コラム/意外な結末の作り方(後編)
『意外な結末』を書く時は、ショートショートの書き手にとって、最も楽しい瞬間と言えます。いかに上手く読者の方々を裏切るか、『オチ』に至るまで、どのぐらいギリギリの部分まで明かしながら書く事が出来るかが勝負なのです。
読後の『ああ、そうだったのか!』と言う声は、書き手にとって最高の褒め言葉です。今回の記事が少しでも多く、その声のヒントとなればと思います。
【注意】今回の解説にはオチに関するネタバレが含まれています。作品をまだご覧になられていない方は、先にリンク先にてショートショートを読まれる事をお勧めします。
【CONTENTS】
似ている物からの連想
テーマからアイデアを練ろうとした時、ある二つの物に対して『共通点』を感じる事があります。今回のテーマであった『レシピ』ですが、先に別の作品を書いた後に、ふと頭を過った事があったのです。『レシピって、料理のマニュアルの様な物だな』って。
【作品例:マニュアル】
ショートショート『マニュアル』の全文はこちら↓↓↓
『テーマ』レシピ
『アイデア』
●似ている=間違いのもと
→間違いによって変わる方向性
→間違いを利用する
→何かのカモフラージュ
『構成』
●ネットで『闇アルバイト』の募集
●アルバイターが素人である場合が多い
●その為マニュアルが必要となる
●マニュアルは、逮捕時の証拠品になる
●『隠語』で作成したマニュアルが必要
【本文より】
●素材をよく見て、どう料理するべきか熟考して下さい。
●切り口はどういう感じがいいか? 素材によって変えます。
●次にいためてみて下さい。軟化するかもしれません。
『オチ』●料理のレシピに見立てた『ヤミ金』の取立てマニュアル
【本文より】
「まるで料理のレシピだな」
男はメモを見て思った。闇サイトで見つけた、金融業者の取り立てアルバイト。
『解説』
料理のレシピはを見た時に、ふと別の『意味にも使えるな』と思った訳です。直接的ではなく『隠語』としてなら、別の用途に使ってみれば面白いだろうと。『隠語』である以上、何かの隠し事がある状況が想定され、ストレートに『犯罪に使う』というアイデアです。使えそうだと思ったのが『ヤミ金の取り立て』でした。
『ショートショートの書き方』を、作家の視点で詳しく『超解説』‼
信頼からの裏切り
それは例えば、親友に裏切られた時であったり、現在ではAIを搭載した忠実である筈のロボットが、主人の指示に従わなかったり、何かしらの『裏切り』があった時に、意外な事態が発生する物です。
今回の作品は、前述の二つの『裏切り』を同時に入れたものになっています。
【作品例:リポート】
ショートショート『リポート』の全文はこちら↓↓↓
『テーマ』食
『アイデア』
●親友の裏切り=隠し事や抜け駆け
→ダイエットは黙って始める事もある筈
→双方同じ隠し事
●ロボットの裏切り
→ロボットを他人と共有
→ロボットのみ知る個人情報
→断りきれず情報を漏洩
『構成』
●親友に内緒でダイエットを始める
●ダイエットはAI搭載ロボットがアシスト
●親友も同じコースの利用が判明
『オチ』
【ここまでの流れ】
主人公のシオリは好きな人ができ、親友のムツミに内緒でダイエットコースを開始。しかし、途中から上手く結果が出なくなり、アシストのロボットに相談を持ちかける過程で、実は親友も同じコースを受けており、先に裏切っていたのは親友の方だった事が判明。
ムツミも実は、シオリと同じダイエットコースを契約していたのだ。最近痩せてきたのはそのせいだ。シオリよりも一週間早く契約したと言う。
「どうして……」
ムツミに裏切られた気分になった。抜け駆けは許せない。それは、自分の事など棚に上げた、身勝手な想いだった。
会うたびにムツミが痩せてゆく様に見える。不信感は募るばかりだ。それはお互い心の中に湧き上がる、口に出来ない感情だった。
やがて二人は距離を置き始め、最終的には会う事も無くなった。
モコの最新ダイエットリポートが出た。
「シオリサン。ストレスニヨル過食ガ止マラズ。コース解約。当社メニュー始マッテ以来、初ノ脱落者」
「追伸。友人ノ、ムツミサン。ソレニ続クモヨウ」
『解説』
親友の裏切り、そしてロボットの裏切り。信頼していた人などからの裏切りは、時として『恨み』に変わったりもしますが、今回は『ストレス』の方向で書いてみました。
主人公は密かに始めたダイエットに、少しの後ろめたさを感じていた筈なのですが、実は親友の方が先に自分を裏切っていた。そして、その事実を知る事になったのは、本来守るべき親友の個人情報を主人公に漏らしてしまったロボットの裏切りです。裏切りはやがてストレスとなり、残念な結末を迎える事となります。
個人情報の漏洩など、現実世界では許されないストーリーですが、各展開のつながりや必然性に考慮して構成しました。
方法の違いをアレンジ
道具や商品など、一般的な使用の『方法』を少し変える、それは『用途』であったり『方向』であったり、『対象』または『タイミング』など。
何かしら『常識的』と思われている事柄を『非常識』な方向にずらすと、面白いアイデアが生まれる事があります。
【作品例:ミラクルパワーボール】
ショートショート『ミラクルパワーボール』の全文はこちら↓↓↓
『テーマ』お勧めの品
『アイデア』
●テレビ通販の商品は、効果が最大の売り
→効果の出る人と出ない人が居る
→それは使い方などではなく、タイミング
→このタイミングはオチの直前の特殊な状況下で起こる
『構成』
●友人から、ある商品を勧められる
●効果について半信半疑だったが、友人の熱意に負けて購入
●商品を使い続けるが、全く効果が出ない
●特殊なタイミングで効果を発揮
『オチ』
【ここまでの流れ】
友人のタナカに勧められ、仕方なく購入した『ミラクルパワーボール』。いざと言う時、人間の数倍の力が出ると言う。主人公は様々なシチュエーションで商品を試すが、全く効果が現れない。やがて主人公は、タナカに疑いを持ち始める。
「そんな事はないさ。なあタナカ、お前、俺を騙したんだろ!」
もう、タナカの言葉が信じられなかった。高い金を払って買ったのに、信用していた相手に対する怒りが止められなかった。俺は例のボールを握ったまま、タナカの頬を思いっきり殴った。
そしてタナカは、その姿が見えなくなるほど遥か彼方へと飛んで行き、最後に消えた。
『解説』
商品によって、その効果の表れが微妙な物もあって、それがコツなどではなく『タイミング』だったら面白いな、というのがスタート地点です。しかも、そのタイミングが個人によって現れる場面が全く違う。そうなると、まるで効果が出ない人も出てきます。物語の面白さとしては、出来る限りそのタイミングをギリギリの場所、それはストーリーの最後に近い部分と言う意味ではなく、主人公の精神的なギリギリの位置辺りに持っていきたかったので、このような展開としました。
創作が上手く進まない……。そんな時、『もしも……』と、あてはめるだけ!
先ずは『試し読み』をどうぞ↓↓↓
そして最後に
『意外な結末』を生み出すアイデアの出発点は、やはり『日常からのズレ』と言う所をポイントとして考えていただくのが近道ではないかと思います。これは何も小説の世界に限った事ではなく、何かの製品の開発などの場面でも有効な手段だと思います。
日頃見なれた『当たり前の世界』を、いい意味で少し『ふざけた方向』で考えてみる訳ですね。
次回は、ショートショート『ゼロ円サービス』の創作プロセス公開です。
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