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(日常のわずかなヒントから小説を書く方法) ストレスシートからの物語(4)

ストレスシートからの物語(4)

 

 

物語を書く場合、『ネタ元』となる何かしらのヒントが必要です。それは意識して浮かぶ場合もあれば、突然何かがきっかけになる事もあります。大事なのは常にチャンスがあれば書き残す事を意識するのと、多くのチャンスを自ら作る事です。『ストレスシート』もチャンスを作る方法の一つです。今回は第四回目となります。

 

初めてご覧になる方は、以前の記事もご参考に。

ストレスシートからの物語1~3はこちら↓↓↓

rhirasawanb.hatenablog.com

 

rhirasawanb.hatenablog.com

 

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【CONTENTS】

 

 

 

ストレスシートの内容

 
右にウィンカーを出して、左に曲がる人

私が遭遇したのは年配の方で、前方を『軽トラック』で延々と右にウインカーを出したまま直進し続けている。『ああ、忘れてるんだな』と思いつつも、『いつ曲がるんだろう?』と、こっちは不安なままです。その後、多めに車間をあけて後ろを走っていると、突然『左』に曲がりました。ウィンカーを『右』に出したまま……。

 

 


ここからのアイデア

 

ある日、突然世の中のルールが変わっていたとしたら、それを知らない人はきっと驚くでしょう。しかも、周囲の人達はみんな知っている中で、自分だけがそれを知らない立場だったら、きっと怖い世界ですよね。

 

 

 

ストレスシートからの物語

 

逆の日

 『右にウィンカーを出して、左に曲がる人』

 

 

 

「あ! また居るよ。右にウィンカー出しっぱなしじゃん。気付かないのかねえ?」
 男は今日も車で配達に出ていた。前日に注文を受けた商品を、客先まで届けるのが男の仕事だ。以前にも同じ様な事をしている車を見た事があったのだ。
 男のすぐ前を走る車は、右にウィンカーを出したまま、片側一車線の道路をひたすら直進し続ける。後続の車は一体いつ曲がるのかと、常に気にしていなくてはならない。男は普段余計な事は一切考えず、運転中に好きなアーティストの曲を聴きながら、リラックスして走るのが好きだった。しかし、今日はそれが出来ない。
 男は毎日ほとんど同じ時刻に、同じルートを通る。周囲を走る車も同様で、少なくとも営業車で会うのは大体同じメンバーだ。
 平日の一週間を通して走ってみると、この車はどの曜日にやって来るかも把握出来る。例えばこれが、現金輸送車だとしたら、こんなパターンでは走らせたりしないのだろうと、男は考える。
 前方の車は普段まるで見かけない。ナンバープレートはこの辺りの物だったが、運転しているドライバーが、道に慣れていないのか、或いは何かを探しているのか。しかし、そんな事は男にとってどうでもよかった。大事なのは正しくウインカーを出して、ちゃんとその方向に曲がってくれる事だ。この車の後ろを走っている限り、無駄に神経を尖らせる必要があるのだ。しかし、ここは片側一車線。無理な追い越しは更なる危険を招くかもしれない。仕方なく後に続いた。
 男が恐れていた瞬間は、それからほどなくやって来た。前方の車が『右』にウィンカーを出したまま『左』に曲がったのだ。
ーやっぱりー
 男は考える。近頃は世の中も複雑になって来てるし、現代人のストレスも多い事だろう。例えばあの車のドライバーが、自分よりもはるかに高齢だった場合、その人物はもっと激しい世の変動を経験して来たに違いない。その流れを経て現在に至っているのだ。
 自分が同じ立場なら、ミスなく運転出来るだろうか? 例えば『電話』はどうだろう? 黒電話から最新スマホまで網羅出来たと言い切れるだろうか? それはその時がやって来なければ、きっと分からない事だった。
 男も若い頃に比べれば、物覚えが悪くなったと言う自覚はあるし、反応だって鈍くなっているだろう。今の仕事も時に複雑だったりして、ミスも増えている筈だ。少しは他人を理解する、広い心を持つべきかと考えた。
 問題の車が居なくなり、前方は広く空いた。いつもより出発が早かったせいか、道はガラリと空いている。ここを少し直進すれば、角に派手なビルが見える。今日、一番目の配達先に向かう為の大きな目印だ。そのビルには有名なファッションブランドが入っていて、建物の規模は小さいが人気があるようだ。朝の配達時には人もまばらだが、オープン前には行列が出来る事もあると言う。
 男の配達ルートには、少し似たような街並みや、目印らしき物がない場所もあったが、この建物の様にインパクトのあると、配達中に少し気を緩めたところで、通り過ぎてしまう事もないのだ。
 赤・黄・青と、三原色を全て使った建物の角を、いつも通り男は左折した。
 次の瞬間だった。対向車がウィンカーとは逆方向に曲がって来て、男の車と衝突したのだ。男は何がなんだか分からなかった。
 相手の運転手が車から降りてきた時、『どっちに曲がってんだ、このバカヤロー』と、言ったのが聞こえた。
 どちらも軽症だった。病院で手当てを受け、警察から事情を聞かれた。過失の割合については、保険会社からの連絡があるそうだ。妻が病院まで男を迎えに来た。  
 家に帰るまでの道中、ファミリーレストランに入り、男は遅めの昼食をとる事にした。既に食事を済ませていた妻はコーヒーを、男はカレーライスを注文した。
「ねえ、あなた。本当に今日の事覚えてないの?」
 怪訝な表情で妻が男に訪ねる。
「うーん。そんな話を聞いていた様な気はするけど……。とにかく、今日がその日なんて意識はなかったさ」
「そりゃそうよね。じゃなきゃ、こんな事にはなってない筈だもの」
ー逆の日ー
 政府が昨年打ち出した認知症予防策で、特定の日に普段とは『左右逆』の事をして、脳を活性化するのだとか。何処かの大学の、『ナントカ』と言う偉い教授が研究した事の様で、今後更に増える事が予測される『認知症患者』を減らす事が目的だと言う。
 今日はその『第一回目』で、少なくとも交通事故の発生件数と負傷者は、例年を上回っている筈だが、政府は一切そんなコメントをしていない。
「もっとマシな事考えられないのかねえ……」
 そう言いながら男は利き手とは逆の左手で、ぎこちなくカレーライスを口に運んだ。

  

 

 

  

タイトル

 

『逆の日』


少々ネタバレ感のあるタイトルですが、あえて付けました。タイトルは比較的ストレートなものと、抽象的なものがあって、今回も『一体何の話?』となるので、このパターンも面白いでしょう。

作中では、徐々にタイトルの意味が分かる構成にしましたが、実はそれって『ミスリード』なんですよね。

 


書き出し

 

「あ! また居るよ。右にウィンカー出しっぱなしじゃん。気付かないのかねえ?」
 男は今日も車で配達に出ていた。前日に注文を受けた商品を、客先まで届けるのが男の仕事だ。


この書き出しは、勿論タイトルとセットです。先述の通り、その後しばらく文字数を使って、『逆』の意味らしきところまで辿り着きます。しかし、『オチ』は更にもう一歩先に用意されているんですよ。

 

 

ユーモアとポイント

 

主人公は自分が遭遇した車のドライバーに対して、一旦は『なんで気付かないの?』と思います。しかし、それを自分に置き換え、しかもそれがもっと年を取ってからの事だったらと、少し相手を思いやる気持ちを持ちます。これは主人公を『いい人側』に一度寄せておき、その先に『オチ』を持ってくる事で、その効果が大きくなる様に構成したものです。

 

 

そして最後に

 

日常の些細な事は、実際小説のネタにする事は十分可能です。私の場合は『ストレス』を書き留めてそれを利用していますが、皆さんが普段生活する中で、出来れば多く溜まってゆくもの、例えば『レシート』などがその例で、溜まった用紙をじっくりと観察し、『これ』と『あれ』を組み合わせてみると、意外とたくさん『ネタ』が出来上がるのかもしれません。是非お試しを。

 

 

 

 

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