R・ヒラサワの〜Novelist's brain〜

小説の創作プロセスを公開しています

(初心者必見! 小説の書き方は作品から学ぼう!)ストレスシートからの物語(1)

物語(1)

今回はストレスシートからの物語第一回目です。今回より、三回に渡って各二作品ずつ公開させていただきます。 

物語の元ネタとなっているストレスシートについてはこちら ↓

rhirasawanb.hatenablog.com

 

【CONTENTS】

 


目障りな女

 『リアクションの大きい女性』

 


「クソ! またあの女だ!」

 男は手に取った商品を棚に戻した。仕事帰りの夕刻、男は時々このスーパーで買い物をしている。

 男は独身だった。もうすぐ四十歳になるが、結婚の予定どころか長らく相手も居ない。転々とした職のお陰で経済状況も悪く、相手探しに支障をきたす一因だと思っていた。

 月々の出費の中で、食費が占める割合が大きい事はわかっていた。しかし自炊はしなかった。

 時間が取れないだけではない。服のセンスもかなり悪いが、それ以上に料理のセンスが酷かった。

 何度かチャレンジしたものの、まともに食べれるレベルには程遠い。これならばスーパーの惣菜コーナーで、上手に買い物をした方が断然いいと思った。

 男にとって夕刻は勝負の時間だ。大勢いる割引目当ての常連客と競り合い、少しでも上手く目当ての商品を手に入れなければならない。

 レジカゴにキープするタイミングが早すぎると、在庫が少ないと判断されて、割引をスルーされる事もある。逆に遅すぎると商品をゲット出来ない。常連客同士は、常に腹の探り合いなのだ。

 目当ての商品は決まっている。今日はキープ出来そうだ。それを手に取り棚の角を曲がるのだ。しかし、邪魔が入った。時々現れる『目障りな女』だ。

「そう、そう、そう!」

大声で相槌を打ったかと思うと、

「パン、パン、パン!」

と、手を叩く。気が散って男は目的の品を手に取るどころでは無くなった。

 目障りな女は一つの仕事を終えた。かつての万引きGメンは、今や犯罪抑止の方向へと変わりつつある。今日も男の万引きを事前に抑止する事に成功した。

 

 

タイトルと書き出し


『目障りな女』

このタイトルで始まる事で、誰かから嫌悪感を抱かれている女性が居る事が分かります。

 

「クソ! またあの女だ!」

 男は手に取った商品を棚に戻した。仕事帰りの夕刻、男は時々このスーパーで買い物をしている。

 この書き出しで、主人公は既に女性と何度か会った事があり、その関係性も少し明らかになってきます。

更に読み進める事で、主人公はあまり女性にモテないタイプである事も分かってきます。

 

 

ユーモアとポイント


主人公の独身生活を、割引商品目当ての常連客と組み合わせる事で、独り身の寂しさから来るストレスと、経済的に余裕のない環境を表現しています。


主人公はオチで、万引きをしようと試みる訳ですが、現実世界では経済的理由が無いのに、ストレスから犯行に及んでしまう場合もあります。

今回は経済的な問題とストレスの両方が重なり、万引きに至った訳です。リアリティを持たせる為に、この様な設定にしています。

 

 

 

 あの人

 『仕事をしない人』

 

 

「あーあ。今日もまた残業だよ!」

 フロアの隅まで届く程のボリュームで、男が言った。

「『あの人』またあんな事言ってますよ」

 その男を見ていた別の社員二人が話す。

「やだねえ、ああいうの。誰がどうだとか段取りがこうだとかって、じゃあ自分はどうなのって思うよね?」

「そうですよ、他人には厳しいくせにね。僕が外回り行った時なんて、帰り時間が遅いのどうのって言われましたよ」

「そうなの? 『あの人』が行った時なんて、一体何社回ってんだって思うぐらい帰って来ない時とか多いし、酷い時なんて出先から自宅へ直帰だよ」

「本当ですか? 自分だけそんな事やってるんだ」

「そりゃそうだよ。だって本人は『自分が社内で一番偉い』って思ってるんだから」

「へーえ。あんなに文句言ってるヒマがあるんだったら、他の人の仕事を手伝ってくれればいいのに」

「ああ、そう言う事だよ。全くな!」

 日頃、周りの社員達から『あの人』と呼ばれている『社長』への悪口は今日も止まらない。

 

 

 タイトルと書き出し

『あの人』

悪口を言う時、本人に聞かれても誤魔化せるよう、『あの人』って言葉は便利ですね。それが今回のタイトルです。

主題としての要素と伏線の、両方役割を果たしています。

 

 

「あーあ。今日もまた残業だよ!」

 フロアの隅まで届く程のボリュームで、男が言った。

 あまり周囲のことを考えないタイプの男が、オフィス内で大きな声を上げます。

次の文章で周囲にいた人達がそれを聞いて、悪口を言う流れになります。

この男の様な行動は、一般社員がする場合もありますし、後に出てくる社長がする事もあり、まだ誰なのか明らかにしていません。

 
この様に一つの文章によって複数の事が想定できる様に書いた方が、より読者の方をミスリードしやすくなり、伏線を張る時の大きなポイントと言えます。そしてその書き方は、あくまでも『本当の事だけを書く』です。

 

 

 ユーモアとポイント

 『あの人』への悪口を徐々にヒートアップさせる事で、読者の方は『あの人』は一体誰なのかと、どんどん気になる筈です。

 

  

「そりゃそうだよ。だって本人は『自分が社内で一番偉い』って思ってるんだから」

 この部分も『ミスリードですね。あたかも『一般社員が社長の如く』振舞っている様に書く事で、『あの人』の候補から一旦『社長』を外す効果があるのです。

『オチ』は出来るだけ落差をつけた方が面白くなりますので、更にそれを広げる効果を狙った訳です。

 

次回は、『ストレスシートからの物語(2)』の公開です。

 

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