R・ヒラサワの〜Novelist's brain〜

小説・ショートショートの書き方ブログ

(『婚活』がテーマの作品例)新作ショートショート(10)/バロメーターリング

新作ショートショート(10)/テーマ(婚活)

 

 

 

バロメーターリング

 

 

 年々増加する傾向にある夫婦の離婚率。これについては新聞や雑誌、そしてテレビやネットで幾度も取り上げられ、結婚を考える若年層を晩婚化させる要因となっていた。
 結婚相談所にとって、死活問題となる晩婚化。これをなんとか食い止めようと、関係者は常に頭を悩ませていた。お見合いパーティーの活性化やネットでのマッチング。様々な戦略によって、結婚するカップル数は増加しつつあったが、問題は『離婚率』の方であった。せっかくゴールしたカップルも、別れてしまったのでは、元も子もないのである。
 そして、最近になって有効なサービスとして、『シミュレーション』が注目され始めた。結婚を考えている男女の細かい情報を入力し、先々の離婚の可能性まで割り出した上でマッチングを行う。
 このサービスで生まれたカップルは順調な夫婦関係を続けており、世の中の離婚率は徐々に減少し始めた。
 『シミュレーション』は、基本的に婚活中のマッチングサービスで、いわば『お見合い』の様な物だ。
 既にカップルとなっている男女に対しては、別のサービスが用意されていた。
バロメーターリング』
 要は相手の意思確認である。現在付き合っている相手を、結婚の対象と考えるかどうかの判断が出来る商品で、密かにブームとなり始めていた。
 この商品の宣伝活動は行なっていない。全ては購入者たちの口コミで広がったもので、販売する対象は基本的に『男性のみ』だった。
 今日も専用のダイヤルのベルが鳴った。
「あのー。今、結婚について凄く悩んでいるんだけど……」
「はい、どんなお悩みでしょうか?」
 二十代後半の男性からの電話だった。現在付き合っている女性が三人もいて、長所も短所もそれぞれなので、結婚相手にふさわしい女性を決めかねていると言う。
「その様なお悩みでしたら……」
 電話を受けたスタッフは、『バロメーターリング』を勧めた。これこそが、現在密かに口コミで広がりつつある商品である。指輪を使って相手の愛情を確かめる事が出来るというシロモノだ。
「ええ? そんな便利なものがあるの!」
 説明を聞いた男性は、すぐさま商品の購入を決めた。リングの値段は一本三万円。シンプルなデザインなので、割高に感じる人もいる様だが、未来のパートナーを決める大事なアイテムだ。購入する男性は次々と現れた。この男性の場合、三人分で九万円の出費だったが、満足げに電話を切った。
 商品の使い方は至って簡単だった。結婚を考えている相手にリングをつけてもらえばいい。女性側の愛情の深さに応じて、リングの色が変化すると言う仕組みで、送った側の男性は、会う度にリングの色を確認すればいい。
 バロメーターリングの効果は、とても大きかった。先行していたシミュレーションで、既に下がりつつあった離婚率を、更に引き下げる事に成功したのだ。
 この商品は男性限定の販売だ。したがって、リングの色を確認して、先々の判断をするのは男性側の筈だった。
 しかし、男性達の間で広がっていたのは、別れ話をしてくるのは決まって女性側だったし、未だリングの色の変化を確認した者が居ないと言う噂だった。
 既に購入した男性達の間では、『誰が最初に違った色のリングを見るか』と言う、本来の目的とは違った意味での競争も密かなブームとなっていた。
 バロメーターリングの売れ行きは好調で、『一番乗り』をしたい購入者が、それに拍車をかけているのは明らかだった。
 世間で結婚を控えた男性の多くが、このリングを買ってゆく。その効果は抜群で、離婚率は大幅に下がった。しかし一方で、結婚するカップルが減ったのも事実だったが、これは仕方のない事だ。事前に離婚しそうな者同士が、そもそも結婚しないのだから。
 リングの噂は、密かに女性達の間でも広まっていた。
「ねえねえ、『バロメーターリング』って知ってる?」
「ああ、男が女にプレゼントして、リングの色で愛情を判断するってヤツでしょ?」
「ええ。でもあのリング、本当は色が変わらないそうよ」
「え、そうなの? じゃあどうやって愛情の度合いを測るわけ?」
「男が買ったリングの数が密かに内側に刻んであるから、この数字が『1』じゃなければ、他にも女がいるから、早く別れなさいって事らしいわよ」

 

 

 

BRILLIANCE+

 

 

 

 

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