ショートショート作家 R・ヒラサワの〜Novelist's brain〜

小説の書き方ブログ。ショートショート作家 R・ヒラサワが自身の作品を用いて詳しく解説。新作随時公開中!

(解説から学ぶ小説書き方ブログ)今回の作品/帰れない、コラム/原石の磨き方

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帰れない

実家を飛び出し都会で様々な仕事に就く中、天職と感じた夜の仕事は既に三年。自分に好意を持ってくれた男性客とは、恋人に近い関係だった。彼は真面目で一途な人で、自分とは不釣り合いではないかと感じる中、両親に会いたいと彼に言われるが……。

 

ショートショート『帰れない』の全文はこちら↓↓↓

rhirasawanb.hatenablog.com

 

【CONTENTS】

 

 

テーマからの発想

 

今回のテーマは『実家』です。

実家と言えば、やはり田舎のイメージがあり、ゆっく帰省って感じの雰囲気でしょうか。

最近では、大型連休でもあまり実家に帰らない人も多い様で、それは『帰らない』のか『帰れない』のか、どっちなんだろうと言う素朴な疑問が湧きました。今回の創作の起点になっています。

 

 

発想からのキーワード選出

  

実家、両親、田舎、帰省、連休、帰れない、帰りたい

 

 

POINT1:タイトル

  

タイトルは、『帰れない』です。

 

実家に帰る方向のキーワードなどが多く浮かんだ中、あえて逆の方を選びました。今回の創作は『タイトル』から始まるパターンで、私の場合よくある事です。タイトルから徐々にイメージを膨らませる訳ですね。

『帰らない』のではなく『帰れない』。

要するに本人は帰る意思がある訳で、何か障害があるから帰れない。では、その『障害』とは一体何なのか?

この様な形で創作は進んでゆくのです。

 

 

POINT2:書き出し


「両親はもう居ないの」

 初めてケンイチに会った時、ミサキはそう話した。

 本当の事は客であるケンイチには勿論の事、周囲の誰にも伝えていない。夜の世界に生きていれば不思議な事ではなかった。

 

 

夜の仕事をしているミサキは、ケンイチに嘘をついています。この時点で、その理由は分かりません。他の文面でケンイチと会うのは、この時だけでない事も分かりますね。

出来る限り、書き出しで多くの情報を伝えましょう。

  


POINT3:ユーモア

  

今回は、あえてユーモア的な部分は入れていません。これは最後のオチに関係があるからです。既に全文を読まれた方はお分かりだと思いますが、オチに至るまで、どれだけシリアスに物語を進めるかも今回のポイントになります。


ここである程度お話すると、主人公が両親と交際中の男性を会わせる事をためらっているのは、過去に自分が荒れた生活をしていた事実を知られたくない、と言うのが理由です。しかし、オチはそうなりません。あくまで作中はオチに至るまで、ミスリードしています。

 

今は落ち着いているけど、過去に非行に走っていた人の場合、男性なら武勇伝にしたい人もいるでしょうが、主人公は違います。話したくないのです。まして、相手が真面目で一途な人だと尚の事ですよね。今回のユーモア抜きは、オチの効果をより高める為の仕掛けなのです。

 


POINT4:前半のストーリー

 

若い頃、両親と不仲になった主人公は田舎町を飛び出し、都会で夜の仕事を選んだ。そこで出会った男性客は、主人公を目当てに店に通い始める。

 


主人公は熱心に通って来る男性客と、食事を共にするなど、次第に親密になるものの、深い関係にまでは至っていない。しかし、相手は本気で結婚を考えており、やがて両親に会う事を希望する。

 

 

POINT5:展開〜オチ

  

主人公は男性客に好意はあるものの、過去の生活を知られる事に不安があり、両親に会わせる事について悩む。


 

主人公は性転換をした元男性で、相手はその事実をまだ知らず、今の関係性を保ちたい為、全てが知れてしまう実家へ連れて行く事をやめようと決める。

 

 

  

総合的なポイント

 

この作品はオチとそれまでの流れに、どれだけ落差をつけるかという部分に重点を置きました。作中ユーモア的な部分を作らない等もですが、オチに至るまでのミスリードは、

『主人公が非行に走り荒れた生活をしていて、一度は同じ様な環境で育った相手と暮らしたが、結局上手くいかなかった。次に現れた相手は、良い人だが真面目過ぎて、こんな自分と上手く暮らせるかと言う葛藤』

なのです。そこから一気にオチへ。これがショートショートの醍醐味なんですよね。

 

 

 

コラム/原石の磨き方

 

小説に関わらず、何かを書く時の『ネタ』らしきものに出会うと、書き手としてはワクワクするものですよね。しかし、それが明らかに『ネタ』自体であればいいのですが、『カケラ』であったり『原石』であったりと、その状態は様々です。

『カケラ』から『ネタ』にするには少々時間が必要だったり、また別のパーツの組み合わせを考えたりと、直接的に進めるのが難しい場合が多くあります。

今回は比較的『ネタ』に近い『原石』、その磨き方についてのお話です。

 


『鞄』の場合

ショートショート『鞄』の全文はこちら↓↓↓

rhirasawanb.hatenablog.com

ある日、私は駅の構内で二人組の警備会社の人を見かけました。一人がジュラルミンケースを積んだ台車を押し、もう一人が特殊警棒を手に、鋭い眼差しで周囲を警戒しながら、おそらく現金を運んでいたのだと思います。それを見た私の正直な感想なのですが、

「二人で大丈夫?」

です。盗れそうなんですよね……。盗りませんけど。

 

 

『白い壁』の場合

ショートショート『白い壁』の全文はこちら↓↓↓

rhirasawanb.hatenablog.com

小学生の頃、私は少し授業が進んだからと、女性の担任教師から怪談めいた話を聞かされました。タイトルは今回の物語同様、『白い壁』でした。

部屋の中に居ると、いつも人の気配を感じる。塗り替えから、あまり年数が経っていないであろう、借家の壁は白くて綺麗だ。数日経つと気配だけではなく、夜に女性のはすすり泣く声まで聞こえてくる。

 

そんな話でした。最後に部屋の壁を調べると、人骨が出てくる。その時、合わせて『人柱』の話も聞いたのです。

 

私が当時住んでいた家にも、トイレにたどり着くまで白い壁があり、私はこの話のおかげで、長い間トイレに行くのを苦労しました。この経験は、ずいぶんと長い期間をかけて私の中でアレンジされ、新しい物語へと生まれ変わったのです。

 

二つの話の元になった『原石』。これらがどの様に磨かれ、そして新しい物語になったのか?

さらに詳しい方法については、 次回『原石の磨き方(後編)』でお話したいと思います。 

 

 

 

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