ショートショート作家 R・ヒラサワの〜Novelist's brain〜

小説の書き方ブログ。ショートショート作家 R・ヒラサワが自身の作品を用いて詳しく解説。新作随時公開中!

(解説から学ぶ小説書き方ブログ)今回の作品/Recipe、コラム/読みたくなる小説の書き出し(前編)

 

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Recipe

浅いつきあいとは言え、彼には自分を含めた四人の彼女がいる。そして今回、新たに五人目の彼女が現れた。彼の本命になりたいと、主人公は努力をするが……。 

 

ショートショート『Recipe』の全文はこちら↓↓↓

rhirasawanb.hatenablog.com

 


【CONTENTS】

 

テーマからの発想

 

 今回のテーマは『レシピ』です。

レシピと言えば、ストレートに『料理』ですね。個人的には料理のマニュアル的な物と思っているのですが、本来の意味は違うのかもしれません。

『母の味』的にストーリーも浮かびました。オーソドックスですが、何かの瞬間に『母』を思い出し、それに触れるといったものです。

 

 

発想からのキーワード選出

 


料理、マニュアル、手順、継承

  

当然の様に、料理関係のワードになっています。そこから少し進めた形で、料理等の技術の継承、つまり親から子へ受け継ぐ何かといったあたりまでの考えです。

 


POINT1:タイトル

  

タイトルは『Recipe 』です。シンプルにそのままですが、様々な意味が込められています。これは主人公の行動に深く関係していますが、主人公の彼の行動にもリンクしています。

 


POINT2:書き出し

 

 「新しい彼女が出来たんだ。だから、これで君を含めて五人って事になるね」

 タクミの言葉を聞いてもコトネは全く反応しなかった。それは人数が六人や七人に増えたところで、同じだったに違いない。会話の流れとしてコトネは一応聞いてみる。

 


彼のセリフに読者の方は、『どう言う事?』って思われたのではないでしょうか? 特に書き出しは、そう言う流れが良いのです。

そして更に主人公の反応も変ですよね? 今回は『どう言う事?』を、もっと加速させる仕掛けの物語です。

 


  

POINT3:ユーモア

  
タクミが女性に求める条件は世間でよく聞くような内容だったのだが、実はモデルの彼女はテレビに出たり何処かの大会で優勝した訳でもなく、国立大学に通う彼女も成績がトップクラスという訳ではない。

 声優の彼女は最近になってやっとローカル局で流れるアニメの役をもらったが、脇役のため出番もかなり少なく、コトネの後に出来た彼女もスポーツ万能な様だが、過去にインターハイどころか、県大会にすら出た事が無いレベルだった。

 


既にお気付きかと思いますが、今回の物語は一貫して現実的ではない流れを描いています。実際に男性が女性をこんな感じで選んでいたら、かなり問題でしょうし、女性も応じる筈がありません。しかし、この物語のポイントは、その部分ではないのです。

 

先ずは現実からかけ離れた世界観を読者の方に知っていただく。展開はそこからなんですよね。起点が決まったら、そこからどの位物語が発展させるか。異常な世界を先に設定してしまうと後が楽になります。間違っても、ある程度正常な世界から徐々に異常さを増してゆく方法は、それがメインとなっているお話以外は避けた方がいいでしょう。

 

 

POINT4:前半のストーリー

 

浅い付き合いだが、彼氏には彼女と呼んでいる女性が主人公を含め四人いて、更にもう一人増えた。

 


彼の事が好きだった主人公は、料理の腕を磨いて本命になろうと、我流を脱却する為にレシピ本等で研究を始めた。

 

POINT5:展開〜オチ

 

彼の料理に対する評価は上がるどころか、逆に味が落ちたと言われる。

 

彼の言葉にショックを受けた主人公は、我流脱却を諦め本命の彼女も無理かと考えていたが、結局自分を貫いた事を認められ彼の心を射止める。 


  

総合的なポイント


この物語は、書き始めから実際にはない様な世界を描いています。このタイプのお話では、読者の方に予めその世界に浸っていただく必要があります。

この場合、先ずは『最も異常な部分』から入るのが一番良いと思います。そうする事によって後に続く世界が、その物語の中では簡単に受け入れられる様になるのです。

 

 

 

 コラム/読みたくなる小説の書き出し(前編)

 

小説に限らず、文章には読者の方を惹きつける力が必要です。内容を面白くするのは言うまでも無い事ですが、文の配置はとても重要で、中でも書き出しは特に工夫が必要です。例えるならば、緩やかな坂道を降り続ける。あるいは、テンポの速い物語ならば、急な坂道を転がってゆく様な、要は読者の方が意図せず先へ先へと読み進めてしまう様な文脈を作る事です。

 

 

例文 

 

【原文】

私は今日、図書館で本を借りた。そこにはとても興味のある写真家の作品が多く掲載されていた。何度も見たくなってしまうので、結局ネットでその本を購入した。

(時系列で書かれており、間違いではありませんが単調な文章です)

 

【修正後】

私は思わずネットで本を購入した。図書館で今日、借りたばかりの本なのに。私は写真が好きで、そこにはとても興味のある写真家の作品が多く掲載されていたから、何度も見たくなると思って買ったのだ。

(書いた人の感情が伝わる様な文になりました。時系列ではなく伝えたい事を先に書いています)

 

書き出しで随分と印象が変わりますよね? もちろん後に続く部分も順番を変えている訳ですが、これらにはある程度ルールがあります。それらの さらに詳しい方法については、 次回『読みたくなる小説の書き出し(後編)』でお話したいと思います。 

 

 

ショートショートの書き方』を、作家の視点で詳しく『超解説』‼

 

 

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