コラム/テーマからの発想方法(後編)
テーマを設けて小説を書く場合、それに関するキーワードやストーリー展開などを考え、徐々に物語は完成してゆきます。今回は、実際にテーマを元に創作をした作品を、完成作と共にご紹介しながら解説したいと思います。
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【CONTENTS】
超予測変換
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【テーマ:五〇四号室】
【キー】マンション、アパート、ホテル、部屋番号
【発想の出発点】
なかなか難しいテーマでしたね。私が出したキーワードは、全てマンションだとかの『部屋番号』みたいなのです。テーマがテーマだけに、それが自然だと言えばそうなのですが、もっと捻りを効かせたかったと言うのが本音です。
そして、少しだけ捻った結果ですが、小説の世界と現実のリンク。
【展開】
●部屋番号と小説のリンク
(リンクの道具は何か?)
→スマホのアプリ
(どんなアプリか?)
→自動で文字変換をして小説をアシスト
(部屋番号の設定方法)
→今回の課題を小説世界に流用
【基本的な流れ】
❶主人公が話題になっている自動変換アプリを使おうと考える
❷五〇四号室と言うタイトルで主人公が小説を書き始める
❸作中に強盗の容疑者が逃走中との内容
❹主人公の居る世界を少しずつ作中に盛り込む
❺オチの直前には小説世界と現実がリンクしている事を示す
❻ラストまでは極力短く、結果を書く
【ポイント】
テーマからの発想が限定さてれいたので、何か別の要素が必要だと思いました。そこに加えたのがアプリです。
アプリのような素材は、使い勝手が良くとても便利です。しかし、ネタの方向性が平凡になりがちなので注意が必要です。
小説である以上、作者が結末に向かって物語を進めていく訳ですが、やはりそこは物語として、いわゆるご都合主義的な部分を排除しなければなりません。そこで今回は、変換候補を利用しました。
候補の中から主人公はある言葉を選ぶ訳ですが、この候補自体は自動で用意されたものです。こうする事で、物語が自然に進行するような流れになる訳ですね。
虹色
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【テーマ:弾ける】
【キー】シャボン玉、破裂、気持ちの上での弾ける
【発想の出発点】
当初は気分が弾けるような、明るいお話を考えたのですが、やはりシャボン玉が弾けるような、そちらのイメージが強くなったので、その方向で考える事にしました。
【展開】
・シャボン玉と写真を結びつける
(何故シャボン玉が弾けるのか?)
→時間が経って自然に弾ける
(時間が経つ理由は?)
→シャボン玉を使った撮影が困難なため
(写真撮影時の環境設定)
→元恋人との撮影と、二人の物語
【基本的な流れ】
❶主人公はシャボン玉を使った写真の撮影をしたいと考える
❷撮影にはモデルが必要になるが、その相手に元恋人を選ぶ
❸撮影を進める中で、お互いにまだ書いているの思いがある事に気付き、もう一度会いたいと思う
【ポイント】
今回の話のスタート地点は、シャボン玉を使った撮影なのですが、それを通じてどのように二人の気持ちがすれ違ったのか、そして、どうやって再燃するのか。その辺をポイントとして書いてみました。ラストは、やはりシャボン玉を使いました。
ショートショートの定番として、アイテムはスタートとラストの二回に登場させる事です。そして多くの場合、スタートに登場したものは、ラストの伏線の役割となっています。
GIFT
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【テーマ:贈り物】
【キー】プレゼント、贈答品、お中元、お歳暮、宅配便
【発想の出発点】
今回のテーマもストレートに考えると、かなり発想が限定されてしまいます。実際のところ、私も贈り物と言うところから発想が展開できず、今回はその流れで創作し始めました。
【展開】
●贈り物は通常喜ばれるものだが、それをマイナスのもので創作したい。
(マイナスの要素とは何か?)
→女性からの夫あての贈り物
(なぜマイナスなのか?)
→女性と夫の不倫の疑い
(その他の夫婦間の問題)
→夫との関係に不安を感じる妻は、自分の気持ちが離れていく事を常に感じていた
(夫側の問題)
→妻の気持ちを察していた夫は、贈り物を使って関係を修復しようと考える
【基本的な流れ】
❶夫の知人の女性から、自宅に贈り物が届く
❷贈り物が夫宛で、しかもそれが誕生日のプレゼントだとわかる
❸夫に対する気持ちの離れていた妻であったが、愛人とおぼしき女性の出現によって、嫉妬心から夫への愛情が再燃する
❹贈り物は、妻との関係を修復したいと思った夫が、知人女性と協力して仕掛けたものだった
【ポイント】
倦怠期を迎えた夫婦が、離婚を考えてしまう場合の感情の流れ。そして疑惑が生じるためのきっかけなど、現実的に起こりそうな流れを重点的に考えました。
また、嫉妬心から女性の心理がどのように変化していくのか、と言う部分についても、出来る限りリアリティーを追求しました。
そして最後に
小説のテーマは、先に設けず書く事も出来ます。特にショートショート作品は、何らかのキーワードなどから書く事も難しくないのですが、新しい発想を生み出すには、先ずテーマを設けて多少の書きにくさなどもあった方が良い場合もあります。テーマは自分で設けず他人から与えられた方が、創作が困難になるケースも多く、書く為の訓練と言う意味ではその方が向いているでしょうし、ご自身で設けるのなら思考とは全く無関係なところからテーマを見つけられる方法をとるのが良いと思います。
次回は、ショートショート『美人妻の憂鬱』の創作プロセス公開です。
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