ショートショート作家 R・ヒラサワの〜Novelist's brain〜

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(『食べ残し』がテーマの作品例)新作ショートショート(25)/食に関する習慣と

新作ショートショート/テーマ(食べ残し)

 

食に関する習慣と

 

 

「ああ、もう駄目だわ。食べられない」
 妻はそう言いながら、ファミリーレストランで注文した食事を残す。
「だから聞いたじゃないか。『本当に食べられるの?』って……」
「だって、全部美味しそうだったんだもん!」
 妻の目の前にあるのは、唐揚げや生姜焼きなどが色々と乗った『満腹プレート』というメニューで、殆ど注文するのは男性客である。しかし、今回は妻がそれを食べている。
 欲張った注文による食べ残しは時々あって、その際に妻が残すのは決まって『好きではない食べ物』だった。
「君ってさあ、いつも好きなものから順に食べるだろ?」
「そうよ、それの何処が悪いの?」
「別に悪くはないけど、俺なんていつも『好きじゃないもの』から食べてるよ」
「ふーん。それで?」
「分かってないねえ。そうする事で後の方に好きなものが残るだろ? その時、ある程度満腹感があったとしても、それが好きなものだから、結局ちゃんと食べる事が出来るんだよ。いつも俺が食べ残しを出さないのは、そういう事なんだ」
「へえ。でもそれって結構無理して詰め込んでるって事よね? だから貴方はどんどんお腹が出てきて、度々ズボンを買い替えないといけないんじゃないの? それって家計に響く無駄な出費よねえ?」
「それを言うなら君だって同じじゃないか。食べ切れないもの注文してるんだろ? だったらもっと量の少ない安いメニューを頼めばいいじゃないか」
「あら、そんな事言うわけ? 月に一回程度の外食は安いファミレスで我慢してるって言うのに、そんな時ぐらい自由に選ばせてあげようって優しさが、貴方には無いって事よね!」
「そう言う訳じゃ……」
 私の食事の習慣は母親からの教育だった。子供の頃、好き嫌いの激しかった私に、何とかそれを克服させようと、決められたルールが『嫌いなものから食べる』であった。
 子供の頃は空腹であれば、少々嫌いなものでも食べてしまった。単純にそれを利用しただけの事であったが、これが抜群に効果があった。食べ続ける事で嫌いなものが減り、高校生になる頃にはすっかり何でも食べられる様になっていた。私は今でもこの食事のルールが良かったのだと思っている。
 一方の妻は『好きなもの』から食べるタイプで、先ずは一つのおかずを食べ切る。妻曰く、他のおかずの味に影響されるのが嫌なのだそうで、その結果一品ずつ完食してゆくとの事。そして、好きなものから食べ切っていった結果、後半に残るのは『好きではないもの』で、こんなパターンで食べたのでは、おかずが残るのは当たり前だと私は思っている。
 更に問題なのは食事前で、菓子類などは平気で食べるし、時にはケーキの様に甘いものまで食べるのだ。『空腹状態』で食事に挑んでいる私と比較して『食べ残し』が多くなるのは当然の結果と言えよう。
 こんな二人のやり取りはよくある事だが、可愛いところも沢山ある人で、私は妻を心から愛している。おかずの食べ方の如く、私は『女性選び』も、実は似た様な考え方を持っていたのだ。
 独身時代に好感の持てる女性が数人いた。私は真面目だったので、複数の女性と同時に深い交際などしない。あくまで『友人』といったところからのスタートだったが、比較的趣味の合わない女性から順に交際を始めていった結果、最終的に付き合ったのが現在の妻で、私に最も合っていると感じ、結婚を決めた。
 私がこの様な順序で女性と付き合ったのは、しっかり自分の適正や相性といったものを確かめたい気持ちがあったからで、今でも自分の目に狂いは無かったと思っている。
 妻は毎日そっけない態度で私と過ごしている。昔からあまり感情を表に出さない人なのだ。しかし、本当は私の事をとても愛している筈だ。
 私はもう一度妻を見た。既にスマホ画面に夢中で、相変わらず私に関心を示さない様子だが気にはしない。それはいつのも事だから……。
 一方の妻は食事の時、いつでも『好きなもの』から食べるタイプだ。実は『男性選び』も同様で、独身時代に好感の持てる男性が数人いて、『最も好きな男性』からアプローチしていった。しかし、それらを全て断られた結果、最後に残ったのが現在の夫である。最も興味が薄く、関心のない相手だが、普段は適当に話を合わせていれば、生活する上で特に問題無しと判断し、多くの妥協と共に結婚を決めた。
 しかし、その事実を夫が知る日は、まだまだ遠いようだ。

 

 

 

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