カメラがある時
ある男が語り始めたのは、この周辺で過去に起こった殺人事件の話だった。その事件を詳しく知る男は、事件について様々な事を語り続けるが……。
【CONTENTS】
- テーマからの発想
- 発想からのキーワード選出
- POINT1:タイトル
- POINT2:書き出し
- POINT3:ユーモア
- POINT4:前半のストーリー
- POINT5:展開〜オチ
- 総合的なポイント
- コラム/情報の開示(前編)
テーマからの発想
今回は自由テーマでした。私が用意したテーマは『カメラ』です。
カメラと言えば単純に写真を撮ると言う動作が浮かびますが、写真は『記録』であり、これは『証拠』としての役割も果たします。『記録』から『証拠』に変わった途端に何やら犯罪チュックな雰囲気が漂い始めましたね。
発想からのキーワード選出
カメラ、写真、モノクロ、カラー
フィルム、記録、証拠
今回出たキーワードは、ほぼ作品内に取り込みました。あまりひねりのあるワードは無かったのですが、作品のアイデアが出た時に、文章の運びを工夫して作品を仕上げようと思ったので、ワードはそのままで書き進めました。
POINT1:タイトル
カメラがある時
このタイトルは、勿論オチに直結しています。主人公は『カメラ』を切り口に語り始めます。しかし、その内容自体に『カメラ』は無くてもいい訳で、要はストレートに語れる話ではなかったのですね。
POINT2:書き出し
あの時カメラがあったらって、私は本当にそう思うんですよ。
え、何の話かって? ああ、以前にこの辺りで起きた殺人事件の話ですよ。知りませんか? そうですか。じゃあ、お話して差し上げましょう。
男が語りたいのは『殺人事件』の話です。あくまで此処では、話始めるきっかけとしてカメラを登場させています。
結果的には、この『カメラ』が不気味さを増す為の重要なアイテムになると言う構成にしています。
POINT3:ユーモア
それにしても、人の記憶って曖昧なもんですよね。特にこういった特殊な状況の場合には。テレビの番組でそんな事言ってましたよ。ナントカって名前の教授が。ほら、あの有名な教授の事ですよ。あれ? 誰だっけな? 私の記憶も曖昧だな。アハハ。
一見ユーモアチックな話で「貴方もじゃないですか」と、ツッコまれそうな部分ですが、後にこの語りの部分は、ある意味犯人が自分を逮捕出来なかった警察を嘲笑うかの様な、そんな意味を含めた言葉であって、殺人犯である事を堂々と語っても逮捕されない人間の、異様な強みを表現しています。
POINT4:前半のストーリー
起
この周辺で過去にあった殺人事件について、近くに居た人に突然男が語り出す。
承
その事件は迷宮入りとなって、既に時効が成立しているが、目撃者の証言が曖昧だったのが原因で、カメラがあったら良かったのだと話す。
POINT5:展開〜オチ
転
男は事件について妙に詳しい。挙句の果てには、犯人しか知りえない情報まで語り始める。
結
事件を語っていた男があまりに詳しいため、話を聞いていた相手がそれを指摘すると、実は自分がその犯人なのだと明かす。
更にその後、今日はカメラがあるから一緒に記念写真でも撮らないかと、相手を誘う。
総合的なポイント
今回は主人公の語りのみで展開するお話です。設定では、語る男とそれを聞く相手がいます。聞き手の人物像は、あえて明らかにしていません。
男の語りからして、あまり人の話を聞かずどんどん話すタイプの設定です。これはオチにも関係しますが、相手の事を考えない自分本位な性格付けをしています。
男の話から、徐々に事件の全容明らかになってゆく。そして、その全てを知った時、貴方ならどうしますか? 恐らく一刻も早く此処から逃げたい筈です。隣に居る殺人犯は、重い罪を犯しておきながら捕まらない。しかし、人殺しなんです。
挙句の果てには記念写真を一緒に撮らないかとまで言ってくる。無下には断れない。でも受け入れる訳にもいかない。この恐怖を読者の方に味わってもらいたく、あえて聞き手は設定しなかったのです。
今回、聞き手は読者である貴方として読んで頂けたのなら、それは私の意図するところであります。
余談ですが、今回の募集は文字数制限が一万文字だったのですが、本作はその五分の一にあたる二千文字ほどです。
小説を応募する際、規定の文字数や原稿用紙換算の枚数制限があると思いますが、本来はそれに近い方がいいと思います。使える最大限の文字数で物語を表現した方が作品に厚みが出るからです。
ただし、無理に原稿量を増やすのは賛成できません。普通に作品を仕上げた時に文字数が少なかったのであれば、それは作品として完結していると思いますので、そのままの方がいいでしょう。
あまりに規定との差がある場合は、応募するコンテストを変更する方法もありだと思います。
コラム/情報の開示(前編)
小説を書く上で、その物語にある情報をどの様に開示してゆくかは、とても重要なポイントになります。これによって作品の良し悪しが随分と変わってしまいます。
ショートショート作品の場合は基本的に文字数が少ない為、特に意図するところが無い場合、基本となる場面設定は、書き始めの百文字ぐらいまでに開示しておいた方が良いと思います。
今回プロセス公開をした『カメラがある時』は、特殊な作品です。主人公の語りによって徐々に真相が明らかになってゆくタイプの小説です。
このタイプの場合は、情報開示のタイミングや量といったものは、オチと深い関係があるので、慎重に進めなければなりません。
さらに詳しい方法については、 次回は、コラム/情報の開示(後編)でお話したいと思います。
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