ショートショート作家 R・ヒラサワの〜Novelist's brain〜

小説の書き方ブログ。ショートショート作家 R・ヒラサワが自身の作品を用いて詳しく解説。新作随時公開中!

(読みたくなる小説の書き出し例)コラム/読みたくなる小説の書き出し(後編)

読みたくなる小説の書き出し(後編)

  

小説を書く上で、書き出しはとても重要な部分です。すでに多くの著書があるベテラン作家の方に比べ、プロでも新人の方やアマチュアの方の場合、その先が面白いかどうかが、読者の方には未知数です。

せっかく読んでもらえるきっかけがあった訳ですから、作品の良さを早く知ってもらう必要があります。

 

記事に関するオススメ書籍はこちら↓↓↓

(小説・ショートショートの書き方)厳選・オススメ本はこれ!(その❶) - R・ヒラサワの〜Novelist's brain〜


【CONTENTS】

 

書き出しは一箇所ではない

小説の書き出しは、始めの部分一箇所だけではありません。場面転換等、段落ごとの始めの部分は意識した方が良いと思います。
その意識を持続する事によって、読者の方を先へ先へと案内するリズミカルな文章が生まれる訳です。

 

 

 

文章の組み立てを考える

 

例えば一つの段落内で、どの文をどの順に配置してどう書くのか。これによって文章のリズムは大きく変わり、その文章への興味の度合いにも変化が出てきます。

小説の場合その多くは規定枚数内に、或いは規定の文字数内に収める。要は『削る』作業が大半になります。

 
ブログの記事の場合は、ある程度のボリュームを必要とする場合もあり、小説とは逆に『増す』作業の割合も多めになるでしょう。

 どちらの場合も『削る』『増す』の作業によって全体のバランスが変わってしまう場合があります。必要に応じて調整しましょう。

 

 

 

 

基本的な書き方

 

①文章ごとに疑問点を残しつつ前に進む。


②主人公を客観視した状態から、徐々に近く、そして内面を描く


③話の起点から着地点までの距離を少し長めに設定する

 

 

実際の作品例

 

 

『消去ボタン』の場合  

ショートショート『消去ボタン』の全文はこちら↓↓↓

rhirasawanb.hatenablog.com

 

 ファミリーレストランの一番奥にある喫煙席で、今日この場所に最もふさわしくないと思われる二人組の男が座っていた。

【どんな男達か?】

【何故ふさわしくないのか?】←(起点)

 

 初夏だと言うのに、外は既に真夏の日差しで、毎年最高気温を記録する地域では、去年の記録を塗り替えるほどの暑さだった。

【暑さと何か関係があるのか?】

 

 その為、世間の人々は半袖姿で過ごす中、上下黒ずくめのスーツ姿の二人は、明らかに周囲から浮いている存在だった。

【書き始めの問題に対する答え】←(着地点)

 

 

解説

まずは状況設定をしています。この段階で、主人公たちの外見等について触れていますが、実際の世界で漫画やドラマのような姿をした人はあまり見かけません。そこで、まずこのキャラクターが居る世界を用意し、その前提で読んでもらうための仕掛けです。

後に出てくる装置なども現実の世界ではないような物ですが、違和感なく読み進める事が出来る訳です。

これ以降に物語の細部、主人公の内面などを徐々に描いてゆきます。

 

 

 

『落し物の使い方』の場合

ショートショート『落し物の使い方』の全文はこちら↓↓↓

rhirasawanb.hatenablog.com

 

 男はその日、自分が路地に入った事をとても幸運だと思った。それは給料日を数日先に控えた日曜日、パチンコに負けた午後の事だった。

【何を幸運だと思ったのか?】←(起点)

 

 路地には何気なく入った。繁華街を少しだけ離れた場所だったが、そこは驚くほど人通りが少なかった。

【そこで何があったのか?】

 

 路地に入ってすぐさま目に入ったのは、見覚えのある薄い緑色の封筒だった。それが銀行の物であるとすぐに分かったが、中身が入っている筈など無かった。

【中身は入っていたのか?】

 

男は最初、そのまま通り過ぎるつもりだったが、何となく中に紙の存在が感じられた。幸いな事に辺りに人影は無く、男はその封筒を難なく手にする事が出来た。

 男は地面から拾い上げた封筒を、すぐさまコートのポケットにしまい込んだ。封筒と共に差し入れた手で、その中を慌ただしく探り始めた。

 男の予感は当たっていた。中には紙の感触があった。それはもちろん紙幣に違いない。男は紙の先端を指で弾くと、それが三枚である事が分かった。

【書き始めの問題に対する答え】←(着地点)

 

創作が上手く進まない……。そんな時、『もしも……』と、あてはめるだけ!

先ずは『試し読み』をどうぞ↓↓↓

 

解説

この物語は仕掛けがシンプルなため、前半にある程度ボリュームを持たせる必要がありました。この書き方は、場合によっては回りくどく、スムーズに読み進める為には逆効果にもなりかねない方法です。

しかし、各文章ごとに疑問点をしっかりと配置することによって、読み進める仕掛けが出来ている為、この構成が上手く成立する訳です。

 

文章の前半に疑問点を配置し、後半に答えを用意するというサイクルを繰り返す事によって、読者の方を引き込む文章の仕掛が出来あがります。これらを上手く構成する事を意識して、書いてみられてはいかがでしょうか。

 

 

次回は、ショートショート『マニュアル』の創作プロセス公開です。

 

 

 

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