ショートショート作家 R・ヒラサワの〜Novelist's brain〜

小説の書き方ブログ。ショートショート作家 R・ヒラサワが自身の作品を用いて詳しく解説。新作随時公開中!

(蔓延する世の中での未知なる再会 #パソコン)今回の作品/習慣

今回の作品/習慣

 

数年前に辞めた会社の後輩に会う為、アポイントを取った主人公。目的は現在使用しているパソコンソフトについて、その方面に詳しかった後輩に色々と聞きたい事があった為だ。未知のウィルスが蔓延する世の中。周囲の人々との接触を避けて、会うのは後輩の車の中となったが……。

ショートショート『習慣』の全文はこちら↓↓↓

rhirasawanb.hatenablog.com

 

【CONTENTS】

 

テーマからの発想

 

今回のテーマは『習慣』です。このテーマですが、この作品を書いていた頃はちょうど『新型コロナウィルス』が蔓延し始めた頃で、それまで普段の外出時に『マスク』をする様な事が無かったのに、すっかり自分の中では当たり前の『習慣』になっているなと感じたのが、このテーマを設けたきっかけです。
一般的に小説のテーマなど、『時事ネタ』は時間の経過と共に『古さ』を感じさせる原因となる為に、避ける方が良いとされていますが、私はあえてこのテーマを設けました。いつかこのウィルスの問題がすっかりなくなった頃に、再びこの物語を読んだ読者の方が、『そんな大変な時期もあったな』と懐かしく感じて欲しいと思ったのと、一方で、早くこの問題が解決して欲しいとの思いがあったからです。

 

発想からのキーワード選出

 

【習慣】【ウィルス蔓延】【油断】

前述の二点に関しては、このウィルス問題そのものですが、最後のキーワードが重要で、人は『習慣化』した事に関して、良くは『慣れ』そして、悪くは『油断』に繋がると考えました。
『ミスリード』の基本として、読者の方に直前まで間違った方向に考えが進んでゆくよう、様々な『仕掛け』をする訳ですが、これはある意味で読んでいる時の『習慣』とも言えます。
読者の方は一般的に、普段読んでいる物語の中で起こる『展開』が無意識に頭の中にあって、これが先を読む『材料』になっています。これらを元に考えを巡らせ、ある程度予想を立てている筈です。ただし、ショートショート様に『どんでん返し』がある事が前提であれば、もっと『深読み』する可能性もありますが、それらの『経験値』加えて、現在読んでいる物語の『方向性』によって、間違った方向へ『リード』されるのも言わば『習慣』なのですね。

 

POINT1:タイトル

 

タイトルは『習慣』です。シンプルにこのタイトルとしましたが、私は常々タイトルに関しては、可能な限り『シンプル』を意識しています。これは何も長いタイトルがいけないと言っている訳ではありません。例えば、そこに『意図的』なものがあったならば、かなり長いタイトルでも良いと思います。しかし、あまり『説明的』なものは感心できません。
物語で言う『説明』とは、登場人物の『行動』や『言動』で示すべきで、勿論ここに『地の文』も含まれます。これらの『説明』とは、如何にさりげなくスムーズに読み進められるかが勝負になる訳で、タイトルも同様、出来れば端的に作品全体を表し、そして『テーマ』や『オチ』にちゃんと繋がったものである事がベストと言えましょう。勿論、そこには本文で言うところの『伏線』的な要素も含まれる訳です。

 

POINT2:書き出し

 

 世界中に未知のウィルスが蔓延してからというもの、知人に会うのも気を使わなければならない。出かける際のマスクの着用などは、当たり前の『習慣』になっていた。他人との余計な接触を避ける為、車の中で会う事にした。

 

主人公が居る世界がどんな状況で、これから何をしようとしているかを書いています。ここで重要なのは、物語の先へと読者を誘導する『文』です。ここでは文末にある『車の中で会う事にした』です。
先ずは主人公が居て、『会う』となると、その相手は『誰なのか?』という疑問が自然に湧いてきます。これこそが『誘導』である訳です。そして、それはどんな状況なのかを読者の方が事前に想像出来る様、『知人に会う』や『出かける際のマスクの着用』といった『ワード』を入れる事で、『知人に外で会う』が、それは『車の中』である、と言うところまでが想定出来る訳です。
そして、そこに前述の問題である『誰に?』が加わるのです。

 

POINT3:ユーモア

 

 横の空いたスペースに、私は脱いだばかりの上着を置いた。並んだ二着の上着を眺めてみる。私の上着モリタのものより随分大きく見えるが、二人の背丈は似たようなものだったし、私が厚みのある上着を着ている訳ではない。単純にモリタの様に綺麗に畳まない。いや、『畳めない』のだ。

 

登場人物の性格を表現するのに、それぞれの行動を『比較』しています。また、主人公に関しては、内面描写も出来るので、更に深い心理の部分まで表現が可能です。今回の作品では、単に性格の表現だけではなく、その先の展開の為の『ミスリード』も含んでいます。無造作に上着を置いた主人公が、その後に後輩の車にそれを忘れるという流れは決して不自然ではありません。ですが、今回は本当に忘れたのではなく、主人公が後に起こす行動の為の『仕掛け』である事が、最後に分かるのです。

 

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POINT4:前半のストーリー

 

数年前に辞めた会社の後輩に会う為、主人公はアポイントを取った。後輩が主人公の家の近所まで迎えに来ると言うので、コンビニの駐車場で待ち合わせる事になった。

 

主人公が後輩に会おうと思ったのは、彼がパソコンに詳しく、現在使用しているソフトについて色々と聞きたい事があった為だったが、他人との余計な接触を避けるために、車の中で説明を聞く事にした。

 

 

 

POINT5:展開~オチ

 

後輩は車の中でソフトの説明をしてくれたが、『念の為』にと取り出したメモに要約した説明を書き、主人公にそれを手渡した。
その後、車から降りて後輩と別ようとした主人公が、車内に上着を忘れており、後輩の声掛けによってそれに気付き、慌てて上着を持ち帰った。

 

主人公は意図的に上着を忘れており、それを取るフリをして、後輩の上着から財布も一緒に抜き取っていた。実は主人公は、この様な犯行を繰り返して生活している。

 

総合的なポイント

 

知人からソフトの説明を聞くという、日常では特に取り上げる程の話題ではありません。この様なストーリーの場合、物語がつまらないものにならない工夫が必要で、今回は後輩がとても『プライドの高い人物』という設定にしています。
そして、かつての先輩であった主人公に対して、自分の方が優秀だと思っているところに、『ソフトについて教える』と言った、優位な立場を予め用意しています。
しかし、作中であたかも主人公が『独立』したかの様な話を聞く場面があり、ここで一瞬後輩は『負け』を感じるのです。
登場人物同士の心理的な『動き』、特に『動揺』や『怒り』などは読者の方が『共感』しやすく、これらは読書を進める『推進力』となり、特に長いストーリーでは、より強く意識するのが良いと思います。

 

コラム/作中に入れる『人物名』の頻度(前編)

 

私は時々、他の作家さんの作品を読ませて頂く事があるのですが、そこで気になった事について、しばらく書かせて頂く予定です。
今回は、作中に登場させる人物名の頻度です。小説は例外を除いて、基本的には『地の文』と『セリフ』の構成で、読者の方に物語を伝えてゆきます。その中で、『誰』が『何』をしたのかを使えるのに、『誰』の部分で『人物名』を表記しますが、何かしら行動を起こす度に書いていたのでは、当然文章としては『うるさく』なりますし、それを省きすぎると、読んだ時に『分かりにくい』ものになります。
どの様な頻度でそれを『表記』するかについて、次回の後編にて詳しく書きたいと思います。

 

更に詳しい内容については、次回のコラム/作中に入れる『人物名』の頻度(後編)
にてお話ししたいと思います。

 

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(#満腹プレートを振り切れ!食べ残し妻の駆け引き)新作ショートショート(25)/食に関する習慣と

新作ショートショート/テーマ(食べ残し)

 

食に関する習慣と

 

 

「ああ、もう駄目だわ。食べられない」
 妻はそう言いながら、ファミリーレストランで注文した食事を残す。
「だから聞いたじゃないか。『本当に食べられるの?』って……」
「だって、全部美味しそうだったんだもん!」
 妻の目の前にあるのは、唐揚げや生姜焼きなどが色々と乗った『満腹プレート』というメニューで、殆ど注文するのは男性客である。しかし、今回は妻がそれを食べている。
 欲張った注文による食べ残しは時々あって、その際に妻が残すのは決まって『好きではない食べ物』だった。
「君ってさあ、いつも好きなものから順に食べるだろ?」
「そうよ、それの何処が悪いの?」
「別に悪くはないけど、俺なんていつも『好きじゃないもの』から食べてるよ」
「ふーん。それで?」
「分かってないねえ。そうする事で後の方に好きなものが残るだろ? その時、ある程度満腹感があったとしても、それが好きなものだから、結局ちゃんと食べる事が出来るんだよ。いつも俺が食べ残しを出さないのは、そういう事なんだ」
「へえ。でもそれって結構無理して詰め込んでるって事よね? だから貴方はどんどんお腹が出てきて、度々ズボンを買い替えないといけないんじゃないの? それって家計に響く無駄な出費よねえ?」
「それを言うなら君だって同じじゃないか。食べ切れないもの注文してるんだろ? だったらもっと量の少ない安いメニューを頼めばいいじゃないか」
「あら、そんな事言うわけ? 月に一回程度の外食は安いファミレスで我慢してるって言うのに、そんな時ぐらい自由に選ばせてあげようって優しさが、貴方には無いって事よね!」
「そう言う訳じゃ……」
 私の食事の習慣は母親からの教育だった。子供の頃、好き嫌いの激しかった私に、何とかそれを克服させようと、決められたルールが『嫌いなものから食べる』であった。
 子供の頃は空腹であれば、少々嫌いなものでも食べてしまった。単純にそれを利用しただけの事であったが、これが抜群に効果があった。食べ続ける事で嫌いなものが減り、高校生になる頃にはすっかり何でも食べられる様になっていた。私は今でもこの食事のルールが良かったのだと思っている。
 一方の妻は『好きなもの』から食べるタイプで、先ずは一つのおかずを食べ切る。妻曰く、他のおかずの味に影響されるのが嫌なのだそうで、その結果一品ずつ完食してゆくとの事。そして、好きなものから食べ切っていった結果、後半に残るのは『好きではないもの』で、こんなパターンで食べたのでは、おかずが残るのは当たり前だと私は思っている。
 更に問題なのは食事前で、菓子類などは平気で食べるし、時にはケーキの様に甘いものまで食べるのだ。『空腹状態』で食事に挑んでいる私と比較して『食べ残し』が多くなるのは当然の結果と言えよう。
 こんな二人のやり取りはよくある事だが、可愛いところも沢山ある人で、私は妻を心から愛している。おかずの食べ方の如く、私は『女性選び』も、実は似た様な考え方を持っていたのだ。
 独身時代に好感の持てる女性が数人いた。私は真面目だったので、複数の女性と同時に深い交際などしない。あくまで『友人』といったところからのスタートだったが、比較的趣味の合わない女性から順に交際を始めていった結果、最終的に付き合ったのが現在の妻で、私に最も合っていると感じ、結婚を決めた。
 私がこの様な順序で女性と付き合ったのは、しっかり自分の適正や相性といったものを確かめたい気持ちがあったからで、今でも自分の目に狂いは無かったと思っている。
 妻は毎日そっけない態度で私と過ごしている。昔からあまり感情を表に出さない人なのだ。しかし、本当は私の事をとても愛している筈だ。
 私はもう一度妻を見た。既にスマホ画面に夢中で、相変わらず私に関心を示さない様子だが気にはしない。それはいつのも事だから……。
 一方の妻は食事の時、いつでも『好きなもの』から食べるタイプだ。実は『男性選び』も同様で、独身時代に好感の持てる男性が数人いて、『最も好きな男性』からアプローチしていった。しかし、それらを全て断られた結果、最後に残ったのが現在の夫である。最も興味が薄く、関心のない相手だが、普段は適当に話を合わせていれば、生活する上で特に問題無しと判断し、多くの妥協と共に結婚を決めた。
 しかし、その事実を夫が知る日は、まだまだ遠いようだ。

 

 

 

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(ショートショート作品のリライト手法)if『もしも』創作naviを使ったアレンジ例(1-2)

if『もしも』創作naviを使ったアレンジ例(1-2)

 

ショートショート作品のアレンジ方法として、私の著書である『if『もしも』創作navi』を使用して、実際に過去に公開した作品を『リライト』する記事の第二回目です。作品は『未来から来た男』です。

 

今回作品の『アレンジ』に使用しているのがこちらの本です。

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【CONTENTS】

 

 男が指定してきたのは、駅から少し離れた場所にある、小さな『喫茶店』だった。外観の様子とは違い、中はそれなりのスペースがあった。革張りの椅子に、小さいながらも一枚板を使用したテーブルと、異なるイメージで飾られた油絵は、一定の客を寄せ付けない雰囲気があった。

こちらが前回までの文章です。

 

先ずは『場面設定』ですが、この時点である程度主人公や周辺人物のイメージを読者に伝える必要があります。最初の『喫茶店』ですが、これは現実世界でもある事だと思いますが、『人物による選択』とは、その人の『性格』や『センス』がある程度現れるものですから、この様に本人の行動や言動以外でも、それらを表現する事が可能ですので、できる限り有効に利用しましょう。

 

 

 

以降、続きの文章です。

 約束の時間から十五分ほど遅れて男は姿を現した。普段から余裕を持って準備をするコウタは、到着から既に三十分近くここに座っている。男のルーズなところは、あの時と少しも変わっていない様だ。
「待った?」
 まるで普段から何度も会っている友人に話すかの様、男がコウタに声をかける。
「いえ。さっき着いたところです」
 コウタは自分が何故男に気を使ったのか分からない。母から聞いていた男の『イメージ』と『現実』の間にあった『ギャップ』が、それに関係している事は間違いないだろう。

 

此処でも主人公と男の『性格付け』をしています。約束の時間に対する行動によって、それを表現する事と、互いに会話した後の反応や行動と言った物でも、そこに『性格』が出るものです。そして、これらは単に『書く』だけでなく、後々のストーリーに関係した物でなくては『文字の無駄使い』になってしまいます。
今回の主人公の反応は、この先に起こるエピソードに対する『伏線』の様なもので、特に人物が先のストーリーで『意外な行動』に出る場合など、ある程度の『前振り』が必要です。ここを怠ると読者に『唐突感』を与えてしまい、現実世界に引き戻された読者が読む事をやめてしまう場合も出てきます。全ての物語が最後まで読んでもらえる訳ではありません。むしろ途中で読まれなくなる可能性が、思った以上に高い事を常に意識して、如何に読者を最後まで惹きつける文章を書く努力を怠ってはいけないのです。

 

前回及び今回の文章は、if『もしも』創作naviを使用してアレンジしたものです。実際の創作で、私は『書ける所』から書き、それらを繋ぎ合わせ、その後数回修正を加える事があります。

その為、これ以降の文章については、一応の完成状態になってから公開し、創作過程はその時に合わせて公開したいと思います。
どうぞお楽しみに。

 

 

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(驚きの展開!『未来から来た男』をアレンジ #創作ナビ)if『もしも』創作naviを使ったアレンジ例(1-1)

if『もしも』創作naviを使ったアレンジ例(1-1)

 

ショートショート作品のアレンジ方法として、私の著書である『if『もしも』創作navi』を使用して、実際に過去に公開した作品を『リライト』してみたいと思います。
そして、ここでは単に作品のアレンジだけでなく、ショートショート作品を書き上げるまでの過程をご覧頂くことで、様々な手法についても触れてゆきたいと思っています。
今回の作品は『未来から来た男』です。

 

今回作品の『アレンジ』に使用しているのがこちらの本です。

先ずは『試し読み』をどうぞ↓↓↓

 

【CONTENTS】

 

 

『未来から来た男』のアレンジ内容


●時代/過去→現在

●時間/ -->夜→昼

●構成/男に復讐する→男から金を取り返す

 

アレンジ後のあらすじ


主人公の両親が離婚直後に現れた男は、母親の再婚相手となる筈だったが、多額の借金を母親に負わせたまま姿を消した。その後、心労を重ねた母親は、主人公が高校卒業後の就職先が決まった矢先に他界した。
母親を苦しめた男から金を取り返す為、主人公は男の居場所を探し求める。


●『タイムマシン』は使用しません。母親の死後数年経っている想定です。
●男には昼間に直接会いに行きます。基本的にはアポイントを取った後、話し合う為の訪問です。
●母親名義で借りたお金を男が使っており、その返還を要求する流れです。

 

変更部分のあらすじ


男の借金問題による『心労』から、主人公の母親は体を悪くして他界するまでは同じですが、その後は主人公が『復讐』するのではなく、男と話し合って『お金を取り返す』と言う流れです。そして、主人公は男にちゃんとアポイントをとって、会う約束をすると言う初期段階の設定です。

ここまでの『あらすじ』から考えられるストーリーがある程度浮かんだと言う方は、さて、どんな『書き出し』をするでしょうか?
『時系列』に対して素直に書くとするならば、母親の『他界前後』辺りから始まって、ある程度の期間に関しては『省略』する方法もあります。しかし、個人的には『何年後』と言った表現はあまり好まないのと、『インパクト』の問題を考えると、あまり良い方法とは思えないので、別の部分からスタートします。

私が最も良いと考えたのは、主人公が『男と会う場面』です。主人公は姿を消した男とは、数年間会っていない状態です。その後、色んな過程を経て男と会う訳ですが、それらを順に書いてしまうと、当然物語に『もたつき』が出てしまいます。それらを解消するのが『インパクト』のある場面から始めるという方法です。
読者が読む事を継続したいと思う原動力は、簡単に言うと『何故』を繰り返す事です。長年あっていなかった二人が、突然『会っている』状況ですから、先ずは読者が『何故?』と考え、その先に『どうして?』と続くのです。

 

 男が指定してきたのは、駅から少し離れた場所にある、小さな『喫茶店』だった。外観の様子とは違い、中はそれなりのスペースがあった。革張りの椅子に、小さいながらも一枚板を使用したテーブルと、異なるイメージで飾られた油絵は、一定の客を寄せ付けない雰囲気があった。

 

さて、この後は次回(1ー2)へと続きます。

 

 

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(『ルーティン』がテーマ! 新ショートショートの世界)新作ショートショート(24)/同じ日

新作ショートショート/テーマ(ルーティン)

 

 

同じ日

 

「毎日が『同じ日』ならなあ……」
 テツロウはいつも思っていた。子供の頃から環境の変化に対応するのが苦手で、新しい事を始めると全身に緊張感が走り、どこかしら体の部分に痛みを感じるのだ。
 小学生の頃は幼稚園からの変化で全てが新しく、周囲の友達も一気に増えた為、それに慣れるまで随分時間がかかった。
 この時は毎日『かかと』が痛かった。近所の『外科』で診てもらったが、悪い所は無いと言われた。ここのドクターはすっかり馴染みの相手だったので、無駄に緊張する事はなかった。
 テツロウは毎日痛む『かかと』と戦いながら、あまり楽しくない学校生活を送っていたが、ある日突然痛みが消えた。理由は単純だった。『アツコちゃん』に恋をしたのだ。
『アツコちゃん』とは幼稚園で同じ『組』だった。その時は特に意識はしていなかったが、小学生になったある日、偶然街で会った。母親同士が知り合いだったので、どちらともなく声をかけ、お茶をする事になったのだ。子供たちが退屈してるのに気付いたテツロウの母親が、そこから近い『卓球場』に行こうと皆を誘った。
 テツロウにとって『卓球場』は馴染みの場所である。スポーツは得意でなかったが、『卓球』だけは家に『ラケット』と『ネット』があって、テーブルを『台』代わりに普段から時々遊んでいた。実は母親が得意なのが『卓球』だったのだ。
 ここには何脚か丸椅子があって、ゲーム中でない人が座れる様になっている。近所の高齢者達は喫茶店の如く平気で長時間座っているが、オーナーはそんな事はまるで気にしない人だった。
 テツロウの母親は『アツコちゃん』と卓球をする様勧めた。子供たちを遊ばせている間、母親たちは話に花を咲かせるつもりだったに違いない。しかし、そのおかげで、テツロウはアツコちゃんとすっかり仲良くなれたのだ。テツロウの恋の始まりだった。
 しかし、二年後アツコちゃんは父親の転勤で、遠い街に引っ越してしまった。テツロウの『恋』は終わり、新しい『痛み』がやって来た。今度は胸の中心部分だった。
 痛みの原因が複雑そうなので、総合病院に行った。初診でドクターに『肋間神経痛』だと診断された。ドクターは色んな説明をした様だが、テツロウはやはり、痛みの原因を『環境変化によるストレス』だと思っている。
 テツロウの様な性格の人間は、『転職』を避けるべきだろう。新しい環境はストレスの原因になる。だから、出来る限り早く仕事に慣れて、そこを辞めないのが得策である。しかし、世の中は上手く回らない。『倒産』や『減給』、中には『パワハラ』の問題等もあって、結局テツロウは何度か転職を余儀なくされてきた。
 気付けばテツロウもいい歳である。現在の職場に辿り着く迄の就活期間、就業支援機関で言われたのが、『貴方の年齢で正社員は無理だと思いますよ』だった。幸いテツロウは『正社員』での採用だったが、そこから更に歳を重ねている。次の『正社員採用』は、難しいかもしれない。
 不利な転職を考えると、出来れば今の職場に長く留まるつもりだった。仕事はある程度経験を積めば、必ず慣れる筈だ。一般の企業ならば当たり前の事だろう。しかし現実はそうではなかった。今の職場は担当がコロコロと変わり、少し慣れた頃に、また一からのスタートの繰り返しで、それが『ストレス』の原因になっている。
「同じ日がいい!」
 ある日の出社時、テツロウが思わず声を漏らした。通勤には自転車と電車を利用しているが、出社時間が早い為、普段から自転車で人とすれ違う事は殆どなかった。最寄り駅までは『自転車歩行者道』が長く続き、その半分あたり迄は緩やかな下り坂になっている。道中に大きな神社の横を通る場所があり、テツロウはここが一番のお気に入りだった。
「ずっと同じ様な日が良いんだよ!」
 今度はもっと大きな声で言った。神社の横を通り過ぎる、その場所を選んで叫んだのは『神への願い』があったからだろう。テツロウにとって、今の職場環境は堪え難いものだった。
 緩いカーブを曲がる最中、不意に人影が見えた。部活動の為か、登校時よりも早いこの時間に女子高生が前を歩いていたのだ。テツロウはそれを避けきれず、ハンドルが女子高生の腕に当たった。『痛い!』と声を上げた女子高生は、少しよろめいただけだったが、バランスを崩したテツロウは転倒し、自転車もろとも坂を滑って行った。
 地面に倒れたテツロウは、強い痛みを感じながら顔を上げた。次に飛び込んで来たのは、後続のスポーツ自転車だった。急ブレーキをかけた様だが間に合わず、テツロウの足を容赦なく踏みつけた後、テツロウ以上のパフォーマンスで派手に転倒した。
 無傷に近かった女子高生が救急車を呼び、ついでにテツロウたちは『写メ』を撮られた。幸いな事に救急車の到着は早く、自転車の二人は別々の車で運ばれた。テツロウを乗せた救急車は、ケガの程度以上に大きなサイレンを鳴らし、最寄りの病院へと向かった。
 赤信号で交差点に侵入する際、周囲にそれを知らせながら、慎重に救急車はテツロウを運ぶ。しかし、スマホの操作に気を取られていたドライバーの車が、左側から突っ込んで来た。救急車は横転し、テツロウの症状は『軽傷』から『重傷』になった。追加で要請した救急車の到着には、それなりに時間がかかった。
 気付けばテツロウは病院のベッドに居た。腕にも足にも痛みを感じ、担当ドクターの話では数箇所骨折しているが、命に別状はないとの事だった。とんでもない一日になってしまった。
 翌朝、テツロウは目を覚ますと、いつも通り会社に通う準備をした。自転車に乗って見慣れた坂を下る道中、大きな神社の横で「ずっと同じ様な日が良いんだよ!」と叫んだ。その後、女子高生にぶつかり、自転車ごと転倒し、後続の自転車に足を踏みつけられる。そして救急車で運ばれる最中、横から車に突っ込まれ、『軽傷』だった筈が『重傷』になって、気付けば病院のベッドで腕と足に痛みを感じていた。
「まさか……」
 テツロウが最後に見た『一日』が、この先何回繰り返されるか分からない。腕と足に痛みが走る。テツロウは『アツコちゃんに会いたい!』と心の中で叫んだ。

 

 

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創作技術シリーズ: 書くことの方向付け『必ず見つかる物語の『アイデア』と『展開』/if『もしも』創作navi』発売

六冊目の本を出版しました!

 

『必ず見つかる物語の『アイデア』と『展開』/if『もしも』創作navi』出版しました。【2022.06.25】

 


今年に入って初の書籍となります。既に発売済みの『作家脳シリーズ』は全五巻でしたが、新たに『創作技術シリーズ』がスタートし、今回は第一弾となります。
これまでのブログ記事を再編集したものと違い、一から原稿を起こした為に予定よりも三か月遅れの発売となりました。

 

書籍の簡単な紹介になりますが『作家脳シリーズ』は簡単に言うと『小説の書き方』ですが、今回の『創作技術シリーズ』は更に踏み込んだ、『書けなくなった時点からの方向付け』と言った内容になります。
作家として書き続ける為には、先ず『書ける』事が重要なのですが、勿論それを『持続』させなければいけません。例えばそれがスムーズに進んでいる時はそれで問題ありませんが、やはり誰しもそれが『止まる』時がやって来るのです。それを単に『スランプ』と片付けてしまうと、そのまま『書けなくなる』パターンもあるので、これらの問題を解決しなければなりません。それには『根本的な原因』を確かめる必要があるのです。

 

❶書く事に問題がある場合
 ●書く為の技術に問題がある
 ●技術を磨く方法に問題がある
 ●『書く』を持続出来ない

 

❷筆が止まる原因がある場合
 ●先のネタが浮かばない
 ●構成に問題が出た
 ●伏線が回収出来ない
 ●創作途中で物語が面白くないと感じてきた

 

少し分かりにくいかもしれませんが、先ずは❶の様な『書ける』状態を作っておく。そして、それをキープする事が出来るならば、特に何も必要ありません。しかし、人間の頭はそれほど都合よく働いてはくれません。ですから、尚且つ❷の様な問題が発生した時は、その対処法が必要だと言う事なのです。

『作家脳シリーズ』は❶の為の本で、『創作技術シリーズ』は❷の為の本です。私が用意した四十五のヒントを元に、

 

●ネタを浮かばせる
●構成を整える
●伏線を回収可能にする
●物語を面白い方向に導く

 

創作が上手く進まない……。そんな時、『もしも……』と、あてはめるだけ!

先ずは『試し読み』をどうぞ↓↓↓

 

上記の様な環境を作って頂ける様、創作時に想定される様々なシチュエーションを用意しています。【Kindle Unlimited対応】。是非ご一読を。

 

 

 

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(視点の世界)創作の動機/視点

創作の動機/視点

 

ショートショートの創作プロセスを、その『動機』に絞って公開するものです。深くそれを知ることで、ご自身の創作時のヒントにして頂きたいと思います。
今回の作品は『視点』です。【ネタバレあり】

 

【CONTENTS】


過去の出来事


『小説の書き方』について、時々問題になるのが『視点』。これは要するに『誰』の視点から物語を書いているかと言う事なのですが、小説の書き方に慣れていない方には、時々理解が出来ない場合がある様で、簡単に言うと『主人公』の視点で書く場合は、主人公が『見たり』『聞いたり』していない事については『書けない』と言う考え方で良い訳ですが、実際に物語を書いている『作者』は、その『全て』を知っている為、少し混同して『書いてはいけない事』を『書いてしまう』のですね。
そして、その視点の位置を誰にも固定せず、全てについて語れる『空の声』の様な存在と言うか、そんな視点の事を俗に『神様視点』と読んでいます。
今回のテーマである『神様』と聞いた時、真っ先に私の頭に浮かんだのが『神様視点』です。ですから、今回に関しては、実に早い段階で『書く方向性』は決まりました。

 

抽出されたネタ

 

【神様】【視点】【千載一遇】

 

『神様』が登場し、そこに『神様視点』のキーワードがある。そして、もう一つ浮かんだのが『千載一遇』のチャンスです。もし、現実世界に『神様』が居たとして、その方が普通の人間の様に日常生活に『紛れ』ていたとするならば、実際に会うチャンスとは『千載一遇』と言う事になるでしょう。そして、神様も何か『用事』があったからこそ、わざわざ人間に会いに来てくれた筈ですね。そんな事を考えているうちに、色々とアイデアが浮かんできたのです。

 

 

常にカテゴリーランキングに登場する人気の指南書『作家脳シリーズ』第一弾!

 

 

創作の開始地点

 

主人公は出版社に電話連絡をして、編集長に会う約束が出来た。忙しい毎日を送る『編集長』。なかなか『アポ』は取れないが、今回は上手くいった。それは主人公が編集長に大事な事を伝えなければいけないからだ。
原稿を読んでほしい『作家志望者』を装って入り込んだ出版社。会う口実の為、それなりに書いた『原稿』。メインではなかった原稿を読んで機嫌を損ねた『編集長』。書き方の基本がなっていないと、ダメ出しの連発だった。
『原稿は』メインではない。大事なのは編集長に『ある事を伝える』である。まるで話を聞こうとしない編集長に、主人公は上手く『伝言』を伝えられるのか?

 

 

 

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