ショートショート作家 R・ヒラサワの〜Novelist's brain〜

小説の書き方ブログ。ショートショート作家 R・ヒラサワが自身の作品を用いて詳しく解説。新作随時公開中!

(Kindle版)小説・ショートショートの書き方に関する本を出版しました

 


先月、本を出版しました【2021.02.28】(Kindle版) 

 

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【作家脳 R・ヒラサワの~Novelist's brain~】
 

 

2002年にショートショート作家としてデビューした私ですが、その後の

 

『長期スランプ』→『ペンネーム改名』→『創作活動再開』

 →『作品の継続投稿』→『スランプ脱出』

 
という流れを経て、実は『R・ヒラサワ』のペンネームでは、最初の書籍となります。

基本的には、当ブログをまとめた内容になっています。コラムを中心とした小説・ショートショートの書き方の解説と、サンプルショートショートがセットになっており、必要な箇所については、加筆・修正を行なっています。

 

作家活動再開直後にお世話になっていました、小説投稿サイト『時空モノガタリ』様(現在閉鎖)、はてなブログの読者の皆様、Twitterフォロワーの皆様に感謝申し上げます。

 

さて、今回の書籍ですが、ブログ開設当初はこれまでに書き上げた作品をまとめた

ショートショート作品集』を、出版社を通じてとの予定だったのですが、最近ではセルフ出版もあり、今回はそちらの方法をとりました。

出版は三カ月ほど前から準備を始め、表紙デザインはDRAW系のソフトを使って自分で描きました。出来の良し悪しは別として、私の本に対するイメージは、こんな感じなのですよね。

 

当ブログ(R・ヒラサワの~Novelist's brain~)は、開設当初より私自身のスランプを克服した経験を元に、『全ての書く人の為のヒント』となる様、小説・ショートショートの書き方に関する記事の執筆を続けており、今後も継続したいと思いますので、どうぞ宜しくお願い致します。


先ずはご報告まで

 
R・ヒラサワ

 

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ショートショートの書き方』を、作家の視点で詳しく『超解説』‼

 

 

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実際の小説リライト(後編)

実際の小説リライト(後編)

 

前回までに公開した『リライト後』、『リライト前』の作品ですが、具体的に何処をどう変え、その理由が何であったかを解説する、今回は『後編』です。

 

ショートショート『家出人捜索』リライト前はこちら↓↓↓

小説のリライト(特別編) - R・ヒラサワの〜Novelist's brain〜

ショートショート『家出人捜索』リライト後はこちら↓↓↓ 

(『家出』がテーマの作品例)新作ショートショート(19)/家出人捜索 - R・ヒラサワの〜Novelist's brain〜

 

 

【CONTENTS】

 

 

 

主人公の心理と現在への調和

 

【リライト前】


 俺はテレビの番組を見ながら、あれこれと思いにふけっていた。すでに忘れようとしていた過去の話だ。しかしそんな俺が、何故こんな番組を見ているのか、自分でもよく分からなかった。

 そんな時、もっと理解しがたい事がテレビの中で起こったのだ。いまテレビ画面の中に居るのは、まさしく父親の姿であった。

「ま、まさか……」

 しかも番組の中で呼んでいるのは俺の名前。つまり、俺の事を探している。夢ではないかと自分の目を疑ったが、どうやら現実に起きていることらしい。しばらく見ないうちに、すっかり老け込んではいたが、父親に間違いなかった。横に付き添っているのは当時からいる家政婦だ。

 

 

【リライト後】


 普段からこの手の番組は時々観ているが、未だに家を出た時の気持ちは変わっていない。失敗に終わってもいいから、子供には夢を追わせてやるべきだと思う。

 いつもの似たようなパターンの話だったので、そろそろチャンネルでも変えようかと思った瞬間、オレの手が止まった。

ー父が居るー

 それは間違いなく『父』の姿だった。十年間見ない間に、すっかり老け込んでしまった。会長に退き、実務から離れたせいだろうか。『あの日』の鋭い眼差しは、そこに無かった。

 


【リライトのポイント】


❶主人公が番組を『時々観ている』設定に変更。父の対応に納得はしていないものの、『気にかけている』という内面を表現。


❷家政婦をカット。父の経済的な情報は番組では判断出来ない状態に。

個人情報の保護が重視される現在において、番組中で判断のつく映像が流れるのは時代の流れにそぐわない為に修正。

 

 

リアリティと緊張感

 


【リライト前】

 

電話の男は、すでに電話で父親と話をしていた。あれほど厳しかった父親の姿は、すでにそこにはなかった。さらに話のやり取りを聞いていると、父親はかなりあいまいな返事をしている。年のせいか判断力が少し鈍ってきているようだ。このままでは、まんまとニセモノに金を騙し取られてしまう。

 俺は慌てて番組あてに電話をしたが、すでに本人から電話がかかっているとの事で、まともに取り合ってはくれず、これではまるで俺がニセモノ扱いだった。放送局は俺の家からそう遠くはない。電話では話にならないと思い、すぐさま車を走らせる事にした。

 

【リライト後】

 

 父の様子に不安を感じた。時折懐かしそうな表情を浮かべ、深く頷く。完全に電話の相手をオレだと信じ込んでいるのだ。慌てて画面に出ている番号に電話をかけた。しかし、全く繋がらない。

 気付けば車に乗り込み、放送局に向かっていた。番組が終わるまでには着く筈だ。

 


【リライトのポイント】

❶番組宛の電話は繋がらない設定に変更

主人公が電話をした時ですが、ここは繋がらない設定にしています。実際問題としてこの様な生放送の番組の場合、視聴者からの電話も多く、なかなか繋がらない状態の方がリアルです。


❷とにかく放送局へと向かう

電話のやり取りの問題ではなく、全く話も出来ないまま放送局に行く方が、より緊迫したものがあって良いでしょう。焦る気持ちの、その先にある『オチ』は、より効果的に働くのです。

その場の緊張感を文章で表現する場合、最もかんたんな方法として、『一文を短くする』と言う手法があります。例えば格闘シーンなどの場合、各動作やセリフ、内面描写などを細切れのにする事で、緊迫した場面を表現する事が出来るのです。

 

 

そして最後に

 

過去に書いた作品などで、十分な完成品に出来なかったものは、一定以上の期間をおいて見直してみるのが良いでしょう。その作品に触れなかった期間も、人は常に考え、何かに取り組んでいる筈です。 その過程で得たものや、新たに触れた『視点』や『思考』といったものが、同じ作品を読んでも別の判断が出来る材料を与えてくれるかもしれません。リライトによって蘇る文章は、実は身の回りに多く存在している筈です。

 

 

 

 

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実際の小説リライト(前編)

実際の小説リライト(前編)

 


前回までに公開した『ショートショート/家出人捜索』の『リライト後』、『リライト前』ですが、具体的に何処をどの様な理由で変えたのか? 前編と後編に分けて詳しく解説したいと思います。

 

ショートショート『家出人捜索』リライト前はこちら↓↓↓

小説のリライト(特別編) - R・ヒラサワの〜Novelist's brain〜

ショートショート『家出人捜索』リライト後はこちら↓↓↓ 

(『家出』がテーマの作品例)新作ショートショート(19)/家出人捜索 - R・ヒラサワの〜Novelist's brain〜

 

【CONTENTS】

 

 

 

読みやすさと主人公の内面 

 

【リライト前】

「麻衣子、このテレビを見てたら父さんに連絡をくれないか……」

 テレビの中では家出した娘にむかって、その父親が呼びかけている。番組の企画で家出人や行方不明者をさがそうと、時々生放送やっているもの。今さがしているのは、二年前に家出した当時十七歳の少女だ。母親はすでに他界して父親と二人暮らしだったが、最近になってひどくなりだした、父親の酒と暴力が家を出た原因だそうだ。

「どうせ帰ってこねえよ!」

 
【リライト後】

「マサミ、この放送を見てたら父さんに連絡をくれないか……」

 テレビの中で、家出した娘に向かって呼びかけている場面だ。

 時々、生放送で未解決事件などを報じる番組で、行方不明者の情報提供を視聴者に求める事もある。いま流れているのは、当時十七歳の娘で、家出から既に二年間経っているそうだ。

「帰って来ねえって……」


【リライトのポイント】

❶名前変更

最近の作品は基本的に人物名をカタカナ表記にしているのですが、書き出しの部分で『マイコ』よりも『マサミ』の方が人名として認識が早いと判断し、変更したものです。

 
❷脇役の事情をカット

脇役の家出の詳細はカットしました。これは主人公に、より多くのスポットを当てる為ですが、後の文章で再度触れる事で内容が伝わる様にしています。

 
❸主人公のセリフの変更

主人公のセリフを『怒り』から『嘆き』に変更しています。今回のリライトで、全体的に主人公を少しだけ『父』に歩み寄っている姿勢を表現する為です。

 

 

主人公と他者の関係性の協調 

 

【リライト前】

 俺が家を出たのもちょうど十七歳のころだった。父親は小さいながらも会社の経営をやっていて、金銭的には何不自由なく育った。母親は俺が小さい頃に家を出て行ったので記憶はほとんどないし、家事については家政婦を雇っていたので問題はなかった。

 俺が中学生の頃、友人に借りた音楽のテープがきっかけで、俺はその世界に興味を持ち始め、高校に入ってすぐに仲間を集めてバンドを組んだ。ライヴハウスでの活動は、徐々に範囲を広げてゆき、色んなコンテストにも参加した。出始めた人気は俺たちの良いプレッシャーとなり、いつしか俺たちはプロのミュージシャンになることを夢見ていた。

 

【リライト後】

オレが家を出たのも、ちょうど十七歳の時だった。

 父は小さいながらも会社の経営者だった。若かった母は初婚だったが父の方は再婚で、オレとは四十歳離れていた。

 ワンマンだった父に、ついて行けなくなった母は、オレを残して家を出た。金銭的な余裕がある為、父は色んな物をオレに与えたが、心は常に孤独だった。

 中学生になったある日、同級生に教えてもらったミュージシャンにすっかりハマり、その世界にオレは目覚めた。

 楽器を手に入れ、仲間とバンドを組んだ。それまで無趣味だったオレが何かに夢中になったのが嬉しかったのか、父はとても協力的で、知人の会社の倉庫をバンドの練習場所として提供もしてくれた。オレ達は色んなコンテストに参加し、メンバー全員がプロになる事を夢見ていた。

 

【リライトのポイント】

❶主人公と父の関係性を、より深くする為に『家政婦』をカット。母が家を出た為、父と二人の生活となり、忙しかった父は主人公に金銭的なものを与えるしか出来ず、コミュニケーション不足であったと言う設定です。

 

❷父の年齢設定を明確にする。読者の父に対するイメージが若いと、父の『会長』という立場等、作品全体に違和感が出る為。

主人公を含む三者の関係を表現する場合、『主役』と『準主役』、ここでは主人公と父の年齢を明確にし、『脇役』である母は省略しています。単に『若く』とする事で、『年の差婚』である事が分かります。作中、母の年齢はあまり重要ではないので、この様な表現にしています。

 

❸父の主人公へのバックアップの理由を明確にする。それにより、後の打ち切りの心境も明確になる。

金銭的なものを与える事で、コミュニケーションを取ろうしていた父ですが、バックアップはバンドの応援ではなく、『コミュニケーションの一部であった』と言う設定です。

 

 

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シリーズ第二弾
シリーズ第三弾

 

主人公の行動に対する整合性

 

【リライト前】

 しかし、そんな父親の態度も仕事に関しては現実的だった。経営者であった父は常に人一倍厳しい姿勢で取り組み、特に俺については自分の会社を継がせたい思いがあり、音楽のことに関しては、趣味で活動するには応援するが、プロを夢見る事など論外だと、バックアップを打ち切るどころか、その活動までやめろと言い出した。結局、俺は父と大喧嘩の末に家を飛び出す事になった。

 家を出てから十年、その間、父には一切連絡をとらなかった。バンドの活動は俺一人、遠方から通ってなんとか続けたが、結局はアマチュアのままで成功することなくバンドは解散する事になり、俺はいま普通の社会人として会社に通っている。

 父親の話は、地元に住んでいる友人から何度か聞いた。会社の後継ぎとなる人物は見つかり父親は会長に退いたこと、そしてその後も会社は順調だということ。

 

【リライト後】

 一人になってからも、音楽は続けた。バイトをしながら詞を書き曲を書いた。メンバーがいた頃とは違って、見たり聞いたりしてくれる相手が居なかったので、全ての事に張り合いが無くなった。時間があるのに曲が作れない。

 生活費の余裕はどんどんと減ってゆき、先々への不安だけが募った。はその問題を解決する為、バイトを辞めて会社に勤めた。

 今度は時間が無くなった。益々、曲が出来なくなった。結局のところ、曲が出来ない理由を何かのせいにしている自分に気付いた。楽器を全て売り払い、音楽とは距離を置いた。

 家を出てから十年が経つ。もう電話ぐらいしてもいいかとも思うが、未だ独り身の貧乏暮らしでは、それも躊躇してしまう。

 父の話は地元に住んでいる友人から聞いている。会社は後継となる人物が見つかって父は会長に退いた事、その後も会社は順調な事など、不安な材料は特に見当たらなかった。

 普段からこの手の番組は時々観ているが、未だに家を出た時の気持ちは変わっていない。失敗に終わってもいいから、子供には夢を追わせてやるべきだと思う。


【リライトのポイント】

❶バンドの解散は家出の『後』を『前』に変更。

バンドが成功しなかった『理由』が自分にあった事に気付く場面を加えています。主人公の父に対する反発心を、少し弱める為です。

 
❷主人公が、父へ連絡しようと思う気持ちは多少あった流れにする。

前述の内容に加え、連絡を躊躇した理由として『独り身』や『貧乏暮らし』を入れる事で、会うのならば『安心させたい』と言う思いを表現しています。


❸一人になり、父の考えを少しは理解するものの、バンドでの活動に反対された事については納得していない流れにする。

父への理解を示すものの、やはり『納得していない』部分は残しています。

 

 

 

次回、小説のリライト実践(後編)に続きます。

 

 

 

 

 

 

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小説のリライト(特別編)

小説のリライト(特別編)

 

 

小説の『リライト』ですが、今回は私が過去に書いた作品を使って実際の作業を行いました。原文はデビュー後の『ショートショート第二集』用にと編集者の方にお送りし、審査の結果『Bクラス』となった為、先々『リライト』しようと保存していたものです。通常、この様な『手直し前』の作品は、あまり表に出さない人が殆どだと思うので、是非ご参考にして頂きたいと思います。

(解説は、次回以降の記事にて)

 


前回のブログでの作品が『リライト後』の作品になります。今回の作品と一緒に読んでいただくと、その違いがよく分かると思います。

『リライト後』の作品はこちら↓↓↓

(『家出』がテーマの作品例)新作ショートショート(19)/家出人捜索 - R・ヒラサワの〜Novelist's brain〜

 

リライトの目的

 

●基本的な内容は変更しない

●文字数を減らす

●その時代に合わない物は修正する

●人名の表記をカタカナに変更する

●設定等で必要な部分は加筆修正する

●不要な部分はカットする

 

リライト前(2805文字)➡リライト後(2058文字)【▲747文字】

 

 

 

 

家出人捜索(リライト前の原文)

 

 


「麻衣子、このテレビを見てたら父さんに連絡をくれないか……」

 テレビの中では家出した娘にむかって、その父親が呼びかけている。番組の企画で家出人や行方不明者をさがそうと、時々生放送やっているもの。今さがしているのは、二年前に家出した当時十七歳の少女だ。母親はすでに他界して父親と二人暮らしだったが、最近になってひどくなりだした、父親の酒と暴力が家を出た原因だそうだ。

「どうせ帰ってこねえよ!」

 俺はテレビにむかって、はき捨てるように言った。親なんていつも自分勝手なもんで、この少女の話にしても、父親が自分の仕事と家庭の両立が上手く出来なくて、やがてストレスを紛らわすため酒に頼って、あげくの果てに自分の娘に暴力を振るっている。

「あんた、勝手すぎるぜ!」

 無意識に俺が、テレビの中の父親に文句を言っていたのは、自分の父親の姿とよく似ていたからだろう。

 俺が家を出たのもちょうど十七歳のころだった。父親は小さいながらも会社の経営をやっていて、金銭的には何不自由なく育った。母親は俺が小さい頃に家を出て行ったので記憶はほとんどないし、家事については家政婦を雇っていたので問題はなかった。

 俺が中学生の頃、友人に借りた音楽のテープがきっかけで、俺はその世界に興味を持ち始め、高校に入ってすぐに仲間を集めてバンドを組んだ。ライヴハウスでの活動は、徐々に範囲を広げてゆき、色んなコンテストにも参加した。出始めた人気は俺たちの良いプレッシャーとなり、いつしか俺たちはプロのミュージシャンになることを夢見ていた。

 父親は俺たちの活動に初めのうちは協力的だった。趣味を持つ事にはとても賛成していて、機材を買う資金を提供したり、バンドの練習場所に知人の会社の倉庫を借りてくれたりと、色んな方面から俺たちのことをバックアップしてくれた。

 しかし、そんな父親の態度も仕事に関しては現実的だった。経営者であった父は常に人一倍厳しい姿勢で取り組み、特に俺については自分の会社を継がせたい思いがあり、音楽のことに関しては、趣味で活動するには応援するが、プロを夢見る事など論外だと、バックアップを打ち切るどころか、その活動までやめろと言い出した。結局、俺は父と大喧嘩の末に家を飛び出す事になった。

 家を出てから十年、その間、父には一切連絡をとらなかった。バンドの活動は俺一人、遠方から通ってなんとか続けたが、結局はアマチュアのままで成功することなくバンドは解散する事になり、俺はいま普通の社会人として会社に通っている。

 父親の話は、地元に住んでいる友人から何度か聞いた。会社の後継ぎとなる人物は見つかり父親は会長に退いたこと、そしてその後も会社は順調だということ。

 俺はテレビの番組を見ながら、あれこれと思いにふけっていた。すでに忘れようとしていた過去の話だ。しかしそんな俺が、何故こんな番組を見ているのか、自分でもよく分からなかった。

 そんな時、もっと理解しがたい事がテレビの中で起こったのだ。いまテレビ画面の中に居るのは、まさしく父親の姿であった。

「ま、まさか……」

 しかも番組の中で呼んでいるのは俺の名前。つまり、俺の事を探している。夢ではないかと自分の目を疑ったが、どうやら現実に起きていることらしい。しばらく見ないうちに、すっかり老け込んではいたが、父親に間違いなかった。横に付き添っているのは当時からいる家政婦だ。

「この方は他に身よりもなく、今は十年前に家を出て行った息子さんにひとめ会いたいとおっしゃってます」

 番組の司会者は話を続け、カメラは昔俺が住んでいた部屋を映し出している。十年前、俺が家を出たときの状態のまま、部屋は残されていた。

「生きていてさえいてくれば……」

 父親は悲痛な叫びを全国に向けて訴えかけていた。父親の話では、俺が家出してから自費で興信所に調査を依頼したが、手がかりが少なかった為に、ある程度の期間で打ち切ったらしい。しかしその後、老いてゆく我が身を不安に思い、テレビ番組の企画を知って応募したそうだ。

 しかし事情を知ったところで、俺は名乗り出る気はなかった。父親には悪いが、俺は夢を断ち切られた時点で、親子の縁は切ったつもりでいる。それに父親には家政婦を雇いながらこの先を暮らしてゆくにも、十分過ぎるほどの財産がある筈だ。俺は番組を観ていられなくなってきたので、テレビを消そうとリモコンに手をかけたとき、テレビの画面の中が急に慌ただしきなってきた。

「ちょっと待ってください! たった今、番組の方に本人であるという方から電話が入ってきました!」

「な、なんだって?」

 俺は自分の耳を疑った。なんと本人と名乗る男が、番組に対して電話をかけてきているではないか。本物の息子が観ていると言うのに、とんだニセモノが現れたものだ。しかし、こういった番組では、必ず本人かどうかの質問をして確認をとる筈だ。当然のことながら、司会者は簡単な確認を行ったが、意外にもそれを簡単にクリアしてしまった。

「この野郎、いったい何者なんだ!」

 俺は腹が立った。本人が見ているとも知らず、大胆に全国ネットの生放送の番組で堂々と嘘を言ってのけている奴がいる。おそらく、この男は金目当てに違いない。放送中に映し出された家の中の映像や、父親が会社を経営していたこと、そして今でも家政婦を雇っていることなどで、十分に金持ちである身分は判断できる。おまけに身寄りがないとくれば、絶好のターゲットだ。

 電話の男は、すでに電話で父親と話をしていた。あれほど厳しかった父親の姿は、すでにそこにはなかった。さらに話のやり取りを聞いていると、父親はかなりあいまいな返事をしている。年のせいか判断力が少し鈍ってきているようだ。このままでは、まんまとニセモノに金を騙し取られてしまう。

 俺は慌てて番組あてに電話をしたが、すでに本人から電話がかかっているとの事で、まともに取り合ってはくれず、これではまるで俺がニセモノ扱いだった。放送局は俺の家からそう遠くはない。電話では話にならないと思い、すぐさま車を走らせる事にした。

 放送局に着くと、番組をやっているスタジオに向かった。途中の道で警備員の制止を振り切り、中に入るといきなり知らない男がこちらを見て立っていた。

「息子さんですね。お待ちしていました」

 立っていた男は俺に声をかけ、そしてこの番組のプロデューサーだと名乗った。

「お父様が、こうでもしないとあなたには会えないだろうって……」

 父親は決して衰えてはいなかった。今でも家出した時と同じ頑固者のままで。そして番組のプロデューサーの案を押し切って、ニセモノの男を用意させたのも、父親のアイデアだったらしい。

 父親はいつでも人を仕切りたがる人だった。十年経った今でもこうしてテレビの番組までも。

 

 

 

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(『家出』がテーマの作品例)新作ショートショート(19)/家出人捜索

新作ショートショート/テーマ(家出)

 

 

家出人捜索

 

 

 

「マサミ、この放送を見てたら父さんに連絡をくれないか……」

 テレビの中で、家出した娘に向かって呼びかけている場面だ。

 時々、生放送で未解決事件などを報じる番組で、行方不明者の情報提供を視聴者に求める事もある。いま流れているのは、当時十七歳の娘で、家出から既に二年間経っているそうだ。

「帰って来ねえって……」

 オレは思わず呟く。若い頃の自分とダブったのだ。

 親なんていつも勝手だと思う。この娘の話にしても、両親の離婚や再婚が家出の原因の様で、その被害を受けたのは娘の方だ。オレが家を出たのも、ちょうど十七歳の時だった。

 父は小さいながらも会社の経営者だった。若かった母は初婚だったが父の方は再婚で、オレとは四十歳離れていた。

 ワンマンだった父に、ついて行けなくなった母は、オレを残して家を出た。金銭的な余裕がある為、父は色んな物をオレに与えたが、心は常に孤独だった。

 中学生になったある日、同級生に教えてもらったミュージシャンにすっかりハマり、その世界にオレは目覚めた。

 楽器を手に入れ、仲間とバンドを組んだ。それまで無趣味だったオレが何かに夢中になったのが嬉しかったのか、父はとても協力的で、知人の会社の倉庫をバンドの練習場所として提供もしてくれた。オレ達は色んなコンテストに参加し、メンバー全員がプロになる事を夢見ていた。

 高校生になり、バンドの知名度も上がり始めた頃、突然父は態度を変えた。

「進路はどうするんだ?」

 大学がどうの、就職がこうのと口うるさくなり、やがて練習場所の提供も無くなって、挙げ句の果てにバンド活動も止めろと言い出した。オレと父は激しく対立した。

 メンバーとの仲もギクシャクし始めた。練習時間がめっきりと減り、会う時間も少なくなった。皆の気持ちが離れ始め、やがてバンドは解散した。そして、夢を断たれたオレは全てが嫌になって家を出た。

 一人になってからも、音楽は続けた。バイトをしながら詞を書き曲を書いた。メンバーがいた頃とは違って、見たり聞いたりしてくれる相手が居なかったので、全ての事に張り合いが無くなった。時間があるのに曲が作れない。

 生活費の余裕はどんどんと減ってゆき、先々への不安だけが募った。その問題を解決する為、バイトを辞めて会社に勤めた。

 今度は時間が無くなった。益々、曲が出来なくなった。結局のところ、曲が出来ない理由を何かのせいにしている自分に気付いた。楽器を全て売り払い、音楽とは距離を置いた。

 家を出てから十年が経つ。もう電話ぐらいしてもいいかとも思うが、未だ独り身の貧乏暮らしでは、それも躊躇してしまう。

 父の話は地元に住んでいる友人から聞いている。会社は後継となる人物が見つかって父は会長に退いた事、その後も会社は順調な事など、不安な材料は特に見当たらなかった。

 普段からこの手の番組は時々観ているが、未だに家を出た時の気持ちは変わっていない。失敗に終わってもいいから、子供には夢を追わせてやるべきだと思う。

 いつもの似たようなパターンの話だったので、そろそろチャンネルでも変えようかと思った瞬間、オレの手が止まった。

ー父が居るー

 それは間違いなく『父』の姿だった。十年間見ない間に、すっかり老け込んでしまった。会長に退き、実務から離れたせいだろうか。『あの日』の鋭い眼差しは、そこに無かった。

ーお父様は息子さんを探していますー

 それは間違いなく、この『オレ』の事だ。テレビなど使わず、金に余裕があるのだから興信所にでも頼めばいいものを、どう言う訳か番組に出ている。画面の下の方には、情報提供を求める電話番号が常に表示されていた。

ー誰が電話などするものかー

 番組ではオペレーター達の姿が映し出されている。オレは十年間、信頼出来る知人にしか連絡をとっていない。有力な情報など集まる訳がないのだ。しばらくすると、スタジオの様子が一変した。

「いま、息子さんご本人と思われる方から電話が入った様です」

ーそんな馬鹿なー

 父は電話に出た。しかし、オレはここに居る。電話の相手が偽物だと言う事ぐらい、直接話せば分かる事だ。

 父の様子に不安を感じた。時折懐かしそうな表情を浮かべ、深く頷く。完全に電話の相手をオレだと信じ込んでいるのだ。慌てて画面に出ている番号に電話をかけた。しかし、全く繋がらない。

 気付けば車に乗り込み、放送局に向かっていた。番組が終わるまでには着く筈だ。

 放送局に着くと、入口で警備員の制止を振り切った。そして中に入ろうとすると、知らない男性がこちらを見て立っていた。

「息子さんですね。お待ちしていました」

 その男性は番組のプロデューサーだと名乗った。

「お父様が、こうでもしないとあなたには会えないだろうって……」

 父は決して衰えてはいなかった。偽物の男を用意させたのは、父のアイデアだったらしい。

 父はいつでも人を仕切りたがる人だった。十年経った今でも、こうしてテレビの番組までも。

 

 

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シリーズ第二弾
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(小説・ショートショート書き方のテクニック)コラム/余計な文章(後編)

コラム/余計な文章(後編)

 


『余計な文章』と書くと、表現があまり良くありませんが、要するに『省略出来る文章』と言う事になります。その中でも、ビギナーの方に最も多く見られるのが『会話文』ではないかと思いますので、その辺りについて解説したいと思います。

 

 

【CONTENTS】

 

 

 

 

二人のセリフの場合

 

先ずは基本的な二人の会話の場面です。特別な場合を除けば交互に会話する事によってキャラクターを区別する事が出来ます。

 

ショートショート『さじ加減』より 

 作品の全文はこちら↓↓↓

rhirasawanb.hatenablog.com

 

「何よ、これ。塩っ辛い!」

 私の妻が言った。日曜日の昼の事だった。久々に私が作ったチャーハンを食べた妻は、塩が多いと言いだした。

「そうかな……」

 私が言うと、

「そうよ。だって、あなたインスタントコーヒー、ちゃんと作れないじゃない!」

 妻が更に追い討ちをかける。

「それは、そうだけど……」

 その先、私は言葉が出なかった。

 

一見したところ、あまり問題のない文章の様に見えますが、実際の作品ではアンダーラインの部分を省略しています。以下が実際の作品での文章です。 

 

「何よ、これ。塩っ辛い!」

 日曜日の昼の事だった。久々に私が作ったチャーハンを食べた妻は、塩が多いと言いだした。

「そうかな……」

「そうよ。だって、あなたインスタントコーヒー、ちゃんと作れないじゃない!」

「それは、そうだけど……」


二人の会話文の場合、最初に二人が誰であるかを明確にしておけば、後は交互に言葉を交わすようにして、その途中でアクションがあった時、人の名前を動作とともに組み込む程度で十分に状況は伝わります。

例えば会話が交互でななく、同じ人物が二つに分かれたセリフを話さなければいけない時など、上記と同様でアクションに加えて誰が話したかを明確にすれば良いのです。

以下、実際は作品に無かった部分ですが、セリフを続けるシチュエーションを作ってみましょう。


「そうよ。だって、あなたインスタントコーヒー、ちゃんと作れないじゃない!」

「それは、そうだけど……」

 答えに困った私はキッチンを見渡した。

「だからこれを百円ショップで買ったんじゃないか」

 五本束ねられたプラスチック製の計量スプーンを引き出しから取り出し、それを妻に見せた。

 

 

 

二人以上のセリフの場合

 

次に、二人以上が登場する場合の例ですが、今回は同時に会話するのではなく、三人が順番に話してゆく場面です。これが三人の会話となると、少々複雑になります。

 

ショートショート『あなろぐ』より 

作品の全文はこちら↓↓↓

rhirasawanb.hatenablog.com

 


工場の奥には後輩のカジワラが居た。怠慢で雑用は平気で先輩にやらせようとするヤツだ。カジワラが言った。

「ああ、カナコさん。一応、洗い物全部やっておきました。他のカナコさんの仕事もみんなで手分けして。だって急ぎの用だったんでしょう?」

カジワラの言葉にカナコが答える。

「へえ、やってくれたんだあ……」

 工場長がカナコに近づき、口を開く。

「なあカナコ。何でもきっちり予定通りってのもいいけど、何かあった時には何て言うの、お前が嫌いな『あなろぐ』だっけ? それもいいんじゃない? あのヤマキ社長も伝言を入れ間違う事だってあるんだし」

「ま、まあそうね」

 

各セリフにセットで誰が話したかが書かれていますが、これでは文章がすっきりしません。実際の作品では、最後に登場した人物だけに絞って誰のセリフかを明確にしています。これは、この部分では三人目となる人物の登場によって、読者の方が混乱しない様にする為のものです。以下が実際の作品です。

 
工場の奥には後輩のカジワラが居た。怠慢で雑用は平気で先輩にやらせようとするヤツだ。

「ああ、カナコさん。一応、洗い物全部やっておきました。他のカナコさんの仕事もみんなで手分けして。だって急ぎの用だったんでしょう?」

「へえ、やってくれたんだあ……」

 工場長がカナコに近づき、口を開く。

「なあカナコ。何でもきっちり予定通りってのもいいけど、何かあった時には何て言うの、お前が嫌いな『あなろぐ』だっけ? それもいいんじゃない? あのヤマキ社長も伝言を入れ間違う事だってあるんだし」

「ま、まあそうね」

 

既に出来上がった作品である為、 チェック前の文章は極端な感じになっていますが、これに似たような書き方をしてしまう場合が、あるのです。

 


省略の為の基本的な方法

 

❶セリフの直前に描写等を入れる

ダイワ製粉に着くと、主任が荷物を積んだ台車を押してやって来た。

「カナコさん、これですよ」

 

❷セリフの直後に描写等を入れる

「担当ですか? まあ、やれる人がやってお互い助け合うって形で……」

 先代の息子である二代目社長の対応は、まさに『のれんに腕押し』だった。

 

❸キャラクター同士の口調を区別する

「どうしてこうなっちゃうのよ!」

「どうする? 粉さえありゃいくらでも作るけどよ」

「私が取りに行くわ! 二時間後に戻れば間に合うわよね!」

「二時間後って十時じゃねえか。それはちょっと……」

「さっき、粉さえあればって言ったじゃない!」

「わかったよ。絶対時間厳守だぞ! でも間に合うのか? 往復だけで二時間ぐらいかかるぜ。粉だって向こうが用意してなきゃ……」

「とにかく出発するわ!」

 

 

 

そして最後に

 

今回は『省略出来る文章』の解説をしましたが、特に書いてはいけないと言う訳ではありません。あくまでリズムに滞りがない様にとか、文字数を節約したい場合などに省略出来る部分を探せば良いと思います。

また、作品の流れ上や作者の意図によって、一般的には書かない時に『あえて書く』場青もあって、こちらは更に上級のテクニックになります。文章に『もたつき』を感じた時は、是非参考にしてください。

 

 

次回は、ショートショート『タイムカプセル』の創作プロセス公開です。

 

 

 

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(小説での『夢』の扱い方)番外編/『夢』の話

番外編/『夢』の話

 

 

ショートショートの『オチ』として避けるべく『夢』。扱い方はデリケートですが、使い方によって大きな『武器』にもなり得ます。今回は、そんな『夢』についてのお話です。

 

 

【CONTENTS】

 

 

 『オチ』には使えない

 

小説の世界で『夢』は、その扱いが少しデリケートです。ショートショートなどでは『オチに使わない』言うのが一般的で、要するに作中で起こった様々な出来事の原因が『夢だった』と言う事にしてしまうと、簡単に解決できる『魔法のツール』だからです。これを使ってしまうと、大抵の読者はシラケてしまうのです。

 


一般的に『ご都合主義』と言われるのは、作者が思う様な都合の良い方向に流れを持ってゆく事で、『夢』の場合は既に他界した人が当たり前の様に登場していても違和感がなかったりと、実際にあり得ない事がまかり通ってしまう世界なので、やはり『オチ』には使えないのですね。

 

 

 

『夢』は小説に使えないのか

 

では、小説の中で『夢』を扱ってはいけないのかと言うと、そうではありません。『オチ』に使わなければいいのですから。もっと言うと、それは使いようによってはとても便利なアイテムになり得るのです。

 

 

 

『アイデア』の原点

 

小説を書くとき、なかなかアイデアが出ない時があります。普段同じ様な生活パターンで、ルーティン的な事を繰り返していると、なかなか突拍子もない事を思いつきません。しかし、その可能性は『夢』には大いにあるのです。ですから、夢で得た事をヒントに その世界を広げ、物語を作る。時としてとても面白い作品に繋がります。

 

 

『夢』の記録

 

朝、目が覚めた時に覚えていた夢でも、時間と共にその記憶は薄れ、場合によっては一瞬で忘れてしまう事もあります。私の場合、以前であれば枕元辺りに常時メモとボールペンを置いていました。現在はそれに変わってスマートフォンがあります。メモ機能を使って直ぐに書き留めたり、音声入力を使ったりと、とにかくいいネタは必ず残す様にしています。私の経験上、一度忘れたネタを再び思い出す可能性は殆どゼロに近いものでしたので、是非とも『記録』出来る環境を用意される事をお勧めします。

 

 

 

『最近』の夢

 

私が最近見た夢です。『夢』は実際のところ毎日見ているのかもしれませんが、起きた時にはっきりと覚えていた事が最近少なかったので、今回のお話の夢は印象的で、また内容にとてもインパクトがあったので、先々『ネタ』にする予定です。

さて、それはどんな話しか? 果たして『ネタ』になり得るのか?

 

 

 

『夢』の内容

 

その日は普段よりも一時間程度早起きする日でした。前日の仕事もそれなりに遅かったので、寝付きはあまり良くありませんでした。そして当日、起きる時間よりもずっと早い早朝から何度も目覚め、結局本来起きる時間まで四回も目覚めてしまいました。

眠りが浅かったのかもしれません。

 

『夢』の話です。

オフィス街の一角に、ちょっとした公園の様なスペースがあって、なぜか私はそこで手に『缶詰』を持っています。近くに居るのは私の知人なのですが、何故かそれが人気芸人さんで、しかも大御所の方です。

『缶詰』は薄いのですが異常に長く、ちょうど『ウナギの蒲焼』が入るぐらいの大きさ。開けると中には透明の液体があって、これはどうやら『スープ』らしいのです。具材は少なく、貝の身の様なものと他に……。

私は一般的な食べ物なら、殆ど好き嫌いがありません。しかし、あまりグロテスクな物や、姿がはっきりし過ぎたものは苦手なのです。

中には『ゴカイ』の様な生き物が入っていて、泳いでいます。先ずはそれを思い切って口の中へ。全く味はしませんでした。

缶詰の端の方には、『岩』のミニチュアの様なものと、『藻』まであって、今度は『亀』が泳いで来ました。名前は分かりませんが気性が荒そうなそれを『食べる』って事らしいのですが……。

『亀』と一瞬目が合いました。直ぐに『食べない』と言う選択肢になりました。日本には居なそうな亀を、『生態系』が崩れるのではとの不安を抱えたまま、逃がす事にしたのです。その公園の様な場所にある、とても小さな池に。そんな所に逃がして、亀がその先、生きていけるのどうかわかりませんが、とにかく逃がしました。

亀は私を一瞬見て、そのまま泳いで行きました。『ありがとう』と言った気持ちは微塵も無かったようですが。

あの『缶詰』は一体何だったのか? そして『スープ』は? この夢の意味は? 様々な疑問を抱えたまま、私の頭を過ったのは『この夢のオチは?』でした。職業病でしょうかね? それは目覚める直前にやって来ました。

それまで静かに私の行動を見守っていた、何故か私の知人と言う設定である大御所の芸人さんが一言。

『よう、あんなもん食うとるな!』

 

 

 

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