物語(2)
前回に引き続き、ストレスシートからの物語です。今回は第二回目です。
物語の元ネタとなっているストレスシートについてはこちら ↓↓↓
【CONTENTS】
責任の所在
『ミスを他人のせいにする人』
「ここのネジを締めるのは、君の仕事だよね?」
「ええ、そうですが……」
「昨日お客さんに届けた製品に、そのネジが付いてなかったそうだ」
「でも私の能力では、百パーセント完璧な作業は無理だからと、貴方が抜けをチェックする為に、そのポジションに付いてもらったのでは?」
「キミ! 先輩であるボクに対して、何て口のきき方をするんだ!」
「先輩って言われても……。仕事って結果が大事なんじゃないですか? 私は上司から言われた仕事を、ちゃんとこなしている訳で……」
「な、何を言う!」
「今回の件で言うと、ミスは貴方の責任だと思いますがね。もう先輩達のやり方は時代遅れだと思いますよ」
「何だと! 私達が居たからこそ、今の君があるんじゃないのかね!」
「さあ、どうでしょう? 私は貴方達から何かを受け継いだと言う訳ではなく、最初から優れた能力を備えていたから、この会社に採用されたのです!」
「新入りのくせに生意気な!」
言い争いが続く中、工場長がやって来た。今回のミスについて詳しく調べている様だ。争っていた者は、共にその行方を見守った。
「ああ、こいつが原因みたいだなあ。部品チェック用のロボットも、随分精度が落ちたもんだ。旧型でもそのくらいは大丈夫だと思ったんだが……。直ぐに最新型と入れ替えるとするか」
タイトルと書き出し
『責任の所在』
工場での流れ作業など、複数の作業者が居ると何かしらトラブルになる事があります。そこには『責任』と言う言葉もよく飛び交います。
今回はオチとの関係もあって、あえてこのタイトルにしました。
「ここのネジを締めるのは、君の仕事だよね?」
「ええ、そうですが」
「昨日お客さんに届けた製品に、そのネジが付いてなかったそうだ」
この時点で、既にトラブルの予感ですね。少なくとも最初に話した人(ロボット)は、ミスの責任が自分に無い様な言い回しをしています。
しかし、わざわざ前もって誰の作業か確認しているのは、自分にも責任の可能性があると思っているからです。
ユーモアとポイント
仕事はイマイチだけどプライドの高い先輩と、仕事が出来る生意気な後輩と言う構図です。言葉の掛け合いは、こう言った関係性が面白いと思いますし、他にも組み合わせは色々あるでしょう。
ポイントは、お互いに何か欠けてる部分があって、それは双方違う場所で、なおかつ対照的なのがベストだと思います。
その組み合わせだと、ずっと言い合ってもきっと答えが出ないですよね?
爆喰い男
『試食を爆喰いする人』
「ちょっと店長。例の人、また来たんですよ」
「ああ、あの『爆喰い男』の事か……。でも試食で出してる以上、こちらとしても文句が言えないからなあ」
「だって一度も買った事無いんですよ、あの人。おまけに全商品を爆喰い! 食べるのが目的に決まってます。試食を出すの、やめちゃいけませんか?」
「他にもお客さんが居るからね。味を確かめてもらう必要があるんだ。だから試食を無しにするというのは無理だよ」
「あの人食べるだけじゃなくって、これの中身は何だとか、調理方法はどうかとか、色々聞いてくるんですよ!」
「それでも、やっぱり買わないんだろ?」
「ええ、そうです」
「うーむ、困ったもんだなあ。じゃあ説明は適当で構わないから、とっとと帰らせて、次のお客さんに力を注いでくれないかな」
「わかりました。でも、試食はどうします?」
「そうだな……。そうそう、製造過程で失敗作があっただろ。あれを男に食わせればいい」
「でもあれは材料とのバランスが崩れてますから、随分と味が落ちるんじゃ……」
「構わないさ。だって、その男は何種類も口に入れて一緒に食べるんだろう? 味なんて分かってないさ」
「そ、そうですよね! 次からそうします!」
その後も『爆喰い男』は何度か現れた。
そして今日もやって来て、いつもの様に試食品を爆喰いして去っていく。
少し離れた場所で、試食を爆喰いした男が言った。
「一定期間、フランチャイズ店の調査をしてきたが、あの店舗は全くなってないな! 味は不安定だし、販売員の説明も適当で、社員教育が出来ているとは到底思えない。契約解除の方向で話を進めるとしよう!」
タイトルと書き出し
シンプルに『爆喰い男』としました。このタイプの話の場合、タイトルに情報を盛り込み過ぎると、ネタバレになる可能性が高くなると思います。
このぐらい短い方が読者の方に『一体何だろう?』と思ってもらえるのではないでしょうか。
ユーモアとポイント
『爆喰い男』がとても迷惑な存在だと、店員側に同情心が芽生えると思います。そうなると、その人への対処法もある程度までは許せる気持ちになる筈です。
対処法が酷ければ酷いほど、オチが分かった時の面白さが、ぐっと増す効果がある訳です。
次回は、ストレスシートからの物語(3)の公開です。
『ショートショートの書き方』を、作家の視点で詳しく『超解説』‼
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