ショートショート作家 R・ヒラサワの〜Novelist's brain〜

小説の書き方ブログ。ショートショート作家 R・ヒラサワが自身の作品を用いて詳しく解説。新作随時公開中!

(小説・ショートショート書き方の基本)コラム/アイテムの使い方(後編)

コラム/アイテムの使い方(後編)

 


小説の中に登場する『アイテム』はとても重要ですが、それがテーマそのものである場合と、それをサポートする為のものである場合の、大きく分けて二つのパターンがあり、またそれらが両方登場する作品もあります。

 

 

【CONTENTS】

 


二つのアイテムが登場する場合

 

虹色

 

【テーマ:弾ける】ショートショート『虹色』の全文はこちら↓↓↓

rhirasawanb.hatenablog.com

 

 

【アイテム】シャボン玉+デジタルカメラ

この物語は、写真を撮るのが好きな主人公と、それを通じて知り合った元彼女との、恋愛に関するお話です。

二人は既に別れています。しかし、主人公にはどうしても撮りたい写真があり、その撮影には協力者が必要でした。色々考えた結果、それを頼めるのは『元彼女』だけだったのです。

 

【テーマに必要なアイテム】

テーマの『弾ける』に対して用意したアイテムが『シャボン玉』でした。シャボン玉が弾けたその先に、何かがあると言うイメージが浮かんだのです。

 

【不足しているアイテム】

先ずは『シャボン玉』があります。主人公が小学生なら、このアイテムをそのまま使う事も可能ですが、私の想定では二十代前半ぐらいだったので、その年齢の主人公がシャボン玉を使うには、もう一つアイテムが必要でした。

そこで用意したのが『カメラ』です。シャボン玉を必要とした撮影と言う場面があれば、シャボン玉に違和感が無くなるのです。

 

【アイテムからの構成】

このお話の場合、二つのアイテムによって、構成が随分と楽になりました。物語を展開するこの場所に、『元彼女』を呼びやすくなったのです。

写真が得意な主人公が難しいと感じる撮影で、尚且つ女性のモデルが必要となると、協力者は撮影のモデルでありながら、アシスタントの様な事まで出来なくてはなりません。こうなると『元彼女』がベストですし、『呼べる』と言う事で、この時点での二人の関係性が、それほど悪いものでない事も表現出来る訳ですね。

撮影が進んでゆく中、互いに何となく相手の気持ちを察する二人。そして遠回しの自分の気持ちを伝えながら、相手の気持ちに関しても確信らしきものを感じてゆきます。

結論は書いていません。読者の方の中で完成させて欲しいと思いました。そんな物語です。

 

 

 

 

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一つのアイテムで書く場合

 


挨拶の品

 

【テーマ:贈り物】ショートショート『挨拶の品』の全文はこちら↓↓↓

rhirasawanb.hatenablog.com

 

 

【アイテム】高級洋菓子

この物語は、主人公が住むマンションの隣部屋に、綺麗な女性が引っ越してきて、『挨拶の品』の石鹸を持って訪れて来たところから始まります。

しばらくして、女性には恋人らしき男性がいることが分かるのですが、ある日の夜中に大きな音がして、二人は喧嘩をした様だったのですが、今度は『お詫び』として『高級洋菓子』を手に女性が訪ねて来ます。

 

【テーマに必要なアイテム】

今回の物語では、展開上アイテムが少し変わるので、広く『挨拶の品』となっていますが、これは後に『お詫びの品』や、もっと別の意味を持ち始めます。状況の変化や心境の変化を表現する為に用意したアイテムです。

 

【アイテムからの構成】

ショートショートの構成パターンの一つとして『繰り返し』があります。これは、ある部分について同じ様なパターンを繰り返しますが、内容は徐々に増す方向に進んで行きます。それは、軽いものから重いものと言う流れであったり、悪くなり始めたものが、ついには収拾のつかないところまで進んだりと、そのような変化を遂げる事により、徐々に面白くなってゆくと言う展開です。

今回もそうですが、挨拶の『石鹸』に始まり、次は『高級洋菓子』、そこに加えて『現金』まで上乗せされてきます。そして、それに伴い品物を渡す意味も変わってきます。

 

【石鹸】→【洋菓子】→【+現金】
【挨拶】→【お詫び】→【口止め】


変化の回数は三回が良いと思います。二回では唐突すぎますし、四回は間延びしてしまうと思うのです。

今回、更に加えた展開は、主人公が女性に興味を持ったと言う事です。これにより主人公は、実際に起こっているであろう恐ろしい出来事について、何事もなかった様に過ごそうとします。これは『女性を守りたい』と言う気持ちからである事と、その実、主人公にとっても、女性の恋人の存在は『邪魔』だったのです。

こうして物語は、さらに別の意味の怖さが加わり、幕を閉じるのです。

 


Recipe

 

【テーマ:レシピ】ショートショート『Recipe』の全文はこちら↓↓↓

rhirasawanb.hatenablog.com

 

 

【アイテム】レシピ

主人公の彼氏はイケメンで、とてもモテる男性だったのですが、主人公以外に複数の彼女がいます。しかし、彼女と言っても浅い付き合いで、友達程度の間柄です。『一芸に秀でた女性』と真剣に付き合いたいと考えているのです。

彼は一定期間、自分の設けた基準で女性達を見て、判断する事にしたのです。

 

【テーマに必要なアイテム】

『恋愛にマニュアルはいらない』と言う事をテーマに物語を書こうと思い、料理で『マニュアル』に相当するであろう『レシピ』をアイテムとして用意しました。

 

 【アイテムからの構成】

アイテムが『レシピ』である事から、その主人公は、『料理が得意な人』に設定しました。彼の一番になりたいとの想いで、主人公は色々努力する過程で『我流』で作っていた料理を、『レシピ』を見ながら作る料理へと変えてしまうのですが、それによって主人公の『自分らしさ』が薄れてしまう訳ですね。そしてそれは、彼に『味が落ちた』との言葉を言わせる原因になってしまいます。その言葉にショックを受けた主人公は何も出来なくなり、やがて彼の事を諦めかけてしまいます。つまり、無理に努力しなくなったのですね。しかし、これが功を奏するのです。我流の料理に戻った主人公は、再び自分の良さを取り戻し、彼から選ばれる人になるのです。

 

 

 

そして最後に

物語はアイテムによって大きく変化し、時に構成まで変えてしまうほどの力を持っています。主人公とアイテムの関係性を上手く築く事で、面白い物語が生まれます。テーマに、そして主人公に適したアイテムを上手く使いこなして、素晴らしい世界を作り上げましょう。 

 

 

次回は、ショートショート『青い目の人』の創作プロセス公開です。

 

 

 

 

 

 

 

 

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