コラム/文章に変化をつける方法(後編)その(2)
前回に引き続き、文章に変化をつける方法の(2)で、今回は『構成』についてのお話です。大まかな『展開』として『起承転結』がありますが、その中に更に細かい『構成』があります。『オチ』に対する『仕掛け』などをどの様に配置しているのか。今回は、そんなお話です。
【ご注意!】
以降の解説には『オチ』の『ネタバレ』を含んだ箇所があります。まだ作品を読んでいない方、本来のショートショートとして楽しみたい方は、先にリンク先『全文』をお読みになられる事を、お勧めします。
【CONTENTS】
ショートショート『スミレ先輩』の場合
ショートショート『スミレ先輩』の全文はこちら↓↓↓
❶主人公と先輩の関係と対話
「ヤダ、こわい!」
カンナは思わず、手にしていた書類の束を放してしまう。
「危な!」
スミレ先輩は素早く落ちかけた書類に手を伸ばし、見事にそれを食い止める。
「さすが、スミレ先輩!」
運動神経の良さは群を抜き、殆どの仕事は社内の誰よりも早かった。
主人公と先輩のやりとりを、会話だけでなく『動作』を入れる事で、より分かりやすく表現しています。ネット上でも『動画』が多く閲覧されているのと同じで、動きをつける事で理解しやすくなるのです。複数のエピソードを羅列するより、特徴的な一場面を描いた方が効果的です。
❷主人公の恋愛事情
「どれぐらい空いてるの?」
「ア・イ・テ・ル?」
「ああ、期間の話よ。前の彼氏と別れて、どれぐらいフリーか聞いてるの」
「前って、その……ずっと居ません」
「え? 貴方もう二十四でしょ。誰とも付き合った事無いわけ? 私はずっと居るもんだと思ってたから、聞いたりしなかったんだけど……」
「はい、出会いが無かったんです」
主人公恋愛事情について書きながら、実は次の展開へのステップになっている部分です。
【裁断機の話】→【男性の目】→【主人公の恋愛事情】
❸先輩の恋愛事情
カンナは入社以来、スミレ先輩の彼氏だった相手を三人知っている。そして、みんな決まって三ヶ月以内に別れているのだ。
先ずは本題への入口です。
経験豊富で頼りになるスミレ先輩の言葉には重みがある。相当レベルの高い相手でなければスミレ先輩とは釣り合わない。きっと厳しい判断基準をクリア出来なかったのだろう。
いわゆる『転句』の部分です。ここから『オチ』へ仕掛けをしながら進んでゆくのです。
❹転句とオチ
しかし、カンナの目には、スミレ先輩の歴代の彼氏に、それらしい欠点は見当たらない。カンナは思い切って、その事を聞いてみる事にした。
この後、いよいよ『オチ』になるんですね。
ショートショート『視点』の場合
ショートショート『視点』の全文はこちら↓↓↓
❶主人公と編集長の関係と状況
「あのー。神様視点って分かります?」
出版社の編集長は、少々困った表情で私に問いかけた。
「はあ、何となく」と私は答えたが、正直なところあまり自信が無かった。
この問いに至るまでに、やたらと専門用語を列挙していた編集長は、きっと私を説き伏せたいに違いない。
あえて『ゆっくり』とした展開にしています。場面設定を徐々に明らかにする手法ですね。これをやるメリットは、『オチがシンプル』な場合です。展開を早める事による『ネタバレ』を回避する為のものですが、無理に引き伸ばすのではありません。順番に『情報を開示』するのです。
❷主人公の思惑と編集長の受け止め方
「貴方が持ち込んだ原稿の中身は、全体的にその傾向がありますね。私は少し読んだだけで、そういうのが全部わかるんですよ」
編集長は『小説の事なら何でもお見通し』の視点から言葉を放った。会話の中で私が曖昧な反応を示した言葉について、こうやってひとつずつ説明を加えてくる。しかし、私にとってそれは、あまり意味のない事だった。私の目的は編集長と話す事なのだから。
『編集長の思惑』として進めながら、少しずつ展開してゆきます。二人の会話の中に『ユーモア』も交えながら、『オチ』に繋がる材料も混ぜ込んで行くのです。
❸編集長が主人公に直接会った経緯
「タチが悪いだなんて……。むしろ私はいい事をしようと思って」
「いい事? 電話口でいきなり『編集長に大事な話がある』なんて言っておいて? 正直こっちはいい迷惑ですよ」
「ええ。それは確かに言いましたけど……」
「ほら。そんでもって名前を聞いたら、ウチで本を出してる作家さんとそっくりな名前だったんで、電話に出た若い子が聞き間違っちゃって、私はすっかりその人かと」
現状、出版社が『持ち込み原稿』を受付けていない場合が殆どで、このやり取りはリアリティの為と、ここでも重要な『キーワード』を埋める為の流れです。
❹転句とオチ
「やっぱり、お話は聞いて貰えませんか」
「貴方もしつこい方ですね。すみませんが、後の予定がつかえてますんで、これで失礼しますね」
そう言って、編集長は部屋を出て行ってしまった。その場に一人きりになってしまった私は、仕方なく出版社を後にする事にした。
私には見えていた。今日、編集長が命の危険にさらされるのが。しかし、彼は私から直々にその情報を得るという、千載一遇のチャンスを逃したのだ。
視点の話をしていた様だが、一体どこが間違いだったのだろう? 何でもお見通しなのは、私にとってごく普通の視点なのに。
最終的には『オチ』である『視点』の部分に辿りつく流れなのですが、物語の中盤辺りから、何度か二人の会話のやり取りの中に、ユーモアを含めた仕掛けが施してあります。つまりは『言葉の繰り返し』なのですが、基本的な構造としては、先ず『編集長』から振られた言葉を『主人公』が受ける構造です。ここで大事なのは、受けた主人公はその都度軽く『オチ』をつけておく事です。
『ショートショートの書き方』を、作家の視点で詳しく『超解説』‼
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