挨拶の品
半年ほど空いていたマンションの隣部屋に、綺麗な女性が引っ越してきた。近頃では珍しくなった『挨拶の品』を持って。色んな場面で丁寧な対応をとってくる女性ではあったのだが……。
ショートショート『挨拶の品』の全文はこちら↓↓↓
【CONTENTS】
- テーマからの発想
- 発想からのキーワード選出
- POINT1:タイトル
- POINT2:書き出し
- POINT3:ユーモア
- POINT4:前半のストーリー
- POINT5:展開〜オチ
- 総合的なポイント
- コラム/ユーモアの構造(前編)
テーマからの発想
今回のテーマは前回の『GIFT』と同じ『贈り物』です。そう、同じテーマに投稿した二作品目なのですね。
贈り物と言えば、いわゆる贈答品であるギフト、誕生日プレゼント、引越しの挨拶などが浮かびました。
発想からのキーワード選出
贈り物、贈答品、ギフト、誕生日プレゼント、引越しの挨拶
POINT1:タイトル
タイトルは、『挨拶の品』です。
物語の展開からすると、他のタイトルも考えられますが、隣部屋の女性は常に主人公とは一定の距離を置いている、つまり初対面の状態をキープしたままラストまで進む物語なので、このタイトルにしました。
POINT2:書き出し
半年ほど空いていた隣の部屋に、新しい住人がやって来たのは、日曜の午後の事だった。久々に私の部屋のチャイムが鳴ったのだ。
● 隣部屋は半年程度空いていた
● 新しい住人がやって来た
● 日曜日の午後である
● 主人公宅への来客は久々である
上記の四点についての情報がここで分かります。『いつ』「何処で』『誰が』『何を』『どうした』か? 特別変わった展開の物語でない限り、この様に冒頭で明らかにした方が良いと思います。
POINT3:ユーモア
しかし、内心女性の訪問を期待している部分が少しあった。綺麗な人に会えるのは嬉しい事だ。
女性の部屋から物音がして、お詫びの品を持って来た後の話ですね。
主人公は、その品が高価すぎると思いつつも、女性の訪問を期待しています。この少し矛盾した考え、つまりは小さな下心がユーモアであり、後のオチに対する伏線にもなっています。
今回で言うところの伏線は、直接ではなく間接的です。主人公に下心があったからこそ、オチでの主人公の行動が『通報』ではなく『傍観』なのです。
お金も受け取ったままになっています。もはや『傍観』の立場も取れないかもしれません。先々主人公が何かをするかは、読者の方によりとしました。
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POINT4:前半のストーリー
起
主人公が住むマンションの隣の部屋に、若くて綺麗な女性が引っ越して来て、挨拶の品を届けに来る。
承
その後主人公は、マンションの廊下で女性とすれ違うが、恋人らしき男性と一緒だった。
後日、夜中に喧嘩らしき物音が聞こえ、翌日女性がお詫びの品を持って現れる。
POINT5:展開〜オチ
転
さらに過日、前回よりも更に大きな物音がするが、女性は現れない。
結
次の日になってから、お詫びの品を持って女性が現れた。今度はその品の中に札束まであった。思案の末、主人公はそのお金の意味を悟るが、女性に好意を抱いていた為、そのまま見逃す。
総合的なポイント
主人公は女性とのやりとりを、当初淡々としていましたが、後に女性への好意を抱き、訪問を期待します。
物語の中で同様の行為が繰り返され、徐々にそれがエスカレートする展開は、ショートショートでは定番の手法ですが、今回はそれに伴って主人公の女性に対する好意も増幅させています。それによってオチが上手く成立する訳です。
女性の行動には明らかに犯罪の匂いがします。しかし、主人公は通報しません。女性への好意があるのは勿論ですが、女性の恋人も居ない方が都合も良く、更にお金も受け取っています。
主人公は傍観者となり、あわよくば今後、女性との距離を縮めたいと考えているかもしれません。この先の展開は、読者の方に委ねる形を今回はとっています。
コラム/ユーモアの構造(前編)
小説におけるユーモアとは、単に『思わず吹き出す』様なものだけではありません。
物語の構成や展開、そしてセリフの言い回しなど、作品として『なるほど』と関心する様な事柄も含まれます。
【作品例:(ハロウィンの夜)】
ハロウィンの夜全文はこちら↓↓↓
「運んだのは担架で?」
「いいえ。ストレッチャーです」
「ストレッチャーだって? 君たちはそんなものまで持っているのか!」
ハロウィンの仮装が派手になり、救急隊は本物の様にストレッチャーまで用意していると言うくだりです。
やり過ぎ感のある行為はユーモアであり、これも周囲の人が事件に気付けなかった要因でもあります。限られた文字数内での物語ですから、例えばそれが『伏線』であったりと、複数の役割を持たせた方が、物語に厚みが出ます。
「仮装? いやいや、君が仮装してない事ぐらい見れば分かるさ。普通のスーツ姿なんだから、会社帰りのサラリーマンだろう?」
「違います。仮装ですよ、仮装! 僕は普段の仕事が現場ばかりだから、いつも作業服なんです。通勤だって普段着だから、頑張ってスーツ着て来たのに……」
「悪い、悪い。君のも立派な仮装だよ。だって、そのネクタイがよく合ってるし。確かにスーツ姿ってカッコいいもんな。ちょっと窮屈な時もあるけど、気持ちが引き締まるし。それに……ほら、君はちゃんと私を上手く騙せたじゃないか。本物のサラリーマンかと思ったよ」
こちらは逆に、ユーモアのみのくだりです。
「あれ? 文字数を有効に使うんじゃなかったの?」そんな疑問の声が聞こえてきそうです。
実はこの部分はユーモアのみで、しかも文字数も多いですよね。これにはちゃんとした狙いがあります。決して文字の無駄遣いはしません。
このくだりの前後を読んで頂くと分かるのですが、この物語は刑事と目撃者の二人のやり取りで展開します。
延々と状況説明が続いたのでは、読者の方が飽きてしまう訳ですね。それを回避する為の方法として、ユーモアを挟んだ訳です。
緊張と緩和。物語にとってリズムは大事です。短いお話でも飽きる事はありますので、出来る限り最後まで楽しめる工夫をした方がいいでしょう。
さらに詳しい方法については、 次回『ユーモアの構造(後編)』でお話したいと思います。
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