R・ヒラサワの〜Novelist's brain〜

小説・ショートショート書き方の基本

(小説の書き方の基本を公開)コラム/作家を目指す方へ(後編)

コラム/作家を目指す方へ

 

『作家』を目指す事は、何も悪い事ではないと思います。デビュー時期についても『遅咲き』の方が、他の分野と比べて割合が多い方だと思いますので、チャンスを掴める期間も長いのではないかと思います。

大事なのは『実生活に支障をきたす事が無い範囲での活動に留める』事だと思います。

そして、何処かの段階で『方向転換』を考える時、何を基準にどう判断するのか。

方向を決めるのは本人です。しかし、何かしらその判断を下すための基準のようなものが必要ではないかと思います。

私がこれまでの経験で得た事ついてお話しする事で、少しでも参考にしていただければと思います。

 

 

【CONTENTS】

 

 


作家に必要な才能を把握する

 

『書く事』や『読む事』が好きだと言うのは、作家としてあった方が良いのですが、これは一般の方の趣味などの範囲と同様に考えた方が無難でしょう。

例えば現在、ご自身が何かの職に就いていた場合、先述の様な事が当てはまるでしょうか? 少なくとも私の場合、好きな事と得意な事は同じでありませんでした。

分かり易い例として『読む』ですが、作家としての『読む』は『書く』為の研究であり、通常の『読者』としてのそれとは全く別物なのです。

私は特に気になった本を二回読む事にしています。まず一回目は、普通の読者として、楽しめたところや少し気になった事など、そのあたりを中心に読みます。

二回目は作家として『設定』『構成』『セリフ』『キャラクター』などをチェックしながら読む訳です。

読み返しも多くなり、かなりの時間を要しますので、とても作品を楽しむ事など出来ません。

私の経験上、これは必要だと思う事をまとめた記事があります。

関連記事はこちら↓↓↓ 

rhirasawanb.hatenablog.com

 

 


どこまで頑張るのかを把握する

 

『作家として何が必要か』という事に対して、今後習得すべき目標を立てる場合、先ずはご自身の立ち位置を把握する必要があると思います。

ある項目に対して、あと少しで到達出来るのか、或いは死ぬ気で努力が必要なのか。最も大事なのは、足りない部分を埋める事が『出来る』か『否』かだと思うのです。

極論を言えば、どちらのタイプの人も到達は可能なのです。足りない部分をちゃんと補う事が出来れば良いのです。

ただし、全ての人に言える事は、使える時間はそれぞれで、なおかつ限りがあると言う事です。この時間の配分こそが、実生活に支障をきたすかどうかの判断基準だと思います。

関連記事はこちら↓↓↓ 

rhirasawanb.hatenablog.com

rhirasawanb.hatenablog.com

 

 

 

 

 


出版について把握する

 

原稿は多少手直しがあっても、先ず書いた物がなければいけません。どれだけ技術があっても、書けなければ始まらないのです。こんな事は当たり前だと思われるかもしれませんが、実は作家志望の方に多く見られるのが、この『書けない』人達なのです。

作品に強いこだわりがあったり、書きたいものしか書かない。私は『売れる作品書いて下さい』などと言う気はないので、それで良いと思います。

私はネット上の、出版権をかけたショートショートコンテストで最優秀賞を逃したのですが、その後出版社に原稿を送り続けて、電子書籍を商業出版する事が出来ました。

その後は、出版社の依頼でコラムを書いたり、編集担当の方から紙媒体の新刊へのトライアルなど、チャンスがあったのに上手くいきませんでした。

どの様な作品を書かれるのかは、個人の自由だと思いますが、『作家』を目指す以上『出版』について知って頂いている方が良いでしょう。

関連記事はこちら↓↓↓  

rhirasawanb.hatenablog.com

 

 

そして最後に

 

『作家』と呼べる線引きは色々ありますが、私は最低限『商業出版』としての出版物を出すラインのクリアは必須だと思います。『自費』や『共同(協力)』も出版ですが、『商業出版』は一般的に出版社が費用の全額を負担するので、基準とされるセールスの見込みが必要となり、一定基準の審査をクリアしなければなりません。

書きたいものを書き、いつの日かそれが認められるとの思いで進められるのも結構ですし、その日が来る場合もあるでしょう。ただし、その方法を選ばれるのであれば、それなりの余裕と覚悟が必要になりますので、どうか慎重にご判断願います。

 

 

 


次回は、ショートショート『優秀な新人』の創作プロセス公開です。

 

 

 

 

 

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(解説から学ぶ小説書き方のルール)今回の作品/ミラクルパワーボール、コラム/作家を目指す方へ(前編)

今回の作品/ミラクルパワーボール

 

十年来の付き合いになる友人から、少し怪しい商品を紹介された主人公は、商品の事は疑いつつも、友人を信用して購入してしまう。商品を色々な方法で試すものの、全く効果が現れず、その結果友人を疑ってしまう事になるが……。

ショートショート『ミラクルパワーボール』の全文はこちら↓↓↓

rhirasawanb.hatenablog.com

 


【CONTENTS】

 

 


テーマからの発想

 


今回のテーマは『お勧めの品』です。

『お勧めの品』と言えば、勧めてくれた相手によって、その商品に対する信頼度が随分と変わってしまうものです。

別に悪い人では無いのだけれど、勧めてくれるものが、どうも頼りないと言うケースが時々あるものです。

 

 

 

発想からのキーワード選出

 


口コミ、美味しい店、ネットショッピング、健康食品、占い

 

 

 

POINT1:タイトル

 


タイトルは『ミラクルパワーボール』です。これは物語の中に出てくる、架空の商品名ですが、できるだけその効果をストレートに表現した名前にしました。

商品名からある程度、物語の内容を想像できるようにするためで、架空の商品等は特殊な名前をつけてしまうと、まるで察しがつかなくなってしまいます。

これまで、何度か触れた事がありますが、小説のタイトルはとても重要で、それは物語の一部であると言う事を意識して、名前をつけていただくのが良いと思います。

 

 

 

POINT2:書き出し

 


「これがいざっていう時に、人間が本来持っている数倍の力を出すことが出来るって言う製品なんだ」

 タナカは俺にそう言って、銀色にキラキラと光るボールを二つ手渡した。一個が掌の中にちょうど収まるサイズで、ミニチュアのミラーボールの様な製品は、効果が疑わしい美容器具を思わせた。

「これってさ、本当に力が出るんだ!」

 嘘の様な台詞を平然と吐くタナカの目は、真実に満ちていた。

 

いつものお話になりますが、登場人物ニ人の関係性と、現在この場所で何が起こっているのかという事を、できるだけ手短に書く必要があります。

 

 

 


POINT3:ユーモア

 


今回の作品でユーモア的な部分と言うと、やはり、ラストのオチの部分になります。

ショートショートの場合、基本的にラストが面白いという構造が多いのですが、それが全てという訳ではありません。作品の途中で、ユーモア的な要素を何箇所か用意する場合もあります。

今回の作品の場合、オチにユーモア的な要素が強く含まれていたので、あえて途中ではその辺を抑え目にした訳です。ラストのユーモアを強める方法はニつです。

 

❶他の部分でのユーモア的な要素を極力排除し、物語の後半で一気にオチへともってゆく。オチに強いユーモアを含める。

『ミラクルパワーボール』(今回の作品)

 


❷伏線などをうまく構成して、単純にラストのオチをインパクトを高める。

オチ以外での部分も、ユーモア的な要素を含める。

『ハロウィンの夜』など

 ショートショート『ハロウィンの夜』の全文はこちら↓↓↓

rhirasawanb.hatenablog.com

 

 

 

 

 

 

POINT4:前半のストーリー

 


主人公は、真面目な友人から少し怪しげな商品を勧められる。乗り気ではなかったが、友人を信用して商品を購入する。

 


せっかく購入したので、その効果を試してみようと、主人公は色々とやってみるが、なかなか上手くいかない。

 

 

 

POINT5:展開〜オチ

 

主人公は、商品の効果があまりに出ない為、その事を友人に相談する。

 


友人から『商品の使い方が悪いのでは?』と言われた主人公は、その怒りの為に友人を殴ってしまうが、その時初めて商品の効果が現れ、友人は遥か彼方へ飛んでいってしまう。

 

 

 

総合的なポイント

 

今回の主人公と友人のやり取りは、実にシンプルです。実質、物語はそれだけで展開しています。この様なやり取りの場合、いかに主人公の心理的な変化を、読者の方が理解しやすく書くかがポイントになります。今回のオチは、主人公に感情的な変化が生まれる事によって成立する設定ですので。

 

 

 

コラム/作家を目指す方へ(前編)

 

どの時代にも、作家を目指す方は大勢いらっしゃる訳ですが、作家の世界に限らず、第一線で活躍するのはとても困難な事ですし、それを実現出来る人は、ほんの一握りです。どのレベルまでを目標とするのかは、もちろん個人差がありますし、どこまで頑張るかも個人の自由だと私は思います。

しかし、私はこれまで本格的に作家を目指したが故、実生活に支障をきたした人を身近に何人か見ています。正直なところ、これは良い事だとは思えません。

私自身も電子書籍出版後、良い編集者の方に恵まれたにも関わらず、結果を出せなかった人間です。ですから、一人でも多くの方にチャンスを掴んで欲しいと思っていますし、また方向転換を考える方には、指針となる材料を提供出来ればと思います。


 更に詳しい内容については、次回『コラム/作家を目指す方へ(後編)』にてお話ししたいと思います。

 

 

 

 

 

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(小説の書き方の基本を公開)コラム/セリフの掛け合い(後編)

コラム/セリフの掛け合い(後編)

 

 

小説内における登場人物のセリフの役割と、その重要性を、実際の作品を用いてご説明したいと思います。

今回の例文、ショートショート『五点着地』の全文はこちら↓↓↓

rhirasawanb.hatenablog.com

 

 

【CONTENTS】

 

 

 

状況設定

 

【❶、❷】

「先輩、それをマスターすれば本当に大丈夫なんですか?」

「ああ。絶対とは言えないけど、今のままじゃダメなのは間違いないね」


❶『それ』が何であるかは、ここでは書いていません。先ずは習得すべき何かが後輩にはあり、先輩がアドバイスをしているという状況設定です。

『それ』って何なのだろう? と、読者の方は思います。

【文章の推進力を高める】

関連記事はこちら↓↓↓

rhirasawanb.hatenablog.com

 

❷現状、後輩は先輩からアドバイスを受ける立場である事が分かります。今回その信頼度については、後の文章で明らかにする構成にしています。これはオチにも関係している為です。

『先輩のアドバイスがあてにならない』と言うのが、この物語で重要な部分なのですが、これを地の文で説明するのではなく、読者の方に実感してもらう為です。作中に出てくるエピソードで、『この先輩の意見って信用出来るの?』と疑問を感じてもらう事で、オチの効果が増す訳です。

【読者の感情移入と、オチの効果増幅】

〜〜【後の文章に繋がります】〜〜

「そうですか......」

 戦隊ヒーローのメンバーであるトモヒロは、五人中の五番人気、四番目は紅一点のチカちゃんだった。

 

 

 

人物同士の関係性

 

【❷】

「アクションがイマイチな女子より人気がないの?」

 

❷主人公と、その彼女の関係性です。第一声から、既に彼女の方が強そうですが、後の文章で更に明らかになります。

【人物同士の関係性の明確化と強調】

〜〜【後の文章に繋がります】〜〜

 トモヒロの彼女が放った一言は、彼に大きなダメージを与えた。まるで怪人達のボスキャラ並だ。

 

 

 

心理描写

 

【❷】【❸】

「ヒロインって結構人気が出るものなんだ。小学生ぐらいの男子って、強さに憧れる一方で既に『男』の部分を持ってるんだよ」

「へえ、そうなの? 私は貴方に『男』を全然感じないけど……」


❷❸二人の関係性と共に、少しですが相手に対する心理についても描いています。

主人公は彼女に対抗したいが、強く出れない。一方の彼女は、主人公にもっと強くなって欲しいと言う思いを持っています。

【登場人物内面の思考と感情の描写】

 〜〜【後の文章に繋がります】〜〜

 自分を理解してくれない彼女に少し苛立ちを覚える。だからと言って彼女に戦いを挑むのはあまりに危険だ。それは戦隊ヒーローならではの勘だった。

 

 

 

 

 

ユーモア

 

【❹】【❺】

「もちろん先輩は一番人気だったんですよね?」

「俺は……。五番人気だよ」

「ええ?!」

「あのさあ、当時は三枚目のキャラってのもあったから、それを誰かがやらなきゃ」

「じゃあ、その役を買ったって事ですか?」

「そ、そうだな。あの役はヒーローなのにちょっと小太りなんだよ。俺ってさあ、体重自由に操れる方じゃん」

「え? 初めて聞きましたけど」

「ほら、いつだったか病院で会った事があっただろう? あの時、俺すっごく痩せてなかったか?」

「それは多分、病気のせいで……」

「何言ってんだ! 退院してから半年後ぐらいに会った時、また体重増やせてたろ?」

「それは単に体重が戻っただけじゃ……」

「お前は何も分かってないね。更に三ヶ月ぐらい後に会った時には、もっと体重を増やせたんだぜ!」

「それって完全にリバウンドじゃ……」

「とにかく俺みたいに努力してりゃ、その内いい事があるって話だよ」

 

❹❺ここでは、二人の会話をユーモラスに展開しています。そしてもう一方で、先輩は後輩の質問に対し、実に調子よく話を合わるタイプである事を、表現しています。

これによって、先輩が相談相手として適していないと言う事と、後輩が将来に対する不安を抱いてしまうのも理解出来る、と言う流れを作っています。

【登場人物の性格と行動の描写/ユーモア】

関連記事はこちら↓↓↓

rhirasawanb.hatenablog.com

 

 

 

ストーリー展開

 

【❺】

「はあ、そうですか……。ところで最初の話って何でしたっけ?」

「最初? えーと……。『五点着地』の話かな?」


❺脱線していた先輩の話を、主人公は元の話題に戻そうとします。緩やかではありますが、ここが『起承転結』で言うところの

『転句』になります。

この後、もう一度セリフの掛け合いがあり、主に地の文でオチへと向かいます。

 

 

 

そして最後に

 
どの項目も、先ずはセリフの掛け合いがあり、地の文へと繋がる流れが基本になっています。イメージとしては、導入部はセリフから入って、その後地の文で落ち着かせるというものです。

セリフを挟む事で、物語にリズムが生まれて、読みやすい文章になる訳ですね。

  

 


次回は、ショートショート『ミラクルパワーボール』の創作プロセス公開です。

 

 

 

 

 

 

 

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(ショートショート作品から学ぶ小説の書き方)新作ショートショート(6)/ゼロ円サービス

 

新作ショートショート6/テーマ(無料)

 

 

ゼロ円サービス

 

 

 「本当に無料なんだよね?」との質問に「ええ、勿論です」との答えだった。そして私は、更に続ける。

「じゃあ、これもそれも、あれもこれも全て無料って事?」

「確かにおっしゃる通り、全て無料でございます」

 私宛に怪しい葉書が届いたのは、一週間ほど前の事だった。『ゼロ円サービス』とだけ書かれたシンプルな葉書の裏には、この建物までの案内地図が書いてあった。

 私は普段から慎重なタチだ。普通ならこの様な手口の営業には乗らない。だけど、今回は乗った。何故か? あまりにも情報が正確過ぎたのだ。私の生年月日に始まり、勤務先に趣味等々、おまけに、昔のニックネームまで合っていた。

 一応、事前に電話をかけた。怪しい商売なら、この時点で気付く筈だ。所在地を記しておきながら、実はそこに会社が無かったり、明かに電話が転送だったりと、事前に確認出来る要素は幾つかあるのだ。

 今回はそれに該当しなかった。先ずは第一段階クリアである。この事を妻に相談してみると「とりあえず行ってみれば?」と、返って来た。

 案内地図に書かれた通りの場所に着くと、そこにはそれなりに立派な建物があった。こちらの方も悪くないだろう。

 古ぼけた倉庫の様なら論外だが、景気の良すぎる感じも怪しい。その建設費の大半が、客の財布から出ている気がして、まっとうな商売とは思えないのだ。とにかく、建物の中に入ってみた。

 受付にはスーツ姿の女性が居て、顔立ちがとても綺麗だった。しかし、それは会社の中身との関係が薄い。

 次に私を、部屋まで案内してくれたこの男性も、物腰が柔らかく、尚且つイケメンだった。これは更に関係のない事だった。彼は『ヨシダ』と名乗った。

「お客様、とりあえずこちらへ」

 最初に案内されたのは、待合室の様な部屋だ。ヨシダに誘導され、更に奥の部屋へと進んだ。

「ねえ君。この部屋に入った途端に、何か料金がかかる仕掛けになってるんじゃないよね?」

「お客様、大丈夫でございます」

 ヨシダの表情が一瞬曇りかけたが、瞬時にそれを立て直し、穏やかな表情を作った。それは、こちらが油断していれば気付かない『プロの業』だった。

「お客様、どうぞこちらへお掛け下さい」

 一番手前のマッサージチェアの様な椅子だ。それは三台並んでいたが、他にも健康器具的な物や、トレーニングマシンの類もあった。今は他の客が居なかったので、真ん中に掛ける様勧められた。上着をヨシダに預け、素直にそれに従った。受付に居た女性が、飲み物と茶菓子をタイミング良く運んで来た。

「ははーん。君、あれだろ? ここに座っていると『血行』が良くなったりする……」

「ええ、そうです。この椅子には、その様な効果があります」

「やっぱり。そんでもって、ここに座っている間に、耳元で『営業トーク』を展開するってヤツだ」

「いいえ、それは違います」

 ヨシダはキッパリと否定する。そうなると、空き店舗でよく見かける『アレ』ではないと言う事か。益々訳がわからなくなった。

「じゃあさ、じゃあさ。君たちの会社は一体どうやって利益を上げる訳? それにさあ、君だって、そこそこいい給料貰ってんだろ?」

「ええ、まあ。世間の方々並みには……」

「『並み』だって? いいよな、いいよな! こっちは、今年で五十歳になるけど、転職とかもあって、この地域の最低賃金スレスレの給料だよ!」

「そ、そうなんですか……。ご苦労なさってるんですね……」

「そうそう。私達の様にね、一見普通に見えるオヤジだって、色々苦労してんだよ。表通り歩いてる連中だってみんなそうさ」

 私はヨシダに色んな話をした。

 タイミング良く打つ相槌と笑顔。ヨシダに話している間、私はとても心地が良かった。『血行が良くなる』と言う椅子に、三十分以上座っていた筈だが、その間、私はずっと話していた様だ。

 椅子の肘掛け辺りから『終了』を告げる様なアラーム音が聞こえた。

「あれ? 終わったのかな?」

「ええ……。そうですね……」

 ヨシダは申し訳なさそうに答える。私が椅子から立ち上がろうとすると、直ぐにヨシダは、ハンガーに掛けてあった私の上着を取ってくれた。

 常に気の利いた対応である彼の様な人材は、きっと何処の企業に勤めても活躍するだろう。私もこんな息子が欲しかった。

 建物を出る時、受付にいた綺麗な女性も、ヨシダと一緒に私を見送った。二人揃っていい笑顔だったし、結果的に私はここで一銭も払う事なく、家に向かう事になった。

 あの椅子は、本当に効果があるのかもしれない。なんだか体が軽くなった気がする。パンフレットも無く値段も分からないが、メーカー名は書いてあったから、ネットで調べればいいだろう。

 勧められなければ、余計に気になると言うものだ。上手い宣伝方法を考えるものだと感心した。

 体の軽さは、椅子以上に『ヨシダ』の効果が大きかったろう。彼の話しやすい雰囲気に甘えて、随分と愚痴を吐いてしまったものだ。

 過日、妻宛てに一通の封筒が届いていた。その中身が私の為に申し込んだ、新手の『愚痴聞きサービス』の請求書だったという事を、未だ私は知らない。

 

 

 

 

 

 

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(解説から学ぶ小説書き方のルール)今回の作品/鍋奉行、コラム/セリフの掛け合い(前編)

今回の作品/鍋奉行

 

妻と二人で鍋を挟んでの食事。楽しいひとときだった筈が、妻が漏らし始めた日頃からの不満によって、良くない方向へと進み始めた……。

ショートショート鍋奉行』の全文はこちら↓↓↓

rhirasawanb.hatenablog.com


【CONTENTS】

 


テーマからの発想

 

今回のテーマは『鍋』です。

『鍋』と言えば忘年会など、人がワイワイと言いながら囲んでいる、そんなイメージです。普通の家庭では一家団欒のような、そういったイメージが浮かびました。

 


発想からのキーワード選出


忘年会、宴会、一家団欒、鍋パーティー鍋奉行

 

 

 

POINT1:タイトル

 

タイトルは鍋奉行です。

忘年会の席などに、よく居る『お奉行様』ですね。私はこの言葉を初めて聞いた時から、ずっと『ネタ』にしてみたいと思っていました。

短いワードで、しかも周囲の人が理解しやすく、楽しめる言葉は、ショートショートでは特に『使いたい』『作りたい』と思うのです。そこから新たに何かを展開するトレーニングは、様々な分野に利用出来ますよね。

 

 

POINT2:書き出し

 

「あなたって典型的な鍋奉行よね」

 鍋の向こう側から、溜め息混じりに妻の声が聞こえた。俺が顔を上げると、こちらをじっと見たまま妙な角度で箸を止めている。

「肉が先だの野菜がどうだのって、会社の中でもそんな風にちゃんと段取り考えて、誰かに指示とか出したりしてるわけ?」

 

『鍋』を挟んでの食事の表現として、『鍋の向こう側から……』と書いています。文字数を節約する方法として、同様の書き方は有効です。イメージ的には、ちょうど今回の様に中間にある物に触れつつ、その先の物を描く感じです。

 

 

 

POINT3:ユーモア

 

気の強い端と、頼りなく子供っぽい夫のやりとり。2人の会話により物語が展開して行き、その中にユーモアを含めています。

しかし、ここで重要なのは単に面白みのあるやりとりだけではなく、妻の口撃により徐々に変化してゆく夫の心理。その辺をうまく描くなければなりません。

頼りない分、穏やかに見える夫。しかし、そこには触れられたくない何か、つまり許しがたい言葉が存在するのです。

 

 

 

 

 

POINT4:前半のストーリー


鍋を挟んでの夫婦2人の食事。楽しいはずの食卓だったが、妻はつい日常の夫への不満を漏らしてしまう。

 

夫が妻の言葉に、静かに応戦する。妻の言葉は一向に止まらず、夫は言い訳を繰り返す。

 

POINT5:展開〜オチ


夫婦間での言い合いが続く中、妻が放った『話すのが時間の無駄』との言葉に夫は静かに『キレて』しまう。

 

夫は本当に妻を『さばいて』しまう。

 

 


総合的なポイント

 
物語の舞台が移動せず、定点となる場合、登場人物たちの会話などで、読者の方を楽しませなければなりません。

言葉の掛け合いは、キャラクターを明確にする目的は、会話を面白くするために、できるだけ対照的な人物同士を対話させるのが良いでしょう。

今回の物語のように、静かに登場人物の中に怒りを湧き起こさせる場合、会話の中でのやりとりやそこに至るまでのシチュエーションといった部分は、特に工夫が必要です。

結果として何かの事件が起こってしまった場合、それが読者の方に納得してもらえるような流れを作らなければなりません。

 

 

 

コラム/セリフの掛け合い

 

小説内におけるセリフの掛け合いとは、とても重要なものです。説明的にならない様、状況を読者の方に伝えたり、登場人物の内面描写をしたり、それぞれの人や物同士の関係性を表現したりと、その役割の範囲は非常に広いものです。

そしてそれは、単に人物同士が会話すれば成り立つかと言えば、決してそうではありません。そこには様々な手法があるのです。

 

 実際の作品を用いた、更に詳しい内容については次回『セリフの掛け合い(後編)』

にてお話ししたいと思います。

 

 

 

 

 

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(小説の書き方の基本を公開)コラム/実話とのリンク(後編)

コラム/実話とのリンク(後編)

 
『フィクション』は『創作』によるお話ですが、個人的には『創作』する上での『材料』は『実話』に基づく物がある程度含まれるのではないかと思います。

今回は、特にその要素が多かった作品を元に解説したいと思います。

今回の題材、ショートショート『白い壁』の全文はこちら↓↓↓

rhirasawanb.hatenablog.com

 

 

 【CONTENTS】

 

 

 

住居

 

実際に住んでいた家の構造を、一部使っています。トイレに向かう壁が異常に白く、正直なところ不気味でした。

 

『家』に限らず、普段の生活環境の中、何かしら違和感のある物って、きっとある筈です。無いと思われた方は、見慣れた環境の中で、見逃してはいませんか?

何故この『場所?』『色?』『形?』一見普通な事でも『変だ』と決めつけて、思考を巡らすのもいいかもしれません。


登場人物1(主人公)

 

子供の頃の私が、ある程度入っています。気が弱く、小学一年生ぐらいの頃はトイレが怖かった記憶があります。


作家の多くは、作中の人物に自分の一部を投影しがちです。私も例外ではなく、公表していないだけで、実は色んな部分に出てしまっています。

自分であったり知人であったりと、モデルとなる人物が居た方が、その思考や行動パターンを決めやすく、特に自分と正反対の思考を持つ知人が居ると、意外性のある展開へ進みやすくなるでしょう。

 

 

 

登場人物2(担任教師)

 

担任教師が怪談を話したのは事実ですが、その教師は女性で、勿論犯罪には関わっていません。


こちらも知人のパターンですが、『1』との違いは『知人だが知らない部分が多い』という事です。つまり、その人の思考や行動の部分の多くが推測によるものだという事です。普段は真面目そうな教師。しかし、実は裏で、想像もつかないような悪いことをしているかもしれない、と言う妄想ですね。

 

 

 

 

エピソード1(教師の怪談)

 

実際は女性教師が怪談を始め、タイトルも『白い壁』でした。『人柱』『声がする』辺りも出てきたと思います。


私が知る女性教師は、実際に授業が進んだある日、突然会談を始めました。その語りはリアルと言うよりも、人々を怖がらせると言う意味では、とても上手だったと思います。しかし、これは多くの女子生徒を敵に回してしまう結果となった訳です。

 

 

 

エピソード2(トイレが怖くなった)

 

これも事実ですね。怪談を聞いてから『白い壁』が見れなくなりました。教師を恨みましたね。

 
心理的』な何かの経験。これは、登場人物の内面描写の際に有効です。自身の体験の中で、何かしら心理的に作用した経験。これは単独でもいいでしょうし、幾つかの経験を組み合わせても面白いでしょう。そうする事で、『その思い』に至る原因は何か? との方向で考える事によって新たなアイデアに繋がるでしょう。

 

 

 

エピソード3(事件)

 

これは勿論、創作です。女性教師を男性にした時、どんな展開が生まれるか? 今回は、それが起点になっています。


日常生活の中で、大きな事件に遭遇する事は滅多にないと思いますが、実際に『遭遇した』想定で考える事はアイデアに繋がるでしょう。

その時、自分なら『どんな感情』『どんな行動』になるか。被害者側なら、何となく想像が出来そうですよね? でも、加害者側は、難しいと思います。


加害者側の心理として『犯罪心理学』や『プロファイル』に関する書籍も有効です。『共感』は出来なくても『理解』はある程度可能かと思います。

 

犯罪心理やプロファイルに関する書籍

 

犯罪心理を学ぶ上で、私がオススメしたい本です。こちらは実際の凶悪犯罪の事例を用いて、プロファイリング等々とても興味深い内容です。ご興味のある方は一読を。

 

 

 

次回は、ショートショート鍋奉行』の創作プロセス公開です。

 

 

 

 

 

 

 

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(解説から学ぶ小説書き方のルール)今回の作品/白い壁、コラム/実話とのリンク

今回の作品/白い壁

小学生のころ、担任教師から聞かされた『白い壁』と言う『怪談』。そのリアルな語り口は心の中に恐怖を植え付け、気の弱かった私はトイレに行けなくなったのだが……。

 

ショートショート『白い壁』の全文はこちら↓↓↓

rhirasawanb.hatenablog.com


【CONTENTS】

 

 


テーマからの発想

 

今回のテーマは『怪談』です。怪談と言えば、四谷怪談など『幽霊』的なキャラクターが存在し、そこに『恐怖』が生まれます。

しかし、人の恐怖は様々で、今回は『怪談』とのリンクによって生まれる『恐怖』をテーマに書こうと思いました。

 

 

 

発想からのキーワード選出

 
怪談、幽霊、恐怖、学校、肝試し

 

 

POINT1:タイトル

 


タイトルは『白い壁』です。これは、私が実際に聞かされた『怪談』のタイトルから取ったものです。

 


POINT2:書き出し

 
 私が子供の頃、家は貧しく一家四人が小さなアパートで暮らしていた。風呂は無く、狭い台所と二つの部屋があるだけだった。

 トイレは一番奥にあった。そこにたどり着く為には細長い廊下を通らなければいけない。廊下は三メートル弱しかなかった筈だが、子供の頃の私にとって、それはとても長い距離に思えた。

 

主人公が学生の頃、担任教師から聞かされた『怪談』がメインの話なのですが、その話題から入りません。

今回は主人公の一人称の語りによって物語が進行する訳ですが、メインは主人公の内面にあります。子供の頃に聞かされた『怪談』が、長い間トラウマになった想いが強いのです。

 

 

POINT3:ユーモア


主人公の『トラウマ』になった想い裏腹に、担任教師の『マイペース』ぶり。これらの対比がユーモアであると共に、物語の『キー』となっています。

生徒の前での『マイペース』は、『空気が読めない』など笑いのネタにも出来る事ですが、後に明らかになる『マイペース』は明らかに『身勝手』な行動で許さない行為なのです。


同じ人物の習慣的な行動が招く結果が対極に出た時、その恐怖は増幅され効果を現すのです。

 

 

 

 

POINT4:前半のストーリー

 

主人公が小学生の頃、気が弱く夜にトイレに行くのが怖かった。その恐怖心を紛らす為、人影が反射しない『白い壁』を見ながらトイレに行くのが習慣だった。

 

ある日、担任教師が語った『怪談』によって頼りにしていた『白い壁』は、逆に『恐怖の対象』となった。

 

  

POINT5:展開〜オチ

主人公が中学生になった時、以前に住んでいた『白い壁』のあったアパートは、老朽化で取り壊される事になった。

 

壊されたアパートの『白い壁』から、『怪談』で語られた通り『人骨』が発見され、その犯人が担任教師だった事が判明する。

 

 

総合的なポイント


『書き出し』の項目でも触れましたが、『怪談』の話に至るまでに多くの文字数を使っています。今回の作品は、主として主人公の内面の問題である訳です。

『オチ』はとてもショッキングな出来事です。そして、それを淡々と語る主人公。

本来これが実際の出来事で、それを誰かに話すとした場合、教師の事がメインになる筈です。ところが、この物語ではそのウエイトが逆です。主人公にとっては、教師の事件よりも、自身の幼少期のトラウマの方が問題として大きかったのです。


この表現の効果は二つです。先ずは人による価値観の違い。主人公のそれと対比させる事で、自分の幸せだけを選んだ教師の身勝手さをクローズアップしています。

もう一つは恐怖感の増幅。作中の何処かに『静』を置く事によって恐怖感が増す訳です。今回の様に『殺人』を淡々と『語る』と言う行為は、本来それをしないであろう人がやったと言う意外性、要は『ギャップ』が効果的に作用するのです。

  

 

コラム/実話とのリンク

  

小説のような創作をする場合、フィクションまたはノンフィクション、これらの定義を厳密に考えると、説明が少し難しくなる部分があるのですが、私の作品の場合は実話を含む物がある程度あります。それは物語の一部分であったり、設定や登場人物の性格など、何かをモデルにしている場合です。

そして、これらのモデルを元に創作を開始した時に、新しいアイディアが生まれることがよくあるのです。今回の『白い壁』と言う物語は、まさにその要素が多かった作品だったのです。

 

 更に詳しい内容については、次回の『実話とのリンク(後編)』にてお話ししたいと思います。

 

 

 

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