ショートショート作家 R・ヒラサワの〜Novelist's brain〜

小説の書き方ブログ。ショートショート作家 R・ヒラサワが自身の作品を用いて詳しく解説。新作随時公開中!

(小説の書き方の基本を公開)コラム/セリフの掛け合い(後編)

コラム/セリフの掛け合い(後編)

 

 

小説内における登場人物のセリフの役割と、その重要性を、実際の作品を用いてご説明したいと思います。

今回の例文、ショートショート『五点着地』の全文はこちら↓↓↓

rhirasawanb.hatenablog.com

 

【CONTENTS】

 

 

 

状況設定

 

【❶、❷】

「先輩、それをマスターすれば本当に大丈夫なんですか?」

「ああ。絶対とは言えないけど、今のままじゃダメなのは間違いないね」


❶『それ』が何であるかは、ここでは書いていません。先ずは習得すべき何かが後輩にはあり、先輩がアドバイスをしているという状況設定です。

『それ』って何なのだろう? と、読者の方は思います。

【文章の推進力を高める】

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❷現状、後輩は先輩からアドバイスを受ける立場である事が分かります。今回その信頼度については、後の文章で明らかにする構成にしています。これはオチにも関係している為です。

『先輩のアドバイスがあてにならない』と言うのが、この物語で重要な部分なのですが、これを地の文で説明するのではなく、読者の方に実感してもらう為です。作中に出てくるエピソードで、『この先輩の意見って信用出来るの?』と疑問を感じてもらう事で、オチの効果が増す訳です。

【読者の感情移入と、オチの効果増幅】

〜〜【後の文章に繋がります】〜〜

「そうですか......」

 戦隊ヒーローのメンバーであるトモヒロは、五人中の五番人気、四番目は紅一点のチカちゃんだった。

 

 

 

人物同士の関係性

 

【❷】

「アクションがイマイチな女子より人気がないの?」

 

❷主人公と、その彼女の関係性です。第一声から、既に彼女の方が強そうですが、後の文章で更に明らかになります。

【人物同士の関係性の明確化と強調】

〜〜【後の文章に繋がります】〜〜

 トモヒロの彼女が放った一言は、彼に大きなダメージを与えた。まるで怪人達のボスキャラ並だ。

 

 

 

心理描写

 

【❷】【❸】

「ヒロインって結構人気が出るものなんだ。小学生ぐらいの男子って、強さに憧れる一方で既に『男』の部分を持ってるんだよ」

「へえ、そうなの? 私は貴方に『男』を全然感じないけど……」


❷❸二人の関係性と共に、少しですが相手に対する心理についても描いています。

主人公は彼女に対抗したいが、強く出れない。一方の彼女は、主人公にもっと強くなって欲しいと言う思いを持っています。

【登場人物内面の思考と感情の描写】

 〜〜【後の文章に繋がります】〜〜

 自分を理解してくれない彼女に少し苛立ちを覚える。だからと言って彼女に戦いを挑むのはあまりに危険だ。それは戦隊ヒーローならではの勘だった。

 

 

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ユーモア

 

【❹】【❺】

「もちろん先輩は一番人気だったんですよね?」

「俺は……。五番人気だよ」

「ええ?!」

「あのさあ、当時は三枚目のキャラってのもあったから、それを誰かがやらなきゃ」

「じゃあ、その役を買ったって事ですか?」

「そ、そうだな。あの役はヒーローなのにちょっと小太りなんだよ。俺ってさあ、体重自由に操れる方じゃん」

「え? 初めて聞きましたけど」

「ほら、いつだったか病院で会った事があっただろう? あの時、俺すっごく痩せてなかったか?」

「それは多分、病気のせいで……」

「何言ってんだ! 退院してから半年後ぐらいに会った時、また体重増やせてたろ?」

「それは単に体重が戻っただけじゃ……」

「お前は何も分かってないね。更に三ヶ月ぐらい後に会った時には、もっと体重を増やせたんだぜ!」

「それって完全にリバウンドじゃ……」

「とにかく俺みたいに努力してりゃ、その内いい事があるって話だよ」

 

❹❺ここでは、二人の会話をユーモラスに展開しています。そしてもう一方で、先輩は後輩の質問に対し、実に調子よく話を合わせるタイプである事を、表現しています。

これによって、先輩が相談相手として適していないと言う事と、後輩が将来に対する不安を抱いてしまうのも理解出来る、と言う流れを作っています。

【登場人物の性格と行動の描写/ユーモア】

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ストーリー展開

 

【❺】

「はあ、そうですか……。ところで最初の話って何でしたっけ?」

「最初? えーと……。『五点着地』の話かな?」


❺脱線していた先輩の話を、主人公は元の話題に戻そうとします。緩やかではありますが、ここが『起承転結』で言うところの

『転句』になります。

この後、もう一度セリフの掛け合いがあり、主に地の文でオチへと向かいます。

 

 

 

そして最後に

 
どの項目も、先ずはセリフの掛け合いがあり、地の文へと繋がる流れが基本になっています。イメージとしては、導入部はセリフから入って、その後地の文で落ち着かせるというものです。

セリフを挟む事で、物語にリズムが生まれて、読みやすい文章になる訳ですね。

  

 


次回は、ショートショート『ミラクルパワーボール』の創作プロセス公開です。

 

 

 

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