ショートショート作家 R・ヒラサワの〜Novelist's brain〜

小説の書き方ブログ。ショートショート作家 R・ヒラサワが自身の作品を用いて詳しく解説。新作随時公開中!

(小説の読みやすさを考える)コラム/作中に入れる人物名の頻度

コラム/作中に入れる人物名の頻度

 

【CONTENTS】

 

頻度についての問題

 

小説書く時、その中の人物の行動や内面描写をする時など、必要に応じて『人物名』を入れるが普通ですが、この『頻度』が適当でないと、読者のかたは読みにくさを感じてしまいます。
例えば『少ない』場合。登場人物が比較的少ない、或いは場面ごとに係る人数が少ない場合はあまり問題にならないかもしれませんが、そうでない場合、読んでいて『誰』の行動や言動であるから分かりにくくなる事があります。
例えば、これがその先をある程度読み進めれば理解出来たとしても、それが『小説世界』から『現実』に引き戻してしまう要素となる為、避けるべき問題です。


【例文】

その日のマユミの服装は、とにかく派手だった。周囲の人達の視線がマユミに集中しているのが分かる。マユミにはその反応が心地よかった。この店とは、およそ不釣り合いな格好のマユミは、フロア内を歩き回る。
店員達の冷ややかな視線に、マユミの心は過剰に反応した。マユミはヘッドフォンから流れるリズムに合わせながら、大袈裟に腰をくねらせ、更に店内を歩き回る。マユミの気分はすっかり『ハリウッド女優』の様だった。
【198文字の中に『マユミ』は7回登場】


人物名を入れるタイミング

 

私は普段から小説の書き方について、何かの意図がある場合は、より『適した方法』がありますが、それを除く場合に関して特に『書いてはいけない』や『間違い』は無いと言う考え方です。
今回の『登場人物の名前を入れる頻度』についても、本来は問題視していません。しかし、例えば書いた作品を『文学賞』や『コンテスト』に応募するとなれば、事情は変わってきます。例えば『文学賞』の場合、受賞作は当然『出版』される訳ですから、出版社としては勿論『売れる本』でなくてはなりません。その為には多くの読者を獲得する必要があるので、『広く世間に受け入れられる作品』である必要があるのです。そうなると、多くの読者が『読みやすい』と感じる文章を書く必要が出てくるのです。


私が考える頻度

 

【アレンジ後の例文】

その日のマユミの服装は、とにかく派手だった。周囲の人達の視線が自分に集中しているのが分かる。マユミにはその反応が心地よかった。この店とは、およそ不釣り合いな格好でフロア内を歩き回る。
店員達の冷ややかな視線に心が過剰に反応したマユミは、ヘッドフォンから流れるリズムに合わせながら、大袈裟に腰をくねらせ、更に店内を歩き回り、気分はすっかり『ハリウッド女優』の様だった。
【183文字の中に『マユミ』は3回登場】

 

例文をアレンジしたところ、人物名は約半分になりました。個人的にはこの方がスッキリとして、読みやすいと思います。今回取り上げた例文では、作品のほんの一部ですが、同様の書き方をする作者の方であれば、この傾向は作品全体に渡るものになる事が考えられます。
読みやすさと言う点は勿論ですが、私の書く『ショートショート』等の場合、『文字数制限』がある事が多く、今回の様に『人物名』を減らす事によって使える文字数が増えますので、それらを作中の『表現』に使う等、有効に活用させる事によって、作品に厚みを持たせる事が可能になります。それは勿論、作品の『レベルアップ』に繋がるのです。

 

創作が上手く進まない……。そんな時、『もしも……』と、あてはめるだけ!

先ずは『試し読み』をどうぞ↓↓↓

 

迷った時の判断基準

では、実際に人物名を作中に入れるタイミングなのですが、私が考える『適切な位置』について説明したいと思います。

 

❶動作の開始部分
❷他者との切替え
❸特別な心理描写
❹特別な動作
❺強調すべき部分

 

❶その日のマユミの服装は、とにかく派手だった。周囲の人達の視線が自分に集中しているのが分かる。❸マユミにはその反応が心地よかった。この店とは、およそ不釣り合いな格好でフロア内を歩き回る。
❹店員達の冷ややかな視線に心が過剰に反応したマユミは、ヘッドフォンから流れるリズムに合わせながら、大袈裟に腰をくねらせ、更に店内を歩き回り、気分はすっかり『ハリウッド女優』の様だった。

 

例文に出てこなかった❷と❺は、以下の様な部分で使用します。

 

【❷の場合】
周囲の人達の視線が自分に集中しているのが分かる。
→周囲の人達の視線がマユミに集中していた。

少し文し文章が変わりますが、直前までは『マユミ』について語っており、この部分から『周囲の人』について語っています。ここでは『誰』について語っているかが分かる必要があるので『マユミ』を入れています。

 

【❺の場合】

大袈裟に腰をくねらせ、更に店内を歩き回り、気分はすっかり『ハリウッド女優』の様だった。

この文章をアレンジします。原文では『マユミ』だけが店内いる状況ですが、例えばここに複数の人が居たとすると、それらの区別を含めて『人物名』を入れる必要が出てきます。

→大袈裟に腰をくねらせ、マユミは更に店内を歩き回り、気分はすっかり『ハリウッド女優』の様だった。

この文章では、複数人いる中の一人である『マユミ』が店内を歩き回っている様子が書かれています。この様に、誰かとの動きに区別をつける場合、要は『強調』したい場合にも、人物名を入れるのが有効になります。

 

【人物名を削るタイミング】

では、逆に人物名を入れすぎて、『削りたい』時はどうすれば良いでしょうか? この様な状態になってしまうのは、一度書いてみた文章で既に色んな所に人物名を入れてしまったが、どれも重要で『削る』のが難しくなった事が考えられます。この場合、原文をそのままに『削る』作業は少し難しい場合もあるでしょう。
先ずは以下のタイミングを読んでいただき、その上で文章にアレンジを加えるのが良いかと思います。

 

❶同一人物の区切られた動作だが、他社との区別がつけやすい

❷人物の心理状態などの特別に協調すべき部分がなく『誰』によるかが明確
❸その場面に複数人居るが、動作が全体を表している、或いは単独で誰の動作か明確だが強調の必要がない

 

『頻度』については特に決まりがある訳ではないので、一般的には『読み易さ』と言う事になると思いますが、何か意図があってそれらをコントロールする場合もありますので、その辺りは『読み返す』事によって決定されるのが良いかと思います。

 

次回は、ショートショート『ある研究施設からの手紙』の創作プロセス公開です。

 

 

 

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