ショートショート作家 R・ヒラサワの〜Novelist's brain〜

小説の書き方ブログ。ショートショート作家 R・ヒラサワが自身の作品を用いて詳しく解説。新作随時公開中!

(㊗️50記事!/小説・ショーショートの書き方ブログ)コラム/原石の磨き方(後編)

原石の磨き方(後編)

おかげ様で、当ブログも50記事めとなりました。これからも読者の皆様に少しでも有益な記事をご提供出来るよう頑張りたいと思います。

本日もお越しいただきありがとうございます。

 

テーマを設けずに小説を書いた場合、そこには必ず原案となる事柄が存在します。

それは日常生活の中で、見たり聞いたりした事をヒントにしています。

それらのヒントから、いかにして思考を巡らせ、それを小説の原案へと昇華させるのか。今回はそのプロセスを公開します。

 

 

【CONTENTS】

 

 

 

『鞄』の場合

ショートショート『鞄』の全文はこちら↓↓↓

rhirasawanb.hatenablog.com

 

 

 

❶原案となるヒント

 
駅の構内で大金が入っていそうなジュラルミンケースを台車で運ぶ警備員。

「たった二人で大丈夫?」との疑問が湧く。

 

 

❷原案からの発想

 
●セキュリティの甘い状態での現金輸送

→(誰が運ぶのか)

 

●周囲から狙われる

→(主人公を狙うのは誰か)

 

●現金を守れるのか?

→(応戦できる条件)

 

 

 

❸発想からの展開

 

●一般人が大金を運ぶ(今回は黒い鞄)

(ジュラルミンケースは不自然)


●いかにも狙われそうな雰囲気

(体格がきゃしゃ等)


●現金を狙う人間が現れる

(恐喝など、強盗犯)


●現金を守る手段をもっている

(武器や武術など守り切れる何か)


●その手段とは何か

(武器は所有にて犯罪となる場合もあるので、ここでは武術など。応戦を可能にするバックグラウンド)


❹疑問と創作へのヒント

 
●一般人が大金を運ぶ為のシチュエーション

→(例えば警備員や多くの集金をする職や、それ相当の大金を持つ理由)


●狙いやすく思う理由は何か?

→(セキュリティの甘さ。単独行動。弱そうな外見)


●大金を運ぶのに防御の助けとなる外見を作らないのは何故か?

→(例えば故意に襲われようとしている。おとり捜査的な要素でも可)

 

❺展開からのオチへのヒント

 
●現金が入っていそうな黒い鞄を運ぶ男

●男はセキュリティが甘そうな外見

●金目の物を男から奪おうとする相手

●男には防御の策がある

●別の目的が男にはある

 

❻大まかなストーリー

●きゃしゃな男がいかにも大事そうに黒い鞄を抱えて、人気のない場所に向かう。それを見た強盗は男を狙うが反撃される。きゃしゃな男は逆に強盗を狙っていた。

 

 

 

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『白い壁』の場合

ショートショート『白い壁』の全文はこちら↓↓↓

rhirasawanb.hatenablog.com

 

 

 

❶原案となるヒント

 
小学生の時、女性の担任教師から聞いた怪談『白い壁』。誰も居ない筈なのに、感じる人の気配。やがて女性の声が聞こえ始め、調べると壁から人の骨が。

 


❷原案からの発想

●この怪談が実話だと考える

→(殺人と死体遺棄死体遺棄単独でも可)


●実話ならば殺人事件である

→(死体遺棄のみか、殺人も犯しているか)


●その死体を壁に隠した

→(事件発覚を逃れる為。腐敗等の問題は割愛)


●被害者は誰で加害者は誰か?

→(被害者は恋人女性で加害者は男性教師)


●犯罪を犯した動機は?

→(恋愛のもつれだが、追い詰められる状況)

 

❸発想からの展開

 ●殺人を犯す動機。追い詰められる理由

→(本命でない方の女性が妊娠する)


●三角関係であれば動機として強い

→(本命でない相手との別れたくなる理由)


●『妊娠』は追い詰める理由になる

→ (本命ではないほうの彼女が妊娠をしてしまう)


●女性側は、相手が本気だと信じている

→ (例えば結婚をほのめかしており、それに相当する想いを感じるような贈り物)


❹疑問と創作へのヒント


●教師の怪談から事件へ発展させる

→(怪談を聞いた生徒はその後トイレに行けなくなり、心に強い印象が残る。

 

●教師は何故リアルな怪談が出来たか?

→(結果的には犯人である為、リアルな話が出来る)

 

●教師と生徒の接点は何か?

→(生徒が住んでいるアパートに、教師も若いころ住んでいた)

 

❺展開からのオチへのヒント

 
●教師を加害者とする

●二人の女性と交際(三角関係)

●一人が妊娠

●妊娠した女性とは結婚出来ない

●怪談に実体験を交えてリアルに他人に語る

●他者からの事件発覚

●加害者を特定出来る証拠品

 

❻大まかなストーリー

●主人公は男性教師から聞かされた『白い壁』の怪談によってトイレに行けなくなる。主人公の住むアパートにも白い壁があり、不自然な厚みがあった。アパートは数年後に立ち退きとなったが、その時に壁の中から女性の人骨。かつてその部屋に住んでいたのは男性教師で、女性関係の問題から殺人を犯していた。

 

 

そして最後に


●基本的には『原案』から、想定される出来事を順番に箇条書きで。

●次に、それらを『どうやって』行うのか、具体的にイメージします。

●具体化された事によって疑問、つまり問題点(矛盾や必要条件の欠如)が明確になってきます。それらの解決案を用意します。

●上記の全てが準備出来たら、書ける所からで良いので、ストーリーを書いてゆきます。

●体裁を整える必要はありません。思いつくまま書くことが、先々のアイデアに繋がります。テンポがいい時は、筆を休めずどんどん書きましょう。

●もしも、物語に全く関係の無いキーワードやフレーズが浮かんだら、必ず何処か(出来ればアイデアメモ等)に書き留め、他の作品に生かしましょう。

 

書き続ける為のヒントNBの記事はこちら↓↓↓

rhirasawanb.hatenablog.com

 


次回は、ショートショート『Recipe』の創作プロセス公開です。

 

 

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シリーズ第二弾

 
シリーズ第三弾

 

 

 

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(初心者必見! 小説の書き方のルール) 番外編/投稿済み作品集(2)

投稿済み作品集(2)

 

この作品集は小説コンテストサイト『時空モノガタリ』様に投稿、掲載されていた物ですが、当ブログでも閲覧出来る様、掲載させて頂いているものです。

後に当ブログにて、創作プロセスを順次公開してゆきます。

 

【CONTENTS】

 

 


Recipe

 


「新しい彼女が出来たんだ。だから、これで君を含めて五人って事になるね」

 タクミの言葉を聞いてもコトネは全く反応しなかった。それは人数が六人や七人に増えたところで、同じだったに違いない。会話の流れとしてコトネは一応聞いてみる。

「今度は何がいい人なの?」

「運動神経だよ。水泳に陸上に球技全般。何でも出来るみたいだ」

「ふうん。そうなんだ」

 聞いたところでコトネの心境に何の変化もなかった。結局コトネが頑張るのは、料理だという事に何も変わりは無いのだ。

 タクミの一人目の彼女はモデルだった。つまり容姿のいい人である。二人目は有名な国立大学に通う頭のいい人で、三人目は声優をやってる声のいい人。四番目であるコトネは料理の腕がいい人で、新たに加わった五人目は運動神経がいい人のようだ。

 料理の腕がいいと言われているコトネは特に資格や免許はなく、世間で言う『我流』だったが、周囲の評判はとても良かった。

 タクミと知り合ったのも、それを知る友人に紹介された事がきっかけだった。

 タクミは、いま流行りのイケメンだ。長身でスポーツもでき、有名国立大学の出身で、在学中に興味を持った事で事業を始め、その経営も順調に進んでいるようだ。

 会社は無理に規模を拡大せず、私情が入らないよう古くからの知人は避けた人事で、着実な運営を目指しているそうだ。

 年齢も二十八歳と、モテる男性の全ての条件を満たしている様な人だった。

 タクミは女性側が話すのに戸惑ってしまう様なタイプではない。何とも気さくな雰囲気を持っている。コトネは自分がこんな人と知り合えたのは、今でも奇跡だと思っていた。

 タクミは仕事に関してとても慎重な所があるが、それは女性選びも同じだった。

 五人もいる彼女と言うのは、実際には友達の範囲の付き合いだ。しばらくその状態を続けて、やがてその中から真剣に付き合う相手を決めると言う。

 タクミが女性に求める条件は世間でよく聞くような内容だったのだが、実はモデルの彼女はテレビに出たり何処かの大会で優勝した訳でもなく、国立大学に通う彼女も成績がトップクラスという訳ではない。

 声優の彼女は最近になってやっとローカル局で流れるアニメの役をもらったが、脇役のため出番もかなり少なく、コトネの後に出来た彼女もスポーツ万能な様だが、過去にインターハイどころか、県大会にすら出た事が無いレベルだった。

 全ての基準はタクミの中にあった。何かの分野で人よりも優れているが、他の分野では逆に人よりも苦手な事が多い。要はそんな大きなギャップの持ち主に心惹かれるのだそうだ。

 それぞれの彼女達は、自身の才能を磨くべく日々努力を重ねていた。コトネも同様に料理の腕を磨き、デートの度に手料理を振る舞った。

 タクミはそれぞれの彼女に対して、特別何かを求める事は無かった。何処を見てどう判断しているのかは、誰にも分からなかった。

 今のところ五人はタクミと『友達』の様な関係だから、何処かに遊びに行ったり映画を観たり食事をして、比較的早い時間帯に家に帰る。それ以上の事は何もない。

 コトネはタクミの事が好きでたまらなかった。何とか本当の彼女になりたかった。だから、他の彼女達に負ける訳にはいかない。コトネは『我流』の料理から脱却しようと考えた。

 コトネは数冊のレシピ本を購入して、更に料理の腕を磨く事にした。本の選択はネットの情報を参考にした。

 その後、何度かタクミに料理を振る舞ってみたが、反応は意外なものだった。

「最近の君の料理は……。なんだろう、ちょっと味が落ちた様な気がするよ」

 タクミの言葉にコトネは大きなショックを受けた。他の彼女達に負けじと努力したのに。何がいけないのか、何が足りないのか?

 そんな筈は無い。レシピ通りの材料と時間、調味料だって分量通りだ。この本はネットでの評価が一番高い方だったし、いいコメントも多数寄せられていた。本の選択に間違いは無かった筈だ。

 コトネはこのレシピ本で作った中の、自信作ばかりを振る舞っていた。

 コトネの気持ちは一気に沈み込んだ。しばらくの間、何も出来なくなってしまった。このままでは他の彼女達に負けてしまう。焦る気持ちだけが心の中で膨らんでいった。

 そしてその気持ちは、ついに諦めへと変化して、コトネは我流脱却を辞めてしまった。

 数年が経った。コトネは今、タクミと生活を共にしている。

 自然体に戻ったコトネは、ただタクミに美味しい物を食べて欲しい想いだけで料理を作った。そこにレシピは必要なかった。自分の舌の感覚だけを頼りに。

 タクミいわく、他の彼女達は自己を高めようと、無理をするあまり自分を見失い、その中で我を貫くコトネに強く惹かれたそうだ。

 コトネは思った。レシピのようなものは本来なくてもいいのだ。料理にも、そして恋愛にも。

 

 

 

 

 

 


マニュアル

 


 以下の手順は大まかに書かれています。状況に応じて各自、臨機応変にアレンジして下さい。

 


●素材をよく見て、どう料理するべきか熟考して下さい。

●切り口はどういう感じがいいか? 素材によって変えます。

●次にいためてみて下さい。軟化するかもしれません。

●次に十分間ぐらい置いてみます。

●見た目が赤くなったり、青くなったりした場合は良くありません。元に戻す方法を考えましょう。

●焼いたり、水に浸けたり、何かを刺したりするのは良くありません。

●その後もう一度、しんなりするまでいためます。

●更に十分間ぐらい置いてみます。

●適当なところで切りましょう。

 


「まるで料理のレシピだな」

 男はメモを見て思った。闇サイトで見つけた、金融業者の取り立てアルバイト。

 警察の捜査が入った時に、都合の悪い資料は出来るだけ無いようにする為、隠語で書かれてあるそうだ。

「意味は分からないでもないが……」

 路肩に停めた車を降り、男は初仕事となるアパートへと向かった。

 

 

 

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スミレ先輩

 

 

 

 入社二年目のカンナは、今でもスミレ先輩からアドバイスを受ける事が多い。

「ねえカンナちゃん。裁断機で紙を切るときは、一枚目を半分に折って印を付けておくと綺麗に切れるわよ」

「はい、スミレ先輩」

 スミレ先輩は入社八年目の事務員だが、男性並みに機械類に詳しい。女子力高めのナヨナヨした事務員を嫌い、男性社員からも一目置かれる存在だった。

「男の人って、結構このあたり気にする人が多いのよ」

「え、そうなんですか? 私、今まで適当にやってましたけど、何も言われた事なかったです」

「青いわねえ、貴方も。みんな何も言わないだけで、ちゃんとそういうとこ見てて、この娘は気がきくとかきかないとか、男達だけで言い合ってるもんよ」

「そんなモンですか?」

「そうよ。男はそうやって、女を勝手に値踏みとかしてるわけ」

「ヤダ、こわい!」

 カンナは思わず、手にしていた書類の束を放してしまう。

「危な!」

 スミレ先輩は素早く落ちかけた書類に手を伸ばし、見事にそれを食い止める。

「さすが、スミレ先輩!」

 運動神経の良さは群を抜き、殆どの仕事は社内の誰よりも早かった。

「ダメよ。せっかく順番通りに並べてある書類なんだから、落としたりしたら台無しよ」

「す、すみません」

 傍に居たのがスミレ先輩だったからこそ出来た業で、これが他の誰かだったら、書類は再び振り分け作業からやり直しになっただろう。スミレ先輩は至る所で会社に貢献していると思った。

「こんな話ぐらいで動揺しちゃ駄目よ。それはそうと、いま彼氏いないんだっけ?」

「はい。見込みも今のところ……ゼロです」

 スミレ先輩は同性から見ても、とても魅力的な人だった。誰もが認めるほどの美人で、スラリと背が高くスタイルも抜群だ。手入れが行き届いた長い髪は、ツヤツヤと常に天使の輪が光る。

「どれぐらい空いてるの?」

「ア・イ・テ・ル?」

「ああ、期間の話よ。前の彼氏と別れて、どれぐらいフリーか聞いてるの」

「前って、その……ずっと居ません」

「え? 貴方もう二十四でしょ。誰とも付き合った事無いわけ? 私はずっと居るもんだと思ってたから、聞いたりしなかったんだけど……」

「はい、出会いが無かったんです」

「出会い? 出会いなんて自分でつくるモンよ! 気になってる男とか居ないわけ?」

「居なくはないですけど……」

「誰よ、誰なの?」

「営業部のフジイ君です」

「フジイ君って……。ヤダ、歳下じゃない」

「ダメですか?」

「ダメじゃないけど……。結構イケメンじゃない!」

「そうなんです。私、ルックス重視する方なんで!」

「ふーん、そうなんだ」

「あ、でもスミレ先輩もそうですよね。歴代の彼氏ってイケメン揃いじゃないですか」

 カンナは入社以来、スミレ先輩の彼氏だった相手を三人知っている。そして、みんな決まって三ヶ月以内に別れているのだ。

「ま、まあね。でもカンナちゃん。あなたも男の人と付き合ったら、ルックスなんかに惑わされず、早めに相手の事ちゃんと知るべきよ」

「はい、わかりました」

 経験豊富で頼りになるスミレ先輩の言葉には重みがある。相当レベルの高い相手でなければスミレ先輩とは釣り合わない。きっと厳しい判断基準をクリア出来なかったのだろう。

 しかし、カンナの目には、スミレ先輩の歴代の彼氏に、それらしい欠点は見当たらない。カンナは思い切って、その事を聞いてみる事にした。

「でも私、ずっと不思議に思ってる事があって」

「なあに?」

「スミレ先輩の彼氏ってイケメンなだけじゃなくって、仕事も出来て優しそうな人ばかりだったじゃないですか」

「そうねえ……」

「私が入社した時に付き合ってた、戦車みたいに頑丈そうな、大きな車に乗ってた人は?」

「彼は動物がねえ……」

 あの人はワイルドな彼氏だった。きっと車と同じで、大きなトカゲでも飼っていたのだろう。虫は平気なスミレ先輩も、爬虫類は苦手だと言っていたから。

「じゃあ、その次のスラッと背が高かったIT企業に勤めていた人は?」

「彼ねえ、実は『乙女』だったのよ……」

「ええ!」

 随分ソフトな感じの人だとは思っていたが、まさか『オネエ』だったとは……。

「じゃあ先月別れた、超一流企業の管理職の人は?」

「彼は名前の問題があって……」

「な、なまえって、ひょっとして……」

 その彼は今までの彼氏たちより十歳ほど年齢が上の人で、落ち着いた雰囲気があり、経済的にも安定してそうだった。名前の事を問題にする様なら、真剣に結婚まで考えていたのかもしれない。カンナはちょっと悪い事を聞いてしまったと思った。

 数日後、カンナは同期の事務員から、スミレ先輩に関する、ある話を聞いた。

動物占いに星占い、それに姓名判断。相手の人と相性が悪いって分かると、スミレ先輩って怖くなってすぐに別れちゃうそうよ」

 

創作が上手く進まない……。そんな時、『もしも……』と、あてはめるだけ!

先ずは『試し読み』をどうぞ↓↓↓

 

 

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(解説から学ぶ小説書き方ブログ)今回の作品/帰れない、コラム/原石の磨き方

f:id:RHirasawa:20191018145417j:image

 

帰れない

実家を飛び出し都会で様々な仕事に就く中、天職と感じた夜の仕事は既に三年。自分に好意を持ってくれた男性客とは、恋人に近い関係だった。彼は真面目で一途な人で、自分とは不釣り合いではないかと感じる中、両親に会いたいと彼に言われるが……。

 

ショートショート『帰れない』の全文はこちら↓↓↓

rhirasawanb.hatenablog.com

 

【CONTENTS】

 

 

テーマからの発想

 

今回のテーマは『実家』です。

実家と言えば、やはり田舎のイメージがあり、ゆっく帰省って感じの雰囲気でしょうか。

最近では、大型連休でもあまり実家に帰らない人も多い様で、それは『帰らない』のか『帰れない』のか、どっちなんだろうと言う素朴な疑問が湧きました。今回の創作の起点になっています。

 

 

発想からのキーワード選出

  

実家、両親、田舎、帰省、連休、帰れない、帰りたい

 

 

POINT1:タイトル

  

タイトルは、『帰れない』です。

 

実家に帰る方向のキーワードなどが多く浮かんだ中、あえて逆の方を選びました。今回の創作は『タイトル』から始まるパターンで、私の場合よくある事です。タイトルから徐々にイメージを膨らませる訳ですね。

『帰らない』のではなく『帰れない』。

要するに本人は帰る意思がある訳で、何か障害があるから帰れない。では、その『障害』とは一体何なのか?

この様な形で創作は進んでゆくのです。

 

 

POINT2:書き出し


「両親はもう居ないの」

 初めてケンイチに会った時、ミサキはそう話した。

 本当の事は客であるケンイチには勿論の事、周囲の誰にも伝えていない。夜の世界に生きていれば不思議な事ではなかった。

 

 

夜の仕事をしているミサキは、ケンイチに嘘をついています。この時点で、その理由は分かりません。他の文面でケンイチと会うのは、この時だけでない事も分かりますね。

出来る限り、書き出しで多くの情報を伝えましょう。

  


POINT3:ユーモア

  

今回は、あえてユーモア的な部分は入れていません。これは最後のオチに関係があるからです。既に全文を読まれた方はお分かりだと思いますが、オチに至るまで、どれだけシリアスに物語を進めるかも今回のポイントになります。


ここである程度お話すると、主人公が両親と交際中の男性を会わせる事をためらっているのは、過去に自分が荒れた生活をしていた事実を知られたくない、と言うのが理由です。しかし、オチはそうなりません。あくまで作中はオチに至るまで、ミスリードしています。

 

今は落ち着いているけど、過去に非行に走っていた人の場合、男性なら武勇伝にしたい人もいるでしょうが、主人公は違います。話したくないのです。まして、相手が真面目で一途な人だと尚の事ですよね。今回のユーモア抜きは、オチの効果をより高める為の仕掛けなのです。

 


POINT4:前半のストーリー

 

若い頃、両親と不仲になった主人公は田舎町を飛び出し、都会で夜の仕事を選んだ。そこで出会った男性客は、主人公を目当てに店に通い始める。

 


主人公は熱心に通って来る男性客と、食事を共にするなど、次第に親密になるものの、深い関係にまでは至っていない。しかし、相手は本気で結婚を考えており、やがて両親に会う事を希望する。

 

 

POINT5:展開〜オチ

  

主人公は男性客に好意はあるものの、過去の生活を知られる事に不安があり、両親に会わせる事について悩む。


 

主人公は性転換をした元男性で、相手はその事実をまだ知らず、今の関係性を保ちたい為、全てが知れてしまう実家へ連れて行く事をやめようと決める。

 

 

  

総合的なポイント

 

この作品はオチとそれまでの流れに、どれだけ落差をつけるかという部分に重点を置きました。作中ユーモア的な部分を作らない等もですが、オチに至るまでのミスリードは、

『主人公が非行に走り荒れた生活をしていて、一度は同じ様な環境で育った相手と暮らしたが、結局上手くいかなかった。次に現れた相手は、良い人だが真面目過ぎて、こんな自分と上手く暮らせるかと言う葛藤』

なのです。そこから一気にオチへ。これがショートショートの醍醐味なんですよね。

 

 

 

コラム/原石の磨き方

 

小説に関わらず、何かを書く時の『ネタ』らしきものに出会うと、書き手としてはワクワクするものですよね。しかし、それが明らかに『ネタ』自体であればいいのですが、『カケラ』であったり『原石』であったりと、その状態は様々です。

『カケラ』から『ネタ』にするには少々時間が必要だったり、また別のパーツの組み合わせを考えたりと、直接的に進めるのが難しい場合が多くあります。

今回は比較的『ネタ』に近い『原石』、その磨き方についてのお話です。

 


『鞄』の場合

ショートショート『鞄』の全文はこちら↓↓↓

rhirasawanb.hatenablog.com

ある日、私は駅の構内で二人組の警備会社の人を見かけました。一人がジュラルミンケースを積んだ台車を押し、もう一人が特殊警棒を手に、鋭い眼差しで周囲を警戒しながら、おそらく現金を運んでいたのだと思います。それを見た私の正直な感想なのですが、

「二人で大丈夫?」

です。盗れそうなんですよね……。盗りませんけど。

 

 

『白い壁』の場合

ショートショート『白い壁』の全文はこちら↓↓↓

rhirasawanb.hatenablog.com

小学生の頃、私は少し授業が進んだからと、女性の担任教師から怪談めいた話を聞かされました。タイトルは今回の物語同様、『白い壁』でした。

部屋の中に居ると、いつも人の気配を感じる。塗り替えから、あまり年数が経っていないであろう、借家の壁は白くて綺麗だ。数日経つと気配だけではなく、夜に女性のはすすり泣く声まで聞こえてくる。

 

そんな話でした。最後に部屋の壁を調べると、人骨が出てくる。その時、合わせて『人柱』の話も聞いたのです。

 

私が当時住んでいた家にも、トイレにたどり着くまで白い壁があり、私はこの話のおかげで、長い間トイレに行くのを苦労しました。この経験は、ずいぶんと長い期間をかけて私の中でアレンジされ、新しい物語へと生まれ変わったのです。

 

二つの話の元になった『原石』。これらがどの様に磨かれ、そして新しい物語になったのか?

さらに詳しい方法については、 次回『原石の磨き方(後編)』でお話したいと思います。 

 

 

 

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シリーズ第二弾
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(ユーモアのある小説の書き方)コラム/ユーモアの構造(後編)

ユーモアの構造(後編)

 


【CONTENTS】

   


作品例(1)/視点

 

作品例(視点)の全文はこちら↓↓↓

rhirasawanb.hatenablog.com

 

「あのー。神様視点って分かります?」

 出版社の編集長は、少々困った表情で私に問いかけた。

「はあ、何となく」と私は答えたが、正直なところあまり自信が無かった。

この問いに至るまでに、やたらと専門用語を列挙していた編集長は、きっと私を説き伏せたいに違いない。

 

物語の冒頭で、主人公と編集長の関係性を示しています。

ユーモアを含みながら、編集長が主人公に抱いている感情がどのようなものかを表現しています。

 

『やたらと専門用語を列挙』

編集長は主人公に対し『苛立ち』があり、主人公もそれを感じとっています。それらの関係性を、この一文で表現しています。

 

 

 

「あまり理解できてないようだから言いますけど、神様視点ってのは、主人公が見たり聞いたりしてない第三者の視点から、その内面を描いたりする事で、要するに『神様』みたいに何でもお見通しの視点から物語を書くって言う意味ですよ」

「はあ……」

「貴方が持ち込んだ原稿の中身は、全体的にその傾向がありますね。私は少し読んだだけで、そういうのが全部わかるんですよ」

 編集長は『小説の事なら何でもお見通し』の視点から言葉を放った。

 

小説内における言葉の繰り返し。これもユーモアの一つの形です。ただし、単に繰り返すのではなく、同じ言葉で別の意味を持たせた方がいいでしょう。

 

 

 『何でもお見通しの視点』

 【編集長】

小説の『視点』について、神様が見ているかの如く何でも、そして何処からでも見える状態を説明するため。

 
【主人公】

編集長の言葉を受けて、『あなたには何でも分かると言うのですか?』皮肉った意味での言葉で、これもある意味で伏線なのです。オチで主人公が誰だか分かった時、この言葉の意味はもっと強いものになりますよね。

 

 

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作品例(2)/鍋奉行

 

作品例(鍋奉行)の全文はこちら↓↓↓

rhirasawanb.hatenablog.com

 

 

「あなたって典型的な鍋奉行よね」

 鍋の向こう側から、溜め息混じりに妻の声が聞こえた。俺が顔を上げると、こちらをじっと見たまま妙な角度で箸を止めている。

「肉が先だの野菜がどうだのって、会社の中でもそんな風にちゃんと段取り考えて、誰かに指示とか出したりしてるわけ?」

「いいや……。転職したての新人社員だよ。そんな事まだまだ出来る訳ないじゃないか」

 

●溜め息混じりに

 夫に対する『うんざり』した気持ち

 

●妙な角度で箸を止めている

不満を言う事に集中している為、箸を持つ手から意識が遠のいている。

 

作品の冒頭から、夫婦の関係がそれほど良くないことを示しています。

ただ、こういった状況説明をする場合、それぞれの登場人物の性格的なものを表しながら、尚且つそこにユーモアを加える。そういった手法を使っています。


前編でも軽く触れましたが、小説内で状況説明をする場合、文章があまり硬くなりすぎると、読者の方を飽きさせてしまう場合があります。そういったことを避ける目的もここにはあります。

 

 

 「四十五歳だよ」

 俺は大事なトングをテーブルに対して真っ直ぐ揃えながら答えた。

 

 ここのくだりはユーモアであり、主人公の性格も表しています。主人公は、年齢の割には少し幼い部分があり、なおかつ神経質な性格であると言うことを表しています。

 

 

そして最後に

 

小説内でのユーモアは、笑いを誘うのはベースの役割ですが、それ以上に別の役割を与えたり、文章のリズムや、読者の方が読む時の心理にまで作用させる事が可能です。

 

著名な作家の方々は、これらを実に自然な状態で作中に盛り込んでいます。既に読んだ事のある小説も、この様な視点で再されると、新たな発見があるのではないかと思います。一度お試しを。

 


次回は、ショートショート『帰れない』の創作プロセス公開です。

 

 

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(解説から学ぶ小説書き方ブログ)今回の作品/挨拶の品、コラム/ユーモアの構造(前編)

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挨拶の品

半年ほど空いていたマンションの隣部屋に、綺麗な女性が引っ越してきた。近頃では珍しくなった『挨拶の品』を持って。色んな場面で丁寧な対応をとってくる女性ではあったのだが……。

 

ショートショート『挨拶の品』の全文はこちら↓↓↓

rhirasawanb.hatenablog.com


【CONTENTS】

 

  


テーマからの発想

 

今回のテーマは前回の『GIFT』と同じ『贈り物』です。そう、同じテーマに投稿した二作品目なのですね。

贈り物と言えば、いわゆる贈答品であるギフト、誕生日プレゼント、引越しの挨拶などが浮かびました。 

 


 

発想からのキーワード選出

 

贈り物、贈答品、ギフト、誕生日プレゼント、引越しの挨拶

 

 

POINT1:タイトル

  

タイトルは、『挨拶の品』です。

物語の展開からすると、他のタイトルも考えられますが、隣部屋の女性は常に主人公とは一定の距離を置いている、つまり初対面の状態をキープしたままラストまで進む物語なので、このタイトルにしました。

 

 

POINT2:書き出し


半年ほど空いていた隣の部屋に、新しい住人がやって来たのは、日曜の午後の事だった。久々に私の部屋のチャイムが鳴ったのだ。


● 隣部屋は半年程度空いていた

● 新しい住人がやって来た

● 日曜日の午後である

● 主人公宅への来客は久々である

 

上記の四点についての情報がここで分かります。『いつ』「何処で』『誰が』『何を』『どうした』か? 特別変わった展開の物語でない限り、この様に冒頭で明らかにした方が良いと思います。

 

 

POINT3:ユーモア

  

しかし、内心女性の訪問を期待している部分が少しあった。綺麗な人に会えるのは嬉しい事だ。

 

女性の部屋から物音がして、お詫びの品を持って来た後の話ですね。

主人公は、その品が高価すぎると思いつつも、女性の訪問を期待しています。この少し矛盾した考え、つまりは小さな下心がユーモアであり、後のオチに対する伏線にもなっています。

 
今回で言うところの伏線は、直接ではなく間接的です。主人公に下心があったからこそ、オチでの主人公の行動が『通報』ではなく『傍観』なのです。

 
お金も受け取ったままになっています。もはや『傍観』の立場も取れないかもしれません。先々主人公が何かをするかは、読者の方によりとしました。

 

 

 

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POINT4:前半のストーリー

 

主人公が住むマンションの隣の部屋に、若くて綺麗な女性が引っ越して来て、挨拶の品を届けに来る。

 

 

その後主人公は、マンションの廊下で女性とすれ違うが、恋人らしき男性と一緒だった。

後日、夜中に喧嘩らしき物音が聞こえ、翌日女性がお詫びの品を持って現れる。

 

 

POINT5:展開〜オチ

  

さらに過日、前回よりも更に大きな物音がするが、女性は現れない。

 

 

次の日になってから、お詫びの品を持って女性が現れた。今度はその品の中に札束まであった。思案の末、主人公はそのお金の意味を悟るが、女性に好意を抱いていた為、そのまま見逃す。

 

 

総合的なポイント

 

主人公は女性とのやりとりを、当初淡々としていましたが、後に女性への好意を抱き、訪問を期待します。


物語の中で同様の行為が繰り返され、徐々にそれがエスカレートする展開は、ショートショートでは定番の手法ですが、今回はそれに伴って主人公の女性に対する好意も増幅させています。それによってオチが上手く成立する訳です。


女性の行動には明らかに犯罪の匂いがします。しかし、主人公は通報しません。女性への好意があるのは勿論ですが、女性の恋人も居ない方が都合も良く、更にお金も受け取っています。


主人公は傍観者となり、あわよくば今後、女性との距離を縮めたいと考えているかもしれません。この先の展開は、読者の方に委ねる形を今回はとっています。

 

 

コラム/ユーモアの構造(前編)

 

小説におけるユーモアとは、単に『思わず吹き出す』様なものだけではありません。

物語の構成や展開、そしてセリフの言い回しなど、作品として『なるほど』と関心する様な事柄も含まれます。

 

【作品例:(ハロウィンの夜)】

ハロウィンの夜全文はこちら↓↓↓

rhirasawanb.hatenablog.com

 

「運んだのは担架で?」

「いいえ。ストレッチャーです」

「ストレッチャーだって? 君たちはそんなものまで持っているのか!」

 

ハロウィンの仮装が派手になり、救急隊は本物の様にストレッチャーまで用意していると言うくだりです。

やり過ぎ感のある行為はユーモアであり、これも周囲の人が事件に気付けなかった要因でもあります。限られた文字数内での物語ですから、例えばそれが『伏線』であったりと、複数の役割を持たせた方が、物語に厚みが出ます。

 

 

「仮装? いやいや、君が仮装してない事ぐらい見れば分かるさ。普通のスーツ姿なんだから、会社帰りのサラリーマンだろう?」

「違います。仮装ですよ、仮装! 僕は普段の仕事が現場ばかりだから、いつも作業服なんです。通勤だって普段着だから、頑張ってスーツ着て来たのに……」

「悪い、悪い。君のも立派な仮装だよ。だって、そのネクタイがよく合ってるし。確かにスーツ姿ってカッコいいもんな。ちょっと窮屈な時もあるけど、気持ちが引き締まるし。それに……ほら、君はちゃんと私を上手く騙せたじゃないか。本物のサラリーマンかと思ったよ」

 

こちらは逆に、ユーモアのみのくだりです。

「あれ? 文字数を有効に使うんじゃなかったの?」そんな疑問の声が聞こえてきそうです。

 

実はこの部分はユーモアのみで、しかも文字数も多いですよね。これにはちゃんとした狙いがあります。決して文字の無駄遣いはしません。

このくだりの前後を読んで頂くと分かるのですが、この物語は刑事と目撃者の二人のやり取りで展開します。

 

延々と状況説明が続いたのでは、読者の方が飽きてしまう訳ですね。それを回避する為の方法として、ユーモアを挟んだ訳です。

緊張と緩和。物語にとってリズムは大事です。短いお話でも飽きる事はありますので、出来る限り最後まで楽しめる工夫をした方がいいでしょう。

 

さらに詳しい方法については、 次回『ユーモアの構造(後編)』でお話したいと思います。 

 

 

 

ショートショートの書き方』を、作家の視点で詳しく『超解説』‼

 

 

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(『浮気』がテーマの作品例)新作ショートショート(1)/美人妻の憂鬱

新作ショートショート(1)/テーマ(浮気)

 

 

 

美人妻の憂鬱

 

新婚生活真っ只中の二人は、互いの事をとても愛し合い、幸せな日々を過ごしていた。

 夫は真面目で地味な性格、あまり女性にもてるタイプではない。一方の妻は美人で、明るく社交的な性格は周りの人々、特に男性達にはとても人気があった。

「奥さん綺麗でいいよな」

 友人は決まってそう言うが、その言葉は夫をとても不安にさせた。

 街に出ると、すれ違う男達が振り返って妻を見る。それを感じて妻は軽い笑みを浮かべる。

「大丈夫、浮気なんてしないわよ」

 不安げな表情の夫を気遣って妻はそう言うが、それを鎮める効果は無かった。

「でも俺は心配なんだよ……」

 二人は同じやり取りを、既に何度も繰り返していた。

 夫は常に妻の事を心配していた。社交的な妻は同窓会だの、飲み会だのと言っては外に出かける事が多く、時には見知らぬ男と二人きりで帰ってくる事もあった。

「家の方向が同じだって言うから、車で送ってもらったの。心配しないで、私は浮気なんて全く興味ないから」

 妻は確かに美しい。しかし、それは心の底から喜べる生活ではなかった。尽きない夫の不安を妻は上手に交わし、その結果夫婦仲は悪くなかった。

 やがて二人の間に子供が出来た。そう、妻が妊娠したのである。

 新しい生命は妻の体内で順調に成長し、やがて出産の日を迎える事になった。

「元気な男の子ですよ」

 産後しばらく日が経つと、子供の顔立ちが少し分かってきた。それは夫の心配事をピークに押し上げる要因となった。

「俺に似てない……」

 夫は先の言葉が出なかった。

「何言ってるの? まだ生まれたばかりよ。そのうちあなたに似てくるわ」

 確かに妻が言う通りだ。先々似てくるのかもしれない。日々の不安が重なり合って、何でも疑うのが癖になってしまっている。

 夫は自分に似る事を願いながら、過ぎ行く日々を平穏に暮らす努力をした。

 数ヶ月後、更に息子の顔立ちはハッキリとしてきた。夫の中に再び疑念が湧き始めた。

「でもさあ、やっぱり俺に似てないよね……」

 いつにも増して不安げに話す夫に対し、妻は自信を持って答える。

「そうかしら? キリっとした一重まぶたはあなた譲りだし、高い鼻だってそっくりでカッコいいじゃない」

 カッコいいかどうかはこの際あまり問題ではなかった。

 妻が産んだ以上、母親は妻である事は間違いない。問題なのは父親の方で、夫には自分がそうなのだと言い切る自信がなかった。妻の浮気に対する疑念は膨らむ一方で、夫はもう限界だった。

「おまえ、やっぱり浮気してただろ!」

「そんな訳ないでしょ!」

「じゃあ一体、誰の子なんだよ。俺の子だったら、もっと俺に似るはずだろ!」

「なに言ってんのよ! 男の子だからって必ず父親に似るとは限らないでしょ。母親に似る事だって多いんだから、何もおかしくないじゃない!」

「母親に似るだって? おまえになんて、もっと似てないじゃないか!」

「……」

 妻はそれ以上、何も言えなかった。息子の顔が似ていない理由が、浮気と言うのは夫のとんでもない勘違いであり、ましてや息子の顔が整形前の自分にそっくりだと言う事は……。

 

 

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時空モノガタリ投稿作品 カテゴリーの記事一覧 - R・ヒラサワの〜Novelist's brain〜

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(短編小説の色々なカタチ!)コラム/ショートショートのタイプ(後編)

ショートショートのタイプ(後編)

ショートショートのタイプ分けですが、今回は主に『物語を展開する人数』に対するものになります。

『応用』として小説以外、『ブログ』等の記事を想定した事柄についても書いてみました。

 

 

【CONTENTS】

 

一人で展開するタイプ

 

主人公の行動によって展開します。描写範囲が限定される場合があり、構成を工夫する必要があります。

作品例(あとがき)全文はこちら↓↓↓

rhirasawanb.hatenablog.com

 

【構成】

場面転換がない場合は、主人公は移動せずに物語を進める事も可能です。

ただしその場合、他の登場人物の動きは、主人公と接触した人物からの伝聞と言う形になる為、インパクトが弱くなる可能性があります。

 


【応用】

通常、ブログはこのタイプが最も多いと思います。ブロガーさんが元となる記事について色々と情報を展開していく訳です。

 
ブログの書き方などで、記事についての展開方法などがよく書かれていますが、これは小説の起承転結とよく似ているのではないでしょうか。

 
文章中にこの様な展開がある事によって、同じ内容でも読まれやすい記事と、読まれにくい記事に分かれてしまう訳ですね。

 

 


二人の掛け合いが主なタイプ

 
主人公を含む主要の二人によって展開します。事情を知る人と、それを聞く人に分かれて物語が進行します。

作品例(五点着地)全文はこちら↓↓↓

rhirasawanb.hatenablog.com


【構成】

多くの場合、物語の中身を知っている人物が、それを知らない人物に対して説明するような展開になります。

これは、必ず一方が多く知っている必要はなく、双方が同じ位の割合で相手に情報を伝え合っても問題ありません。

 
伏線の張り方としては、一人が間違った情報を信じて行動する事で、自然な流れが生まれてミスリードが確立される訳です。

 


【応用】


吹き出しなどを使って、二人が会話をしながら記事を進めているタイプがこれにあたると思います。この場合、一人目が教える側で、二人目が教わる側と言うような役割で、記事が進むのが一般的ではないでしょうか。

 
この場合、実際に記事を書いているブロガーさんは、そのネタについて全てを知っている訳ですから、いかに教わる側の立場で書けるかがポイントになると思います。

 

 

 

 

 


三人以上で展開するタイプ

 

主人公を含む主要の二人以上の人物が登場します。広範囲の展開が可能な分、各人物の行動を理解しやすく書かなければ、混乱を招く可能性があります。

作品例(GIFT)全文はこちら↓↓↓

rhirasawanb.hatenablog.com

 

【構成】

主要となる人物を、それぞれ展開に必要な場所に配置し、それを少しずつ伝えていくと言う形での展開が可能です。

 
物語の展開は比較的書きやすいタイプです。ただし、登場人物が多いので、誰が何をしているのか理解しやすく書く工夫が必要です。文中の不要な部分はカットして、シンプルな表現にする方が良いでしょう。

 
各人物を区別しやすい様、名前は音の響きや文字数に変化をつけると良いと思います。

 

名前の付け方に関する記事はこちら↓↓↓

rhirasawanb.hatenablog.com

 

【応用】

 
例えば旅行の記事などで、複数の人について書く場合がこのタイプになると思います。可能であれば、それぞれの人達の好みや習慣、その他の行動等がバラバラな方が面白いと思います。

 
周囲の人から理解されない様な行動をとる人が居て、よくよく本人に話を聞くと『ああ、なるほど!』となる様なエピソードがあれば、面白いのではないでしょうか。

 

そして最後に

 

小説における書き方等で、特に『起承転結』は全ての書き物に通じる部分があると思います。

特に意識せず書いてしまうと、文章はリズムを失い、読む人の集中力にも影響すると思います。頑張って書いた文章なので、多くの人に読んでもらいたいですよね。

 

 

次回は、ショートショート『挨拶の品』の創作プロセス公開です。

 

 

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