ショートショート作家 R・ヒラサワの〜Novelist's brain〜

小説の書き方ブログ。ショートショート作家 R・ヒラサワが自身の作品を用いて詳しく解説。新作随時公開中!

(小説・ショートショートの書き方ブログ)番外編/作家の本棚には少し怪しい本もあると言うお話

番外編/作家の本棚には少し怪しい本もあると言うお話

 


小説に限らず、何かしら文章を書くには、それなりの『資料』が必要になります。『基本』は『現場での取材』なのですが、時間や費用の問題もあれば、実際には入れない(入らない方がいい)現場もあります。

著名な作家の方々は、様々な資料をお持ちだと思いますが、今回はとても地味に活動している『私』の本棚と、時々目を通す冊子等をご紹介します。

 

 

 

【CONTENTS】

 

 

 

小説・関連書籍

 

【特に参考にしている作家さん】

長編(国内)伊坂幸太郎さん、東野圭吾さん、野沢尚さん

  (海外)スティーブン・キングさん、ダン・ブラウンさん、トマス・ハリスさん、

短編(国内)阿刀田高さん

  (海外)フィリップ・K・ディックさん

 

長編・短編共に、映画化された作品は参考にさせて頂く事が多いですね。文章を書く上で、その映像が目に浮かぶような表現は必要ですし、特に短編で映画化された作品については、少ない原稿量でありながら映画が製作されている訳ですから、構成がとても参考になります。

 

 

 

構成に関する書籍

 

野沢尚のミステリ―ドラマは眠らない】

【素晴らしい映画を書くためにあなたに必要なワークブック】

構成の本は、主に『脚本』に関するものになります。舞台や映画など、演出的な要素も含めて、とても勉強になります。特に野沢尚さんの書籍に関しては、一つのドラマを作り上げるまでの準備がとても緻密で、なかなか真似の出来る事ではないのですが、とても参考になりました。

 

 

 

【関連記事はこちら↓↓↓】

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撮影に関連する書籍

 

【映像編集の教科書】

主にドラマや映画の撮影など、そのシーンの撮り方や、アングル、カットなどについての書籍です。小説の世界は、基本的に文章だけで相手に伝えなければなりませんので、実際の映像を頭に描きながら書く練習が必要になります。そして、実際に映像作品を作っている立場の方からの意見、要はそれらの意図であったり、意味が解説されていますので、とても参考になりますね。

【関連記事はこちら↓↓↓】 

rhirasawanb.hatenablog.com

 

 

デザイン等に関する書籍

 

【レイアウトアイデア見本帳】

視覚的な情報によって『インスピレーションが湧く』といった効果があります。これは直感的に『ネタ』に繋がる事が多く、実は私のショートショートが初めて雑誌に掲載された時のネタは、本のタイトルからヒントを得たものです。


辞書的なもの

 

 

【法律用語辞典】六法全書【法律活用ガイド】

辞書などは、単純にアイデアを出すキーワードを探したり、『法律』に関するものは、それを『仕掛け』に使ったり法的な決まりなどから発想する場合があります。

 

 

 

実用書的なもの

 

【図解検死解剖マニュアル】【警察のことがわかる辞典】【逮捕られたらどうなる】

 

最も『怪しいエリア』です。私の小説の事を知らない知人が来た時、必ず二度見されます。すぐさま『小説書いてるから……』と、説明します。そうしないと、何やら怪しい企てでもしていると思われる、或いは既に何かをしでかしている、などと思われては困りますからね。

 

小説で殺人事件などを扱う場合、現場の状況やアリバイ、そして警察の方の行動など、書く必要があるのですが、ショートショート作品の様に短い物語であっても、リアリティは重要です。ですから、それなりの知識を有して書く必要があるのですね。最初に書いた『入らない方がいい現場』とは、『刑務所』などの事です。いくら知りたくても、逮捕される訳にはいきませんので……。


小説に関連して、知識として必要なものを選んでいます。比較的マニアックなものになっているかもしれません。専門知識も深くなれば、それだけで小説のメインにする事も可能ですので、あった方が有利になるでしょう。また、その流れかの発想も大事な事です。

 

 

 

趣味・デザイン的なもの

 

【世界の腕時計】

著名なブランドなどは、その歴史の中に多くの物語があります。その中で、様々なヒントを探すことが可能です。

 

【新・ブック・オブ・フォトグラフィ】

撮影に関するノウハウなども、色々と参考に出来る事があります。色々な道具を駆使して生み出す『画』。それは自然な物から人工的なものまで様々です。

 

【レイアウトアイデア見本帳】

雑誌などの『編集』、『レイアウト』なども色々参考になります。何故そこに、それを配置するのか? それは視覚的な要素であったり、読者の心理的な要素であったり。謎解きのトリックなどにも応用出来るかもしれませんね。


『趣味世界』なども、ネタ的には面白いでしょう。そこにも深い専門知識がありますし、全くその世界知らない人からすれば、非常に興味深いお話になります。

 

 

フリーの求人情報・住宅情報


求人情報は、様々な職業を知るのに有効です。普段関係性の薄い職業などは、その存在すら知らない事もよくあります。そこで出会った職業が興味深く、尚且つ専門性の高いものであれば、それは小説に向いています。大企業なら、どんな社員構成で中小・零細企業なら? どんな問題に直面し、発生するならどんなトラブルか? 等々。


住宅情報は、例えば主人公の住まいのモデルにしたり、その間取りから想像出来る家族構成などによって、そこからドラマが生まれます。この家族構成から生まれる良い事、そして悪い事は何か? 何かしら『画』が見えてきませんか?

 

 

そして最後に

 

小説の『ネタ』や『ヒント』は小説作品だけに限らず関連書籍は勿論の事、一見も無関係とも思えるものからでも得ることが出来ますし、視覚的な刺激によっても同様の効果を得る事が出来ると思います。いずれの場合にせよ、常に『意識』をもって何かを見る事によって、気付けるチャンスをどんどん増やす事が出来るのではないかと、私は思うのです。

 

 

 

ショートショートの書き方』を、作家の視点で詳しく『超解説』‼

 

 

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(小説・ショートショート書き方のコツ)コラム/さり気ないセリフと文(後編)

コラム/さり気ないセリフと文(後編)

 


小説、特にショートショート作品では、『オチ』に辿り着くまでに、様々な仕掛けが用意されている場合があります。それらはハッキリと書かれている場合もありますが、今回はさり気なく書いた仕掛けである『伏線』についての解説です。

 

【ご注意!】

以降の解説には『オチ』の『ネタバレ』を含んだ箇所があります。まだ作品を読んでいない方、本来のショートショートとして楽しみたい方は、先にリンク先『全文』をお読みになられる事を、お勧めします。

 

 

【CONTENTS】

 

 


『サクラ』の場合

 

主人公の『ユカ』は、売れない女優でしたが、事務所の社長は密かに彼女に期待していました。社長は彼女が自信をなくし、もう辞めようと考えているのを察していた為、何とか自信をつけて欲しいと思い『サクラ』の仕事を依頼します。

しかし、そこには更に『サクラ』が仕掛けられていた、と言うお話です。

ショートショート『サクラ』の全文はこちら↓↓↓ 

rhirasawanb.hatenablog.com

 

【さり気ないセリフ】

 「どんなに美味い物を作ったって、それを周りの人達が知らなきゃ売れないからねえ」

 

今回の『メインテーマ』は、これなんですね。一見すると、


自信をつけさせる為に『サクラ』の仕事を受けた相手に、更に『サクラ』を用意した。


こんな物語の様ですが、最も言いたい事は『いい女優でも人に知られなければ売れない』なのです。このセリフは、その為に書かれたものなのです。

 

 

【さり気ない文】

ユカと店主のやり取りを聞いて、周りに居た人達が一人、二人と集まって来て、やがてそれは列となった。その後は、その列を見た人が理由も分からないまま並んだりと、結果的に行列の出来るブースとなり、ユカの『サクラ』は、見事に成功した。

 

ブース前に集まった人ですが、最初の人達が社長から依頼された『サクラ』で、それを見た人達は本当のお客さんと言う設定です。

問題の文は、この部分より前のセリフの箇所なのですが、ユカの店主とのやり取りは、決して上手なものではありません。ユカはこの時点では、まだ自分に自信がない為、演技力が未熟です。だからオーディションに受かっていないのです。その為、行列が出来るまでの最初に並んでいる人々、それが『サクラ』なのです。

もしも、ここでのユカと店主のやり取りが上手だったら、しっかり物語を読んだ読者の方は違和感を感じる事でしょう。

 

 

 

『ANSWER』の場合


十年以上連れ添った夫の浮気が原因で離婚した主人公のアキコ。先々の生活に不安を感じ、ストレスから喫煙を始め、万引まで犯してしまう。スーパーで出会った小学生の男子とのやり取りで、思い違いではあったが、自身の罪を問われた様に感じ、自分を見つめ直すきっかけを得る。これがこの物語の中核です。

ショートショート『ANSWER』の全文はこちら↓↓↓  

rhirasawanb.hatenablog.com

 

 

【さり気ないセリフ】

「この答えって、ひょっとして何か悪い事なの?」

「そう。だってこの前、高校生のお兄ちゃん達がこれをやってて、おまわりさんに叱られてたもん」

 

男の子がアキコにクイズを出した場面です。アキコはその答えが『まんびき』ではないかと、恐る恐る確かめるのですが、男の子は更に不安を煽る様な回答をします。ここは勿論『ミスリード』なのですが、今回の様に段階的で、更に追い込む形にする事で、更に効果が増すのです。

そして、アキコが不安を感じているのは、心の葛藤を描いています。万引きに対する後ろめたさがある事は、やり直すことが出来る可能性でもある訳ですね。

 

 

【さり気ない文】

家事は随分と楽になった。洗濯は三分の一になり、夕食のメニューで悩む事も無い。しかし、日々の生活に張りは無くなってしまった。

 普段の買い物は最寄りのスーパーで済ませている。半月に一回程度、少し足を伸ばしてここに来ているのは、スーパーには置いていない雑貨や洋服を見て、気分転換をするのが目的だった。

 

アキコの現状、抱えている不安、ショッピングセンターに来る本来の目的。これらの要素が複雑に絡み合って『万引き』をしてしまった背景が出来上がっています。

物語に登場する人物の、全ての行動には理由があるのですが、短いお話の中でも納得の出来る構成は必要です。特に心の中に葛藤がある場合は、なりたくもない事をやっている『何故』を分かりやすく伝える必要があります。

 

 

『アイちゃん』の場合

 

『人型パンフレット配布ロボット』である『アイちゃん』。この名前は人工知能を表す『AI』をそのまま『アイ』と読み、ロボット制作会社の社長が名付けたものです。

正式名称は型番で『HP-04S』。メンテナンス時はこの型番で呼びかけ、エンジニアが故障の状態を確認します。ですから、アイちゃんは型番で呼ばれた時にちゃんと反応しなければいけないのです。しかし、普段は『アイちゃん』と呼ばれ続けている為、自分の型番を忘れそうになる。そんなお話です。

ショートショート『アイちゃん』の全文はこちら↓↓↓  

rhirasawanb.hatenablog.com

 

 

【さり気ないセリフ】

「ご来場いただきありがとうございます。こちらが弊社のパンフレットでございます」

「ふむ……。ありがとう」

 そう言いながら、中年男性はもう一度私の顔をじっと眺めてから去って行った。

 

アイちゃんを見ていた男性は、人工知能を搭載し、人工皮膚を用いて作られたロボットが、まるで本物の人間の様だったのでマジマジと見ていたのですが、展示会などではコンパニオンの女性をじっくり眺める男性も居たりして、今回は後者の如く書く事によって、擬人化してミスリードしているのです。

 

 

【さり気ない文】

以前、仕事の最中に具合が悪くなって診てもらった時に、本当の名前で呼ばれたが、自分の事だと気付かず返事が遅れた事があった。その時は会場内の倉庫の様な場所を借りたが、今回は各ブースに少しスタッフ用のスペースがあって、もしも具合が悪くなっても診てくれる人がそこに居るそうだ。

 今日は朝から五時間も休まず働いている。体が熱を帯びてきているように感じた。次の瞬間、急に何も見えなくなった。

 

こちらも『擬人化』した表現で、勿論『ミスリード』で、実際の文と本来の隠れた意味は、以下の通りです。

スリードの場合、その基本は『事実だけを書く』です。要するに事実の書いていい部分だけを、上手くリード出来る様に書く訳ですね。


● 具合が悪くなって診てもらった。

→調子が悪くなり、エンジニアがメンテナンス

 

● 自分の事だと気付かず返事が遅れた。

→型番で呼ばれた時の反応時間が遅かった


● 体が熱を帯びてきているように感じた。

→本体温度上昇をセンサーが検知


● 次の瞬間、急に何も見えなくなった。

→フリーズ状態

 

 

そして最後に

 

『オチ』と『伏線』の関係は、わかりやすいものと、そうでないものが存在するという事について今回は解説しましたが、物語は『作品すべて』が構成なのです。ですから、ショートショートの様に短い作品では、あらゆる部分に仕掛けを施して、最高の『オチ』を演出する様、心がけて作品作りに取り組む訳ですね。

 

次回は、ショートショート『空が光った夜』の創作プロセス公開です。 

 

 

 

kindle unlimited1日に1000頁以上読まれた人気の指南書です。

 

 

 

 

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(小説・ショートショートを書きたい人の為のまとめ記事)/番外編まとめ記事(6)

番外編/まとめ記事(6)

 


小説の書き方に関するコラムのまとめです。ショートショート作品ではなく、記事をメインで読みたい方の為にまとめてみました。

コラムは通常、前編と後編に分かれていますが、今回はメインとなる後編のみを5記事掲載しています。

 

 

【CONTENTS】 

 

 


伏線の張り方

 

小説、特にショートショート作品の場合には、ストンとくる『オチ』に向けての『伏線』がとても大事です。『伏線』には『オチ』に直結しているものから、構成上の少し分かりにくいものまで、それは様々です。今回のコラムでは、実際の作品を用いて詳しく解説しています。 

『伏線の張り方』に関する記事はこちら↓↓↓

rhirasawanb.hatenablog.com

 


気になるタイトル

 

本を書く上で、そのタイトルはとても重要です。先ずは読者の方が手に取るところからスタートする訳ですから。既に名の知れた著者でない限り、やはり『気になるタイトル』を付けるのが望ましいでしょう。

今回はショートショート作品以外で、私が気になったタイトルの本もあわせてご紹介しています。

『気になるタイトル』に関する記事はこちら↓↓↓ 

rhirasawanb.hatenablog.com

 

 

小説の構成方法

 

小説、ショートショートの構成方法は、その作家によって様々だと思いますが、今回は私自身のショートショートの構成方法を、実際の作品を用いて詳しくご紹介しています。 

 『小説の構成方法』に関する記事はこちら↓↓↓

rhirasawanb.hatenablog.com

 

 

 

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意外な結末

 

小説、特にショートショートで『意外な結末』は基本ともいえる流れですが、では実際にこの『結末』は、どうやって用意しているのか? 基本的にはテーマがあり、そして構成を考える訳ですが、その具体的な方法を作品を使ってご紹介しています。 

『意外な結末』に関する記事はこちら↓↓↓ 

rhirasawanb.hatenablog.com

 


個性的なキャラクター

 

物語の中でのキャラクターは、その『個性』がとても大事です。作家の方によっては『キャラクターが自然に動き出す』と言う方も多くいらっしゃいますが、それはそのキャラクターに魅力的な個性があるからこそ、どんな場面でどのように判断し、そして行動するのか? 等、先々の動きが自然に思いつくのです。

今回もショートショート作品を用いて、どんなキャラクターが描かれているのかを解説しています。

 『個性的なキャラクター』に関する記事はこちら↓↓↓

rhirasawanb.hatenablog.com

 

 

 

創作が上手く進まない……。そんな時、『もしも……』と、あてはめるだけ!

先ずは『試し読み』をどうぞ↓↓↓

 

 

 

 

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(『デキモノ』がテーマの作品例)新作ショートショート(12)/奇病

新作ショートショート(12)/テーマ(デキモノ)

 

 

奇病

 

 

 

 仕事に向かう一時間前、いつもの様に同じメロディがスマホから流れる。マサオはそれを聞きながら、ウトウトと二回目のメロディを待つ。五分後にセットしてあるのは、さっきよりもアップテンポな曲で、これが聞こえたら飛び起きるのがいつもの習慣だった。
 普段はシャワーを浴びてから、軽めの朝食をとるのだが、そのルーティンが乱れたのはシャワーの時だった。
ー後頭部に何かあるー
 少し大きなデキモノの様だが、特に痛みは感じない。とりあえずシャワーを済ませ、鏡でそれを確認する。
「えっ? 口がある!」
 持っていた手鏡を、思わず放り投げてしまった。
 なんと言う事だ。あまりにも衝撃が強すぎたので、しばらく思考回路が停止したままになった。
 そして、自分を落ち着かせ、とりあえず病院の事を考えてみる。そうすると再び、思考が止まる。
「一体、何処の病院に行けば……」
『口』の事だから『口腔外科』が良いのか、場所が『頭』だから『外科』なのか、或いは『整形外科』だろうか……。
 悩んだ挙句、不安でどの病院にも行けなくなった。
 勤務先には、今日は急用で休みたいと伝えた。マサオはとりあえず、いつも通り過ごしてみようと思った。
 仕事に行かない分、かなり時間が余った。先ずはネットで『後ろの口』を調べてみる。当たり前の事だが、そんな症例は無かった。
 その後、思いつくままキーワードを入力して検索したが、マサオを安心させる記事が見つかる筈もなかった。
 直ぐに出来そうな事は無かったので、仕方なく録画していた映画を観る事にした。日曜日に観ようと思っていた『地上波初放送』のものだ。
 映画を観た。しかし、あまり内容が入って来なかった。マサオが時々笑う事があったが、『後ろの口』は無反応だ。
 マサオは少し腹が減った。近所にラーメン店があったが、外食は不安だったので、コンビニで弁当を買った。食事中も普段と何ら変わりがなかった。きっとこれは唇によく似た、ただのデキモノではないかと思う事にした。その後、何も無いまま夜を迎えた。
 次の日は日曜日だった。昨夜は寝付きが悪かったせいか、目が覚めたのは昼前だった。起きて顔を洗い食事をとる。そして歯を磨く。
 電源だけ入れたテレビは、いつも観ないチャンネルになっていて、それを観た時あくびが出て、後でくしゃみもした。
ー何も起こらないー
『後ろの口』は、髪で隠れているから、何もしなければ誰も気付かない。今よりもっと髪が伸びた時、カットをどうするのか考えればいいぐらいだ。
 そしてその日も、結局何も起こらなかった。
 このまま順調にいけば、後ろの口はただの『デキモノ』として、体の一部になる予定だった。
 ところが数日後、『後ろの口』がある事をするのが分かった。マサオが悪い事を言おうとすると、『後ろの口』が勝手に喋り始め、その場を丸く収めてしまうのだ。
 最近、ネットで注文した商品に欠陥があって、電話で少し文句を言ってやろうと意気込んでいたのに、まるでこちらが営業マンであるかの如く、実にソフトなやり取りで終わってしまった。全くスッキリした気分にならなかった。
 交換商品は直ぐに届き、ちょっとしたサービス品まで添えられていた。結果的には良かった訳だ。
 しかしマサオには、大事な問題が残っていた。付き合って一年になる彼女がいる。お互いすっかり冷めている様子だし、最近些細な事からケンカになって、既に二週間ほど連絡をとっていない。
 マサオには、他に気になる女性が居た。いまの彼女とは、もう別れたいと思っている。だから『後ろの口』の存在は、とても厄介だ。
 全て逆の事を言うのならば、対処のしようもあるのだが、悪い事を良い様に言い換えてしまう。
ー別れを告げられないー
 マサオは結局、彼女にずっと連絡をとらず、自然消滅させようと考えた。
 そして電話が、不意に鳴った。『彼女』からだ。出ない訳にはいかない。マサオは覚悟を決めた。『後ろの口』が何を言おうと、自分は別れたい気持ちをぶつけてみようと思ったのだ。
 電話に出て、先ずは『もしもし』とだけ言って、様子をみようと思った。
「君といつまでも一緒にいたい! 君がいないと毎日寂しくて仕方がないんだ」
 いきなり『後ろの口』が喋った。出鼻を挫かれたのだ。防御の隙さえなかった。しかし、マサオは考える。冷めていたのはお互いだったし、ケンカだって最近やったばかりだ。こちらが何と言おうが、彼女だって別れを意識しているに違いない。
 彼女はずっと黙っていた。『何か言ったら?』と、マサオは言おうとした時、再び『後ろの口』が喋り出す。
「君はサイコー、頼む別れないでくれ!」
 マサオは『終わった』と思った。こちらの変なテンションに、呆れてくれる事を願った。
「私の方こそごめんなさい。やっぱりあなたが一番好き! あなたじゃなきゃダメなの」
 意外だった。あんなので良かったのかと、聞き返したかったが、今は何もしない方が無難だ。
 しんとした中、電話の向こうから、彼女のかすかな泣き声が聞こえてきた。さっきの言葉に感動して涙したに違いない。
 結構カワイイ所もあったんだと、マサオも少し胸が熱くなった。
 彼女との別れ話は、少し考え直そうと、マサオは思った。
 電話の向こうでは、マサオには届かない、小さな声が彼女の口から漏れていた。
「うっ、うっ。どうして別れるって言えないのよ、後ろの口は……」

 

 

 

【その他のショートショート作品はこちら↓↓↓】

時空モノガタリ投稿作品 カテゴリーの記事一覧 - R・ヒラサワの〜Novelist's brain〜

時空モノガタリ未発表作品 カテゴリーの記事一覧 - R・ヒラサワの〜Novelist's brain〜

新作ショートショート作品 カテゴリーの記事一覧 - R・ヒラサワの〜Novelist's brain〜

 

 

番外編/オススメ商品

 

 

昨年購入し、当ブログでもご紹介した商品ですが、今年は猛暑に加えて新型コロナウィルス感染予防で『マスク』も必要です。『熱中症』には十分注意しなくてはなりません。

 

昨年は仕事中にエアコンの無い場所だけで使用していたのですが、今年は通勤時にも使用しています。私の主な執筆時間は通勤途中ですので、徒歩での移動時や電車を待っているホームなどではとても活躍しています。

自宅でも部屋から部屋への移動などの場合、その都度エアコンを入れる訳にはいかないので、首から下げたまま使用できて、両手も使えるのでとても便利ですよ。

 


こちらが『充電式ベルトファン』です。

ベルト用のクリップが付いているため、腰にかけて服の中に風を送る事も出来ます。

f:id:RHirasawa:20190809161422j:image

 



今年の夏も暑くなりそうです。皆さんも『熱中症』には十分注意してください。

 

 

 

 

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(解説から学ぶ小説書き方ブログ)今回の作品/青い目の人、コラム/さり気ないセリフと文(前編)

今回の作品/青い目の人

 

主人公の誕生日はクリスマスの数日後。ただでさえ人恋しくなるこの時期、三十歳を目前にした主人公に恋人はおらず、焦りは募る一方だった。待っていてはいけないと、積極的に街に出た主人公だったが……。

 

 


ショートショート『青い目の人』の全文はこちら↓↓↓

rhirasawanb.hatenablog.com

 


【CONTENTS】

 

 


テーマからの発想

 

今回のテーマは『再会』です。『再会』と言えば、個人的に『会いたかった人』と再び出会う、何か『運命』の様な印象があります。実際には逆の場合もよくありますが、今回は少なくとも主人公にとって『良い方』のお話です。

 


発想からのキーワード選出

 

恋人、運命、偶然、再燃、出会い

 

 

POINT1:タイトル

  

タイトルは『青い目の人』です。かなり広い意味での解釈が出来るタイトルにしました。一見すると『外国人の方』のお話みたいですが、そうではありません。しかも『青い目の人』が登場するのは物語の中頃です。

これは私がよく使う手法なのですが、読者の方の頭の中にタイトルのイメージを持ったまま読み進めてもらい、その後に本文との関係性を明らかにするもので、そうする事で、主人公への感情移入を誘う効果があります。中頃で実際に『青い目の人」が出てきた時、まるでそれを知っていたかの様な感覚が生まれるからです。

 

 

POINT2:書き出し

 

 ミキコは十二月生まれだった。誕生月と言えば、外は冬の冷たい風が吹き、ただでさえ人恋しくなる時期だ。

 恋人もいないと言うのに、クリスマスはやって来るし、その数日後には自分の誕生日が待っている。その事が、焦る気持ちに追い討ちをかけているのは言うまでもない。誕生日が来れば、ミキコは三十歳だ。二十代でいられる日は、あと一ヶ月ほどしか残っていなかった。

「やはり行動を起こすべきだわ」

 ミキコは思った。待っていても幸せは向こうからやって来ない。自分から掴みに行くしかないだろう。

 

書き出しで『人物』『時期』『状態』を伝えています。書き方は自由ですが、今回は

 

『主人公の誕生月』→『クリスマス』

→『誕生日とクリスマスの関係』

→『主人公の年齢』→『現在の時期』

 

の順に書いています。全ての情報の関連性を明らかにしておくと、基準となる時期を書くのは一度で済みます。これは文字数の節約となると共に、併せて主人公の心情的な部分も表現出来る訳ですね。

 

POINT3:ユーモア

 

 ミキコは思った。次はこの『青い目の男性』の心を奪うのだと。

 

いきなり『オチ』の部分になりますが、主人公は恋愛において『人から奪う』という『癖』があったのですが、最後はちゃんと『フリー』の人を狙います。しかし、この場面でもう一度『奪う』という言葉を使います。これは主人公が『略奪癖』から抜け出そうとしている状況を、ユーモアを加えて表現しているのです。

 

 

 

 

こちらは私の著書である『作家脳シリーズ』です。既にご好評いただいている
Vol.1は、常にAmazonランキング(文学理論カテゴリー)に登場する人気の書籍です。
シリーズ第二弾と第三弾であるVol.2、Vol.3は、Vol.1で作り上げた『作家脳』を更に『鍛え』、その作家脳を『持続させる』為の方法です。
様々なテクニックと、サンプルショートショートによる実践的な解説です。是非Vol.1と合わせてお読みいただければ、きっと貴方の『創作』の良き『パートナー』となるでしょう。
 
シリーズ第二弾
シリーズ第三弾

 

 


POINT4:前半のストーリー

 

彼氏の居ない主人公の誕生日はクリスマスの直後、更に今年で三十歳になると言う事もあって、その焦りはピークに達していた。


待っていても始まらない。自ら幸せを掴みに行こうと、恋人を見つけるべく、主人公は街へと繰り出した。しかし、主人公には『略奪癖』があった。出会いを求めて歩く中、かつて出会った『青い目の人』の事が頭を過ぎり、あれは恋ではなかったかと思う。

 

 

POINT5:展開〜オチ

 

街中で、この人はと思う男性に近付いて行くが、すれ違いざまその男性と体が触れてしまう。そして次の瞬間、別の男性に腕を掴まれる。

 

 

主人公の腕を掴んだ男性は鉄道警備隊で、『スリ』の現行犯で主人公は捕まった。連行された部屋には、以前に主人公を捕まえた『青い目の人』が居て事情を聞かれる事になったが、やはりこの男性に恋心があり、次はこの人のハートを認めようと思った。

 

 

総合的なポイント

 

既にお気づきかと思いますが、主人公は街に出た時、途中までは本当に好みの男性を探していましたが、ある段階から『スリ』のターゲットを探す目的に変わっていた訳です。もちろんこれは、ある程度ミスリードしている部分があるのですが、今回は少し特殊な形で、最初からずっとミスリードしているのではなく、途中からその状態に徐々に変わっていった訳です。

厳密にどの部分からか、と言うのは少し難しいお話ですが、、主人公の心情が徐々に変わっていくと言う中で起こったという設定です。


コラム/さり気ないセリフと文(前編)

 

小説の中でその展開や伏線、そしてオチにつながるミスリードなど、 さり気なく書かれたセリフや文にも、実は沢山の狙いや仕掛けがあるものです。読者の方が気付かず読んでいたかもしれない『あの部分』について、次回『コラム/さり気ないセリフと文(後編)』で詳しくお話ししたいと思います。

 

 

 

創作が上手く進まない……。そんな時、『もしも……』と、あてはめるだけ!

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(ショートショートのアイデア) ストレスシートからの物語(4)

ストレスシートからの物語(4)

 

 

物語を書く場合、『ネタ元』となる何かしらのヒントが必要です。それは意識して浮かぶ場合もあれば、突然何かがきっかけになる事もあります。大事なのは常にチャンスがあれば書き残す事を意識するのと、多くのチャンスを自ら作る事です。『ストレスシート』もチャンスを作る方法の一つです。今回は第四回目となります。

 

初めてご覧になる方は、以前の記事もご参考に。

ストレスシートからの物語1~3はこちら↓↓↓

rhirasawanb.hatenablog.com

 

rhirasawanb.hatenablog.com

 

rhirasawanb.hatenablog.com


rhirasawanb.hatenablog.com

 

 

【CONTENTS】

 

 

 

ストレスシートの内容

 
右にウィンカーを出して、左に曲がる人

私が遭遇したのは年配の方で、前方を『軽トラック』で延々と右にウインカーを出したまま直進し続けている。『ああ、忘れてるんだな』と思いつつも、『いつ曲がるんだろう?』と、こっちは不安なままです。その後、多めに車間をあけて後ろを走っていると、突然『左』に曲がりました。ウィンカーを『右』に出したまま……。

 

 


ここからのアイデア

 

ある日、突然世の中のルールが変わっていたとしたら、それを知らない人はきっと驚くでしょう。しかも、周囲の人達はみんな知っている中で、自分だけがそれを知らない立場だったら、きっと怖い世界ですよね。

 

 

 

ストレスシートからの物語

 

逆の日

 『右にウィンカーを出して、左に曲がる人』

 

 

 

「あ! また居るよ。右にウィンカー出しっぱなしじゃん。気付かないのかねえ?」
 男は今日も車で配達に出ていた。前日に注文を受けた商品を、客先まで届けるのが男の仕事だ。以前にも同じ様な事をしている車を見た事があったのだ。
 男のすぐ前を走る車は、右にウィンカーを出したまま、片側一車線の道路をひたすら直進し続ける。後続の車は一体いつ曲がるのかと、常に気にしていなくてはならない。男は普段余計な事は一切考えず、運転中に好きなアーティストの曲を聴きながら、リラックスして走るのが好きだった。しかし、今日はそれが出来ない。
 男は毎日ほとんど同じ時刻に、同じルートを通る。周囲を走る車も同様で、少なくとも営業車で会うのは大体同じメンバーだ。
 平日の一週間を通して走ってみると、この車はどの曜日にやって来るかも把握出来る。例えばこれが、現金輸送車だとしたら、こんなパターンでは走らせたりしないのだろうと、男は考える。
 前方の車は普段まるで見かけない。ナンバープレートはこの辺りの物だったが、運転しているドライバーが、道に慣れていないのか、或いは何かを探しているのか。しかし、そんな事は男にとってどうでもよかった。大事なのは正しくウインカーを出して、ちゃんとその方向に曲がってくれる事だ。この車の後ろを走っている限り、無駄に神経を尖らせる必要があるのだ。しかし、ここは片側一車線。無理な追い越しは更なる危険を招くかもしれない。仕方なく後に続いた。
 男が恐れていた瞬間は、それからほどなくやって来た。前方の車が『右』にウィンカーを出したまま『左』に曲がったのだ。
ーやっぱりー
 男は考える。近頃は世の中も複雑になって来てるし、現代人のストレスも多い事だろう。例えばあの車のドライバーが、自分よりもはるかに高齢だった場合、その人物はもっと激しい世の変動を経験して来たに違いない。その流れを経て現在に至っているのだ。
 自分が同じ立場なら、ミスなく運転出来るだろうか? 例えば『電話』はどうだろう? 黒電話から最新スマホまで網羅出来たと言い切れるだろうか? それはその時がやって来なければ、きっと分からない事だった。
 男も若い頃に比べれば、物覚えが悪くなったと言う自覚はあるし、反応だって鈍くなっているだろう。今の仕事も時に複雑だったりして、ミスも増えている筈だ。少しは他人を理解する、広い心を持つべきかと考えた。
 問題の車が居なくなり、前方は広く空いた。いつもより出発が早かったせいか、道はガラリと空いている。ここを少し直進すれば、角に派手なビルが見える。今日、一番目の配達先に向かう為の大きな目印だ。そのビルには有名なファッションブランドが入っていて、建物の規模は小さいが人気があるようだ。朝の配達時には人もまばらだが、オープン前には行列が出来る事もあると言う。
 男の配達ルートには、少し似たような街並みや、目印らしき物がない場所もあったが、この建物の様にインパクトのあると、配達中に少し気を緩めたところで、通り過ぎてしまう事もないのだ。
 赤・黄・青と、三原色を全て使った建物の角を、いつも通り男は左折した。
 次の瞬間だった。対向車がウィンカーとは逆方向に曲がって来て、男の車と衝突したのだ。男は何がなんだか分からなかった。
 相手の運転手が車から降りてきた時、『どっちに曲がってんだ、このバカヤロー』と、言ったのが聞こえた。
 どちらも軽症だった。病院で手当てを受け、警察から事情を聞かれた。過失の割合については、保険会社からの連絡があるそうだ。妻が病院まで男を迎えに来た。  
 家に帰るまでの道中、ファミリーレストランに入り、男は遅めの昼食をとる事にした。既に食事を済ませていた妻はコーヒーを、男はカレーライスを注文した。
「ねえ、あなた。本当に今日の事覚えてないの?」
 怪訝な表情で妻が男に訪ねる。
「うーん。そんな話を聞いていた様な気はするけど……。とにかく、今日がその日なんて意識はなかったさ」
「そりゃそうよね。じゃなきゃ、こんな事にはなってない筈だもの」
ー逆の日ー
 政府が昨年打ち出した認知症予防策で、特定の日に普段とは『左右逆』の事をして、脳を活性化するのだとか。何処かの大学の、『ナントカ』と言う偉い教授が研究した事の様で、今後更に増える事が予測される『認知症患者』を減らす事が目的だと言う。
 今日はその『第一回目』で、少なくとも交通事故の発生件数と負傷者は、例年を上回っている筈だが、政府は一切そんなコメントをしていない。
「もっとマシな事考えられないのかねえ……」
 そう言いながら男は利き手とは逆の左手で、ぎこちなくカレーライスを口に運んだ。

  

 

 

  

タイトル

 

『逆の日』


少々ネタバレ感のあるタイトルですが、あえて付けました。タイトルは比較的ストレートなものと、抽象的なものがあって、今回も『一体何の話?』となるので、このパターンも面白いでしょう。

作中では、徐々にタイトルの意味が分かる構成にしましたが、実はそれって『ミスリード』なんですよね。

 


書き出し

 

「あ! また居るよ。右にウィンカー出しっぱなしじゃん。気付かないのかねえ?」
 男は今日も車で配達に出ていた。前日に注文を受けた商品を、客先まで届けるのが男の仕事だ。


この書き出しは、勿論タイトルとセットです。先述の通り、その後しばらく文字数を使って、『逆』の意味らしきところまで辿り着きます。しかし、『オチ』は更にもう一歩先に用意されているんですよ。

 

 

ユーモアとポイント

 

主人公は自分が遭遇した車のドライバーに対して、一旦は『なんで気付かないの?』と思います。しかし、それを自分に置き換え、しかもそれがもっと年を取ってからの事だったらと、少し相手を思いやる気持ちを持ちます。これは主人公を『いい人側』に一度寄せておき、その先に『オチ』を持ってくる事で、その効果が大きくなる様に構成したものです。

 

 

そして最後に

 

日常の些細な事は、実際小説のネタにする事は十分可能です。私の場合は『ストレス』を書き留めてそれを利用していますが、皆さんが普段生活する中で、出来れば多く溜まってゆくもの、例えば『レシート』などがその例で、溜まった用紙をじっくりと観察し、『これ』と『あれ』を組み合わせてみると、意外とたくさん『ネタ』が出来上がるのかもしれません。是非お試しを。

 

 

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(小説・ショートショート書き方の基本)コラム/アイテムの使い方(後編)

コラム/アイテムの使い方(後編)

 


小説の中に登場する『アイテム』はとても重要ですが、それがテーマそのものである場合と、それをサポートする為のものである場合の、大きく分けて二つのパターンがあり、またそれらが両方登場する作品もあります。

 

 

【CONTENTS】

 


二つのアイテムが登場する場合

 

虹色

 

【テーマ:弾ける】ショートショート『虹色』の全文はこちら↓↓↓

rhirasawanb.hatenablog.com

 

 

【アイテム】シャボン玉+デジタルカメラ

この物語は、写真を撮るのが好きな主人公と、それを通じて知り合った元彼女との、恋愛に関するお話です。

二人は既に別れています。しかし、主人公にはどうしても撮りたい写真があり、その撮影には協力者が必要でした。色々考えた結果、それを頼めるのは『元彼女』だけだったのです。

 

【テーマに必要なアイテム】

テーマの『弾ける』に対して用意したアイテムが『シャボン玉』でした。シャボン玉が弾けたその先に、何かがあると言うイメージが浮かんだのです。

 

【不足しているアイテム】

先ずは『シャボン玉』があります。主人公が小学生なら、このアイテムをそのまま使う事も可能ですが、私の想定では二十代前半ぐらいだったので、その年齢の主人公がシャボン玉を使うには、もう一つアイテムが必要でした。

そこで用意したのが『カメラ』です。シャボン玉を必要とした撮影と言う場面があれば、シャボン玉に違和感が無くなるのです。

 

【アイテムからの構成】

このお話の場合、二つのアイテムによって、構成が随分と楽になりました。物語を展開するこの場所に、『元彼女』を呼びやすくなったのです。

写真が得意な主人公が難しいと感じる撮影で、尚且つ女性のモデルが必要となると、協力者は撮影のモデルでありながら、アシスタントの様な事まで出来なくてはなりません。こうなると『元彼女』がベストですし、『呼べる』と言う事で、この時点での二人の関係性が、それほど悪いものでない事も表現出来る訳ですね。

撮影が進んでゆく中、互いに何となく相手の気持ちを察する二人。そして遠回しの自分の気持ちを伝えながら、相手の気持ちに関しても確信らしきものを感じてゆきます。

結論は書いていません。読者の方の中で完成させて欲しいと思いました。そんな物語です。

 

 

 

 

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一つのアイテムで書く場合

 


挨拶の品

 

【テーマ:贈り物】ショートショート『挨拶の品』の全文はこちら↓↓↓

rhirasawanb.hatenablog.com

 

 

【アイテム】高級洋菓子

この物語は、主人公が住むマンションの隣部屋に、綺麗な女性が引っ越してきて、『挨拶の品』の石鹸を持って訪れて来たところから始まります。

しばらくして、女性には恋人らしき男性がいることが分かるのですが、ある日の夜中に大きな音がして、二人は喧嘩をした様だったのですが、今度は『お詫び』として『高級洋菓子』を手に女性が訪ねて来ます。

 

【テーマに必要なアイテム】

今回の物語では、展開上アイテムが少し変わるので、広く『挨拶の品』となっていますが、これは後に『お詫びの品』や、もっと別の意味を持ち始めます。状況の変化や心境の変化を表現する為に用意したアイテムです。

 

【アイテムからの構成】

ショートショートの構成パターンの一つとして『繰り返し』があります。これは、ある部分について同じ様なパターンを繰り返しますが、内容は徐々に増す方向に進んで行きます。それは、軽いものから重いものと言う流れであったり、悪くなり始めたものが、ついには収拾のつかないところまで進んだりと、そのような変化を遂げる事により、徐々に面白くなってゆくと言う展開です。

今回もそうですが、挨拶の『石鹸』に始まり、次は『高級洋菓子』、そこに加えて『現金』まで上乗せされてきます。そして、それに伴い品物を渡す意味も変わってきます。

 

【石鹸】→【洋菓子】→【+現金】
【挨拶】→【お詫び】→【口止め】


変化の回数は三回が良いと思います。二回では唐突すぎますし、四回は間延びしてしまうと思うのです。

今回、更に加えた展開は、主人公が女性に興味を持ったと言う事です。これにより主人公は、実際に起こっているであろう恐ろしい出来事について、何事もなかった様に過ごそうとします。これは『女性を守りたい』と言う気持ちからである事と、その実、主人公にとっても、女性の恋人の存在は『邪魔』だったのです。

こうして物語は、さらに別の意味の怖さが加わり、幕を閉じるのです。

 


Recipe

 

【テーマ:レシピ】ショートショート『Recipe』の全文はこちら↓↓↓

rhirasawanb.hatenablog.com

 

 

【アイテム】レシピ

主人公の彼氏はイケメンで、とてもモテる男性だったのですが、主人公以外に複数の彼女がいます。しかし、彼女と言っても浅い付き合いで、友達程度の間柄です。『一芸に秀でた女性』と真剣に付き合いたいと考えているのです。

彼は一定期間、自分の設けた基準で女性達を見て、判断する事にしたのです。

 

【テーマに必要なアイテム】

『恋愛にマニュアルはいらない』と言う事をテーマに物語を書こうと思い、料理で『マニュアル』に相当するであろう『レシピ』をアイテムとして用意しました。

 

 【アイテムからの構成】

アイテムが『レシピ』である事から、その主人公は、『料理が得意な人』に設定しました。彼の一番になりたいとの想いで、主人公は色々努力する過程で『我流』で作っていた料理を、『レシピ』を見ながら作る料理へと変えてしまうのですが、それによって主人公の『自分らしさ』が薄れてしまう訳ですね。そしてそれは、彼に『味が落ちた』との言葉を言わせる原因になってしまいます。その言葉にショックを受けた主人公は何も出来なくなり、やがて彼の事を諦めかけてしまいます。つまり、無理に努力しなくなったのですね。しかし、これが功を奏するのです。我流の料理に戻った主人公は、再び自分の良さを取り戻し、彼から選ばれる人になるのです。

 

 

 

そして最後に

物語はアイテムによって大きく変化し、時に構成まで変えてしまうほどの力を持っています。主人公とアイテムの関係性を上手く築く事で、面白い物語が生まれます。テーマに、そして主人公に適したアイテムを上手く使いこなして、素晴らしい世界を作り上げましょう。 

 

 

次回は、ショートショート『青い目の人』の創作プロセス公開です。

 

 

 

 

 

 

 

 

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