ショートショート作家 R・ヒラサワの〜Novelist's brain〜

小説の書き方ブログ。ショートショート作家 R・ヒラサワが自身の作品を用いて詳しく解説。新作随時公開中!

(解説から学ぶ小説書き方ブログ)今回の作品/ゼロ円サービス、コラム/個性的なキャラクター(前編)

今回の作品/ゼロ円サービス

 

ある日、男の元に『ゼロ円サービス』と書かれた案内ハガキが届き、そこには男の詳しい個人情報があった。疑いつつも地図にあった建物に向かい、サービスを受け始めるのだが……。

ショートショート『ゼロ円サービス』の全文はこちら↓↓↓

rhirasawanb.hatenablog.com

 


【CONTENTS】

 

 


テーマからの発想

 

今回のテーマは『無料』です。無料と言えば携帯電話を始め、様々なプランで購買意欲を刺激する工夫がなされています。

しかし、世の中にはプラン云々ではなく、明らかに怪しい商売もあったりして、時として『無料』と言う言葉には、注意が必要な場合もあります。

今回は、その後者と思しきサービスについての物語です。

 


発想からのキーワード選出

 

無料、サービス品、試供品、送料無料、ゼロ円、タダ働き、高額請求、罠

 

 

 

POINT1:タイトル

 

タイトルは『ゼロ円サービス』です。タイトルをつける際、作品内容に合っていると言うのは大前提ですが、基本的に私は、読者の方に『複数の推測』をしてもらえる様な、そんなワードを含める様にしています。

本を読む場合、タイトルから何かしらのイメージを描きながら、読まれると思うのですが、特にショートショートはそのバリエーションが多い方がいいのです。その為、色んな解釈が出来る、今回の様なタイトルを付ける訳ですね。

 

POINT2:書き出し

 

「本当に無料なんだよね?」との質問に「ええ、勿論です」との答えだった。そして私は、更に続ける。

「じゃあ、これもそれも、あれもこれも全て無料って事?」

「確かにおっしゃる通り、全て無料でございます」

 私宛に怪しい葉書が届いたのは、一週間ほど前の事だった。『ゼロ円サービス』とだけ書かれたシンプルな葉書の裏には、この建物までの案内地図が書いてあった。

 

『セリフスタート』は、私が好んで使っている書き出しの方法ですが、何故この方法を使うのでしょう? 例えば今回の作品で、地の文とセリフ部分を入れ替えてみましょう。


 私宛に怪しい葉書が届いたのは、一週間ほど前の事だった。『ゼロ円サービス』とだけ書かれたシンプルな葉書の裏には、この建物までの案内地図が書いてあった。

「本当に無料なんだよね?」との質問に「ええ、勿論です」との答えだった。そして私は、更に続ける。

「じゃあ、これもそれも、あれもこれも全て無料って事?」

「確かにおっしゃる通り、全て無料でございます」

 

少し違和感がなかったですか? そうです。この順にすると、『地の文』が『過去』で『セリフ』が『現在』となってしまう為、時系列を合わせるには、双方の間にそれを繋ぐ為の『文章』が必要になる訳です。

セリフが先の場合、セリフは『現在』で地の文は『主人公の現在の記憶』となり、どちらも『現在』の事なので繋ぐ必要がありません。

今回の様な作品の場合、セリフスタートの方が、結果的に『文字数の節約』となるのです。

 

 

 

POINT3:ユーモア


私は普段から慎重なタチだ。普通ならこの様な手口の営業には乗らない。だけど、今回は乗った。何故か? あまりにも情報が正確過ぎたのだ。私の生年月日に始まり、勤務先に趣味等々、おまけに、昔のニックネームまで合っていた。

 

受付にはスーツ姿の女性が居て、顔立ちがとても綺麗だった。しかし、それは会社の中身との関係が薄い。

 次に私を、部屋まで案内してくれたこの男性も、物腰が柔らかく、尚且つイケメンだ。これは更に関係のない事だった。彼は『ヨシダ』と名乗った。

 

主人公が自分宛に届いた案内に対し、『自分は慎重』なので『怪しい営業には引っかからない』と言っておきながら、なんとも曖昧な基準でサービスを受けに来ている様子は『何処が慎重なんだよ!』と、ツッコミたくなる部分ですね。

コミカルな物語はこの様に、ある程度おかしな部分を作っておく事で、全体を調整する効果を持っています。読者の方がいちいち違和感を感じない様、『ああ、こういう世界なんだ』と言う流れを作るのです。

 

 

 

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POINT4:前半のストーリー

 

主人公の元に『ゼロ円サービス』と書かれたハガキが届き、疑いつつも案内地図にあった建物へと足を運ぶ。

 

中に居た従業員の印象は良く、サービスは、健康器具の類が無料で試せる様な内容だった。

 

 

 

POINT5:展開〜オチ

 

器具が無料で試せる上に、茶菓子も出すのに全く営業をかけて来ない。それどころか、余った時間に愚痴まで聞いてくれた。


実は新手の『愚痴聞きサービス』で、主人公の妻が内緒で申し込んでいた有料のサービスだった。

 

 

 

総合的なポイント

 

この物語の主人公は、最初から最後までサービスの事を疑っています。無料でおまけに人件費までかけているのに、この会社はどうやって利益を出しているのかと。

しかし、物語の後半ではその疑いが少し和らぎます。それはサービス自体ではなく、終了までの待ち時間に、愚痴を聞いてもらった事で気持ちが軽くなったせいです。

そして帰る頃には、ここは無理に営業しない会社なのだと、自分なりの解釈で納得までします。

読者の方によっては、主人公が少し考え方を変えた事について、疑問を持たれるかもしれませんが、これは愚痴を聞いてもらった効果が大きかった事を意味しています。だからこそ『オチ』が成立するのです。

 

 

 

コラム/個性的なキャラクター

 

私の書くショートショートには、ある程度決まった個性のキャラクターが登場します。これは単に私が『書きやすい』という事もありますが、それ以上に重要な意味があって、描いているのです。

どんな場面にどんなキャラクターが適しているのか? 等々、更に詳しい内容については、次回の『コラム/個性的なキャラクター(後編)』にてお話ししたいと思います。

 

 

 

 

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