ショートショート作家 R・ヒラサワの〜Novelist's brain〜

小説の書き方ブログ。ショートショート作家 R・ヒラサワが自身の作品を用いて詳しく解説。新作随時公開中!

(どんでん返しのある小説の結末)コラム/ラストの締めくくり(後編)

ラストの締めくくり(後編)

 

小説は書き出しが大事なのは勿論ですが、ラストの締めくくりはそれ以上に大事です。その物語を完結させ、読後の印象を大きく左右する重要な役割を持っています。

ショートショート作品は、特に色々なスタイルで書けるタイプの小説である為、ラストのスタイルも様々です。今回は比較的オーソドックスな三種のタイプについてご説明したいと思います。

 

【CONTENTS】

 

 

オチが緩やかなスタイル

 

このスタイルは『転句』あたりで既に一応のオチが明らかになっています。

作品例『あなろぐ』の全文はこちら↓↓↓

rhirasawanb.hatenablog.com

 


ヤマキ社長から電話があってな。今朝の注文は電話をかけ間違えたそうだ」

「えっ、ウソでしょ!」

 いつも完璧なヤマキ社長がそんなミスをするなんて……。

 
★この間に、怠慢な後輩が主人公の代わりに雑用を済ませておいたくだり。


 結局カナコが抜けた穴は誰かがちゃんと埋めてくれていた。会社には最短時間で戻れるよう手配もされていた。きっちり何かを決めてしまっては、こうはいかなかったかもしれない。

 ヤマキ社長の伝言をもう一度再生してみる。

 カナコは思った。『あなろぐ』も、ちょっといいのかもしれないと。

 


この物語は、オチに複数の人が関わっています。主人公は社内を一人で動き回り、周囲に頼れる人間が居ないと嘆いていたのですが、実は皆が協力し合って成り立っていた事に気付く、といった内容です。

その結果『協力されていた』事実を順番に明らかにする必要がある為、この様な形になった訳です。このパターンの物語には、もう一度ラストに『締めくくり』が必要になります。

 


カナコは思った。『あなろぐ』も、ちょっといいのかもしれないと。


この文章に対する前振りは、こちらです。↓↓↓

ヤマキ社長の伝言をもう一度再生してみる。 

 


主人公は、皆に協力されていた事実を知ったのですが、直ぐに受け入れる事が出来ず、自分を納得させる為に自分が尊敬していた人でも、間違いを犯す事実を再確認して、締めくくりへと向かいます。

人が想定外の事実を受け入れる場合、直ぐに気持ちを切り替えられない事も多いと思います。今回はリアリティを持たせる意味も含め、この文章を入れています。

 

 

 

ラストに落とすスタイル

 
このスタイルは、ラストの一行から三行程度のあたりで、一気に落とすタイプです。

作品例『超予測変換』の全文はこちら↓↓↓

rhirasawanb.hatenablog.com


 まるでこの部屋の事の様だったが、鍵はいつもかけてある。

 でも待てよ。今日はコンテストの締切が近く、急いで書き始めたから鍵は......。

 次の瞬間、リアルに私の部屋のドアが開き、背中を激しい痛みが襲った。

 

この物語は、ラストの一行でストンと落とすタイプです。

この行に至るギリギリまで、物語をミスリードの方向に進めています。要はスマートフォンのアプリによって半分自動的に書かれている、小説世界の出来事ですね。

 

最終的にはそれが、現実世界とリンクして、『実はこれから起こる事件の予測であった』、と言うのがこのオチになります。

実際のところ、どの辺りでオチに気付いたかは読者の方によると思いますが、作者の意図としては、ラストの直前までは気付かずに……が、理想なんですがね。

 

 

kindle unlimited1日に1000頁以上読まれた人気の指南書です。

 

 

オチの後に余韻があるスタイル

 

このスタイルは『緩やか』なスタイルに似ていますが、一応のオチとしてはストンと一度落とすタイプです。丁度、上記の二つを組み合わせた様な感じになります。

作品例『カメラがある時』の全文はこちら↓↓↓

rhirasawanb.hatenablog.com

 

 貴方よくそこまで知ってますねって?

そりゃそうですよ。だって、喧嘩の相手は、この私だったんだから。

 あれ? もう行っちゃうんですか? ゆっくりしていけばいいのに。

 私達がこの場所で出会ったのも何かのご縁ですから、どうです? 一緒に記念写真でも撮りませんか?

今、ここにカメラありますから。 

 

この物語は、最終行に行くまでの段階で、一度ネタバラシをしています。要は人事件を語っている本人が犯人であると言う事です。ネタバラシであるオチの後に余韻を持たせたのは、この犯人の異常性を描くことで恐怖心を増す効果を狙ったものです。

隣で話している人に、自分が殺人犯である事を平然と語っている異常性に加え、既に時効が成立しており、自分は警察に捕まらないのだと言う犯人の余裕。それらをタイトルにもあるカメラ、しかも『今ここにカメラがある』と言う皮肉を込めた話に引っ掛けて描いたものです。


小説内における言葉の掛け合わせは、色んな場面で使う事が出来、その作品の面白みを増す効果の一つになります。

特にエンタテイメント系の小説は、こういった遊び心を常に持ちながら、より楽しめる方向での作品作りを意識するのが良いのではないかと思います。

 

 

次回は、ショートショート『新生物』の創作プロセス公開です。

 

 

 

 

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(解説から学ぶ小説書き方ブログ)今回の作品/スミレ先輩、コラム/ラストの締めくくり(前編)

 

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スミレ先輩

仕事も恋愛も完璧にこなす憧れの先輩。全てがパーファクトな先輩はいつも色んなアドバイスをくれる。それは仕事から恋愛の話まで。そんな完璧な先輩だったが、主人公にはどうしても納得のいかない事があり、直接本人に聞いてみるのだが……。

 

ショートショート『スミレ先輩』の全文はこちら↓↓↓

rhirasawanb.hatenablog.com

 


【CONTENTS】

 

 

テーマからの発想

 

テーマは『純情』です。

純情と言えば、やはり恋愛などで奥手な人のイメージが浮かびます。ですから、年齢的には大人なのに、なかなか異性と上手に付き合えない人だったり、あるいは子供が主人公でもいいでしょう。

 

 

発想からのキーワード選出

 

奥手、フリー、子供、純粋、浅い経験

 

 

POINT1:タイトル

 

 

タイトルは『スミレ先輩』です。人の名前を付けていますが、単純にそうしている訳ではありません。そもそも『スミレ先輩』は主人公ではないんですよね。そう、主人公は『カンナ』です。しかし、メインのお話は『スミレ先輩』です。結局オチにも関係しているのですが、最初から最後まで、この人のお話です。このような方のお話の場合は、基本的に主役は脇役側に回るような形をとります。今回は、『スミレ先輩』を『カンナ』がアシストするような形をとっています。

 

 

 

POINT2:書き出し

 


 入社二年目のカンナは、今でもスミレ先輩からアドバイスを受ける事が多い。

「ねえカンナちゃん。裁断機で紙を切るときは、一枚目を半分に折って印を付けておくと綺麗に切れるわよ」

 

主人公と他の登場人物が、何処でどう言う状況なのか、出来る限り端的にまとめます。

今回も基本的な書き出しです。二人の状況や関係性だけでなく、まだ何となくですが、『スミレ先輩』の性格や仕事ぶりにも触れています。とても細かい部分なのですが、文章の端々に何かしら登場人物の性格や行動、考え方等を伝えるような言葉を入れておくと、文字数が節約出来る事によって、後々の構成がとても楽になります。

 

 

 

POINT3:ユーモア

 

職場でもプライベートでも、冴えない感じの主人公と、全てにおいてパーフェクトな先輩との関係。

小説におけるキャラクター同士の関係性は、オーソドックスですが、対照的な方が面白いでしょう。これは単にギャップがあるだけでなく、互いに相手を引き立たせる効果があります。登場人物がもっと多い場合は、複数の対照的なペアを作って構成すると良いでしょう。

 

 

 

POINT4:前半のストーリー

入社二年目の事務員である主人公は、日頃より先輩からいろいろなアドバイスをもらっていた。

 

そのアドバイスは仕事の内容だけに限らず、恋愛についても話が広がっていった。

 

 

POINT5:展開〜オチ

 

主人公は先輩社員が付き合っていた男性に、それらしい欠点がなかったにも関わらず、短期間で別れていた事に疑問を感じ、その事について質問すると、ある程度納得出来る答えが返ってきた。

 

後日、先輩が別れた本当の理由を、同期の事務員から聞く事になったが、実は占いをとても信じていて、その相性が悪いと分かると怖くなって別れていたのだった。

 

 

 

総合的なポイント

 

最後のオチの段階で、いかに落差をつけるかというのがショートショートのポイントですが、今回は特にその効果が大きく出るなるタイプの物語です。

最初の段階で先輩がいかに凄い人かと言う事を出来るだけ多く書いておき、最後で一気にストンと落としてしまう訳です。

 

 

コラム/ラストの締めくくり

 

小説のイラストには様々な形がありますが、特にショートショートの場合、特殊なスタイルのものもあるため、そのラストはさらに多くの形が存在します。


●オチが緩やかなスタイル

●ラストに落とすスタイル

●オチの後に余韻があるスタイル


どのスタイルの場合も、ラストに近い部分で落とす事は同じなのですが、その流れが多少異なります。それは、全体の構成との関係もありますし、ネタの問題もある訳です。

さらに詳しい内容は、次回コラム/ラストの締めくくり(後編)でお話したいと思います。

 

 

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(『クリスマス』がテーマの作品例)新作ショートショート(2)/サンタが来ない日

新作ショートショート(2)/テーマ(クリスマス)

 

 

サンタが来ない日

 

「ねえ、パパ。サンタさんは来ないの?」

 今年で五歳になる娘のアミが、朝から困った様子で私に尋ねてきた。こんな時の表情も、目元が私に似てとても可愛い。最近は大人の様に見える時があり、サンタを信じているかさえも疑わしく思う。

「うーん、それは……」

 私は困った。娘へのプレゼントを、行きつけのスナックに置き忘れてきたのだ。

「アミはずっといい子にしてたのに……」

「ああ、それはパパがちゃんと知ってるよ」

「じゃあ、何でアミの靴下にプレゼントが入ってないの? 今日はクリスマス・イヴでしょ?」

 今年のイヴは土曜日だった。去年のプレゼントは妻が用意したが、今年はどうしても無理だからと、私に頼んできた。

 イヴの前日である金曜日は、以前から上司に誘われて飲みに行く日だった。プレゼントの事を頼まれたのは、更に前日の木曜日だ。

「あなたの会社って百貨店近かったわよね?」

 商品名とメーカーを書いたメモを渡された。どちらも断れそうになかったので、プレゼントを買ってから飲みに行き、少し早めに切り上げる事にした。アミが寝ている間に靴下に仕込む予定だった。

「まあまあ。早めに帰っちゃうんだから、今のうちに飲んでおきなよ」

 上司の酒は断れない。いつもより激しく酔いが回ったようだ。早く帰る事は覚えていたが、肝心なプレゼントは置き忘れてきた。

 家に着く直前に、ママから届いたメールでプレゼントの事を思い出したが、既に電車での往復は無理な時間だった。

 上司とは居酒屋で飲んでいる事になっていたので、スナックの話は出来ない。プレゼントを買う時間が無かった事にして、イヴの昼間に買って来ると言った。

 問題はアミの方だ。大騒ぎするに違いない。案の定、イヴの朝はプレゼントの話から始まった。

「サンタさん、アミのお家に来るの忘れちゃったのかなあ」

 娘の控えめな一言は、私の心に大きなダメージを与える。

「やっぱり忘れちゃったんだよ。アミのお家」

 忘れた? そう、置き忘れたのだ。いつものスナックに。

「プレゼント、昼ごろ私が届けようか?」

 再びママからメールが来たが、その申し出は全力で断わった。本来は今朝、娘の用意した大きな靴下の中にある筈のプレゼントを、昼間に厚化粧をした怪しい女が届けに来たら、娘は混乱するに違いない。妻への説明となると更に困難だ。

「パパが煙突のお掃除をしないからよ!」

 娘の怒りが私の方に向いてきた。

「アミ。なんて事を言いだすんだい? 北欧の国じゃあるまいし、ウチに煙突なんて……」

「ちゃんとあるじゃない。アミは知ってるんだから」

 確かにウチには煙突があった。私はクリスマスが大好きで、おまけに北欧の国に強い憧れがあったから、家を建てる時に私の強い意向で造ってもらったのだ。しかし、二年ほど前から全く使わなくなった。今では暖炉の前を、大きなチェストが塞いでいる。

 当時三歳だった娘が、その事を覚えていると言うのだろうか? 私だって子供の頃の事など殆ど覚えていないのだから、娘もきっと同じに決まっている。

「あんな事があったから、きっとサンタさんは来なくなったのよ」

「あ、あんな事って……。アミ、一体なんの事を言ってるんだい?」

「パパがよく知ってる筈よ。きっとサンタさんは、まだ煙突の中に居るんだわ」

「アミ、何故その事を……」

 アミは全て知っている。だが、サンタはもうそこには居ない。

 毎年クリスマスには、弟がサンタの格好でやって来る。アミにプレゼントを渡す為だ。リアルなサンタの格好で。

 独り身だが子供好きな弟は、アミの夢を壊すまいと、クリスマスに来ている事は誰にも話していない。盆と正月だけ普通の格好でやって来るので、アミは弟が年に二回しか来ていないと信じている。

 二年前のあの日、家族だけでクリスマスパーティーをしてアミを寝かしつけた後、妻と二人で友人からもらったシャンパンを全部空けた。気付けば二人共居眠りをしていて、先に目を覚ました私は寒さのあまり暖炉に火をつけた。

 弟は既に煙突の中に居た。プレゼントが大き過ぎて、なかなか通れなかった様だ。

 あれは事故だった。クリスマスの日から行方不明になった弟について、年明けに警察が話を聞きにやって来たが、弟は盆と正月だけしかやって来ず、今年はまだ来ていないと答えた。周囲の人々にも、そう言う事になっている。妻もこの事を知っている。二人だけの大事な秘密だ。数日後、妻から高級バッグをねだられた。

 アミはツリーの近くに置いた大きな靴下をうんと広げたまま私の方を見た。それは私に似た優しい目ではなく、あの日の妻の目によく似ていた。

 そしてアミが言った。

「ねえパパ。今年のクリスマスは、うんと高いものおねだりしてもいいわよね?」

 

 

【その他のショートショート作品はこちら↓↓↓】

時空モノガタリ投稿作品 カテゴリーの記事一覧 - R・ヒラサワの〜Novelist's brain〜

時空モノガタリ未発表作品 カテゴリーの記事一覧 - R・ヒラサワの〜Novelist's brain〜

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ショートショートの書き方』を、作家の視点で詳しく『超解説』‼

 

 

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(小説の構成の考え方とコツ)コラム/スラスラ読める小説の構成(後編)

スラスラ読める小説の構成(後編)

小説はその構成により、読みやすい文章にも読みにくい文章にも変化します。構成はそれらの要素だけではなく、もちろん作者の意図や、それ以外の理由によっても組まれ方は変わってきます。今回は比較的オーソドックスなスタイルの小説を、主に読みやすさという観点で、構成について解説したいと思います。

 

記事に関するオススメ書籍はこちら↓↓↓

(小説・ショートショートの書き方)厳選・オススメ本はこれ!(その❶) - R・ヒラサワの〜Novelist's brain〜

 

【CONTENTS】

 

 

【作品例:挨拶の品】

ショートショート挨拶の品の全文はこちら↓↓↓

rhirasawanb.hatenablog.com


疑問による推進力

 

【原文】

 半年ほど空いていた隣の部屋に、新しい住人がやって来たのは、日曜の午後の事だった。久々に私の部屋のチャイムが鳴ったのだ。

「ごめんください」

 ドアを開けて声の主を確かめてみると、それは二十代後半と思しき綺麗な女性だった。

 

【構成】

(全体→主人公→セリフ等細かい描写)

この構成にする事で、文章の先に『疑問』や『期待』が生まれます。


●どんな住人か?

●この先、何が起こるのか?

 

 

【違う構成例】

「ごめんください」

 日曜日の午後、二十代後半と思しき綺麗な女性が私の部屋を訪ねて来た。私の部屋のチャイムが鳴るのは久々だ。

 隣部屋は半年ぐらい空いていて、この人が新しい住人になる様だ。

 

【構成】

(セリフ等細かい描写→主人公→全体)


●訪ねて来た人が既に明らかになってしまっているので、話が一旦落ち着きリズムが悪くなる

 

 

 

前振りによる推進力

 

【原文】

 最近では引越しの挨拶も珍しくなった。特にこのマンションは、ワンルームの割に広めではあるが、住人の殆どは単身者のようなので、おそらく挨拶に回った者も少ない事だろう。

 女性は私と短い挨拶を終えた後、同じフロアにある他の二軒も訪ねたいと言い出したので、一軒は会社の事務所に使っている様だし、残りの一軒も滅多に住人を見かけないので、挨拶は要らないのではないかと伝えた。


【構成】

(全体→主人公→セリフ等細かい描写)


●後半で主人公が女性に対して挨拶はいらないのではないかと、管理人でもないにもかかわらずその判断をしたのは、前半部分での前振りがあったからです。

 

 

【違う構成例】

 女性は私と短い挨拶を終えた後、同じフロアにある他の二軒も訪ねたいと言い出したが、一軒は会社の事務所に使っている様だし、残りの一軒も滅多に住人を見かけないので、挨拶は要らないのではないかと伝えた。

 何故なら、このマンションが広めのワンルームで、住人の殆どは単身者のようなので、おそらく挨拶に回った者も少ないと思ったからだ。最近では引越しの挨拶も珍しくなったものだ。


【構成】

(セリフ等細かい描写→主人公→全体)


●前後を逆にしても、大きな問題は出ません。しかし、挨拶がいらないと判断した理由が後付けになってしまい、読んだ時に多少もたつきが出ます。

 

 

 

事前の状況設定による推進力

 
【原文】

 このマンションは三階建てで、ワンフロアが四軒、全戸十二軒の小さな建物だ。最上階にあるこの部屋は、階下の音は上がってこないが、隣同士は多少音漏れがあるようだ。これは以前隣に居た住人が、音楽を結構な音量で聴いていて、それが時々聞こえてくる事があったので知っていた。


【構成】

(全体→主人公)

(★この後に『数日後に隣から大きな物音』の文章が続く)


●これ以降に続く内容の前振りになっています。ただし、いかにも『前振り』的にするのではなく、あくまでも主人公の状況(今回は住んでいるマンションについて)を話す感じで、自然に書いた方が良いでしょう。

 

 

【違う構成例】

(★これより前に『隣から大きな物音』の文章があり、以下の文章がそれに続く)

 このマンションは隣同士、多少音漏れがあるようだ。それは以前隣に居た住人が、音楽を結構な音量で聴いていて、それが時々聞こえてくる事があったので知っていた。

 マンションは三階建てで、ワンフロアが四軒、全戸十二軒の小さな建物だ。最上階にあるこの部屋は、階下の音は上がってこなかった。

 

【構成】

(主人公→全体)


●時系列に乱れが出る

●説明的になり、もたつきも出る


事が起こった後なので、流れも良くありませんし、なにより説明が『後付け』になる事で、リズムを乱します。

今回は極端な例ですが、実は全体の構成がまとまらずに書いた文章は、似たような事が起こっている事があるのです。

『NB的思考』を実践した場合、『書ける所から書く』という方法ですので、上記の様に時系列の乱れが出のではないかと思われますよね?

これらは『推敲』の段階で整えているのですが、書いた日時が違う文章は、そもそも繋がりが薄い場合があります。そこで私は、その時書いた文章を一つのブロックとし、別の日に書いた文章は改行して別物と区別しています。

その際、構成はブロックごと文章を移動して整える様にしています。

 

 

 

構成によるリズムの違い

 
この作品は、物語のリズムに緩急がつけてあります。後半に向けて流れを早くする為、この部分はあえて緩やかにしてあります。

 物語の核心に迫る部分については、緊張感を出さなければなりません。そのための方法として、読み進めたときに比較的読書スピードが早くなるよう工夫してあります。

  

 【緩やかな流れの例文】

「とにかく、すみませんでした」

 もう一度頭を下げた女性は、私に菓子包みを差し出した。それは引越しの時よりも少し大きい物だった。

「なんですかこれは?」

ちょっとした喧嘩の物音ぐらいで大袈裟だと思ったので、あえてそう聞いた。


(セリフ)→(文)→(セリフ)→(文)

(  )→()→(  )→()

 


【早い流れの例文】

「ご迷惑をおかけしたので、お詫びの品です」

「そんな。これぐらいの事で……」

「いえ、私の気が済みませんから、どうか受け取ってください」

 その言葉におされるまま、包みを受け取った。女性が帰ったあと中身を見てみると、高級な洋菓子のセットが入っていた。


(セリフ)→(セリフ)→(セリフ)

(  )→(  )→(  )

 


【とても早い流れの部分】

「昨日は済みませんでした。とても大きな音を立ててしまって」

「そんな、全然気に……」

「いいえ! 絶対に聞こえていた筈です!」

 私の話を遮って、女性は大きな声で言った。

 その目には最初の時に見た優しさはなかった。

「いいんです、仕方ありませんから。聞こえてしまったものは。でも、もう大丈夫です。大きな声も物音も、今後は一切出ませんから」

 私に話す隙を与えないまま、女性は菓子の包みを押し付けて帰って行った。

 


(セリフ)→(セリフ)→(セリフ)

(  )→(  )→(  )

★途中で主人公のセリフを遮る


主に流れの早い文章は、緊迫した場面に用います。それはアクションシーンや、登場人物が緊張した場面での心理描写など、状況に応じて使い分けます。

『低』『中』『高』と上手くリズムの『変速』を使いこなす事により、スムーズに読書の方を物語の世界に案内する、『スラスラ読める小説』が生まれるのです。

 

次回は、ショートショート『スミレ先輩』の創作プロセス公開です。

 

 

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(解説から学ぶ小説書き方ブログ)今回の作品/マニュアル、コラム/スラスラ読める小説の構成(前編)

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マニュアル

会社から渡されたマニュアル資料は一枚のみ。一見すると、それは料理の手順である、いわゆる『レシピ』。この『レシピ』に隠された秘密とは……。

ショートショート『マニュアル』の前文はこちら↓↓↓

rhirasawanb.hatenablog.com

 


【CONTENTS】

 

テーマからの発想

 

 前回と同様でテーマは『レシピ』です。今回は珍しく二作品投稿だった訳です。

レシピと言えば、やはり『料理』。アイデアを発想する場合、方法は幾つかあると思うのですが、その転換方法として

『何かに似ている』

と言う考え方は、結構便利だと思います。

最近ではネット上で料理動画なども多く、スーパーマーケットでも、小さなレシピが無料で置いてあったりします。それらを何となく見ていると、『炒める』『焼く』などのキーワードが目に飛び込んで来ました。

『あれ? 何かに似てる』。今回の創作の起点となりました。

 

 

発想からのキーワード選出


炒める、焼く、蒸す、材料、カット

 

主に調理方法などのワードです。今回は予定している作品の文字数も少なく、既に書くお話の構成が大体決まっていたので、キーワードの選出も範囲を絞った物になりました。

通常は書き始めてから新たに展開させる為、選出範囲は広くなる様に意識しながらの作業になるのですが、今回は異例です。

 

 

POINT1:タイトル


タイトルは『マニュアル』です。既に作品を読まれた方はお分かりだと思いますが、今回は間違っても『レシピ』なんてタイトルにはなりません。重要な部分ですから。

 

 

POINT2:書き出し

 
 以下の手順は大まかに書かれています。状況に応じて各自、臨機応変にアレンジして下さい。


この書き出しは、マニュアルとして書いているのですが、もちろん他のことも意識しています。既にオチをご存知の方は分かる事なのですが、マニュアルともう一方、その二つのどちらとも取れるような書き方を意識しています。

 

 

POINT3:ユーモア


今回の作品はとても短いお話で、作品全体がコメディーであり、ユーモアであります。

特に今回は、そのオチが明らかになった後、もう一度前半の部分を読み返していただこうと言う意図で書いています。

そして、その段階でもう一度笑っていただく事が出来たのであれば『作者の思いが伝わった』、と言う事になるのだと思います。

 


POINT4:前半のストーリー


手元に作業手順の書かれたマニュアルがある。

 

 

マニュアルには、料理の手順の様な内容が書かれていた。

 

 

POINT5:展開〜オチ

 

マニュアルを見た主人公は、それを料理のレシピの様だと思った。

 

 

レシピに似たマニュアルは、ヤミ金融の『取り立て用』の資料で、警察のガサ入れが入った時に逃れる為の対策だった。

 

 

 
総合的なポイント

 
今回の作品はとても短く、そして特殊な作品です。

ショートショートは、小説の中でも特殊なジャンルです。特に構成と言う部分においては、過去には様々な手法で書かれた作品が数多く存在し、今もなお新しい作品が考案されつつあります。

作品全体が短い分、ある意味で自由度が高い小説だと思います。この特徴を生かし、時には『実験小説』のような作品を、書いてみるのもいいでしょう。それが成功であったかどうかは別として、それを書き上げた以降に書くオーソドックスな作品にも、何かしら良い影響を与える事は間違いありません。チャレンジする価値は十分にあります。

 


コラム/スラスラ読める小説の構成(前編)

 
どのジャンルの小説にも『構成』と言う要素はあるのですが、ショートショートの場合は作品自体が短いので、構成には特に気を配る必要があります。

作品全体はもちろんですが、起承転結の各『句』においても、細かい構成はしっかりと練る必要があります。

これらの作り込みが不十分な場合、作品の面白さを半減させてしまうこともあるので、推敲を繰り返して順序等、もう一度それで良かったのかを見直す必要があります。

 

 

 更に詳しい内容については、次回、コラム/物語の構成(後編)でお話したいと思います。

 

 

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(読みたくなる小説の書き出し例)コラム/読みたくなる小説の書き出し(後編)

読みたくなる小説の書き出し(後編)

  

小説を書く上で、書き出しはとても重要な部分です。すでに多くの著書があるベテラン作家の方に比べ、プロでも新人の方やアマチュアの方の場合、その先が面白いかどうかが、読者の方には未知数です。

せっかく読んでもらえるきっかけがあった訳ですから、作品の良さを早く知ってもらう必要があります。

 

記事に関するオススメ書籍はこちら↓↓↓

(小説・ショートショートの書き方)厳選・オススメ本はこれ!(その❶) - R・ヒラサワの〜Novelist's brain〜


【CONTENTS】

 

書き出しは一箇所ではない

小説の書き出しは、始めの部分一箇所だけではありません。場面転換等、段落ごとの始めの部分は意識した方が良いと思います。
その意識を持続する事によって、読者の方を先へ先へと案内するリズミカルな文章が生まれる訳です。

 

 

 

文章の組み立てを考える

 

例えば一つの段落内で、どの文をどの順に配置してどう書くのか。これによって文章のリズムは大きく変わり、その文章への興味の度合いにも変化が出てきます。

小説の場合その多くは規定枚数内に、或いは規定の文字数内に収める。要は『削る』作業が大半になります。

 
ブログの記事の場合は、ある程度のボリュームを必要とする場合もあり、小説とは逆に『増す』作業の割合も多めになるでしょう。

 どちらの場合も『削る』『増す』の作業によって全体のバランスが変わってしまう場合があります。必要に応じて調整しましょう。

 

 

 

 

基本的な書き方

 

①文章ごとに疑問点を残しつつ前に進む。


②主人公を客観視した状態から、徐々に近く、そして内面を描く


③話の起点から着地点までの距離を少し長めに設定する

 

 

実際の作品例

 

 

『消去ボタン』の場合  

ショートショート『消去ボタン』の全文はこちら↓↓↓

rhirasawanb.hatenablog.com

 

 ファミリーレストランの一番奥にある喫煙席で、今日この場所に最もふさわしくないと思われる二人組の男が座っていた。

【どんな男達か?】

【何故ふさわしくないのか?】←(起点)

 

 初夏だと言うのに、外は既に真夏の日差しで、毎年最高気温を記録する地域では、去年の記録を塗り替えるほどの暑さだった。

【暑さと何か関係があるのか?】

 

 その為、世間の人々は半袖姿で過ごす中、上下黒ずくめのスーツ姿の二人は、明らかに周囲から浮いている存在だった。

【書き始めの問題に対する答え】←(着地点)

 

 

解説

まずは状況設定をしています。この段階で、主人公たちの外見等について触れていますが、実際の世界で漫画やドラマのような姿をした人はあまり見かけません。そこで、まずこのキャラクターが居る世界を用意し、その前提で読んでもらうための仕掛けです。

後に出てくる装置なども現実の世界ではないような物ですが、違和感なく読み進める事が出来る訳です。

これ以降に物語の細部、主人公の内面などを徐々に描いてゆきます。

 

 

 

『落し物の使い方』の場合

ショートショート『落し物の使い方』の全文はこちら↓↓↓

rhirasawanb.hatenablog.com

 

 男はその日、自分が路地に入った事をとても幸運だと思った。それは給料日を数日先に控えた日曜日、パチンコに負けた午後の事だった。

【何を幸運だと思ったのか?】←(起点)

 

 路地には何気なく入った。繁華街を少しだけ離れた場所だったが、そこは驚くほど人通りが少なかった。

【そこで何があったのか?】

 

 路地に入ってすぐさま目に入ったのは、見覚えのある薄い緑色の封筒だった。それが銀行の物であるとすぐに分かったが、中身が入っている筈など無かった。

【中身は入っていたのか?】

 

男は最初、そのまま通り過ぎるつもりだったが、何となく中に紙の存在が感じられた。幸いな事に辺りに人影は無く、男はその封筒を難なく手にする事が出来た。

 男は地面から拾い上げた封筒を、すぐさまコートのポケットにしまい込んだ。封筒と共に差し入れた手で、その中を慌ただしく探り始めた。

 男の予感は当たっていた。中には紙の感触があった。それはもちろん紙幣に違いない。男は紙の先端を指で弾くと、それが三枚である事が分かった。

【書き始めの問題に対する答え】←(着地点)

 

創作が上手く進まない……。そんな時、『もしも……』と、あてはめるだけ!

先ずは『試し読み』をどうぞ↓↓↓

 

解説

この物語は仕掛けがシンプルなため、前半にある程度ボリュームを持たせる必要がありました。この書き方は、場合によっては回りくどく、スムーズに読み進める為には逆効果にもなりかねない方法です。

しかし、各文章ごとに疑問点をしっかりと配置することによって、読み進める仕掛けが出来ている為、この構成が上手く成立する訳です。

 

文章の前半に疑問点を配置し、後半に答えを用意するというサイクルを繰り返す事によって、読者の方を引き込む文章の仕掛が出来あがります。これらを上手く構成する事を意識して、書いてみられてはいかがでしょうか。

 

 

次回は、ショートショート『マニュアル』の創作プロセス公開です。

 

 

 

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(解説から学ぶ小説書き方ブログ)今回の作品/Recipe、コラム/読みたくなる小説の書き出し(前編)

 

f:id:RHirasawa:20191108212526j:image

 

Recipe

浅いつきあいとは言え、彼には自分を含めた四人の彼女がいる。そして今回、新たに五人目の彼女が現れた。彼の本命になりたいと、主人公は努力をするが……。 

 

ショートショート『Recipe』の全文はこちら↓↓↓

rhirasawanb.hatenablog.com

 


【CONTENTS】

 

テーマからの発想

 

 今回のテーマは『レシピ』です。

レシピと言えば、ストレートに『料理』ですね。個人的には料理のマニュアル的な物と思っているのですが、本来の意味は違うのかもしれません。

『母の味』的にストーリーも浮かびました。オーソドックスですが、何かの瞬間に『母』を思い出し、それに触れるといったものです。

 

 

発想からのキーワード選出

 


料理、マニュアル、手順、継承

  

当然の様に、料理関係のワードになっています。そこから少し進めた形で、料理等の技術の継承、つまり親から子へ受け継ぐ何かといったあたりまでの考えです。

 


POINT1:タイトル

  

タイトルは『Recipe 』です。シンプルにそのままですが、様々な意味が込められています。これは主人公の行動に深く関係していますが、主人公の彼の行動にもリンクしています。

 


POINT2:書き出し

 

 「新しい彼女が出来たんだ。だから、これで君を含めて五人って事になるね」

 タクミの言葉を聞いてもコトネは全く反応しなかった。それは人数が六人や七人に増えたところで、同じだったに違いない。会話の流れとしてコトネは一応聞いてみる。

 


彼のセリフに読者の方は、『どう言う事?』って思われたのではないでしょうか? 特に書き出しは、そう言う流れが良いのです。

そして更に主人公の反応も変ですよね? 今回は『どう言う事?』を、もっと加速させる仕掛けの物語です。

 


  

POINT3:ユーモア

  
タクミが女性に求める条件は世間でよく聞くような内容だったのだが、実はモデルの彼女はテレビに出たり何処かの大会で優勝した訳でもなく、国立大学に通う彼女も成績がトップクラスという訳ではない。

 声優の彼女は最近になってやっとローカル局で流れるアニメの役をもらったが、脇役のため出番もかなり少なく、コトネの後に出来た彼女もスポーツ万能な様だが、過去にインターハイどころか、県大会にすら出た事が無いレベルだった。

 


既にお気付きかと思いますが、今回の物語は一貫して現実的ではない流れを描いています。実際に男性が女性をこんな感じで選んでいたら、かなり問題でしょうし、女性も応じる筈がありません。しかし、この物語のポイントは、その部分ではないのです。

 

先ずは現実からかけ離れた世界観を読者の方に知っていただく。展開はそこからなんですよね。起点が決まったら、そこからどの位物語が発展させるか。異常な世界を先に設定してしまうと後が楽になります。間違っても、ある程度正常な世界から徐々に異常さを増してゆく方法は、それがメインとなっているお話以外は避けた方がいいでしょう。

 

 

POINT4:前半のストーリー

 

浅い付き合いだが、彼氏には彼女と呼んでいる女性が主人公を含め四人いて、更にもう一人増えた。

 


彼の事が好きだった主人公は、料理の腕を磨いて本命になろうと、我流を脱却する為にレシピ本等で研究を始めた。

 

POINT5:展開〜オチ

 

彼の料理に対する評価は上がるどころか、逆に味が落ちたと言われる。

 

彼の言葉にショックを受けた主人公は、我流脱却を諦め本命の彼女も無理かと考えていたが、結局自分を貫いた事を認められ彼の心を射止める。 


  

総合的なポイント


この物語は、書き始めから実際にはない様な世界を描いています。このタイプのお話では、読者の方に予めその世界に浸っていただく必要があります。

この場合、先ずは『最も異常な部分』から入るのが一番良いと思います。そうする事によって後に続く世界が、その物語の中では簡単に受け入れられる様になるのです。

 

 

 

 コラム/読みたくなる小説の書き出し(前編)

 

小説に限らず、文章には読者の方を惹きつける力が必要です。内容を面白くするのは言うまでも無い事ですが、文の配置はとても重要で、中でも書き出しは特に工夫が必要です。例えるならば、緩やかな坂道を降り続ける。あるいは、テンポの速い物語ならば、急な坂道を転がってゆく様な、要は読者の方が意図せず先へ先へと読み進めてしまう様な文脈を作る事です。

 

 

例文 

 

【原文】

私は今日、図書館で本を借りた。そこにはとても興味のある写真家の作品が多く掲載されていた。何度も見たくなってしまうので、結局ネットでその本を購入した。

(時系列で書かれており、間違いではありませんが単調な文章です)

 

【修正後】

私は思わずネットで本を購入した。図書館で今日、借りたばかりの本なのに。私は写真が好きで、そこにはとても興味のある写真家の作品が多く掲載されていたから、何度も見たくなると思って買ったのだ。

(書いた人の感情が伝わる様な文になりました。時系列ではなく伝えたい事を先に書いています)

 

書き出しで随分と印象が変わりますよね? もちろん後に続く部分も順番を変えている訳ですが、これらにはある程度ルールがあります。それらの さらに詳しい方法については、 次回『読みたくなる小説の書き出し(後編)』でお話したいと思います。 

 

 

ショートショートの書き方』を、作家の視点で詳しく『超解説』‼

 

 

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