R・ヒラサワの〜Novelist's brain〜

小説・ショートショート書き方の基本

(読まれる文章に生まれ変わる!)コラム/言葉の選択(後編)

 

新年明けましておめでとうございます。

大変遅めのご挨拶となりましたが、本年も当ブログ

【R・ヒラサワの〜Novelist's brain〜】をよろしくお願いいたします。

 

 

 

コラム/言葉の選択(後編)

 

小説を書く上で言葉の選択は非常に重要な要素です。最もわかりやすいのはセリフですが、話した言葉によってその時の状況や心情といったもの、それら全てが大きく変わります。

そして、それはセリフだけに限らず、本文においても重要な事なのですが、いかに情報をうまく的確に伝えるか、そして物語をどういう方向にもってゆくのか、様々な問題に関わってきます。

それらを上手くコントロールする事によって、小説全体の文字数を調整したり、物語の流れを変えたりする事が出来るのです。

勿論、それが物語の面白さを左右する要素である事は、言うまでもありません。

  

 

【CONTENTS】

 

 


ショートショート(虹色)での『言葉の選択』

 

ショートショート『虹色』の全文はこちら↓↓↓

rhirasawanb.hatenablog.com

 

虹色をした球体はタケルの手からわずか数十センチの距離で、パッっと弾けて空へと消えた。

 カメラを構えたままのタケルは、モニターとナオミの顔を交互に見た。そしてナオミと目が合った。

  
【虹色をした球体】

『シャボン玉』と書かなかったのは、後に続く文章の『ナオミと目が合った』との距離を縮める為の細工です。

ストレートな『シャボン玉』よりイメージするのに、少し時間を要します。この事によってシャボン玉が弾けてから、比較的短い時間で目が合った様子を思い浮かべて欲しかった訳です。

 

 

 

ナオミとは写真を通じて知り合った。スマホで写真を撮る楽しみを知り、本格的にカメラを使い始めたカメラ女子だ。コンパクト系の一眼をお洒落なストラップで首から下げ、歩きながら目に止まった被写体を捉える。ナオミが直感で撮るスナップ写真はとても魅力的だった。


【コンパクト系の一眼をお洒落なストラップで首から下げ】


『コンパクト』『一眼』『お洒落』『ストラップ』『首から下げ』

これらのワードは続けて書きました。こうする事で、一枚の静止画の如くイメージして欲しかった訳です。

このイメージによって、ナオミは先に挙げた要素が全てがしっくりきている、と言う事を伝えると同時に、タケルにとっても見慣れた姿なのだとの、印象を与える事が出来る訳です。

 

 
【逆のパターンで相手をイメージするワードを分ける場合】

●よく知っている人だが、見慣れない格好をしている

●相手の様子や、言動などに対して戸惑っている

●初対面の相手で元々情報が無く、徐々にイメージが頭の中に入ってくる

●好意を持っている相手など、緊張で直視出来ない

 
上記のような条件の場合、状況に応じてワードを分割したり、別の言葉や言い回しを使う事で、登場人物の心情を上手く伝える事が出来るのです。

 

 


その時タケルが見つめるモニターには、まさに撮りたい瞬間が映っていた。今すぐシャッターを切ればいい。しかし、今日はナオミの意見を聞く事にしよう。来週また会いたい。ナオミもきっと同じ気持ちの筈だ。

 次の瞬間、タケルの指はシャッターではなくシャボン玉に触れた。

 虹色をしたシルエットが弾け、その向こう側には、笑顔のナオミが待っていた。 

 

【今すぐシャッターを切ればいい】

ここの部分の言葉の選択を少し変えてみましょう。

 

【今すぐにでもシャッターを切りたかった】

言葉のニュアンスとしてはそれほど大きくは変わりません。大きな違いはこちらが『過去形』になる事です。しかし、過去形といっても非常に直近の過去。つまりほとんど現在に近い状態です。

 
後に続く文章に対しては、それほど違和感はありません。大きな違いは、後者に比べ前者の方が、よりシャッターを切る瞬間に近い場所に居ると言う事です。

 
その違いを距離感で言うならば、『接眼部に目を当ててファインダーを覗いている』状態と、『カメラの背面モニターを見ている』状態ぐらいの差があります。前者はそれぐらい近い距離にいる訳です。

 
そして、この距離感こそがリアリティーや臨場感を生み出し、読者の方がまるで自分が主人公で、その世界の中に居るかのような、感覚を味わう事が出来る訳です。

 

 

 

 

 

 

ショートショート(帰れない)での『言葉の選択』

 

ショートショート『帰れない』の全文はこちら↓↓↓

rhirasawanb.hatenablog.com

 


「両親はもう居ないの」

 初めてケンイチに会った時、ミサキはそう話した。

 本当の事は客であるケンイチには勿論の事、周囲の誰にも伝えていない。夜の世界に生きていれば不思議な事ではなかった。

 

【夜の世界に生きていれば】

これは『職業』についてですね。小説内で扱う職業について、具体的に書く場合もありますが、特に展開に対して必要性が無ければ、基本的に省略しています。特に今回はオチとの関係もあって、具体的な職業は書かない様にした訳です。

 

 

 真っ直ぐなケンイチの目には、全て見透かされているような気がした。嘘はつけない。本当の事を話すべきかと少し迷った。

 

【真っ直ぐなケンイチの目

『真面目で一途な』と言う意味で今回は書いていますが、ストレートにそう書く場合もあります。しかし、そう書くよりもエッジが効いた表現になります。そうする事で、

主人公はもっと相手に嘘をつくことにためらいが出るのです。そして、その心情と言えば、勿論それを読んでいる読者の方とリンクしている訳です。

 


長い期間、連絡出来なかった訳を一つずつ話していった。母は『うんうん』と、優しい声で応じてくれた。そして全てを受け入れてくれた。ケンイチの事を話すと、少し驚いていたけど、しばらく後に『わかった』と返事した。先ずは両親と会おう。ケンイチの事はそれからだ。

 

【母は『うんうん』と、優しい声で応じてくれた。】

相槌として、あえて『うんうん』と言う表現を使いました。ここには具体的な言葉を持ってくる事も可能です。そして、そこに入れる言葉によって、『母』の性格を表現する事が出来るのです。

 

『無言だった』

●納得していない。あるいは怒っている。

 

『もう何も言わなくていいのよ』

●愛情はあるが、原文よりも子供をよりリードするタイプ

 

実際、原文の中にいる『母』は、優しいだけでなく、子供のする事にあまり口を挟めないタイプ、後の『わかった』についても、全て受け入れてしまっています。一方の子供の会おうとしない『父』との夫婦関係は、『亭主関白』なのではないかとの想像が出来ますよね。

 

このように、選択する言葉によって文章は大きくイメージが変わります。これは小説だけでなく、『書く事』全てに共通します。既に書き終えた文章について、執筆時とは違った言葉を選択してあてはめてみて下さい。きっと印象の違った文章に変化する筈ですので、一度お試しを。 

 

 

 

 

次回は、ショートショート『リポート』の創作プロセス公開です。

 

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