今回の作品/ある研究施設からの手紙
ショートショート『ある研究施設からの手紙』の全文はこちら↓↓↓
【CONTENTS】
- テーマからの発想
- 発想からのキーワード選出
- POINT1:タイトル
- POINT2:書き出し
- POINT3:ユーモア
- POINT4:前半のストーリー
- POINT5:展開~オチ
- 総合的なポイント
- コラム/単調な(伝わりにくい)文章にならないコツ(前編)
テーマからの発想
今回のテーマは『薬』です。薬と言えば、風邪をひいた時など、人に限らず動物や植物の悪いところを『改善』する為に使われるのが本来の用途です。
しかし、その効果を悪用して『犯罪』に使われたり、処方された通りに使っても『副作用』が出る場合もあります。
この様に、本来の用途以外の使い方が出来る、或いは元々複数の用途があるものは、ある意味小説では『便利なアイテム』として使う事が出来るのです。
発想からのキーワード選出
『薬』『治療』『副作用』
今回のキーワードは、比較的シンプルなものでした。前述の通り『薬』には本来とは違った用途がある事は、ある程度一般的な認識としてあった事なども関係していると思いますが、テーマの段階でも、既に『アイデア』は浮かんでいたのです。
POINT1:タイトル
タイトルは『ある研究施設からの手紙』です。私が作中で『手紙』を使用する事は滅多にありませんが、今回は物語の『アイデア』が出た時点で、『手紙』を使う事は直ぐに決定となりました。
『手紙』も『薬』と同様で、様々な使い方が比較的浮かびやすい物であると思います。元々は『郵便』で送られる、『離れた相手』に何かを伝える物だと思いますが、『ラブレター』の様に、本人に直接伝えにくい事に『手紙』を使ったりと、ある意味そこに『時間差』を産むアイテムとして使う事も出来る訳です。
そして『研究施設』です。毎回の事ですが、先ずタイトルは『作品全体』を表す事が重要です。次に『読者の興味』です。特に今回のタイトルは、全体を表してはいるものの、尚且つ『曖昧』な表現を含んでいます。この『曖昧な部分』こそが、読者の『知りたい』という気持ちを刺激するのです。
POINT2:書き出し
こんな話を、一体誰にすればいいのか……。
とある研究施設での話だが、その内容があまりにも恐ろしく、これまで誰にも話す事が出来なかった。だから、こうして誰に宛てるでもなく手紙を書こうと思っているが、どうにも思う様に筆が進まないのである。
小説の書き出しの基本として『不明点』を散りばめる事が重要です。今回の書き出しで言うならば、先ずは『誰?』です。研究施設の事について、手紙を書こうとしている人物が一体誰なのか? 最初に起こる疑問です。次に『何?』です。研究施設での話の中で一体何が『恐ろしい』のか?
文章を魅力的にする方法の一つとして、常に『謎の部分を作る』があります。これを繰り返す事によって、読者は先へ先へと読み進めてしまうのです。
POINT3:ユーモア
特に『ユーモア』的な部分は作っていません。今回の物語の場合、如何に『リアリティ』を持たせるかが重要になってきます。例えば『施設周辺』の立地などは、実在する場所をアレンジしています。また、そこでの人の流れなどは、同じ場所での環境をある程度調査しています。ショートショートは短い物語ですが、前述の様な『リアリティ』については、他のジャンルの小説と全く同じで、これらに時間をかける事を怠ってはいけないと私は思うのです。
POINT4:前半のストーリー
起
ある研究施設についての恐ろしい出来事を、主人公は誰かに伝えようと手紙を書くことを試みるが、どうにも上手く筆が進まない。
承
主人公は不治の病に侵されており、その治療方法を様々な方法で調べた結果、治せる可能性のある薬が問題の研究施設にあるとの情報を得る。
POINT5:展開~オチ
転
主人公はネットで得た情報を頼りに研究施設に忍び込み、上手く『治療薬』とされる錠剤を入手し、直ぐさまそれを施設内で服用し、徐々に体に変化が現れる。
結
主人公が服用した薬は植物の遺伝子研究施設で偶然に人間の病気に効果が得られるのが分かったものであったが、重大な副作用があった為に認可がおりず、薬として発売が出来なかった。その『副作用』とは、人間が『植物化してしまう』と言う事だった。
総合的なポイント
今回の作品は、少し『ホラー』的な要素を含んでいます。そのため、出来る限り『怪しい雰囲気』を演出する様に書いてみました。『描き出し』の部分で『手紙』を使ったのも、その効果を得る為ですが、作中に実際『手紙』は存在しません。
手紙を『書こう』と思ったが『書けない』。その理由として、物語を読み始めた読者の方は、『書くと不都合がある』といった理由を想像したかもしれません。要するに、施設の関係者から『命を狙われる』或いは、そこまで行かずとも『訴えられる』などの場合もあるかもしれません。しかし、実際にはそうではありません。主人公は既に『ペンが持てない状態』にあるのです。
過去の記事で、私は常々ショートショートの『オチ』に関して書いている事があるのですが、『伏線』を張る時のコツは、『事実だけを書く』で、これに尽きると思います。
ショートショートを書き始めた、或いは慣れていない方の場合、どうしてもオチを『ひた隠す』傾向にあります。『ネタバレしない様に』との思いは理解出来るのですが、無理にギリギリのラインを狙って書く為か、中途半端な『ぼかし』や、『回りくどさ』が目についてしまい、そこに生まれる『違和感』は、『読みにくさ』だけでなく『この辺が怪しいな』との『きな臭さ』まで与えてしまい、結果的に不十分な『仕掛け』になってしまう可能性が高いのです。
話を元に戻しますが、今回の作品で言う『事実だけを書く』は、『どうにも思う様に筆が進まない』の部分です。
主人公は既に飲んだ薬の効果、要は『副作用』によって、自分の思う通りに体を『動かす事が出来ない』訳です。この『体が動かせない』と言う事実を、無理に書こうとすると『違和感』が生まれます。これは簡単に言えば同じ事を表現する『別の言い回し』を考えると言った方が分かりやすいかもしれません。この様に『言い換える』事によって、事実だけを『堂々』と書く事が出来ますし、そこに『違和感』も生まれないのです。
コラム/単調な(伝わりにくい)文章にならないコツ(前編)
どのジャンルの小説であっても、登場人物の置かれている『状況説明』が必要です。小説における説明とは、地の文で実際の『説明』の様に書く場合もありますが、その様な文章が続くと、単調で面白さに欠けてしまう場合もありますし、また、その情報量が多く、『羅列』の如く並んでしまった場合、読んだ時にそれぞれのインパクトが弱くなる事で、読者の方の『記憶』に残りにくくなる可能性があります。
如何にして変化を付け、印象深い文章にするのか? 更に詳しい内容については、次回の『単調な(伝わりにくい)文章にならないコツ(後編)』にてお話ししたいと思います。
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