コラム/計画的な展開(後編)
小説における『展開』が、『計画的』である事は勿論なのですが、作品によってそれなりの『構成上の準備』が必要な場合があります。
今回は、どんな場面でどの様な事が必要で、どう準備したのか。作品を用いて解説したいと思います。
【ご注意!】
以降の解説には『オチ』の『ネタバレ』を含んだ箇所があります。まだ作品を読んでいない方、本来のショートショートとして楽しみたい方は、先にリンク先『全文』をお読みになられる事を、お勧めします。
【CONTENTS】
『私の庭』の場合
ショートショート『私の庭』の全文はこちら↓↓↓
主人公が離婚後に、偶然かつての『夫』と『我が家』を目にする事になるが、それは共に『変わり果てた姿』となっていた。
【書き出し→オチ】
●離婚した主人公が、かつての『我が家』が『ゴミ屋敷化』しているのを知る。
→●元夫が意外にも『弱く』なっているのを知り、主人公は『自分が必要なのでは?』と考える。
【必要なエピソード等】
●主人公が離婚後に、かつて住んでいた家の現状を知る。
●主人公はやむを得ず離婚した。
●元夫の現状を知る出来事。
●主人公の心を動かす元夫の変化。
●主人公が現在の心境を遠回しに伝える事が出来るアイテム。
【計画的な展開】
●かつての家の現状を、テレビの放送で知る。
→朝の情報番組を観る習慣
●愛情はあるが、将来に不安を感じる
→突然の独立の申し出と高齢の母
●周辺にモザイクがあるが、判別出来るアイテムがあり家が特定出来る。
→外国製の特徴的な鍋を使っていた
●元夫に、かつて無かった弱さが見える。
→一人で何でも出来そうだったが、実際はそうではなかった
●かつての主人公の所有物で、現状もそこに残っているもの。
→主人公が少しずつ花を植えて作った庭が残っている
『未来から来た男』の場合
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主人公が生まれる半年前に両親は離婚した。母と再婚する筈だった男は、多額の借金を残して姿消した。主人公はその男を恨んでいた。
【書き出し→オチ】
●母と再婚予定だった男が借金を残して姿を消した事で、その男を主人公はとても恨んでおり、復讐を考えていた。
→●姿を消したのは、実は主人公の実の父で、過去で男を殺す事で、主人公の存在も消える。
【必要なエピソード等】
●主人公が恨みを持つ男の存在と母への想い。
●主人公の誕生と男の出現の微妙なタイミング。
●主人公が復讐可能な環境。
●主人公と男が出会える条件。
【計画的な展開】
●再婚予定だった男の失踪と、残された借金。それを懸命に返す母。
→主人公が学生時代時代に母が他界した為、強い想いが残る
●父親が失踪した男と考えにくいタイミング。離婚前からの関係との設定。
→微妙なタイミングとして『半年』に設定
●パラドックス等の問題はあるが、条件付きでのタイムマシンの存在。
→可能な方法として『タイムマシン』だが安易には使用しない
●行きつけのバーで、絞り込みが可能。少しの質問で本人と特定出来る。
→簡単なやり取りで特定した後、犯行に及ぶ
『ショートショートの書き方』を、作家の視点で詳しく『超解説』‼
『優秀な新人』の場合
ショートショート『優秀な新人』の全文はこちら↓↓↓
研修担当だった主人公は、年々新人に対しジェネレーションギャップを感じていたが、久々に手ごたえのある新人の入社に期待を寄せていた。
【書き出し→オチ】
●研修担当だった主人公は、期待している新人の成長に満足しつつも、未だ物足りなさを感じていた。
→●作業工程にイレギュラーな流れを作って、研修の一環としていたが、実は製品を抜き取って、ネットで販売していた。
【必要なエピソード等】
●主人公が工場内で、自分の研修プログラムを組める権限。
●研修時の作業の必要性。
●異常を察知できる新人の能力。
●研修中に疑問を呈する新人の態度。
●不正が可能な工場内の環境。
【必要な展開】
●年齢の若い管理職。
→主人公の勤務先を零細企業とし、複数の業務を担当の設定
●主人公が製品を抜き取る場面
→新人は優秀だが、更なるレベルアップの為に試練を与える名目
●新人は勘が鋭い人物。
→作業のルーティンを自分で決め、ミスを出さない自信がある
●主人公と新人の間に理不尽なやり取り。
→そのようなミスは出ない筈だと返す場面
●少人数の会社である為、主人公に一任されている。
→主人公は独自に研修プログラムを組み実行している
そして最後に
ショートショート作品は文字数が少なく短い物語ですが、一見何気なく書かれているように見える部分も、実は多くの理由を含んで構成が組まれ、計画的な展開に沿って文章は書かれています。
作品の作り方は書き手によって様々で、実にシンプルな書き方をされている場合もありますが、私は出来るだけ練り上げて作る様、心がけています。エンタテイメントは、人に楽しんでもらうための物です。だから私は出来る限り時間を費やし、その時のそのネタで、可能な限り最高の作品に仕上がる様、努力をするのです。
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