「私が運転するわ!」

 家を出てから十分ほど経った時の事だ。信号待ちで突然大声をあげ、こちらを見た。仕方なくマコトは車の後部を回って助手席に着く。ミホは最短距離で運転席に移動した。

 勝ち誇ったような表情でミホはハンドルを握り、座席の角度と位置を直す。結局、運転はミホがする事になったのだ。

●夫に代わって妻が運転する様子です。夫は特に驚きません。つまり、過去にも同様の事があり、特別ではない様に描いています。夫も抵抗しません。無理な争いを避ける為です。夫にとって特別でない状況から、警戒心も生まれないのです。

→この流れの中、夫が仮眠をしたり居眠りしたりするのは、不自然な事ではありません。今回の作品では居眠りをしてしまい、気付けは山中に居たという設定です。

 

 

❺斜面に止めた車に夫を潜り込ませる

 
【A】

「山の方に行きたいわ」

 ミホは自然が好きだと言うが、それを間に受けて揃えたキャンプ用品たちが、物置を占領している。いま乗っているオフロードタイプの軽自動車が最たる例で、高い車高のおかげで立体駐車場を選ぶ必要があった。

●最終的に車の下を覗き込む必要があります。普通の乗用車の場合、そのスペースがありません。そこでオフロード車に乗っている設定にした訳ですが、夫のキャラクターには合わない様に思いました。そこで、気まぐれな妻の好みによって、この車種になった設定であれば無理が無くなります。そして、それが思いつきによる意見だった裏付け、それは車だけでなくキャンプ用品などが、他にも使わず仕舞いになっている事で、より違和感が無くなるのです。

→いわゆる『木は森の中に隠せ』ですね。これは他のトリックなどにも応用が効きますので、是非試してみてください。

 


【B】

 ミホが運転を始めてから異変を感じたのか、車を路肩に止めたのだ。首を傾げ、再び車を走らせた。

●妻が仕掛けた『罠』です。これは山中でもう一度、今度は車の下を覗き込む様に仕向けられます。

→『今日は車の調子がおかしい』と思わせる仕掛けです。 


【C】

「やっぱり音が変だわ」

 ミホの言葉で目が覚めた。仕事疲れか、マコトはしばらく居眠りしていたようだ。

 車はすっかり山中に居て、ここが何処だか分からなかった。

 ミホは山道脇の斜面に車を少し乗り上げ、エンジンをかけたまま停車させた。それから車を降り、体をかがめて車体の下を覗き始めた。

「いいよ、俺が見るから」

 水色のワンピースに、低めのヒールを履いている。こんな格好で車体の下を覗き込まれたのではたまらない。いつも家を出てから予定を急に変えるから、出先と服装がちぐはぐになるのだ。計画性の無さは慣れっこだった。

●【B】からの流れで、更に夫を車の下に潜り込ませる仕掛けです。

→ワンピースのまま車の下を覗き込んだのは、勿論その計算があっての事です。

 

 

 

❻夫の頭が割れると言う状況


【A】

「一体何処から音が聞こえるって言うんだ?」

 車を降りたマコトは、前輪のちょうど後ろ辺りに頭を突っ込み、エンジンルームの底を覗いて見ようとした。

 次の瞬間だった。緩い坂に乗り上げていた車が下がってきたのだ。マコトは避ける間が無かった。ミホが引いたサイドブレーキが甘かったのだ。

 左腕と頭にタイヤが半分くらい乗り上げて、ちょうどマコトを押さえつける形で静止した。

サイドブレーキの甘さは普段からのものですが、今回はもっと甘かった訳です。下がるタイミング等、細かい部分になると設定上難しい部分が無くもないですが、計画的には『上手くいけば』との思いで妻は仕掛けています。

→あくまで『事故』なのですから。そして、これが『割れる』原因です。怖いですね。

 


【B】

 山中に向かって来る救急車は、到着にどれだけ時間を要するだろう?

 車体の重みはどんどんマコトの頭部にのしかかった。

 薄れゆく意識の中、マコトはかつて聞いた事のない『異音』を、頭の中で最後に聞いた。

●『頭が割れた』経験がないので、どんな音か分かりません。しかし、この感覚は読者の方々の中には、ちゃんとあるんですね。『かつて聞いた事のない』と言う表現が、それです。小説内で読み手によって感覚が違うものは、この様な表現が適しています。

→変に『擬音』や『形容』を加えない方が良い場合があるのです。この手法によって、多くの人が楽しめる文章になる訳ですね。

 

 

そして最後に

 

小説は今回の執筆段階がとても重要です。書き手の方によって、何処に重きを置くかは変わって来る訳ですが、私の場合は今回の『執筆』がそれなのです。実はこれまで四回に分けてご説明した工程は、全て頭の中で行っています。

普段は『テキストエディタ』にいきなり文章を書き始め、今回の『工程』にあたる部分は、それぞれ多めに改行して区切りをつけています。そして、必要があれば『カット&ペースト』で文章を入れ替えて、徐々に作品を整えると言う流れで書いています。

あくまで『一人の書き手』としての『手法』ですが、何かご参考にしていただければ幸いです。

 

次回は、ショートショート『白い壁』の創作プロセス公開です。

 

 

 

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シリーズ第二弾と第三弾であるVol.2、Vol.3は、Vol.1で作り上げた『作家脳』を更に『鍛え』、その作家脳を『持続させる』為の方法です。
様々なテクニックと、サンプルショートショートによる実践的な解説です。是非Vol.1と合わせてお読みいただければ、きっと貴方の『創作』の良き『パートナー』となるでしょう。
 
シリーズ第二弾

 
シリーズ第三弾

 

 

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(解説から学ぶ小説書き方ブログ)今回の作品/視点、コラム/【小説はどのように完成するのか❹/執筆編】(前編)

今回の作品/視点

 

小説の原稿を持ち込もうと出版社に電話した男は、上手く編集長に直接会う事が出来た。ところが編集長は、男の持ち込んだ原稿を酷評し、男を帰らそうとする。男は何とか食い下がって、重要な話をしようとするが……。

ショートショート『視点』の全文はこちら↓↓↓

rhirasawanb.hatenablog.com

 


【CONTENTS】

 

 


テーマからの発想

 

今回のテーマは『神様』です。

神様と言えば、常に私達の事を上の世界から見守っていて、いい事をしていれば『幸せ』を、そして悪い事をしていれば『罰』を与える。そんなイメージでした。

ですから、全ての事がお見通しなんだろうなって、そんな事も思いますね。

 

 

 

発想からのキーワード選出

 

神頼み、罰、お見通し、願い事、奇跡、神様視点

 


POINT1:タイトル


タイトルは『視点』です。

冒頭は『神様視点』の話から始まります。そして、以降は他の話を挟みながら、最終的に『神様視点』が出てきます。

この様な構成にしてあるのは、先行してオチとタイトルが決まっているからです。

『タイトル』が変われば『構成』が変わるパターンの作品と言えます。

 

 

POINT2:書き出し


「あのー。神様視点って分かります?」

 出版社の編集長は、少々困った表情で私に問いかけた。

「はあ、何となく」と私は答えたが、正直なところあまり自信が無かった。

この問いに至るまでに、やたらと専門用語を列挙していた編集長は、きっと私を説き伏せたいに違いない。

 

書き出しでのやり取りは少し長めですが、ここまでで一気に編集長と主人公の関係性、そして状況も描いています。

この作品は、後にこの場所で二人の会話による展開がメインとなる為、この様な方法をとっています。

 
同じ様な展開を続けながら、オチへと進むこのタイプは、設定している世界の全体を、早く読者の方に伝える必要があります。

通常の作品はもっと短い文章で、設定の基本的な部分だけを明らかにし、後は徐々に伝える形をとっています。

 

 

 

POINT3:ユーモア

 

「貴方が持ち込んだ原稿の中身は、全体的にその傾向がありますね。私は少し読んだだけで、そういうのが全部わかるんですよ」

 編集長は『小説の事なら何でもお見通し』の視点から言葉を放った。

 

ここでの『何でもお見通し』や、後半に出て来る『千載一遇のチャンス』など、登場人物同士の掛け合いで、同じ言葉なのに違う意味を持たせると、そこに『ユーモア』が生まれます。


自分より相手の方が偉いと言う事実を知らず、上からの目線で語っていた人に返す場合などが、特に有効な方法だと思います。

 

 

 

☟☟☟ショートショートを『読む』ならこの本!!

 

 

 

POINT4:前半のストーリー

 

出版社に原稿を持ち込んだ主人公は、運良く編集長に原稿を見てもらうチャンスを得たが、その内容が悪く説教を受ける羽目になる。

 

 

主人公は、編集長に直接話したい事があったので、説教を繰り返されるが、尚も食い下がる。

 

 

 

POINT5:展開〜オチ

 

編集長は予定があるからと席を立ち、主人公は帰る様促される。

 

 

主人公は実は『神様』で、本当に何でも『お見通し』だった。

その為、その日編集長が生命の危機にさらされない様、伝えに来たにも関わらず、上手くいかなかった。

 

 

 

総合的なポイント

 

今回はオチに関わる重要なキーワードを、冒頭で既に出しています。話の展開としては、基本的にネタバレしない方向で進めるのですが、場合によっては読者の方にオチが推測される事があります。

しかし、それでも読み物として面白さを保つために、前述の掛け合いなどのユーモアを含める事で、作品としてのバランスをとっている訳です。

 

 

 

コラム/【小説はどのように完成するのか❹/執筆編】

 

【アイデア】→【構成】→【伏線とオチ】

この後いよいよ『執筆』にかかります。

『構成編』で物語内に起こるエピソードを仮に決めたのですが、実質的な『構成』はこの段階で決まり、伏線の貼り方もここで具体化する訳ですね。

それは実際の執筆段階に入った時、伏線の貼り方などによって、順序を入れ替えた方が良い場合も出て来るからです。

実際の作品を用いた、執筆方法については、次回の『コラム小説はどのように完成するのか❹/執筆編】(後編)』でお話ししたいと思います。

 

 

 

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(ブログ継続のコツ)番外編/どうしてブログは続かないのか?

どうしてブログは続かないのか?

 

現在ブログを書いている方で、すでに更新が止まっている、あるいは止まりそうだ、と言う方もおられるのではないでしょうか? 病気や怪我などで書けない状態ではなく、文章が書けるにもかかわらず更新出来ない場合、それはやはりネタ切れの問題でしょう。一人の小説の書き手として、『ブログ継続』の方法を考えてみました。

 

 

【CONTENTS】 

 


基本的に必要な考えるべき事

 

 

既にブログを書いている方もですが、特にこれからブログを始めようという方に、特に読んでいただきたい事なのですが、ブログ自体の『構造』を考える必要があると思います。


ブログでの『構造』とは、小説で言うならば『構成』に当たると思います。どの文章をどのタイミングでどこに持ってくるのかと言う事です。

 

ブログのタイプ(どんなネタで書くか)

 

ブログのタイプとして、ネタ元が他者である場合、そのネタを集めたり、何かを調べたりと言う作業があり、もちろんそれも大変だと思うのですが、小説のような『創作』は、ネタ元を作るところから始めなければなりません。


私のブログの場合、テーマを『小説』に絞り込んで、更にショートショートのみに限定しています。おまけにストックはかなり乏しい状態からスターしました。そんな状況で、なぜこのブログが続いているのでしょうか? 答えは『構造』にあります。

 

 

ネタの在庫状況(ストックはいつ切れるか)

 

私のブログはショートショートの創作プロセス公開』がメインの記事です。

『前編』『後編』の2回、要は小説一本に対して記事は2本発生します。

小説のストックは、ブログ開始時に18本あり、新作は月に1本書いていました。


当初の予定では、ブログの更新は月に2回のみ、18ヶ月のストックがある予定でした。


【執筆】 【出稿】 【残数】

  2   ー   2  = 0

 

 

更新ペースを考える(世間のブログ更新ペースは早い)

 

1日1回以上の方も居ますが、日数単位で考えると、週に7回。私が最初に予定していたのは『月2回』です。あまりにも記事数が少ないですね。


実のところ私はブログを始めるまで、一度も他の方のブログを読んだ事が無かったのです。これではいけないと、私はブログの更新を、一応『週2回』と決めました。

  

 

 

 

問題発生時は軌道修正する(ペースアップ後の計算)

 
【執筆】 【出稿】 【残数】

  2   ー   8  =▲6


原稿数が毎月6記事分不足する計算になりました。

小説1本に対して記事は2本なのですが、新作発表の場が、ブログ側に変わった為、記事数は3本となり、結果新作を月に3本書けばストック数が減らない事が分かりました。

  


(〜Novelist's brain〜の状況)

 
1カ月を4週間と計算した場合、4ヶ月半でストックは切れます。その間に書いた新作を含めても、せいぜい半年です。

 


(現在のストック)

 

この記事を書いている時点で、ブログ開始から8ヶ月以上経っています。現在の小説ストック数は12。予測よりも20本多い計算になります。何故でしょう?

 

(リライト)

 

実は8本のリライト小説が加わっています。これは以前文芸誌に応募して、選に漏れた作品で、加筆・修正をしています。


小説の場合、どこかに応募した作品でも何かの賞を取っていない、要はどこにも掲載されていないものは、未発表作品と言う扱いになり、再度別の場所への応募や、ブログ等への掲載は特に問題は無いのです。

 

 

 

過去記事の扱い(リライトも重要)


過去に書いた記事で、どこにも発表していないものがあれば、それがリライトなどをする事によって生かすのも良い方法だと思います。


未完成な記事を加筆・修正をする事により、完成状態へと進める事も出来ますし、年数が経ってしまった記事は、その時代に合った物に修正すれば良いと思います。

 

 

 

(自分の現在の状態が分かる)


私が本格的に小説を書き始めたのは、初めて応募したショートショートが雑誌に掲載された、二十二年前の事です。

いま読み返せば、修正したくなる箇所が、もちろんあります。しかし、それをすぐに直してしまえばそこで終わってしまいます。重要なのは、何故その時そういう風に書いたのかを考える事です。


そして、その上で『リライト』する。随分と印象が変わると共に、ご自身の筆力の伸び具合が良く分かると思います。

個人的に、私は『文章力』と言うもの常に向上すると考えています。ですから、今の自分なら『こう書く』と言うのが実践出来るいい機会だと思います。

 

 

 

その他の記事


現在『新作ショートショート『創作プロセス公開』がメイン記事ですが、新たに読者になって頂いた方の為に『まとめ記事』も定期的に入れる様にしています。


これは個人的に、最近知った雑誌などはバックナンバーを読みたくなる方なので、記事の種類ごとにまとまっていた方が、見やすいのではないかと言う考えからです。記事数も多くなると、ある程度まとまっていた方が良いですよね?

 

 

 

当ブログ(Novelist's brain)に必要な事

 

通常のサイクルでブログを書くならば、記事が不足する事になります。この問題を解決する一つの方法は、月に3本のショートショートを書く事です。


また、これまでと違った事を始めても良いかもしれません。

私の場合Twitterがそれで、これまではブログ更新のお知らせが殆どだったのですが、たまたま見た動画が面白く、コメントした事がきっかけで、今では毎日数回見るのが習慣になっていて、ここで生まれたキーワードは、後々の作品のアイデアに繋がるのではないかと思っています。  (関連記事はこちら↓↓↓)

rhirasawanb.hatenablog.com

 

 

発想は、普段の『習慣』『変則的な何か』が加わった時に生まれやすいと思います。

そう言った意味でTwitterは、初めて目にする動画に対してコメントを付けているので、まさに発想が生まれやすい環境と言う事が出来ます。

 

 

 

そして最後に

 

ブログの継続に欠かせないのが『ネタの収集』だと思うのですが、前述の『過去記事』等、単独で行うだけでなく、何かとの組み合わせ、要は『過去記事』同士の組み合わせなど、様々なアレンジによってもアイデアは出せると思います。


私のブログの場合は『新作ショートショートの執筆が最も有効な方法なので、こちらに力を入れたいと思っています。Twitterコメント』からの発想で、上手く作品作りに繋がった物は、またブログでご紹介したいと思います。

 

 

 

 

創作が上手く進まない……。そんな時、『もしも……』と、あてはめるだけ!

先ずは『試し読み』をどうぞ↓↓↓

 

 

ショートショートの書き方』を、作家の視点で詳しく『超解説』‼

 

 

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(小説の書き方の基本を公開)コラム/小説はどのように完成するのか❸【伏線とオチ編】(後編)

コラム/小説はどのように完成するのか❸(後編)

【伏線とオチ編】(ショートショート/異音) 

小説のおおまかな構成が出来た後は、最終的な『オチ』にたどり着くまでの『伏線』が必要になります。そしてこの『伏線』は、通常『オチ』に対して存在するものですが、実際にはそれ以外の場所にもあるのです。

今回は、その辺りについても説明したいと思います。

記事に関するオススメ書籍はこちら↓↓↓

(小説・ショートショートの書き方)厳選・オススメ本はこれ!(その❶) - R・ヒラサワの〜Novelist's brain〜

 

 

ショートショート『異音』の全文はこちら↓↓↓

rhirasawanb.hatenablog.com

 

 

 


【CONTENTS】

 

 

 

仮の構成順で組み立てる


前回は構成について考えてみました。とりあえず【例文:A】の構成で書き始める前提で、一旦仮の順序で進めてみます。

 

【例文:A】【❸→❶→❷→❹→❺→❻の場合】

●夫婦は以前から仲が悪い

●妻は夫の浮気を疑っていた。

●夫の携帯電話から聞き慣れない着信音。届いたメールで浮気を確信した。

●いつもの外出のフリで夫を誘い出す

●斜面に止めた車に夫を潜り込ませる

●夫の頭が割れると言う状況

 

 

各エピソードの具体化 

 

夫婦は以前から仲が悪い

夫婦が不仲になる原因として、性格の不一致はよく聞く話です。今回は几帳面な夫とマイペースな妻にしました。日常の些細な出来事からストレスが蓄積する事もありがちですね。


妻は夫の浮気を疑っていた

これは、何処かの段階で加えれば良い内容です。他のエピソードとのバランスを考えながら、適した位置に配置する事にします。


いつもの外出のフリで夫を誘い出す

『いつもの外出』から『別の場所』に行くには、それなりに『準備』が必要です。

予定の急変が正当化出来る理由。緊急事態や、あるいは普段から行動がコロコロ変わると言う前提を作る必要がある訳です。


斜面に止めた車に夫を潜り込ませる

一般的な駐車場であれば、立地の関係で斜めになっている場所もあります。しかし、この様な条件に設定すると物語が不自然になりやすいので、他の方法である今回の『山』などの方が自然でいいでしょう。


夫の頭が割れると言う状況

『車』『斜面』があるので、後は『潜り込む』で条件は揃います。ただ、この行動を起こす必要性を用意しなければなりません。『潜り込む』ですが、一般的な乗用車では、そのスペースがありません。ジャッキで持ち上げるなら『パンク修理』、又は『オフロード車』に乗っている前提ですね。

 

後は、しばらく潜り込む必要があります。直ぐに解決すれば『事故』が起こりませんから。ですから、そこに『見つけられない問題を用意する訳です。要は『偽りの故障』です。何もないのに、故障でもしているかの状況を作ります。

今回で言うなら、『何か変だわ』と妻が言う。作品を読んだ方はお分かりだと思いますが、実は妻は『車の異音』とは言っていません。何故でしょう?

 

今回の企てが未遂に終わった場合、言い訳出来る材料を実は用意しています。

素振りこそするものの、『車の異音』とは言わず、夫に車を見てくれとも頼んでいないのです。夫が『車から異音がする』と思い込み、勝手に潜り込んだのです。そして、車が下がったのは普段から妻はサイドブレーキの引きが甘いのです。だから『事故』なのです。しかも、妻は落ち着きながらとは言え、一応救急車を呼ぶ訳ですね。怖い話です。

 

 

 

 

『伏線』と『オチ』を考える

 

冒頭で書いたように、『伏線』は『オチ』だけのものではありません。具体的にどういう事かを説明します。(文章は完成作品より引用)

 

夫婦は以前から仲が悪い

「何が変なんだい?」
 マコトは声をかけたが、あまり心配していなかった。ミホは機嫌が悪い時も同じ台詞を吐く事があるからだ。
 二人で外に出ると些細な事から喧嘩になる事が多かった。何事も無く一日が終わる事の方が珍しい。

⚫︎普段から喧嘩が多く、夫が妻にあまり関心がない様子です。これは以下の出来事への伏線です。

→夫が浮気をしてしまう要因

→妻の企ての原因

→妻の企てに夫が気付きにくい普段からの習慣

 

 

妻は夫の浮気を疑っていた

「変な音がしたのよねえ。車じゃなくって……貴方のスマホから。メールの着信音かしら? 聞き慣れない音がねえ」
 ミホは気付いていたのだ。メールの事も、浮気の事も……。

⚫︎浮気に気付いていた事実と、『音』は『車』の事ではなく、そう思い込ますための『罠』だったのではないかという事を、ほのめかしています。

→妻の『変』と言う発言が伏線であり、それを回収しています。

→『企て』の『動機』であり、『オチ』への『伏線』となります。

 

 

いつもの外出のフリで夫を誘い出す

 今日もそうだ。ミホが珍しくドライブに行きたいと言い出し、とりあえず家を出た。行き先は未定で、これもいつもの事だった。
 ミホのその日、その瞬間の気分で行き先が決まる。事前に予定した通りに何かをやった記憶は殆ど無かった。
「山の方に行きたいわ」

⚫︎普段から妻は無計画な行動をとる習慣があり、今回の一連の行動に対する違和感を無くす効果を狙ったものです。また、それに振り回される夫の関心の無さも、妻への愛情が薄れている事を表現しています。

→『企て』の為『山』に向かう行動の伏線であり、妻は普段から予定を『急変』させる事があるので、今回もいつも通りの行動と思わせる為の『ミスリード』です。

 

 

斜面に止めた車に夫を潜り込ませる

 ミホは山道脇の斜面に車を少し乗り上げ、エンジンをかけたまま停車させた。それから車を降り、体をかがめて車体の下を覗き始めた。

⚫︎この時点で読者の方に対しても、『異音は車から』というイメージを植え付けていますが、これはいわゆる『ミスリード』ですね。

妻が言っていた『音』が車の事で無かったのは、オチに近い部分で明らかになります。

→『斜面に乗り上げた車』は『下がって来る車』の為の伏線ですね。

 

 

夫の頭が割れると言う状況

 車体の重みはどんどんマコトの頭部にのしかかった。
 薄れゆく意識の中、マコトはかつて聞いた事のない『異音』を、頭の中で最後に聞いた。

⚫︎車に潜り込む為に、設定をオフロード車にしています。妻の運転は、夫が普段から不満を持っている様、通常行うような操作もしない場合がある設定です。斜面に止めた車もシフトレバーを『パーキング(P)』に入れた状態であれば下がりませんが、今回は一応『ニュートラル(N)』に入れていた設定(本文にはありませんが)として書いています。(出来れば、この事についても何処かで書いておいた方がいいでしょう)

→ 『サイドブレーキの甘さ』も、車が下がる為の『伏線』です。

 


以上で伏線とオチ編は終了となります。次は実際の執筆について解説したいと思います。(このコラムは【❹/執筆編】へと続きます)

 

 

 次回は、ショートショート『視点』の創作プロセス公開です。

 

 

 

 

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次回は、ショートショート『視点』の創作プロセス公開です。

(解説から学ぶ小説書き方ブログ)今回の作品/消去ボタン、コラム/小説はどの様に完成するのか❸(前編)【伏線とオチ編】

今回の作品/消去ボタン

真夏の昼間、ファミリーレストランの奥の席には、上下黒づくめの男が二人。周囲から浮いた存在である二人は、怪しげな装置を挟んで密談をしているようだが……。

 

 

ショートショート『消去ボタン』の全文はこちら↓↓↓

rhirasawanb.hatenablog.com


【CONTENTS】

 

 


テーマからの発想

 

今回のテーマは『話を聞かない人』です。『話し上手の聞き上手』って言いますが、一方的に話す人って、先ず相手の話を聞かない分、本人の話も繰り返しが多かったり退屈だったりと、要は相手とのコミュニケーションが上手くないイメージですね。それでいて、本人は周囲の人と上手くいっているつもりで居る。だから、知らない間に周囲から反感を買ってたり……。結局、その辺りの話になりました。

 

 

発想からのキーワード選出


お喋り、自己中心的、ボス、早とちり

 

 

 

POINT1:タイトル


タイトルは『消去ボタン』です。珍しくテーマに直結しないタイトルになりました。今回はある程度、事前にアイデアが浮かんでいた事が関係しています。

このパターンのタイトルの場合、極力早めにテーマや物語との関連性を明らかにする必要があります。

 

 

POINT2:書き出し


ファミリーレストランの一番奥にある喫煙席で、今日この場所に最もふさわしくないと思われる二人組の男が座っていた。

 初夏だと言うのに、外は既に真夏の日差しで、毎年最高気温を記録する地域では、去年の記録を塗り替えるほどの暑さだった。

 その為、世間の人々は半袖姿で過ごす中、上下黒ずくめのスーツ姿の二人は、明らかに周囲から浮いている存在だった。

 

今回は場面設定に、少し多めの文字数を使っています。これは何故でしょうか?

それは、今回の登場人物が漫画のようなキャラクターに設定してあるからです。


現実世界とかけ離れた設定の場合、まずは読者の方を、その世界に案内しなければなりません。書き出しの文章については、その設定の前準備と言う事が言えます。

 

 

 

POINT3:ユーモア

 

「ええ。それは構いませんが、今回の手柄で来月から給料上げてもらえるんでしょうね」

「給料だと? 大体、その言い方が気に入らねえな。一般企業じゃあるまいし」

 

この人達って、ギャングのような設定な訳ですね。ですから、当然のように毎月決まった『給料』の様な物がある訳ではありません。(実はあるかもしれませんが)

この後、ボスも同じ様に返す場面があるのですが、こう言ったやり取りも文章に緩急をつける要素になる訳ですね。

 

 

 

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シリーズ第二弾
シリーズ第三弾

 

 


POINT4:前半のストーリー

 

ファミリーレストランの奥の席で、怪しげな男二人が何やら打ち合わせのような事をしている。

 

 

 二人の内、子分の方が研究所の中に潜り込み、人を消す事が出来る装置を手に入れる。

 

 

 

POINT5:展開〜オチ

 

子分は手に入れた装置の説明をしようとするが、ボスは全く話を聞こうとせず、その装置をいきなり操作してしまう。

 

 

使用方法を誤ったボスが、結局その装置によって消えてしまう。

 

 

 


総合的なポイント

 

今回は全体的にコミカルな雰囲気で進めました。漫画のような世界の中の話なので、その中に出てくる装置類の設定も、自由度が増す訳です。

その中で、いかにナンセンスなエピソードを作るかが、この物語の重要な部分でした。

 

 

 

 


コラム/小説はどの様に完成するのか❸(前編【伏線とオチ編】

 


❷の『構成編』では、おおよその物語の流れを想定して、エピソードごとに配置が固定なのか移動が可能なのかを確認し、最も良い物語組立て方について考えました。

本格的な配置は、今回の『伏線』と『オチ』によって決まります。『構成』との関連も強く、とても重要な部分です。


詳しい内容については、次回コラム/小説はどのように完成するのか❸(後編)【伏線とオチ編】にてお話ししたいと思います。

 

 

 

 

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(小説の書き方の基本を公開)コラム/小説はどのように完成するのか❷【構成編】(後編)

コラム/小説はどのように完成するのか❷(後編)

【構成編】(ショートショート/異音)

小説のアイデアがある程度出た後、全体の構成を考えます。ベースである『起承転結』以外に、どんなキーワードやエピソードを、どの部分に、どの様に配置するかで、作品の良し悪しは随分と変わります。

今回は、その『構成』についてのお話です。

 

 

ショートショート『異音』の全文はこちら↓↓↓

rhirasawanb.hatenablog.com

 

【前回までの流れ】

完成したアイデアの骨子

 ●夫の浮気を疑っていた妻が、その証拠を掴み、それを確信する。そこには『音』が関係しており、それには聞き慣れない携帯電話の着信音を使う。

●夫婦は以前から仲が悪い。

●妻が夫を誘い出し殺害を企てる。

●殺害は事故に見せかけた方法を考えるが、そこには『頭が割れる』と言う状態を盛り込む。

 

【CONTENTS】 

 

 

 

構成前の準備

 

構成編では大まかに、物語の中で起こるエピソードをアイデア編で出た内容を元に羅列していきます。

 
❶妻は夫の浮気を疑っている

❷着信音が関係した証拠でそれを確信する

❸夫婦は以前から仲が悪い

❹妻が殺害を企て、夫を誘い出す

❺事故に見せかけた殺害方法の実行

❻夫の頭が割れると言う状況

 

 

 

順序の整理

 

❶〜❻までの中で、順序の入れ替えが必要な場所があれば、事前に済ませておきます。

小説の中でもショートショートは最も文字数が少なく、その大半は人生の時間を一部だけ切り取った物語です。その為、その場所に案内する準備が必要なのです。

❸は早い段階で書く必要があります。

地の文で書いても、セリフのやりとりでも構いません。

❻は、やはりラストが良いでしょう。

それ以外は、特に順序は問いません。少し意外に思われるかもしれませんが、これは書き方をマスターすれば特に問題がないのです。

 

 

 

一般的な時系列の処理

 

小説を書き始めた方が迷う問題の一つとして、『時系列』があると思います。

小説の世界で言う『時系列』とは、時間軸に対して起こった出来事を順番に並べることを指しますが、これを正確に守って書こうとするとかなり困難な作業になります。


例えば、AとBの二箇所で同時に起こった出来事を書く場合、時系列を正確に守ろうとすると、交互に書くと言う方法が取れますが、これはあまりスマートな書き方ではありません。


では、もう一つの方法として、Aでの出来事を先に書き、Bを後に書く。この方法が一般的だと思います。

しかし、この場合は、ある特定の時間内に起こった出来事が、ダブって描かれる事になります。時間の長さや書き方にもよりますが、読者の方が混乱してしまう原因にもなりかねません。他に方法は無いのでしょうか?

 

 

 

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時系列の問題をクリア出来る書き方

 

【例文:A】【❶→❷→❹→❺の場合】

●妻は夫の浮気を疑っていた。

●夫の携帯電話から聞き慣れない着信音。届いたメールで浮気を確信した。

●いつもの外出のフリで夫を誘い出す

●斜面に止めた車に夫を潜り込ませる

 

以前から妻は夫の浮気を疑っていた。ある日、寝ている夫宛に届いた携帯電話のメール。聞き慣れない着信音に違和感を感じ、確かめてみると、そこには浮気の事実が記されていた。

妻は限界だった。いつもの外出を装って、夫を誘い出す事にした。そして車に潜り込ませ、事故に見せかけた殺害を実行するのだ。

 

 

【例文:B】【 ❺→❷→❶→❹の場合】

●斜面に止めた車に夫を潜り込ませる

●夫の携帯電話から聞き慣れない着信音。届いたメールで浮気を確信した。

●妻は夫の浮気を疑っていた。

●いつもの外出のフリで夫を誘い出す

 

夫が様子を見るため車の下に潜り込んだ直後、斜面に止めていた車が下がり始め、夫の頭はタイヤに挟まれる形になった。

「助けてくれ」

「あなたの携帯から、聞き慣れない音がしたの……。浮気してたのは事実のようね。前からおかしいと思ってたのよね」

いつもの外出の予定で家を出た。妻が急に予定を変えたのは、きっとこの計画があったからに違いなかった。

 

どちらの例文も前後に文章がない為、書けない部分もあるのですが、おおよその書き方としては上記の様になります。

 

 

 

時系列の問題をクリアする方法

 

一言で説明すると、過去の出来事は『登場人物の現在の記憶』として扱う事で解決します。

(夫が主人公の場合)

 

【妻の現在の記憶】

「あなたの携帯から、聞き慣れない音がしたの……。浮気してたのは事実のようね。前からおかしいと思ってたのよね」

●夫が主人公の設定の為、妻の『視点』から描く事が出来ません。この場合は『台詞』を使い『妻の口から語る』事で解決する訳です。

 

 【夫の現在の記憶】

いつもの外出の予定で家を出た。妻が急に予定を変えたのは、きっとこの計画があったからに違いなかった。

●主人公である夫は、その『視点』を使う事が出来ます。今回は夫の『内面描写』によって描いています。

 

 

 

構成の手順

 

❸をスタートに、❻をラストに固定して、その他のエピソードは、最も書きやすい順で構成します。ここでは書いていませんが、前後の文脈がある程度決まってくると、おのずと順番は決める事ができる筈です。

もしも、流れに問題が出た場合は、入れ替えが可能なエピソードを調整すれば良いのです。


以上で構成編は終了となります。次はこれらを使って伏線とオチを考える流れとなります。(このコラムは【❸/伏線とオチ編】へと続きます)

 

 次回は、ショートショート『消去ボタン』の創作プロセス公開です。

 

 

 

 

 

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秘密

 

 会社の事務所を出て直ぐの廊下でミナコとすれ違った。

「お疲れさま……」

 周囲の者に気付かれぬ様、私の耳元で囁いたミナコは、もう一度こちらを見て目配せをした。

 私は軽い笑みで答える。二人の関係は社内では『秘密』だった。

 ミナコは半年ほど前に、事務員としてやって来た。少し派手めの、色のあるその雰囲気は、周囲の男性社員を惹きつけるには十分過ぎた。

 当然、アプローチしてくる者も何人かいた様だったが、ミナコはそれに答えない。そう、この私を除いては。

「私、落ち着いた雰囲気の人が好きなの」

 『中年男』にとって、それは頼もしい一言だった。

 ミナコがやって来たのは、会社の忘年会の一ヶ月ほど前だった。その頃会社は繁忙期で、外回りばかりの私は、ミナコの存在を意識する事など全く無かった。

「ここ、いいですか?」

 会社は毎年、忘年会の為に小さな店を貸し切る。社長の知人が経営する店なので、色々と融通がきく様だ。

 そのお陰で、人数に対して広過ぎる店舗は、所々に空席を作る事になる。劇的に会社が儲かりでもしない限り、先々も同じ事が続くのだろうと思っている。しかし、その空席によって、ミナコと近付く事が出来たのだから、感謝しなくてはなるまい。

 ミナコは、たまたま私の隣に座った様だ。

「なんか、話が合いますね」

 そう言って笑ったミナコの横顔に、少しずつ心が奪われてゆく。私はそれを、コントロールする事が出来なかった。時折見せる笑顔が男心をくすぐる。これは普段、誰にも見せない表情なのだと、ミナコは言った。

 私はこれまで妻に一途と言う訳でも無かったが、単に浮気心が芽生えなかっただけだろう。今回、その事情が大きく変わった。

 急接近した二人の関係。男女の仲になるまでに、長い時間は必要なかった。

 私も今年で四十五歳。そろそろ女性絡みの話は落ち着かせなければなるまい。共にパートナーの居る身だったが、互いにその関係は良くなかった。そんな背景も親密になる手助けになったのだろう。

 ミナコは私より十歳ほど若く、所属部署も違う。妻は勿論この事は知らないし、察する気配も無い。そもそも私の会社にどのくらい社員が居て、女性の割合がどの程度だとか、そんな事にはまるで興味が無い女だった。

 妻と私は同い年で、結婚生活も十五年になる。結婚当初はお互い若く、興味や関心もあったけれど、子供が無かったせいで単調な日々が続き過ぎた。

 ある時期から妻は地味なパート勤めを始め、そのお陰もあって貯金はそれなりの額まで増えた。

 妻はサラリとした顔で、毎日仕事と家事をこなしている。心の中には何か思うところはあるかもしれないが、決して表には現さなかった。

 ミナコには六歳ほど年上の夫が居る。仕事も遊びも適度な様で、それなりの相手の気配を感じるとミナコは言う。実際のところは分からないが、ミナコも派手めな女だ。その夫となれば、同じ匂いが漂っていても不思議ではないだろう。

 ただ確実に言えるのは、ミナコの心が夫から離れた分、私に近づいていると言う事だ。それだけは、ひしひしと感じる事が出来たのだ。

 二人の距離は縮まる一方の様だ。日々、心の中をミナコが占める割合が大きくなってゆく。

 そろそろけじめをつけなくてはならない。愛人と妻を、上手く心の中で棲み分け出来るほど、私は器用ではないのだ。

 ミナコは上手く演じているのだろう。世の中その辺りは、女性の方が長けていると思う。 

 ミナコもいよいよ本気のようだ。夫に別れ話を切り出そうとしている。遊びと言うものは、相手に夫と言う存在があるからこそ成立するもので、それを失う事で、一気に気持ちがこちらに向かってのしかかる。

 『別れさせ屋』といったビジネスがあった様だが、私には理解出来ない世界だ。妻としっかり話し合えばいい。

 しかし、困ったものだ。最初は軽い遊びのつもりだったのに。今ではもうミナコ無しではいられない。

 妻との話は、思いのほかスムーズに進んだ。私からの申し出に、妻はすんなりと応じてくれたのだ。互いに愛情はすっかり薄れていたのかもしれない。

 離婚を切り出したのはこちらの方だ。その為、妻からの要求には可能な限り応じる事にした。

 妻と別れてから三ヶ月後。あれほど惹かれ合っていた筈のミナコとの関係に、亀裂が入り始めた。

 二人の心の限界点は、予想外に早く訪れて、ミナコとも別れる事になってしまった。

 ミナコは隣街の喫茶店で、ある人と会っていた。

「ご苦労様」

 依頼主である、かつての妻から『別れさせ屋』としての成功報酬を受け取った。

 

 

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